第七話

穏やかな朝だ、と直感で感じる。
小鳥の鳴き声も陽射しもないけれど比較的上々な気分で目が覚めた。
隣を見てももぬけの殻。
必要最低限のものしか置いていないこの部屋の机の上に食事が置かれているのに気付き、痛む腰を擦りながらシーツを身にまとい近付くと置き手紙が。
「準備が出来たら大ホールへ…起こしてくれてもいいのに」
自分勝手なくせに変なところで自由を与えるあの人に苦笑が漏れた。
「ウルキオラ」
呼べばすぐ来る彼は床に目をやったまま跪く。
あ、これちょっと主っぽい、なんて。
「はい」
「シャワーを浴びてくるから、これを片して服を用意して」
「新たなお食事は」
「今日はいらないわ」
「すぐに」
ぐちゃぐちゃになったベットは出かけている間に綺麗にされているだろう。
赤の他人にこれを見られるのはどうなのだろうという道徳的な考えと、主のこういった一面を見た配下の気分はどうなのだろうという同情的な考えに当初は躊躇われたが今となっては慣れたものだ。
熱を失い特有の気だるさに包まれる体を洗い流し出た時には彼はもういなかった。
「話し相手になってもらおうと思ったのに」
ここは少し退屈だ。

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