夏未嬢、相変わらずツリ目ですね。


数年前にサッカーやったっきりなので、
ルールを結構忘れていた。
なので半田に教えてもらうことにした。

「えーと、ここがこうなるんだろ・・・あってるか?」
「あってるよ、上出来だ。」
「・・・マジか!ありがとな半田!」
「いや、火月の覚えがいいからだろ?」
「んー。自分で言うのもなんだが忘れてただけだし?0からやるよりは早いと思うぜ。」
「へぇー。そうなんだ。」
「だろ?・・・ってぐぇ!」

のしっ、と背中から被さってくるマックスと
ルールを教えてくれている半田は、
帝国試合のあれからすぐ俺に話しかけるようになっていた。
今では結構仲のいい友達だ。

「おもっ・・・くねーぞ、マックス。・・・太れ。」
「えー、僕どうやって太れるのか、全然分かんないー。」
「・・・ちくしょう腹立つ!それっ!」

腹が立ったので、背中のマックスをがし、と
両手で掴んでやった。

・・・俺なんて、俺なんて・・・!!
サッカーやるために痩せようと思って、週1回の
幸せなおやつタイムなくしたんだぞ・・・!?

「どーだ!俺は体柔らかいんだぞー?」
「わー。ギブギブー!!」

「おーいみんなー!練習するぞー」


円堂の一声で、みんなが部室からわらわらと出てきた。
一緒に出て行こうとすると、円堂に呼び止められた。

「・・・ん?なんだ円堂?」
「んー。なんか、校長先生が火月呼んで来いって。なんだろうな?」
「さぁな。そんじゃ後から、河川敷行けばいいよな?」
「あぁ、すぐ近くの河川敷な」
「OK、分かった。すぐ行くからな!」
「おう!」


目指すは校長室。
上履きに履き替えると、急いで向かった。


「失礼します。火月ですが・・・」

ノックした部屋から、“入ってちょうだい”と、夏未嬢の声が返ってきた。え、何故に夏未嬢?

「失礼します」
「どうぞ。楽にしてかまいませんわよ」

入ってすぐに優雅に椅子に座る夏未嬢と、
目が合った。
夏未嬢、本当に美人ですね。

部活に早く行かなきゃと思いだして、あの、と質問しようとしたら夏未嬢に遮られた。

「・・・ところで、火月さん。・・・あなたはこの前の試合、どう思いましたか?」
「えー、どうって・・・何がですか?」

パサッと、手に持っている書類か何かを、
机に置いて夏未嬢は一息吐いた。

「・・・この雷門のサッカー部の、名も知れないチームに・・・あの帝国学園がなぜ練習試合を申し込んだか。」

俺を見る夏未嬢は本気なのが分かる。
ひゅー。さーっすがあの理事長の娘。

「ん〜・・・エースストライカー豪炎寺の力量を計るため、ですかねぇ・・・たぶん。」
「・・・やっぱり気づいていたのね、それでサッカー部に?」
「えーと、それは違いますよ。・・・俺はみんなと・・・円堂とサッカーしたいから入ったんでね。」

ちなみに、今河川敷で待ってるんですよ今、と
困ったように笑って溢した言葉に、夏未嬢はシカトして話を進めた。

「煤E・・(あれ、ツンしか見えない。デレがない、デレがないよ!)」
「そこまで分かっているなら話が早いわ。
あなたに頼みたいことがあって今日呼んだの」
「・・・なんですか?理事長の言葉である頼みって」

ちゃかすように答えた俺に、
夏未嬢はクスッと優雅に笑った。

「・・・あなたにはサッカー部の周りで不穏な動きがないか見張っていてほしいの。」
「あー。保護者、みたいなもんですかね」
「そうよ。よく分かっているわね。」

クスッと笑みをこぼした夏未嬢を見て、
俺はぼそっと夏未嬢かわいー、と
小さくもらしたら顔を真っ赤にした夏未嬢に怒られた。
やったー、デレが出たー。

「は、話は終わりよ。早く部活に参加しに行きなさい!」
「なんか理不尽っスよね。夏未嬢。」
「は、早く行きなさいってば!」

ぺしっ

真っ赤な夏未嬢に軽く頭を叩かれた。
でも全然痛くない。

・・・夏未嬢らしいや。

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