第参話

黒崎一護が目覚めたのは数時間後のことだった。
「おはようございます」
「…あんたは…ここは…?」
「地下水路です。彼が詳しいようで」
「あ、まだ起き上がっちゃ駄目ですよ!」
「後は任せましたよ山田七席」
呼び止める二人の声を無視して地上へ向かう。
先程雛森桃が脱獄したと連絡が来た。
そろそろ合流した方がいいだろうか。
一旦隊舎へ戻ろうかと思っていたところへ、嫌な再会を果たす。
「お疲れ様です、日番谷隊長」
「てめえ…!雛森に何を吹き込んだ!」
「はあ」
「あいつは脱獄しないだろうと踏んで何も拘束しなかった」
「お迎えに行くんですね」
怒りで我を忘れているのか、どんどん上がる霊圧にため息をつくとそれは煽りになったらしい。
今にも抜刀しそうな彼をどう宥めようか考えているところへ静止の言葉が。
「何をしているのですか」
「卯ノ花…」
「今はそのようなことをしている場合ではないでしょう」
舌打ちをしつつも、納得したのか瞬歩で去る。
まだまだ子どもだこと。
「晒科三席、貴女もですよ。孤独こそ危険です」
わかっているのか、わかっていないのか、よくわからない助言を残し踵を返した彼女は用心した方がいいのかもしれない。

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