君の顔を渋くさせる
竹谷八左ヱ門と岡本都佑の行方が分からない
その知らせを受けて三郎達は目の前が真っ暗になった
眼が開いたと思ったらある人は
そうか、と言ってしょげるし
ある人は「きっと帰ってくるさ!」
と言って己を励まそうとし、
またある人は何処かに行こうとする
またある人は・・・
「いや、待て兵助。此処は待ってみるぞ」
ニヤリとある人は笑い作戦を練った
チチと音を立てて鳥が目の前を過ぎていく
その音と翼の音に目が覚めた八左ヱ門は
今迄何があったのか記憶を探り出した後
直ぐにパートナーの生死を確認する
丁度近くに倒れる様に寝ていたので
とりあえず安心かと思いながら
一応起こしてみる
八左「おい、都佑、起きろ」
『ん・・私の枕をとるなー』
八左「とらねぇってか枕ねーってばww」
『・・・これだから私は同室以外と組みたくなかったんだ』
寝ぼけていたのが可愛かったので
ぷっと噴き出しつつも堪えながら笑っていると
都佑はむすっとした顔で起き上って来た
おはようと挨拶をした後直ぐにこれからの事を考える
八左「どうする?これから」
『どうするって言ってもなぁ・・ここら辺に生物委員会の狼は?』
八左「恐らくこれない事はないだろうが
他の狼や野犬も付いて来そうだからな。」
『まずワシや近くの野良を
飼いならした方が早いかもしれないな』
八左「嗚呼、そうかもしれないな」
『近くに家がありそうだ。
降りる前に旅人の格好になるか』
八左「あ、ああ・・・」
『男女の方がいいだろう。
私が女役をしてやる。』
そうニヤリと笑った都佑に「任せた」とも言えず
俺はそのままこくりと頷く事しか出来なかった
『よし、これ位なら女に見えなくもないだろう』
八左「お前本当に三郎のいとこか何かか??」
マスクを変えて髪の毛も黒色の
ふわりとした髪の毛に替えた都佑は
まさしく女そのものだった
ぱっちりした眼で笑うと何処か胸がきゅんときて
八左は首をブンブンと振りながら「あいつは男あいつは男」
と念じながら後ろを歩く事にした
『(みろ、村だ)』
「おや?お前さんらどうしたんだい?
そんなボロボロで・・」
それなりに栄えた村の処に出た私達は八左と
切り傷を沢山作っていてそのまま近くのおばさんに
見つかって手当を受けていた
「そう、旅人さんか」
『はい。私と八は昔からの幼馴染で
私がちょっとそこら辺を歩いて居たら
行方不明になってしまって、
そのまま八が見つけてくれたんですが
方角が分からなくなってそのまま旅してるんです』
「あれまぁ、そらまた凄いわねぇー。
女の子が森の中行ったら怖いもんねー」
『あはは・・・(これは本当の女を褒められているのか
男として貶されているのを受け止めた方がいいのか)』
まぁどちらにしても私は女であることは変わりないので
前者なのだろうが・・・
八「本当に助かりました。
薬草とかの知識もそれなりにあるのですが
何せ夜に狼に見つかり動いていたもので」
「あらま!それまた災難だったわねー!
此処の村で良ければ是非泊まって行って!
あ、そうそう2人の着物は私の処に無いから
お隣さんに借りてもらいなさい」
そう言っておばさんは私達を押して隣の方に
向かわせてくれる。うん、ありがとう。
そう思いながら隣の家から出て来た夫婦に目が留まる
眼がどんどん開いて行くのが分かる
嗚呼、何でこんな運命なのだろうか?
「あら?その子は・・・」
『!?』
「この子らが噂のお転婆娘さんの都佑ちゃんと
その保護者みたいな幼馴染の八君よ」
八「初めまして、竹谷八左ヱ門と言います!
すいませんが着物お借りします」
和「嗚呼ご丁寧にどうも。
着物と言わず部屋も借りて行きなさい。
私達なら別に構わないから、なぁ優」
優「ええ」
『(そんな事がありえるのか?否)』
ありえたから眼を疑っているのだろう
何せ目の前に居る方は私のーー
八「こら都佑!何ぼさっとしてんだ。挨拶位しろよ!」
『へ!?あ、ああ!!ご、ごめんなさい!
私の名前は、岡本都佑っていいます!
不束者ですが宜しくお願いします!!』
優「ふふっ、それは殿方に言う言葉ですよ。
都佑さん、八左ヱ門さん。実家の様にゆっくり
していって下さいね。」
そう言って彼女は微笑んでそのまま中に消えていった
それに八左は入っていく
嗚呼、酷い。酷すぎる。
胸が痛い、痛いよーーーー
ギュッと胸の辺りを手で握って眼を少し瞑って息を吐く
大丈夫、これは夢なんだ。これは夢だ。
少しだけ、儚い夢を堪能すればいいんだ。
そう想わせて眼を開いた
その眼は濁った眼で、でも澄んだ様に見せかけて
私はそのまま中に入って笑って接待を受けていた
和「じゃあ畑仕事にいってくる」
優「ええ、いってらっしゃい」
一刻後
そう八を連れて高橋和(かず)こと
和さんは出て行った
それに高橋優(ゆう)こと
優さんは私を連れてそのまま家の中でやる事に手を付け始めた
優「都佑さん、私都佑って呼んでもいいかしら?」
『え!?あ、はい』
優しい声色に私はドキマギしてしまうが、それが分かったのか
クスクスと笑われた。ううん、申し訳ないというか悔しいというか・・
優「そう固くならないで。母と思って接して下さいな」
『う、頑張ります・・
(嗚呼、そんな事言われたら情を重ねてしまう)』
只でさえ顔も声も一致している人なのに
私の大好きだった愛しい貴方が目の前にいる
転生前のお母さん
貴方が今、この戦のある世で嬉しそうに笑って
離縁したはずの父と優しい時間を過ごしている
情が移らない筈がない
だって私は
『(だって私は貴方方を
狂ってしまう程愛しているのだから)』
目をつぶり私はその言葉を喉の奥に押し込めて
心の中にしまい込んだ
八左ヱ門side
畑仲間か知らないが此処の人は作物に特にこだわるらしく
色んな人が田畑の近くで話しながら働いている
それは俺も例外ではなく、只でさえ騙しているだけで辛い身。
忍として仕方がないとはいえ治療してもらった上に
衣食住をくれての恩を返さないわけがない
それなりに田畑を耕して額に浮かんできた汗を左腕で拭っていた時だった
ふと都佑が井戸の前で優さんと話しているのをみかけた
素朴な着物に着替えていた都佑はぱっちりとした眼で
学園で見た事もない優しい笑顔を放っていた
嬉しそうな彼・・否、今は彼女になっていた奴は
本当に心の底から嬉しそうに笑っている様に見える
そうやって笑えるんだね
(何故その笑顔を他人(学園以外)に見せるんだ?)
(幸せ過ぎて私は狂ってしまいそう)
(その顔をさせる人はお前の)
(その笑顔が私を更に笑顔にさせるの)
少女が過去に囚われすぎて今居る夫婦に過去の両親を重ねて生きる主人公
本当にそれは失礼なのだけれども、それでも叶わなかった筈の幸せが
今目の前でみれるのは、彼に成りすました彼女にとって
幸福感に満たされる以外なかった
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