胸の痛みと吹雪


そして次の朝。
俺達はホイッスルで目覚めた。

「ん・・・」
「え?」
「おっ!」

「起床!!出発の時間よ!」

そして俺達の乗ったイナズマキャラバンは、
北海道へ・・・!!

・・・と、その前に。
あいつに会ったときのために、特別に俺のお気に入りの猫柄の水筒に、
あっついお茶を入れさせてもらった。

これで準備は万全!
・・・のはず。


「ひゃっほー!ついに北海道か!」
「久しぶりだな、北海道。」
「え?雪女、来た事あるのか?」
「あぁ。俺の兄ちゃん病気がちでな。父さんも母さんも忙しかったころ、ここに1年預けられたんだ。」
「へぇー」
「おかげさまで寒いのも大分、平気になった。」
「すげえな!」
「でも寒いから、俺はひざ掛けを掛ける」
「あらら・・・」

だって寒いし!!

俺は猫柄のひざ掛けを掛けて、ガタブルしながら座ってました、まる。

すると、急にキャラバンが止まった!

「ど、どうしたんですか!?」
「・・・人だ。」
「人ォ!?」

その言葉を聞いた瞬間、
俺の胸のちくちくはMAXになった。

「(あいつ、だ。)」


「ちょっと行って来る!」
「守!俺も行く!」
「あぁ」

そしてキャラバンの外に出た。

胸がちくちくを通り越してズキズキする。

俺があっちの世界で恋焦がれた
吹雪士郎本人が目の前に居る。
俺は痛い胸を押さえて、平常心を保って

声を、掛けた。

「な、何してるんだ?こんなところで」
「乗れよ!」
「あっ、あああ、ありが、ありがっとう・・・・」

そして。

「とりあえず俺のひざ掛け貸してやるよ。凍傷にでもなったら困るし。」
「あと、体を温めねーと。俺ので悪いけどこれ。」



俺はお気に入りのひざ掛けと、熱いお茶の入った水筒を手渡した。

「あ、ありがとう。」
「(顔赤いな・・・熱でも出てきたのか?)」
「う、うぅ・・・」
「大丈夫か?まだ寒いのか?」
「あ、だ、大丈夫・・・」

吹雪は、俺と話すとなぜか顔が赤くなる。
・・・どうしてだろーな?

「ところで坊主。どこまで行くんだ?」
「・・・蹴り上げられたボールみたいに、ただ真っ直ぐに・・・」
「いいな、その言い方!蹴り上げられたボールみたいに、真っ直ぐ・・・か!」
「確かにいいな。詩的だし」
「なぁ、サッカーやるの?」
「・・・うん、好きなんだ!」
「俺も、サッカー大好きだよ!」
「俺も好きだぜ!」

そう言って笑いあっていると・・・

ドーーーン!!

「Σうわぁっ!?」
「くそっ、雪だまりにタイヤを取られた!・・・ちょっと見てくるわ」
「「駄目だ/よ/ぜ」」

雪女と吹雪は声を揃えて言った。

「?」
「「山おやじが来る/ぜ」」
「・・・?」

すると、

ドーン!と大きな音がしたかと思えば、
キャラバンが揺れ始めた。

「山おやじだ!!」

そこに居たのは、なんとクマ・・・!

しばらくすさまじい揺れが続いたが、すぐに止んだ。
それにともない、吹雪も消えていた。

そしてまた大きく揺れたかと思えば、キャラバンのドアが開いて、
そこには吹雪がサッカーボールを抱えて立っていた。

「もう出発しても大丈夫ですよ!」

「まさか・・・」
「まさかでヤンス・・・」
「だよね・・・」
「あ、ああ・・・」

「おお、動く!よしいくぞー!」

そしてキャラバンはまた走り始めた。

「ねぇ」
「ん?」
「・・・君、さっき僕と一緒のこと言ったよね。」
「あ、あぁ。俺ここで1年育ったことがあるから。」
「そっか・・・」

そこで会話は途切れた。

・・・一体なんなんだ?


そして。

「本当に、ここでいいのか?」
「うん。すぐそこだから。」
「じゃあな。」
「ありがとね。」

そして、俺達と吹雪は別れた。

俺以外、また会うとは露知れず・・・



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