吐き気と鏡と


「ぐぁっ・・・!?」

ドサッ!!!!

急に、雪女の体がぐらりと揺れたと思えば、雪女は前のめりに勢いよく倒れた。

「・・・んだよコレ・・・まる、で・・・」
「体の中を・・・掻き回されてる・・・・ような・・・」

ふらふらする頭。
雪女は目を見開いてそれに耐える。

次に、襲ってくる吐き気に頭痛。
口に手を当て、必死にこみ上げるものを押し返した。

「(・・・何かに捕まって、耐えねーと・・・!!)」

雪女はがんばって這い、
ゆっくりと金網に近づき、必死にしがみついた。

「う・・・ぐっ・・・・」

しかし・・・数分も絶えていると、
最初から何事もなかったように、その嘔吐感も、体のふらつきもケロリと治ってしまった。

「っは、はぁ・・・な、なんだったんだよ・・・?」

まだ少し残る頭痛に顔をしかめながら雪女はゆっくりと立ち上がる。

「はあ、今日は散々な日だぜ・・・」

そう呟きながら、パンパンとズボンのほこりを払う。

「・・・トイレ行くか」

そう言うと、雪女は屋上から立ち去った。






「・・・!」


用を済ませて手を洗う最中、
ふと、何気なく目の前の鏡を見ると・・・
雪女は驚いた。

「え・・・誰だよこいつ・・・!?」

ふわふわとした、見慣れた白い髪の毛。
サファイアのような蒼い瞳。
見慣れた、目の下の矢印のようなタトゥー。

「・・・これ、俺・・・なのか?」

いつもの顔なのだが、なぜか違う。
まるで、漫画に出てくるキャラのような・・・
簡単に言ってしまえば、「漫画風の顔」に、雪女はなっていた。

「・・・嘘だろ・・・」

すっ、と鏡に手を差し出す。
するとぐにゃりと鏡面が歪み、次に移ったのはいつも見慣れた、普通の顔。

「今のは・・・幻覚?」

深く考えると、また頭がくらくらしてきた。


「(俺、疲れてるのかな・・・きっとそうだ)」
「(本当は図書館に本を返す予定だったんだけど・・・今日はもう、家に帰って寝よう)」


・・・結局、その日は
雪女は大人しく家に帰ることにした。





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