きっと諦めなきゃいけないのに
そして。
みんなもスノーボードをやってみることにした。
もちろん俺も完全装備で挑む。
「何年ぶりだろうな・・・こんなことするの。」
すると、染岡と吹雪がまた喧嘩をしだす。
もっぱら、仕掛けているのは染岡だが。
しかし・・・
「なんだよ、一ノ瀬まで!」
「見てみろよ、円堂はやる気まんまんだぜ?」
「お、俺・・・スノボって初めてなんだ!」
「・・・お前、スノボ初めてなのか?」
「あぁ!」
「一度もやったこと無いのか?」
「あぁ!」
「(・・・先が思いやられるな)」
そしてみんな滑り始めた。
・・・約二名、すでに転んでますが。
「〜♪」
雪女は軽々と滑っていく。
ジャンプをしたり、回転したりした。
「体が覚えてたんだな・・・」
あちこちでは、雪玉にぶつかったり転んだり。
うまく行っているのは雪女を入れて数人だけだった。
「初心者にはこの特訓はっ・・・きつかったかもな〜」
雪女は軽々と雪玉を避けていく。
「雪女くん、凄く上手いね!」
「吹雪!」
気がつくと、そばで吹雪が滑っていた。
雪女が止まると、吹雪も止まった。
「俺の叔母さん、元スノボのチャンピオンでな。預けられていた間、厳しく教えられたんだ」
「へぇ・・・」
「スノボだけじゃない。スケート、ボブスレー、スキー・・・ウィンタースポーツと名の付くものは全部教えられたよ」
「凄いね!」
「でも・・・あんなことがあって・・・」
「あんな、こと・・・?」
「あっ、気にしないでくれ!ただの独り言だから!」
そして、雪女はまた滑り始めた。
吹雪はその背中を見て、ぽそりと何か呟いた。
そして夜。
「はぁ〜いてててて・・・風になるのって大変だな・・・」
「しっかりしなよ。雪女を見習ったら?すっごくスイスイ行ってたし!」
「そうか?あれでも下手なほうだぜ?」
「謙遜すんなよ!」
「確かに、雪女くんは筋がいいよ!」
「そうかな〜・・・」
「俺、腹減ったっス〜・・・」
「頑張れ壁山!晩飯はすぐそこだ!」
そして晩御飯。
が、量が少ないのでみんな怒ってました、まる。
「(俺はダイエットしてたから平気だけど、育ち盛りのお前らにはきついよな〜)」
雪女はそう思って苦笑いした。
そして・・・みんなが出て行ったあと、
俺は教室で本を読んでいた。
暗いところで本を読むと目が悪くなるんだぞ!
「・・・」
「雪女くん。」
「え?」
急に声をかけられて、驚いた雪女の目の前には、吹雪が。
「吹雪、何か用か?」
「何読んでるの?」
「サン=テグジュペリの「星の王子さま」って本と、「まどうしこねこ」って本。」
「猫、好きなの?」
「あぁ、好きだぜ。猫は可愛いし。」
「そっか。だからひざ掛けとかが猫柄なんだ・・・」
「あぁ。俺の家にもたくさん猫がいてな。」
「いいなぁ。僕も猫好きだから、見てみたいな。」
「今度写真見せてやるよ。」
「わぁっ、ありがとう!」
「ところで吹雪、お前さぁ・・・」
「ん、何?」
「男の子みたいな女の子って、好きか?」
「男の子みたいな、女の子?」
「あぁ。口調も男の子みたいな女の子。」
「・・・どうだろう、わかんない。」
吹雪は首を傾げた。
「そうか」
「だけど・・・」
「だけど?」
「好きになるのに、男の子っぽいも女の子っぽいも関係ないと思う。・・・そう、僕みたいにさ」
「え?最後が聞き取れなかった。なんて言ったんだ?」
「ううん、なんでもない。じゃあ、また」
「あ、あぁ・・・」
そして吹雪は、教室から出て行った。
残された雪女は、頬を染めてこう呟いた。
「諦めなきゃいけないのに、さらに好きになっちまったじゃねーか・・・ばか・・・」
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