第八話

「随分なお寝坊姫だ」
「起きたのはそんな遅くないのよ。ただ…」
途中で口を噤む。
敢えて言うべきものでもないし、どうせ知っているのだろうし。
少し高い位置から見下ろす藍染惣右介は微笑を絶やさない。
「私も従属官が欲しいわ」
「前はいらないと言っていたじゃないか」
「今日みたいなことがあると面倒だし、退屈なんだもの」
ここへ来る途中に気絶させた女の破面達は今頃砂漠に転がっているだろう。
道を遮らぬよう外に放り出した私に感謝してほしいわ。
従属官がいればそもそも私が相手をすることはないに違いない。
「そうね…ネル・トゥ、とか」
視界の端でノイトラ・ジルガがわかりやすく反応した。
「可愛い子。別に貴方を責める気はないのよ」
退屈そうに立っていた彼の頬を撫でると拒否はしないものの舌打ちをされる。
しないんじゃなくて、出来ないんだけれども。
「別にいいでしょう?」
「構わないよ。好きにするといい」
この会議が終わったらすぐ探しに行こう。
満足した私は階段を登り彼の座る椅子の肘置きに腰をかけた。

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