母娘で思い出話


「・・・ただいま・・・」

ドアを開けて力なく帰りの挨拶をすると、
大量の猫とともに、雪女の母親である美幸が声をかける。

「お帰り雪女、今日は早いな。・・・図書館には寄らなかったのか?」
「・・・母さん、頼むから男口調はもうやめてくれよ。」
「しょうがねぇだろ?昔からのクセなんだからよ・・・」

そう言うと、美幸は困ったように笑って髪をかき上げる。

「母さんがそんなんだから、俺までこんな風に育っちまうんだよ!ちくしょう!」
「・・・まあいいじゃねぇか。顔とよくあってるぜ?」
「俺は女なんだよっ!」

そう言うと、雪女は学生鞄をソファーに置く。

「あれ・・・ところで父さんは?」
「あー、今日も遠征試合だ。帰るのは・・・あさってぐらいだな。」
「・・・そうか。」

そんな会話を交わしつつ、雪女は学ランを脱ぐ。

すると、雪女はさっきのことを思い出し、
紅茶を入れていた美幸に、慌てたようにこう問いた。

「・・・なあ母さん、今の俺の顔・・・どんな風に見える!?」
「な、なんだよ出し抜けに・・・」

驚く美幸に、雪女はさっきのことを話した。


「・・・アハハ!良い冗談だな!!」
「わ、笑い事じゃねえよ!」

そう怒る雪女を見て、美幸は笑いながら雪女を撫でる。

「はは・・・生憎だが、俺には普通に見えるぜ?彰人とそっくりのな。」
「・・・そうか。」
「お前、寝る前に漫画見てたんだろ?たぶん寝ぼけて、現実とごっちゃになったんだよ。」
「・・・それなら・・・いいけどな。」
「と言うか、授業ばっくれて漫画読んでるんじゃねぇよ!」

そう言うと、美幸は雪女の額に
強烈なデコピンをくらわす。

「・・・いってえ!」
「当然のバツだ。・・・あと、気分悪くなったんなら、夕飯食ってさっさと寝ろよ。」
「んー・・・わかったよ母さん。」
「夕飯、そのうちに出来るからよ。それまで少し寝とけ」

トントントン・・・

雪女はソファーの上に置いてあった学生鞄と、同じくソファーの上に脱ぎ捨てた制服を拾って持ち、
だるそうに2階への階段を上っていった。

それを少し心配そうに見た美幸は
ひとつ大きなため息をついた。

「最近、あいつも疲れてるみたいだな・・・」
「よし!・・・片付けて夕飯作るかぁ・・・」


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