やさしさをひとつ


・・・そして。
みんながすやすや眠っている中、
俺は眼鏡をかけて、本を読んでいた。

俺の好きな絵本・・・「星の王子様」を。

《ぼくは、赤ちゃんを抱くように王子さまを抱きしめた。》
《だけど王子さまの体は、どこか深い淵にでも落ちていって》
《引き止めるにも引き止められないような気がしました・・・》

(サン=テグジュペリ「星の王子さま」より)

ぼんやりと読んでいたそのとき、塔子の携帯が鳴った。
・・・と思えば。

「えっ!?パパが見つかった!?」
「「「「「「えっ?」」」」」」

「よかったじゃない、お父さんが見つかって!」
「ようやく会えますね!」
「・・・東京には戻らないよ。」
「えっ?」
「あんな奴らは絶対許せない!・・・だから、皆と一緒にサッカーで戦う!」
「円堂、雪女、一緒に戦おう!」
「「ああ!」」
「よし、地上一のサッカーチームになろうぜ!」
「俺も一緒に戦うぜ」

俺は手を差し出した。
その上に守の手、その上に塔子の手が乗せられた。

「絶対勝つぞ!」
「「「おーーーっ!!」」」

「あ、あはは・・・」

秋ちゃんたちは苦笑いをしておりました。


そして次の朝。

「塔子、起きろ。」
「起きて。」
「ん・・・あっ!」
「「お父さんに会わせてやってくれ」って、守が。」
「・・・わかったよ、円堂」

そうして塔子は、自分のお父さんのもとへ駆けて行った。

「・・・塔子は、本当は優しい子なんだよ」
「そうだね、私はわかるよ。雪女くんも本当は優しいってこと」
「・・・そうか?」
「そうだよ。」
「「あはは・・・」」

俺と秋ちゃんは向かい合って笑った。

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