子供たちと歩くこと10分ほど、私は見覚えのある建物、阿笠邸の前にいた。作品の中でも思ってたけど実際に見てみると普通に大きいし立派な家だな…。そして隣にある家をちらっと見上げる。これが、工藤新一の家。うわ、すごい豪邸…。流石だわ、ポアロのときもそうだったけど見れてめっちゃ感動…。心の中でそっと拝みつつ、子どもたちに声をかける。
「じゃあ博士の家についたみたいだし私は帰るね」
「え!帰っちゃうの??せっかくだし名前おねえさんも一緒に行こうよ!」
「そうですよ!博士の家おもしろい発明品いっぱいあるんですよ!」
「え、お誘いは嬉しいけど急に知らない人来たら困らないかな」
いいのかな…とコナンくんをちらっと見ると視線に気づいた彼が「博士そういうの気にしないし大丈夫だと思うよ」と言うので「じゃあお言葉にあまえて…」とお邪魔することにした。
「博士ー来ましたよー!」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します…」
慣れたように家に入っていく子どもたちの後ろに続いて家の中に足を踏み入れる。わあ、中も広い…これで地下室もあるんだもんね、すごいなあ…。人の家に失礼だと思いつつも周りをキョロキョロしてしまう。廊下を抜けた先に広間があり、そこに博士と哀ちゃんがいるのが見える。こちらに気づいた博士が私を見て少し不思議そうにしている。
「やあみんないらっしゃい。よく来たのう。ところで…そちらの方は?」
「名前さんです!さっき友達になったんですよ!」
「コナンくんが蹴っ飛ばしたボールを拾ってもらってポアロまで案内するお礼にって一緒にごはん食べてきたの!」
「はじめまして、名字名前です。今歩美ちゃんが言ってくれた通りでせっかくならと誘ってくれたので来ちゃいました。突然すいません。」
「なるほど、そうじゃったか。気にせんでええぞ。わしは阿笠博士といってここで色々と発明をしておる。コナンくんとは遠い親戚での、よく子供たちの面倒もみてるんじゃ。」
よろしくの、そう言って笑う博士によろしくお願いしますと返す。
その後阿笠博士の誘いで今までの発明品を見せてもらっていた。
「へぇ〜!すごい、すごいですね、阿笠さん!」
探偵バッジとか腕時計ライトとか見たことあるものから知らないものまで、すごいすごいという私に気を良くしたのか次から次へたくさんの発明品を見せてくれる。というか作品の中だと博士ちょっと抜けてるというかアホっぽい部分が目立ってるけどコナンくんが名探偵たる所以を作ってる人だし普通に天才だよね。
「あれ、これはなんですか??」
ふと目についたのは薄紫色の可愛らしい花の模様がついたバレッタだった。
「あぁ、それは発信機と通信機がついていてな、子どもたちがもっている探偵団バッジの形を変えて作ってみたものじゃ。可愛らしいじゃろう?」
まあ子どもたちの好みには合わなかったみたいじゃが…と少し寂しそうに言った。
「もし気に入ったなら持っていくかい?誰も使っとらんし」
「え!いいんですか?それじゃあ…お言葉に甘えて頂きます」
早速髪につけてみる。手持ちの鏡で見てみるといい感じでにやける。ふふ、かわいい。それにちょっと探偵団の仲間になったみたいで嬉しい。
「ねえ、ちょっと江戸川くん。彼女何者?大丈夫なんでしょうね?」
「何者もなにもさっき言ってた通りで普通の一般人だよ。そんな怪しまなくて大丈夫だって。おめーも怪しい感じしなかったろ?」
「それはそうだけど…。でも誰彼構わず近づかないでちょっとは気をつけなさいよ」
「わあってるよ」
ぴりりり、ぴりりり
「おい、博士電話なってんぞ」
「おぉ、すまんすまん」
「はい、阿笠じゃ。はい、はい、……わかりました、それでは。」
「博士なんかあったか?」
