まさかこんなに早く事件に巻き込まれるとは。さすがコナンの世界といったところか。恐ろしい。でもいくらなんでも早すぎるし本当にやめてほしいと思う。なんて現実逃避しつつこっそり周りを窺ってみる。状況としては強盗犯たちに一ヵ所に集められ携帯電話を回収されているところである。周りには同い年くらいの子からお年寄りまで多くの人たちがいて、みんな怯えてうつむいている。そうだよね⋯、こんな状況みんな怖いに決まっている。たとえそれが事件が日常茶飯事の世界の人間であっても。彼らも普通に生きている人間なんだ。私はまだ、こんな状況になっても実感が湧かない。どこか画面の向こうの出来事のように、他人事のように感じるがこれもただの現実逃避なのかもしれない。
ふと後ろのほうに目をやると外人の女の人が目に入った。

(あれ、あの人どこかで…)
知り合い…ではない気がする。どこで見たんだろう。学校とかどっかのお店とか?…いや、違う。もっと、よく知ってる感じの⋯。なんて考えながらふと視線を横にずらす。その人の隣には黒い帽子を目深にかぶった男の人がいた。俯いてた男が顔をあげて不意にこっちを向き、目が合った。

「……!」

瞬間私は思わず目を見開き、身体に衝撃が走った。帽子に、右目の火傷…。どこかで見た光景だとデジャヴを感じ、何とかそれを思い出そうと頭をフル回転させる。銀行強盗に火傷をした男。まさか。いやでも状況から考えてほぼ、いや間違いなく、記憶の通りであればこれはあの事件であの外人はジョディ先生。さっき見た子どもはやっぱりコナンくんたちで。そして目が合った火傷の男は赤井秀一、に変装している安室透のはず。安室さんが出ている回はしっかりチェックしていたのでたぶん間違いないと思う。
確認のためもう一度こっそり後ろを窺い見る。帽子の男、もとい安室さんは他の人によって目と口を塞がれているところだ。見間違いでは、ない。

「あの、すいません。テープ貼りたいんですけど…」
「あ、すいません…」
女性に声をかけられ、目と口、手をテープで塞がれながらさっきのことを考える。

びっくりした…。まさかこんな形で会うなんて。思いっきり目があったし怪しまれたかな⋯。変に思われてなければいいけど。
突然のことで思いきり顔を背けてしまったし、おそらく表情にも出てしまった。少しくらいなら大丈夫だと思いたいが、なにせ相手はあのトリプルフェイスだ。少しのことでも怪しまれる可能性は十分ある。
でもこれがあのエピソードだとわかったので事件の方はコナンくんたちに任せておけば十中八九大丈夫だろう。よかった。少し心が落ち着いた。

その後事件は私の知っている通りの展開で、彼らの手によって解決したようだった。解放されて外に出ると日は落ちきって辺りはすっかり暗くなっていた。
せっかく色々見ようと思ってきたのになあ。彼らを直接見られたのは少し嬉しかったけど⋯。それ以上のハプニングがありすぎだ。
時間を見ようと上げた手が白く、冷たくなっていることに気づく。頭では割と落ち着いていたつもりだったけど、今まで平和に暮らしてきた自分にとってはだいぶショックだったんだろうなあ。冷えた手を温めるように握りしめる。なにを今更怖くなっているのだ、情けない⋯。

「おねえさん、大丈夫?」

下の方から聞きなれた声がして、声の方に視線を向ける。そこにはやっぱりよく知った顔、江戸川コナンがいた。突然の邂逅に驚きつつ、心配させないように言葉を紡ぐ。

「大丈夫だよ、ちょっとびっくりしちゃっただけ。君こそ大丈夫だった?」
「うん!僕は隠れてたから大丈夫だったよ!」
「そっか。すごいね。強いんだね。」
そう言って得意そうに笑うコナン君の笑顔を見て少し、心が和らいだ。コナン君かわいい。
「声かけてくれてありがとう。お姉さんは大丈夫だから、もう遅い時間だし君も早く帰りなね。」
そういうと彼は元気に頷き、「おねえさんも気を付けて帰ってね、ばいばーい!」と手を振りながら仲間たちのところへ帰っていった。

彼は一人で怖がっている私を見かねて声をかけてくれたのだろう。なんて優しい子なんだろう。おかげで気分も大分落ち着いたし、いつの間にか手の冷たさも無くなっていた。

もう遅いし今日は帰ろう。計画は潰れたし事件には巻き込まれるし、散々な一日だったけど、悪いことばかりじゃなかったな。ポアロにはまた今度行けばいい。


それにしてもコナン君めちゃめちゃかわいかったな⋯⋯。




邂逅


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