二回目のプロポーズ
そして、帰国しておおよそ3か月。
俺は教員免許を取るために、また勉強しながら白姫を育てていた。
白姫は小学生になって、
サッカークラブのエースストライカー兼鉄壁のDFとして活躍している。
サッカーをするさまは、まさに士郎そっくり。
でも・・・
・・・士郎からの手紙もメールも、いまだに止まったまま。
「ねえオモニ!約束だよ、小学校に上がったら必殺技教えてくれるって!」
「・・・あー、そうだったな・・・」
「やった!・・・どんな技から教えてもらおうかな?」
それと、白姫は口調は僕っ子だが、
なんとか性格はわずかに女の子らしく育ってくれてよかった。
あと、俺に似て猫好きだしな。
「・・・もう少し勉強したいから、夕方に教えてやるよ。」
「じゃあ僕、公園に居るからね!」
そう言って、少しぼろぼろになったボールを抱えながら、
とたとたと足音を立てて、白姫は出かけていった。
「(そろそろ行くか・・・)」
そう思ったその時、
白姫が公園から帰ってきた。
・・・しかも、やたら嬉しそうに。
「どうしたんだ、白姫?」
「あのね!さっき公園でお兄さんが技を教えてくれたんだ!」
「・・・お兄さん?技?」
「うん!「えたーなるぶりざーど」って言うんだって!」
「・・・!?」
・・・お、落ち着け。
FFIの後、イナズマジャパンの技を特訓して使えるようになった奴なんてザラにいる。
たぶんそのうちの一人だろう。
「で、そのお兄さんはなんか言ってたか?」
「うん。「お母さんは家にいる?」って聞いてきた。「オカアサン」ってオモニのことだよね?」
「あ、あぁ・・・」
「でね、「いるよ」って言ったら、「あとで家に行ってもいいかな」って言ったからね、「サッカーしてくれるならいいよ」って言ったの!」
「何言ってんだ、白姫!初対面の人とあまり仲良くするなって言ってるだろ!?」
そう、少し強く言うと、
白姫は少し涙目になってこう言った。
「・・・だ、だって・・・」
「だって?」
「僕に、そっくりだったんだもん・・・」
「!?」
俺はため息を一つつくと、白姫の頭をやさしく撫でた。
「・・・しかたねぇなあ・・・」
ピンポーン♪
その時、玄関からチャイム音が。
「たぶん、さっきのお兄さんだよ!」
「・・・白姫は引っ込んでろ。もし危ない人だといけないからな」
「えー、やさしそうな人だったよ?」
「男はみんな狼なんだ」
「・・・ちえっ」
「雪女?客が来たみたいだが、俺が出ていいのかー?」
「あ、待ってくれ母さん!今出る!」
チェーンを外して、ドアを開ける。
・・・そこには、驚くべき人物が立っていた。
「遅くなってごめんね、雪女」
「・・・士郎・・・?」
「君を迎えに行く準備をしてたら、4か月もかかっちゃったんだ」
そう言って、申し訳なさそうに笑う士郎。
俺の不安も知らないで・・・!
「ごめんね、今・・・迎えに来たよ」
「バカ野郎ッ!!」
涙を流しながら、士郎に思い切り抱き付く。
「俺、嫌われたのかと思って・・・!」
「僕は言ったよ。「10年でも100年でも君を待つ」って」
「・・・士郎・・・!!」
その時、ひょこっと
白姫が顔を見せる。
そして士郎を見るなり、こう言った。
「あっ、さっきのお兄ちゃんだ!」
「・・・えっ・・・」
「公園で、先に会っちゃったんだ。白姫は僕のこと、分からなかったみたいだけど・・・」
「・・・そう、なのか・・・」
「・・・白姫。あの人がお前のアボジだよ。」
「アボジ・・・?」
そう言うと、白姫は士郎に嬉しそうに抱き付いた。
「初めまして、アボジ!僕、白姫だよ!」
「・・・うん、知ってるよ。君がまだちっちゃい赤ん坊だったころから知ってる。」
「ねえ、明日も「えたーなるぶりざーど」教えてくれる!?」
「うん、もちろん」
「・・・やったあ!」
そう言うと、白姫は嬉しそうに笑いながら
2階へ駆け上がっていった。
「あの時とは違って、今はロマンチックでも何でもないけど・・・結婚して、くれますか?」
そう、恥ずかしそうに告げた士郎を見て、
俺は何を悩んでいたんだろう、という気分になる。
俺の左手の薬指には、あの時もらったサファイアの指輪。
士郎の左手の薬指には、後で買ったのか、俺と同じデザインのサファイアの指輪が。
・・・忘れないで、いてくれたんだ。
「こんな男勝りの女でよければ・・・喜んで、お受けします」
また、涙が零れた。
「・・・父さんと母さんに、挨拶しねーと、な・・・?」
「そうだね。・・・今、いる・・・?」
「居るよ。とにかく、上がって待ってろよ」
「・・・うん。」
そう言って、士郎を家に上げる。
・・・父さんが何を言い出すかが焦点だよなあ・・・
そして。
「・・・お前が、白姫の父親か」
「はい」
空気が張りつめていて、緊張が止まらない。
「お願いします、雪女を・・・娘さんを、僕にください!一生かけて幸せにします!」
その言葉に切れたのか、
父さんは士郎を殴ろうと、士郎の胸ぐらをつかんで拳を上げる。
「・・・僕は殴られても仕方がない人間です。僕を殴って気が済むのでしたら、どうぞ殴ってください!」
「上等だテメエ、歯ァ噛み締めろ・・・!!」
「父さん!!」
殴るなんて、冗談じゃない。
父さんが殴ったら歯が折れるだけじゃすまなくなる。
急いで父さんの腕にしがみついて、
なんとか止めようとしたその時。
「・・・噛み締めるのは、幸せだけにしとけよ・・・」
「えっ・・・?」
上げられていた腕が、ゆっくりと下ろされて
掴んでいた胸ぐらをパッ、と離す。
「・・・あぁもう、お前にゃ負けた」
「・・・俺の大切な娘を、お前に託す。」
「正義さん・・・」
「お前に言われるのはくすぐったいけど・・・「お義父さん」でいい・・・」
「ありがとうございます!・・・絶対に一生幸せにします!!」
「・・・そうしてもらわなきゃ困る。いいか!絶対に幸せにしてやれよ!」
「・・・はい!」
俺たちが部屋を出る、少し前。
父さんが、泣きながら笑っていた気がした。
「あーあ・・・とうとう、もらわれていっちまったな」
「・・・こんなに嬉しくて寂しいとは、思わなかった」
「おいおい、泣くなよ正義。・・・・あいつも大人になったんだ。」
「・・・もう、彰人を亡くして泣いていたころの、小さな雪女じゃないんだ」
その言葉に頷く正義の目は、
泣きはらしたのか、赤く染まっていた。
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