訓練の、はずだった

「すっげーーー!!!USJかよ!」


生徒たちの目の前には、広々とした空間が広がっていた。
そこには様々な事故や災害を模した演習場がいくつも並び、さながらテーマパークのような雰囲気を漂わせていた。


13号
「水難事故、土砂災害、火事·····etc.」
「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も·····」
「ウソ(U)の災害(S)や事故ルーム(J)!」


「「「「(USJだった!!)」」」」


出久
「スペースヒーロー「13号」だ!」
「災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

お茶子
「わー!私好きなの!13号!」

琉音
「ちゃーちゃんも?私も好きー!」


興奮しざわざわし始めた生徒を相澤が「始めるぞ、静かにしろ」とたしなめると、
13号は訓練開始の挨拶をする。


13号
「·····えーでは、始める前にお小言を一つ二つ·····三つ·····四つ·····」

「「「「「(増えてる·····)」」」」」

13号
「皆さんご存じだとは思いますが、僕の“個性”は“ブラックホール”」
「どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

出久
「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!」

13号
「ええ·····しかし、簡単に人を殺せる力です」
「みんなの中にもそういう“個性”がいるでしょう」


———13号のその言葉に。
生徒たちは、思わず息を呑んだ。


13号
「超人社会は“個性”の使用を資格制にし厳しく規制することで、一見成り立っているように見えます。」
「しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないでください。」

「·····相澤さんの体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り」
「オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを体験したかと思います。」

「——君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない」
「救けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいな」

「·····以上!ご静聴ありがとうございました」


13号の話が終わった瞬間、生徒たちからわっと拍手が巻き起こる。


お茶子
「ステキー!」

飯田
「ブラボー!ブラーボ―!!」

陽太
「かっこいいー!!さすがプロは違うよなぁ!!」


そんな彼らを見ながら、相澤は「そんじゃあ、まずは——」と話を始めようとした。


———その、瞬間だった。

瞬きにも満たないような一瞬——ざわめきが、すっと遠のいた。

音だけじゃなく、空気が重くなるような、そんな感覚。

その違和感に陽太と陽二の獣耳がぴくん、と揺れ、
悟見もまた、蛇めいた感覚器で何かを捉えたのか、一瞬だけ体を強張らせた。


「「·····?」」


誰より先に異変を察知した双子が、そろって視線を“違和感”の方へ向ける。


———何もなかったはずの、噴水前の空間。
まるで夜の闇のような、奥行きがわからない底知れぬ黒色が周辺の光を吸って、輪郭のない煙のように揺れている。


陽太
「あそこに·····何か、いる·····?」


陽太のそのつぶやきを拾い、相澤が眉を寄せながら視線をその先に向けた。


相澤
「おい、そこの双子。何を見て——」


その瞬間、“黒色”は溢れるようにじわりと広がり———そこから、青白い人の手のようなものが覗いた。


———それを見た瞬間、相澤は反射的に「ひとかたまりになってそこから動くな!」と叫ぶ。


出久
「·····えっ?」

相澤
「13号!!生徒を守れ!!」


相澤の怒号が、USJの空気を一変させたと同時に、
その“黒色”はさらに広がり———中から何人もの人間が現れた。


切島
「何だアリャ!?また入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン?」


相澤
「動くな、あれは———敵だ!!」



生徒たちが状況を飲み込めない中、そのうちの一人·····黒霧がゆっくりと口を開く。


黒霧
「13号に·····イレイザーヘッドですか·····」
「先日“頂いた”教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが·····」

相澤
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」


その会話のあと、すぐに弔も話し始めた。



「どこだよ·····せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ·····」
「オールマイト·····平和の象徴·····いないなんて·····」


弔はそう言うと、何かを思いついたような声色で———どこにも視線を合わせずこう言った。



「·····子供を殺せば、来るのかな?」










切島
「敵!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

出久
「ほ、本物·····?」

八百万
「先生、侵入者用センサーは!?」

13号
「もちろん、ありますが·····!」


そんな焦燥の中、轟と火花は冷静に目の前の状況を整理する。


火花
「現れたのはここだけか、学校全体か分からないけれど·····」
「何にせよセンサーが反応しないなら·····向こうにそういう事ができる“個性保持者”がいるって事よね」


「あぁ·····ここは校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割·····」
「バカだがアホじゃねえ、これは·····何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」


相澤
「13号、避難開始!学校に連絡試せ!」
「センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の“個性”が妨害している可能性もある」
「上鳴!波路卦!お前たちも“個性”で連絡試せ!」

上鳴
「っス!」

火花
「はい!」


出久
「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら“個性”を消すって言っても·····!」
「イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面戦闘は·····」


出久のその言葉に、相澤はこう返す。


相澤
「一芸じゃヒーローは務まらん」
「13号、任せたぞ」


·····そう言うと、相澤は敵の前に単身で勢いよく飛び出した。
流石はプロヒーロー、寄せ集めの敵など相手にならんと言わんばかりに個性と捕縛布を使い少しずつ敵を無力化していく。



「·····嫌だな、プロヒーロー——“有象無象”じゃ歯が立たない」


つまらなそうにそう呟き———ガリガリ、と首を掻く弔。
纒はそれを見ると、掻く手をそっと止めた。
そして、彼の気を引くためか「ねぇ、弔」と生徒達を指差して、視線をそこに向けさせる。



「せっかくだから、生徒を何人か“禍神ちゃん”にして持って帰ってもいいでしょ?」
「どうせ殺すなら、そのままじゃ可哀想だもの。ちゃんと連れて帰って、ずっとそばに置いてあげたいわ」


「·····別に、いいんじゃねえの」


弔が面倒そうにそう言うと、纒は嬉しそうな声色で「やった!」と喜んだ。
そしてワクワクしたような顔で、まるでおもちゃを選ぶかのように———どの子にしようかな、と視線が動き、指を滑らせる。



「ねぇ、なら私·····あの子が欲しいわ!女の子が欲しいと思ってたの!」
「——あの、可愛いピンク色の髪の女の子!!」



そう言うと、纒は生徒のうちの一人を指差す。




「·····あの子なら、とっても可愛い禍神ちゃんになれるわ」



———それは、琉音だった。



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