少し困った様子で電話を切った阿笠さんに対してコナンくんが問いかける。
「あぁ、いや…発明の依頼を頼まれてた人が都合が悪くなったから日付を変えてほしいと言われたんじゃが、それが今週の日曜日で…」
「あれ、日曜日ってみんなで遊園地行くって言ってた日じゃ」
「あ!そうですよ、園子さんがチケット取ってくれて博士が連れて行ってくれるって言ってたじゃないですか!」
「えー!どうすんだよ博士!」
「しょうがないから連れて行ってくれる人を今から誰か探すしかないかのう…」
「探すったっておっちゃんはその日は依頼あるって言ってたしなあ…他に誰か…」
「うーん…」
会話を聞きつけた子どもたちと博士が困って考え込んでいる。どうしよう、よければ私空いてるし、でもでしゃばりすぎじゃないか、いやでもせっかくならみんなの力になりたい。
「あの…」
後ろからそっと声をかけるとみんなが振り向く。一斉に注がれる視線に緊張するけど意を決して言葉を紡ぐ。
「すいません、えっと遊園地連れて行く人探してるんですよね?私その日空いてるし車はあるので、私一緒に行きましょうか?」
もしよければなんですけど…と言うと突然の申し出にみんな一瞬ぽかんとした後、
「「「え、いいの(んですか)!?」」」とキラキラした目をして詰め寄ってくる。圧にたじろぎながら「うん、特に予定はないし…」と言うと「わーい!!」と喜ぶ子供たちと裏腹に博士が「助かるが…ほんとにいいのか?」と尋ねる。
「はい。どうせ家で暇してるだけだし、それでみんなに喜んでもらえるなら私も嬉しいので」
「そうかそうか。それなら有難くお願いするわい。あぁちなみに当日はコナンくんと一緒に住んでいる高校生の毛利蘭くんとその友達の鈴木園子くん、あとは訳あって今ここの隣の家に住んでいる沖矢昴くんがもう一台車を出してくれることになってるからよろしくの」
また詳しいことは連絡するわい、とのことだったのでその場で博士とコナンくん、歩美ちゃん、光彦くん、元太くんと連絡先を交換して結構良い時間になっていたのでそのまま家をあとにした。
暗くなった道を一人で歩き始めたところで隣の家、もとい工藤新一宅が目に入りその前で立ち止まる。さっきは沖矢さんが住んでるって言ってたけど明かりはついていないみたい。留守なのかな、こんなに立派な家なのに家主がほとんどいないなんてもったいない、なんて思いつつぼーっと見上げる。
「あの、何かうちに御用ですか?」
「あ、いえ!」
びっくりして振り向くとそこには怪訝そうにこちらを見る沖矢昴がいた。
「あ…、すいません素敵な家だったのでつい見てしまいました。怪しかったですよね、ごめんなさい。」
「なるほど、そうでしたか。こちらこそ失礼しました。立派な家ですもんね、私もここの家のものではないので気持ちはわかりますよ。」
「ありがとうございます、あの…違ったらすいません、沖矢昴さんですか?」
「えぇ、そうですが…どちら様で?」
「私名字名前といいまして、今日阿笠さんのお宅にお邪魔していたんですが、そこで今週の日曜日の遊園地に阿笠さんが行けなくなったので代わりに私が行くことになったんです。それで沖矢さんも一緒に行かれると聞きまして…」
「なるほど。先程阿笠博士からは連絡もらいましたがあなたがそうでしたか。では改めて沖矢昴といいます。こんなところでなんですがよろしくお願いしますね。」
「初対面なのに急にすいません。こちらこそよろしくお願いします。」
お互い軽く自己紹介をして、そっと沖矢さんの顔を窺う。これが本当は赤井さんとか全く信じられない。有希子さんの変装も赤井さんの演技もすごいな。
その後一応と連絡先を交換し、それではまたと別れ帰路へついた。
今日は色々あって疲れたな。でもコナンくんたちと友達になれたし連絡先もいっぱい増えて嬉しい。さて次は日曜日、何を着ていこうか。