敗北の味


意気込んでいったはいいものの、やっぱりエイリアは強い。

開始早々、1点を取られてしまう。
ジェミニストームの猛攻は収まらず、前半だけで13点も取られてしまった。

豪炎寺が1度ファイアトルネードを撃ったが、外してしまった。

「(そうか、豪炎寺は・・・・!)」

俺は飛び出したくなるのを必死で押さえた。
飛び出したらいけない。これは守たちを鍛えるために、
瞳子さんが考えたことなんだ。

駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ。

俺は必死に動き出しそうな足を押さえた。


そして休憩。

鬼道がジェミニストームの攻撃のリズムに気づいたと聞かされた。

「すげーぜ鬼道!」
「さすがお前は天才ゲームメーカーだな!!」
「よし、後半は点を取っていくぞ!」
「甘いわね」

瞳子さんがそう言ったが、俺の視線は瞳子さんじゃなくて、豪炎寺に向かっていた。

そして、俺は豪炎寺に近づいて、
そっと耳打ちした。

「(豪炎寺、お前脅されてるだろ)」
「(なっ・・・何故それを)」
「(バーロ、お前の仕草でわかるっつの)」
「(・・・あぁ、夕香のことで・・・)」
「(お前、前に守に言った言葉、忘れたのかよ?)」
「(・・・言葉?)」
「(“ホイッスルが鳴ったら、試合に集中しろ”・・・ってな。まぁ、お前が考えるように、すればいいさ・・・)」

そう言うと俺は、守たちのもとに駆け寄った。

「雪女・・・」

そして後半。
瞳子さんは、後半はディフェンスラインをあげて、全員攻撃を指示した。

もちろん皆は不満をもらす。
そんなことをすれば、守が大変なことになるからだ。

だが瞳子さんは、風丸たちの言葉に耳を貸さず、去っていった。

そしてまた、試合が始まった。

だが俺は試合に目もくれず、瞳子さんの隣にすっと座った。

「・・・何か用?」
「監督は鍛えようとしているんですよね、守たちを。俺を抜いたのもそうしようと。」
「・・・ご名答よ。よくわかったわね」
「俺は全てを知っているので。監督がこの先何を見て、何を知っているのかも」
「そうかしら?」
「ええ。俺は嘘はつかない性格なんでね。」
「あなたは・・・」
「おっと失礼。俺はベンチに戻らなくては」

そう言うと、俺は秋ちゃんたちのいるベンチに戻った。

「(あの子は、何を知っているのかしら)」


後半も猛攻が続く。
ついには32点目を取られてしまった!

守は倒れ、俺は守に駆け寄った。

「円堂くん!」
「守!!」

気がつけば、後ろにいたはずのジェミニストームは消えていた。

そして・・・

「ごめんよみんな・・・あたしが一緒に戦おうなんて言い出したせいで・・・」
「あんなこと言わなかったら、こんなことにはならなかったんだ・・・」
「・・・気にすんなよ!」
「Σきゃっ!?」

くよくよしている塔子を見ていられなかったので、
俺は塔子の肩に腕を回した。

「塔子のせいじゃねぇよ。」
「そうだ、俺達も力がなかっただけだ・・・」
「円堂、大丈夫かな・・・」
「俺、ちょっと手伝ってくる。」
「あ・・・ああ。」

俺はイナズマキャラバンに乗り込んだ。


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