その場に居たのは誰だろう?
あの人たちは、私を知っている
『…だれ?』
目を開いた時には広い世界は見えなかった
視界に入ったのは、誰でもない真選組副長
土方が傍に居てくれていた
+++
『そ、うです、か…』
土方さんがその後私が意識を取り戻したと知って
直ぐにナースコールをかけ
つい先ほど居た沖田さんや近藤さん達を呼び戻してくれた
丸二日眠っていたらしいのだが
正直頭がフル回転したままだったので
二日分の意識を向ける余裕が少々足りない
身体は至って正常だった
柏木さんが見てくれたらしく
正直この人以外の病院だったら
私今生きていない思いだっただろう。
柏木「何か夢でもみたのかい?」
『ゆ、め…です、か…いいえ』
夢は見ていない。
あれは現実だ。
そう感じた私の身体は異変を察知し
胃から出て来そうになった物を
直ぐに手で封じた
ムカムカする感じに嫌と言える余裕は無く
今日は帰ろうと近藤達は席を立った
『あ、の…ごめ、なさ』
沖田「近藤さん…どうやら
言いたいことがあるらしいでさぁ」
立ち止まった沖田に近藤も気付き振り向いた
その顔は何処か悲しそうな、いや
罪悪感を感じている顔付きの様な気がした
『…っ、皆、無事、ですか?』
近藤「嗚呼、未夜ちゃんのお蔭で救われたよ」
『そっ、かぁ、良かっ』
土方「羽黒!!」
急に意識を失った未夜に土方が声をかける
嬉しそうに微笑んだまま眠っていた様で
気が緩んだ途端に眠くなったのだろうと
柏木は話した
柏木「よっぽど、お前さん達が
心配じゃったんじゃろうなぁ…
可愛らしい顔で寝よって」
スヤスヤと土方の腕の中で眠る未夜
眉を開けて嬉しそうにしている彼女に
沖田は己の浅はかな情に唇を噛んだ
***
未夜が次に目を醒ました時には土方達すらも居ない
午前零時を過ぎたあたりだった
むくりと起き上がると痛みも何も無く
不思議に感じていた
『…嗚呼』
想い出した。
昨日の様に振り返ることの出来る言葉
名前、住所、全て思い出した。
漢字がどうもあやふやだったのだが
どうやら合っていた様で良かった…のか?
忘れていたとは言え良く合っていたな。
そう感じながらも「いやいや其処じゃないでしょ」
と自分でツッコミを入れた
『でも県名じゃて私や…高知ちゃうて
えーと此処で言うと何処になるんじゃ?嗚呼?』
土佐、だった気がする。
そういえば今は江戸だったよな?
土佐の江戸と言えば坂本龍馬、真選組
ん?
『ああああ!思い出したぁああ!!
土方十四郎ってアレやん!歳三じゃねぇえ!?』
都佑として生きていた頃の記憶上の歴史であれば
新撰組の文字で土方歳三だったのだ。副長が。
こっちでは真選組土方十四郎になっている
上にこんな江戸なんて状態ではなかった。
『え?じゃあこの記憶…何処の?』
訳のわからない歴史と県名
そして自分の出身地から色んな情報に頭がパンクしそうだ
『よーしまずは整理しよう。
私の名前は、岡本都佑だ、確か高知…土佐の出で
死ぬ迄其処に居たんじゃなかったかな?』
父と母は昔から仲が悪かった。
いやもうお前ら何で結婚して子を産んだってレベルだ
名前は…良いです。太郎と次郎なんて名前で。
いやいやいや、太郎は良いけど次郎は男の名前だって
せめて花子にしてやろうよ何処のBLだよ何処の。
『私こんなにテンションおかしかったのかぁ…
マジか良く此れで八方美人してきたな…いや逆に
このテンションでも話せるから八方美人なのか?嗚呼?』
腕を組んだり身体を動かして忙しない
自分に少々苛立ちを…憶えない
『んんー?あれ?腹立つってどうやってたっけ?』
眉を寄せてみるが一切そんな素振りも無い。
おっとこれは不味いぞー?
そう危機的な感情が芽生える
キャラとして立てようとすりゃ何とかなるが
確実に後々ばれる事は明白な事だ。
まぁ確かに真選組として動くならキレキレの
キャラは欲しい処ではあるが。
『こーんな感情で動いたら確実に
死ぬよねぇーって私死なないのか。』
そう、つい数日前にやってのけたのだが
腹を斬っても実は私、死なないのだ。
其処ら辺はいまだに謎っていうか
私が思い出したのはあくまでも「岡本都佑」としての記憶であって
羽黒未夜の過去は一切触れていない。
『…前世の記憶って思った方がもうなんかいい気がしてきた』
そうだ、そうしよう。
そういって私は適当に切り良くして
そのまま二度寝ならぬ三度寝を決めた
+++
まる2日後に未夜は意識を取り戻し
その時の時間はもう何十年も前に別れた
両親の顔に前世の記憶が全て思い出された後だった
土方達はとりあえず目を覚ました事に安堵していると
未夜が涙を流し、土方達に傷がないことに涙を流す
その優しい情に近藤はありがとう。と言葉を返すと
未夜は心配していたのか布団から飛び起きて
そのまま近藤の胸の中に鈍い音を立たせて突っ込んだ
未夜の心情では「父の様なぬくもりはこの人だったのか」
と此処で気絶した時のことを思い出した後
2日間観ていた余りにも辛く何処か嬉しかった夢を思い出して
「味方を殺した事の辛さ、前世の親の顔を思い出した事」
の2つが入り交じった情に抑えきれずただ
「よかった」と言って力を使わずに胸を叩き
胸元から少し離れて背を丸め涙をボロボロと流す