それからというもの
そして、あれから俺は韓国に留学し、
パランの家に居候させてもらいながら、毎日勉学に勤しんでいた。
「ねぇ雪女!パッピンス食べに行かない?」
「あー・・・悪いなソンジョ。これから白姫迎えに行かなきゃならないんだ」
「・・・そういや雪女。前からよく聞くんだけど、その白姫って・・・貴方の何にあたるの?」
「あ!それ気になるわ!」
「・・・妹?それとも、いとこ?」
今まで白姫の名前は出しても、
白姫が俺の娘とは言ってこなかったため、
好奇心旺盛のサンジャとヨンスに挟まれ、
答えざるを得なくなった・・・
「・・・お、俺の娘だよ」
「「ええーっ!?」」
「あ、貴方・・・未婚の母だったの!?」
「父親は!?父親は誰なの!?」
そう聞いてくる二人に対し、
ソンジョは「へー、そうなんだー」みたいな顔。
「・・・ソンジョ、なんで驚かないの?」
「いやあ、むしろ安心しちゃったわ。あたし以外にも子持ちがいたかと思うとね」
「「ええーーっ!?」」
「・・・それは俺も初耳だ!」
「えへへ、この子なの」
笑いながら写真を携帯で見せるソンジョ。
そこには、可愛い女の子が写っていた。
「彼氏が逃げちゃってね。彼氏が逃げたなんて、かっこ悪いから隠してたんだけど、雪女にも子供がいるから隠すことないかなーって」
「確かに可愛い!」
「名前は?」
「ヒョンス。あたしの目に入れても痛くないほどに可愛い一人娘よ」
「・・・へ、へえー・・・」
それから、いろいろとあったが、
白姫もだいぶ成長して、
(サッカーと言えるのか分からないが、たぶん)サッカーもできるようになった。
本当は女の子らしく、おしとやかに育てたかったんだけど・・・
やっぱり大介さんの血が流れてるらしく、サッカーを泣くほどしたがったので、
俺は完全に、ボッキリと折れた。
しかも、俺がこんなんだから
白姫も、僕っ子に育っちまって・・・。
「オモニー!」
最近は、ヒョンスと仲良くなって、
毎日サッカーして遊んでる。
そろそろ日本に帰るし、
言葉もほとんど韓国語だから日本語も覚えさせていかないとなあ。
「・・・どうしたんだ、白姫?」
「ねぇねぇオモニ!ぼくにね、「あいすすぴあー」おしえて!」
「だーめだ。お前にはまだ早い。」
「えー、つまんなーい」
1週間ほど前、母さんが送り付けてきた
エイリア学園との試合のビデオとか、イナズマジャパンの活躍のビデオを見て、
さらにサッカーにはまったらしく、
「オモニみたいなせんしゅになる!」とまで言う始末。
・・・育て方間違えたかな。
まーだボールを蹴るのにも四苦八苦してるくせに、
必殺技を覚えたいなんて、よく言うぜ。
・・・ま、そこが可愛いんだが。
「(・・・これも、大介さんのせいかな)」
その時、走っていた白姫の首から
青色のペンダントが落ちる。
「わわっ!」
俺はそれを急いで拾い、
白姫を呼んで、首にちゃんと戻す。
「こーら、落とすなって言っただろ?」
「あう、ごめんなさい・・・」
「白姫。これはな、死んだ俺の兄ちゃんが、お前に譲ってくれた、大切なペンダントなんだ。頼むから失くしたりするなよ?」
「・・・わかった!」
「それならいい。・・・今日はもう遅いから帰るぞ。」
「はーい!」
「ばいばい!」
「ばいばい、ヒョンス!」
そして帰り道。
「ねぇ、オモニ。」
「ん?」
「オモニのおにいちゃんって、どんなひとだったの?」
「・・・とても優しくて、いいお兄ちゃんだったぞ。・・・ちょっとシスコンが強かったがな」
「しすこん?しすこんてなあに?」
「・・・白姫は覚えなくていいぞ。」
兄ちゃんがくれた、兄ちゃんの羽は、
俺が書いた絵に張り付けて、大事にしている。
その絵の内容は、俺の今まで見た夢。
大きくなった白姫に俺、大きくなった兄ちゃんに若い雪姫ばあちゃん。
「(・・・まるで未来予想図みたいだよな、あの絵。)」
そう思っていると、白姫が俺の袖を
くいくい、と引っ張った。
「あのねオモニ、ぼくにもアボジはいるんだよね?」
「・・・!」
“オモニ”は「母親」
“アボジ”は「父親」
俺は士郎と別れてかなりたつけど、
白姫は、物心ついたのは最近の話だ。
・・・だから、覚えてるはずがない。
感覚かなにかでは、覚えているとは思うんだが・・・
「・・・もちろんいるぞ。でも、ここと日本は遠いから」
「もうすぐ、にほんにかえるんだよね?」
「あぁ。」
「じゃあ、アボジはぼくにあいにきてくれるかな」
「・・・きっと、会いに来てくれるさ」
白姫はそう言ったけど、実はあまり自信がない。
・・・ちょうど1か月前ほどに「来月日本へ帰る」というメールを士郎に出したら、
ほとんど毎日来ていたメールも、月に数回は必ずくれた手紙も、
ぱたりと急に来なくなってしまった。
何かあったのかな。
それとも・・・俺のことなんか、もう好きじゃないのかな。
心の奥底では「絶対違う」って信じてるけど、
ここまでだと、うっすらそう思ってしまう。
不安を無理やり蹴飛ばしながら、俺は帰国までの時間を過ごした。
そして帰国の日。
本当は5年かかるはずだったのだが、
白姫の小学校のことなどを考えて、
俺が死ぬ気で1年削り、4年で帰れるように。
「雪女!絶対手紙出してね!」
「時間あったら、あたしたち会いに行くからね!」
「ありがとう、ソンジョ、サンジャ・・・」
「ちょっと待ちなさいよ!私を置いてかないでよ!」
「パラン!?」
「何、その荷物・・・」
「雪女、今まで隠してたけど・・・私も一緒に日本に行くわ。」
「な、何でまた急に!?」
「・・・じ、実は・・・雷電と結婚するから・・・」
「土方と!?」
・・・そういや二人とも、確かにラブラブだったけど・・・
「幼馴染にすら教えないって、お前・・・」
「だって招待状送ってビックリさせたかったんだもん・・・」
「・・・はあ」
「白姫、また会おうね!」
「うん、今までありがとう、ヒョンス・・・」
「次に会うときは、何かサッカー世界大会のグラウンドで会いたいね!」
「叶うといいなあ、それ・・・」
「・・・今のサッカー界じゃ難しいかもしれないけどさ、なんとかなるわよ!」
「そうだね!・・・本当に今までありがとう!」
「・・・じゃあまたね!」
「行くぞ白姫、飛行機が出ちまう」
「・・・うん!」
そして俺たちは、飛行機に乗り込んで
久しぶりの日本へと帰国した。
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