出会いのためのキックオフ


俺が戻ると、そこには染岡や守達がいた。

「雪女!」
「ところで・・・どうして豪炎寺は行っちまったんだよ・・・」
「1人で、ゲームセットかよ・・・」
「違う」
「守・・・?」
「ゲームセットじゃない!出会いのためのキックオフだ!」

守は笑顔でそう言ったけど、
やっぱりみんなは豪炎寺の抜けたショックが強かったようだ。

すると、瞳子さんのケータイがなった。
そして瞳子さんは、淡々とこう言った。


「北海道、白恋中のエースストライカー、吹雪士郎をチームに引き入れ、戦力アップを図れ」

「(吹雪・・・士郎・・・!?)」


胸のちくちくがどんどん酷くなる。

会えるのか?ずっと好きだったあいつに?

初めて守に会えると知ったときより、ドキドキもちくちくも酷い。

なぜなら、兄ちゃんを失って荒れていた俺を救ってくれたのは、

他でもないあいつなのだから。


俺は、母さん達を心配させないようにいつも明るく振舞っていた。

だけど、心の奥底では兄ちゃんが恋しかった。

そのとき好きになったのがイナイレだ。
特に、一番好きになったのが

吹雪士郎だった。

俺と同じ、双子の片割れを失ったところ
だけど明るく振舞えるところ

俺はどんどん惹かれていったんだ。



そのとき、俺の胸がちくりと痛んだ。



「雪女くん、雪女くんってば」
「・・・ん、あ、秋ちゃん・・・」
「どうしたの?ボーっとしちゃって。」
「俺・・・いや、なんでもない。」
「変なの。」

どうやら俺は、ずっとボーっとしていたらしい。

「(あいつに・・・会える・・・)」

胸がまだちくちく、ずきずきする。

「(でも、会えたからって・・・恋仲になれるわけないよな・・・)」

俺みたいな女、あいつは嫌いだと思う。
紺子ちゃんとか、珠香ちゃんとか、
女の子らしい子が好きに決まってる・・・

青色のミサンガに一粒、涙が落ちた。

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