兄弟とサッカーボール


・・・正直言って、
別にやることも、行くとこもないから、
昔、よく遊んだ公園に行ってみた。

そう言えば、兄ちゃんが死んでから
ここに遊びに来るのをやめたんだっけか。

「・・・あのブランコも、滑り台もあの時のまま・・・」
「俺だけ、大きくなって・・・」

そう呟いて、雪女が懐かしさに浸っていると・・・


ポン・・・コロコロ・・・


「・・・ん?」

雪女の足元に、
1個の(見た目的に、かなり使い込まれた)サッカーボールが転がってきた。

「・・・ボール?」
「あ、すみませぇーん!」
「おにいちゃーん!そのぼーるとってくれよぉ!」

ボールを持ち上げ、視線を前へ戻すとそこには
小さい男の子2人が笑顔で立っていた。

「(狽ィ兄ちゃん・・・)あ・・・あぁ、いいぜ。」
「ありがとう!」
「ありがとな!」

どうやらサッカーボールの持ち主は、
満面の笑顔で笑うこの男の子達のようだ。

似てるし、兄弟かな・・・?

「(あ、いいこと考えた)なあ君達、お兄ちゃんがいいもの見せてやるよ。」
「いいもの?」
「うん。・・・だからそのボール、少し貸してくれないか?」
「・・・うん、いいよ!」

雪女はその男の子からボールを借りると、器用にリフティングをしだした。

「・・・ほっ、よっ、はっ・・・」
「わぁ、おにいちゃんうまいな!」
「ほんとだ!すげぇじょうず!」
「それっ!」

そしてボールを蹴って、高く上げ・・・・


ポスッ


自分の頭の上にうまくのせた。

「「す、すごい!」」



「(よかった、喜んでくれてるみたいだ♪)」
「・・・すごいよ!おにいちゃん、さっかーうまいんだね!」
「そうか?それほどじゃねーけどな・・・(これくらいしか、俺に取り柄ないしな・・・)」

そう言って笑うと、つり眉の男の子が
目をキラキラとさせてこっちを見る。

「なあなあ!!・・・おれたちも、おにいちゃんみたいにうまくなれるか?」
「ああ、なれるよ。しっかり練習すればな。」
「・・・そっかー!ぼくがんばるね!」
「なぁ、きょうからがんばろーぜ!」
「うんっ!」

にこにこと笑うたれ眉の男の子は
もうあれだ、完全に天使だ。
(言っておくが俺にショタコンの気はないぞ)

「ははっ、楽しみだな。」

そう言って、雪女は何気なしに腕時計を見る。
すると、時計の短い針が一番上を向いていた。

「(・・・おっと、もう12時だ・・・。)頑張れよ!・・・じゃあな。」
「ありがとう、おにいちゃん!」
「じゃーね!」

そう言うと、
雪女は兄弟に背を向け、歩き出した。


「あっ・・・(そういえば、あの2人・・・(小さかったころの士郎とアツヤに似てたような・・・)」


歩いている最中、そんな考えが頭に浮かぶ。


「(・・・うん、気のせいだ!こんなところ(3次元)に居るわけないしなぁ・・・)」


立ち止まって数秒考えたのち、
そう考えをまとめ、雪女はまた歩き出した。

- 7 -

*前次#


ページ:





[ top ]

[ 表紙に戻る ]



ALICE+