第四話

「美合ちゃん、本当にこの先に藍染隊長がいるの?」
「ええ、貴女に会いたがっていますよ」
頬を赤く染めた彼女は少しだけ足を早めた。
こんなにも洗脳が上手くいったのは彼の狡猾さと私の力添えの賜物だ。
「雛森副隊長は藍染隊長を好いているのですね」
「えっ?そ、そんな…!」
「畏れ多いこと…」としぼむ声で続ける様子からして相当な惚れこみ具合である。
「藍染隊長は死者として処理されています。つまりもう存在し得ない存在。そんな人がわざわざ呼び出し会いたがる…どういう意味かわかりますよね?」
「ええっ…!…あ、でも…美合ちゃんも…美合ちゃんは、私より先に…」
「…」
とんだ面倒くさい女を手駒にしたものだ!
会話をするのも億劫で、一人考え出した彼女を放置することにした。
どうせこの茶番ももうすぐ終わる。
しばらく歩いたところで突然歩を止め、必然的に私も止まった。
「あのね、美合ちゃん!私決めたの」
「決めた?」
「藍染隊長に会ったら、この想いきっと伝えるわ」
思わず小さく笑ってしまった私に首を傾げた貴女は、きっと夢から覚めることはないのでしょうね。

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