第五話

「鮮血に氷は綺麗なんですね」
「話をそらしても無駄だよ。私は黒崎一護を殺せと言ったはずだ」
「だって彼は蕾じゃありませんか。つんでしまうのは心が痛みます」
「ありもしないくせに面白い比喩を使うね」
無言で見つめ、舌を出した。
「まあ、ええじゃありませんの。あの程度じゃなあんの心配もいらへんよ」
私を後ろから抱きすくめ頭に顎を乗せた市丸ギンは楽しそうに笑う。
瞬間、強く引かれ藍染惣右介の腕の中に移動させられ今度は残念そうに笑った。
何を考えているのかわからないところは昔から変わらない。
「彼のことはしばらく様子見しよう」
「何をそんなに恐れているのです」
「後ろには奴が控えている」
顔を思い出そうと記憶を辿るが、なにせ長らく会っていないのだ。
ぼんやりとした輪郭しか浮かばない。
「今回の旅禍の件も奴が糸を引いていると考えられます」
「過去の自分の後始末をただの人間にやらせるなんて、酷いお人やなあ」
そう言って笑った彼の目は少し曇っていた。

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