第壱話

「こんにちは、雛森副隊長」
「…美合ちゃん」
「こんな薄暗い牢屋に入れられて…可哀想に。出して差し上げましょうか?」
「…ううん、大丈夫」
生きる希望を失ったような顔で笑われても、貴女はこれからなのに。
何か希望を与えようと思ったけれど、近付いてくる霊圧に譲ることにする。
「お前は…」
「お久し振りです、日番谷隊長」
「雛森に会ったのか」
「隊長がいない今、私が支えないと」
「随分と余裕があるんだな」
「私は雛森副隊長とは違いますから」
不愉快そうな様子を隠す気はないらしく、睨みつけるように去っていく小さな隊長さんを見送る。
あの人は、可哀想な人。
大事な人を救いたくても救えないのだから。

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