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「それじゃー杏里さんリハはいりまーす」
「はーい」
今日は某アニメのイベント。
トークコーナーや朗読での通しも終え、イベントでキャラクターが歌うライブのリハーサルが始まった。
まず最初に、このアニメでの主人公を演じている榊原が入って行く。
「榊原さんは歌うまいからなー後が大変ですよねー」
「なに言ってんの」
榊原の後輩梶がそう言うと、はにかみながら榊原は梶の頭をなでた。
あの二人は端から見ると凄く兄弟の様に見えるから和む。
「どうかした?」
「ん?いやいや何でも」
俺と同期の榊原は男前な性格として後輩に人気だ。声も俺の声より全然低い声だせるしね。
乙女ゲームのキャラクターとかこういう普通のアニメで榊原が男のキャラクターを演じていると、あぁ、俺ももっと声が低かったらなーとかってよく思う。
「てっちゃん、なしたさっきから」
「いやいや、なんでもないよ!!」
いつの間にかリハーサルを終えた榊原が戻って来た。
全然頭に入ってこなかったんだけど、やっぱり上手かったんだろーなーと思う。
さっきから梶が「榊原さんすごいっす歌超うまいっす!!」って言ってテンションあがってるから。
「なんでそんな歌うまいの?」
「しらんがな」
「え、即答!?」
デビュー時期が一緒だった俺と榊原はなんだかんだでよく同じアニメに出演する事が多く、今もまた同じアニメに出演しているし、俺と同期の女性声優は中々いないから気付いたら仲良くなってた。
「梶ー」
「はい!!」
「お手」
「はい!!」
いや、それこそなんだよ!?なんで今お手を梶にさせた!?そしてそれを嬉々とした顔でする梶も梶だわ!!
「下野君ー!!」
「どうしたのかっきー」
「梶が榊原にお手をした!!」
「ごめん、どういう状況?」
なぜ伝わらない!?流石日本、色んな人がまだまだいるんだな。
「バラン、梶君になんていうことしてるのさ」
「あ、シモさん」
「下野な!!最後まで言おうな!!」
「お前だけだよ俺の事シモさんっていうの」と、下野君ははぁーと深い溜め息をついて梶君の頭をぽんと叩いた。
「なにすんですか下野さんー!!」
「梶君も普通にお手すんじゃないの!!」
と、次は榊原でなく下野君とじゃれあう梶君。可愛らしい弟だなーと、ほのぼのとした目でその二人を見ていると、榊原がどっかに行った事に気付く。
あれ、と。同期はあいつしか居ないから一体どこに行ったのかと周りを見渡すと、他の後輩の女性声優に囲まれていた。うはーどこに行っても男前なやつだなーと内心尊敬。
結構俺と一緒にいる時でもしっかり者のイメージがあるから、やっぱり後輩の目には頼れる人と見られるんだろうか?
今まで一回も可愛らしい声とかも聞いた事ないし(こういうと失礼かな?)、大体のキャラクターは俺のキャラより寧ろ俺よりかっこいい二枚目なキャラだし。
.....なんか、負けてる?
「どうかした?かっきーバランばっか見つめて」
「うぇ!?ちげーよ下野君!!」
「榊原さんには彼氏がいるんだからダメですよー」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ何で見てたの?」
「いや、後輩に人気だなーって思って」
「男前女性声優でしょ、バランは」
「そうですよ!!めっちゃかっこいいっす!!」
「だから、なんかいつもあんな感じなのかなーって思って」
「あーそうかもねー。でもあいつの彼氏の中村君の前では全然違うよ」
と、含み笑いでいう下野君。あれか、彼氏の前では違う態度をとるというあれか!!
やっぱりあいつも女なんだなーとしみじみ。
「杉田君とかもバランは中村の前では全然違うってよく言ってるし」
「やっぱりそうなんですね!!そういう所もいいっす!!」
「そういや前甲斐田さんも言ってたよーな..」
ていうか、梶は一体なんなんだ?
「てか梶は榊原の事が好きなの?」
「榊原さんの事好きっすよ!!」
はぁ!?
「お前自分で榊原には彼氏いるって言ってたじゃん!!」
「なにちゃっかり狙ってんだよ!!」
「狙ってなんかいないっすよ!!」
「あいつら付き合う前からすげー仲良かったからあんま期待しない方がいいぞー」
「一人の後輩として榊原さんが好きなだけっすよ!!」
どうだかなーと、下野君と俺の声が重なる。実は近くにライバルがいた、とかそういうオチ?
中村さんも大変だ、と。後輩に囲まれている榊原を見ながらそう思うのは俺だけではなく下野君も。
必死に狙っているわけじゃない!!と抗議をしてくる梶を無視しながら、俺たちは顔を見合わせた。