夢を捨てて


ぱち


「あぁ・・・昔の、夢か・・・」

昔の夢を見た。ずいぶん、昔の夢。

俺には、双子の兄が居た。
俺が小学校に入ったときに、病気で死んでしまったが・・・。


優しい、兄だった。


俺は、目の下のタトゥーのせいで、いつも一人ぼっちだった。
「遊ぼう」と声を掛けてくれる子も居たが、
すぐに親が「あんな怖い子と遊んじゃいけません!」なんて引き離すから、
俺は、いつも一人で遊んでた。

そんな一人の俺を大事にしてくれたのは、
兄ちゃんだけだった。

俺のタトゥーを、「カッコいい」と言ってくれたし、
よく、俺と遊んでくれたし、いじめっ子を倒してくれたこともあった。


俺がいつも身につけているペンダントは、
兄ちゃんがくれたもの。
俺の、5歳のときの誕生日に貰ったものだ。
ペアで、綺麗な柄。
青は兄ちゃんので、
オレンジは俺のって決めて。



俺はその日から、ペンダントを肌身離さず点けるようになった。


俺は、兄ちゃんが死んだ日から、
みんなの前では、女の子を捨てた。



「ずいぶんと、懐かしい夢だったな・・・」

あの日、俺は・・・
ずっと大切に伸ばしていた髪も切って、
男の子になった。


これで、よかったのかなんて。
そんなの、全然わからなくて。


だけど俺は、これでよかったと思ったんだ。



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