空騙る声

(寄せては返す幻のように)




最近夢を観ていた夢を観なくなった

『(何処か気になる)』
でもどうでも良くてその事に囚われない

だがこの場合囚われているのだろう。
だってふとした瞬間にも思い出してしまうのだから


小さい少女が、その肉親であろう両親と
両手を繋ぎ、優しい鼻歌を歌っている夢を


『(忘れてはならない狼森小籠
お前はそちら側の人間ではない。)』

優しくて何よりも感情のままに動く方じゃない
私は非情で残酷に冷静に剣士として前を向くしかない
それ以外に道は無いのだ

無い筈なのに

『(最近特に優しい気がする)』

まるで非情ではないと言う様に
彼女は、私を何だと思っていたのだろう
気になっていたと思ったら消えてしまって

私の心をどれだけ擽ったら済むのだろう


…いや現状居なくなったのだから気が済んだのかもしれない



『(パトロール中に考え事をしているのも楽しいものだ)』

最近自分の考えに纏まりがある様で無くてとても興味深くなった
此れは好奇心旺盛と言った方が良いのか
単にナルシスト方面に走っているのか

…嫌断じてそれは無い
だって彼女は


『ーーん?』

町中のガヤガヤした音が無くなった
それに顔を上げ空を観る

うーん空はとても青々として…違う違う
目の前を観て、此れは現実かと疑った


『…此れ、は』

ケタケタと笑う少女とそれを追いかける男性
それを遠くから女性が観ていた


「あの人良く嗚呼やって遊ぶんですよ?大人げなくてすいません」

『へ!?あ、嗚呼いえ…良いと思います』

急に話しかけられて驚き声が裏返ったが
そんな事を気にせず女性は寧ろ謝って来た

良いと思う、というのは本音だ
だって男性、否彼女からすればパパなのだろう
パパと一緒にいるのはとても楽しい事だと思う

それ以上に家族と一緒に過ごす事は
かけがえのない時間だろう


「あの人知り合いが近くに来ると一瞬で子供と遊ぶのを止めるんです」

『‥恥ずかしいから?』

「何時もの様にしているのを見せびらかしても良いと思うんですけどね!」

そう言って女性はゆっくりと身体をおろした
それと同時に私も腰を下ろす
上から声をかけるのは申し訳ないと思ったからだ


「あの子、時々凄く寂しそうにするの」

あんなに楽しそうなのに?
そう一瞬思ったが、何処か涙を沢山
流している幼い頃の自分を思い出した

この現象をフラッシュバックと言うのだろうか
記憶の幼い頃と今生きている少女を照らし合わせる

「なのに日向や私たちが居ると、
どんな事でも我慢して笑顔で笑ってくれるの
…本当はそんな事をしてほしくないのに」

嗚呼、この母親は子供が我慢している事も
全て家族として受け入れたいと願っているのだろう
それでも少女は受け入れない

それは、単に

『単に、貴方とご主人と一緒に二人の笑顔が、観たい、からでは』

幼い頃の自分が、そうしたかったであろう。事に
全く一緒ではないだろうが、強いて私が考え付くとすれば

『貴方とご主人の沢山笑い嬉しく喜ぶ姿が
何より楽しくて何より気分が晴れるから
だから哀しくてもどんな気持ちでも笑うのでは、ないでしょうか』

「…どうして?其処まで分かるの」

ー…!!

え?と問いかけた時、日向が雲で隠れた程にしては
少々暗すぎたのを不安に感じた

「どうして?」

『どうして、と言われても‥私個人で感じた想いですし』

それに此処が現実ですら分からないのだ
貴方だって夢の可能性もある
だから此れは、感情のままに告げた迄だ

女性の気持ちではなく、少女が感じた気持ちが
何となく他人事では感じれなかったから。

『それに』

「それに?」

あの子は、とてもとても、優しい子だと、知っているから。

ーー…狼森!

その瞬間、暗闇は晴れる
それと同時に段々声が聞こえだした



「小籠!!おい!しっかりしろ!」


ハッ!と目を開け意識が戻った時は、全く違う場所
屯所に戻っており、部屋の中で横になっていた
私は今迄何をしていたのだろうか

目を開けた後土方さんが泣きそうな顔で
「っの馬鹿」と布団に頭を置いた


「小籠ちゃん、今何時か分かるかい?」

『えっと…午後二時頃だと』

「それからグッと進んで夜の8時でぃ」

刀を持ったまま外から入って来た沖田が時間を知らせる
嘘!と意外にも大きな声が出た、然もかなり女らしい。


『あれ?私てっきりパトロールして』

「そっから急に気を失ったんで、急いで屯所に戻って
ついさっき迄爺がいたでぃ」

「彷徨ってるって聞いて急いで仕事上げた」


ーごめんな、今日もかまえれねぇ


嗚呼、何処か遠くで父の声が聞こえた
頭を撫でる、優しい男の手

その手をどれ程待っていただろう

その身体にどれ程甘えたかっただろう


ぽろぽろと、気付けば涙を流していた

「っ!?おい」

『あれおかしいな、涙なんて流さなくても』

ぽたぽた、ポタポタ
涙は止まる気配がない
それ処か記憶の中の父からの声が続いて聞こえだした


ーねぇ明日もお仕事?
ー嗚呼そうだよ、ごめんな
ーううん、沢山お仕事して。またあそぼ。

その時の私は笑って居ただろうか。

ー嗚呼やくそくだ。

嗚呼破られていた
破られる約束をするんじゃなかった。

「あわわ小籠ちゃん!?何処か痛ー」

「小籠、沢山泣きたい時には泣け」

ー泣きたい時に沢山泣きなさい。パパがずっと居るよ。

貴方がソレを言うのか…!
貴方をどれだけ待っていたか

朝も昼も夜も
ずっと外から帰って来るのを待ちわびて
沢山良い事やる事やって
褒められると信じていたのに

なのに貴方は帰って来ても疲れていて
とてもじゃないけど褒められる姿ではなくて
出来ない事を言われて

本当に見たかった姿ではなくて


『…一緒に、居てくれなかっ』


どうして?どうして?私が嫌い?違う。分かっている。

それでも考えてしまうのだ
一緒に居ないのが、とても苦しくて
それは少女も同じだったのだろう

こんな苦しみを、少女も感じていたのなら
それはとてもじゃないけど、あんまりな事だ。

「おっと」

『…っく』

土方に抱き着いて来た小籠に
大きく息を吸った後そっと背中を撫でてやると
泣き声を押し殺したまま涙を流しつつ
愚痴らしき声を上げる

『…っと、いたかっ、でも、そうじゃなくて』


本当に優しくて本当に楽しかった
だから少しでも少しでも軽くしたかった
でも此れは夢だから

もう目の前には居ないのだから





自分の本心の性格と上辺の今世の自分が入交り
何が本当か分からなくなる時、ふと夢を見なくなる。
すると精神的におかしくなり血を欲する様になり
殺さなくていい人を術を使い無心で殺す事が多くなる。

これはいけないと都佑はすぐに自分を抑えようとするが
どれを抑えていいのか分からないし
そもそも自分が誰なのか分からなくなりパニックになる
近くに居た沖田がなんとか都佑パニック状態の都佑を抑え
手刀で気絶させ、部屋に移す。都佑