頭文字N


尾刈斗中と野生中を倒した俺たちは、
今日も河川敷で練習していた。(つーか俺は、野生中の時のことが凄く気になって、練習に集中できなかったけど。)

「あー・・・うぅ、喉が痛い・・・」
「・・・大丈夫か雪女?声、枯れてるじゃないか。」
「心配してくれてありがとな、風丸。・・・昨日の夜遅く、酔っ払った父さんと母さんにうっかり絡まれてな・・・早く寝たかったからバケツの水かぶせて酔いを醒まさせた後、説教したらこうなったんだよ。」
「お前の家って・・・。」
「大丈夫。いつものことだし。それに、トローチ持ってきてるんだ。ほら、このスポーツバッグの中に―」

そう言って、雪女がスポーツバッグのファスナーを開けると・・・

「「みゃあっ!」」
「「うわぁっ!」」
「どうした!?」
「何が起きたの!?」
「どうした、火月!」
「にゃぁー」
「みぃ」

そこに居たのは・・・
まるで雪のような真っ白な
毛並みをした猫と、
まるでオオカミのような
灰色の毛並みをした猫が。

ちょこーんと可愛らしく座っておりました。

「狽ヤっ、ブリザード!そ、それにウルフまで!?な、何で俺のスポーツバッグにお前らが!?」
「・・・雪女。お前の飼い猫か?」

円堂が、雪女にそう聞いた。

「あ、あぁ。」

「か、可愛い〜!!」
「確かに可愛い・・・!」
「もふもふにゃんこ!」
「可愛いー!」

ブリザードとウルフを見て、
春菜と秋が騒ぎ出す。

「はぁ・・・こいつらたぶん、昨日の夜か今日の朝のとき、バッグに入ってたんだな・・・。今日は寝坊しかけたから引っつかんで出てきたから・・・」
「にょおん?」
「みぃ。」
「たく・・・お前ら、大人しく家に帰れ!・・・この辺お前らの縄張りなんだから帰れるだろ!?」
「「にゃー!にゃにゃー!」」

2匹は思い切り首を横に振った。

「・・・ねぇ、もしかしたらこの子達・・・サッカーを見たいんじゃないかな?」

首を横に振る2匹をみて、秋はそう呟いた。

「あっ・・・確かにありえるな。俺、いつもこいつら抱きかかえて、サッカー見てたから・・・」

雪女がそう言うと、
春菜が嬉しそうにこう言った。

「じゃあ見せてあげたらいいんじゃないでしょうか?」
「そうだな。・・・お前ら、大人しく座ってろよ?退屈になったら家に帰ってもいいからな。」
「「みゃぁ♪」」

まあとにかく、
そんな事があったが、そのまま練習を続けていると、近くに一台の高級車が止まった。

「あ、夏未嬢だ。(・・・そういえばいつもよりギャラリー多いな・・・カメラ持ってる奴もいるし。・・・あ、スパイか。)」

そして。

「「「「「狽、わぁあああああ!!」」」」」

その夏未嬢の乗っている車が、
俺達の目の前に凄い勢いで来た。

「狽、あぶねぇ!!」
「・・・殺す気か!!(つーかグランドに思い切り乗り込んでますけどいいんですか、夏未嬢!!)」

そして、中からでてきたのは理事長の娘、
雷門夏未さんでした。
相変わらず今日も美人ですね、夏未嬢。
何食べたらそんなに美人になれるんですか。
照美と同じで、人類の神秘だよ。

「・・・今日から、河川敷での必殺技の練習を禁止します。」

そう言われると、
円堂達はギャーギャー抗議をしはじめた。

「おい!雪女!さっきの話聞いたか!?」
「そんな大声出すなよ染岡・・・俺、近くにいたから聞いてたぜ。」
「河川敷で必殺技の練習ができないんなら、何処でやれって言うんだよ!!」
「・・・なぁ守。落ち着け。とりあえず落ち着け。」
「雪女!だってよぉ!!!」
「ハァ・・・守!!周りをよく見ろ。」

そう言って俺は、橋の方を指さした。

「狽ヲ!?あれって俺たちのファンじゃないのか?」
「・・・なぁに楽天的なこと言ってんだよ守!あれは他校生のスパイだぜ!?ス・パ・イ!!」
「「「「狽ヲぇー!?」」」

俺が大声でそう言うと、みんな驚いた顔をした。

「・・・てか守、考えろ。・・・たった2勝でファンがつくほうがおかしいだろう、普通。」

・・・まぁファンがいるとしたら、エースストライカーの豪炎寺や、
陸上部で活躍していた風丸、なんでも器用にこなすマックスあたりだろう。
まぁ俺も、自分で言うのは何だが論外ではない。

「(あそこにいる女の子の集団なんか、たぶん俺のファンだろーし。)」


俺・・・女なんだけどな・・・orz


「・・・で、なんでスパイがいるんだ?」
「(ガクッ)・・・あのなぁ守!スパイがいるところで必殺技を出すってことはなぁ・・・」
「あっ、わかりました!つまり、敵にこっちの手の内を見せちゃうってことですね!」
「ん、春菜ちゃん正解。」
「確かに、必殺技を研究されるのは不利だな・・・」
「じゃあ、誰にも見られないところで必殺技の練習をすればいいじゃないか!」
「誰にも見られない場所?そんなところが・・・」

俺はそのとき、見た。
夏未嬢が困った顔で、ため息を吐くのを。

「(あ、嫌な予感しかしない)」

俺のカンは嫌というほどによく当たるんだ。
まぁ・・・悪いことでも、いいことでも当たる、ってのが面倒なところではあるが。

そしてなんだかんだあって・・・。
結局は何処か場所が見つかるまでは必殺技は禁止となり、基礎トレーニングやパス練習のみとなった。

そして練習が終わったあと、
俺はウルフとブリザードを連れて、家に帰った。

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