都佑が前世の事を話したその3日後
その日に実はチョーカーの素材は全て集まったので
血を抜くと言う話で3日間病院に籠る
(と言う名の入院する)事になった
本格的な物も作れそうなら創りたい
と感じ、涙はあるのかとその日の夜
まだ神楽ちゃんたちが居る頃に押入れから
大事な箱から何十にも丸めていた物を出した
『ほら、此れ位なら多分作れるよね?』
それは直径10p程の細長い瓶
中に透明な何かが入っている音がする
5つ位あり、その量に柏木は驚く余り
反応に時間がかかった
柏木「あ…嗚呼、それ位じゃったら、
この量、並外れたもんじゃないぞ?一体何処で何時」
『土方さん達に会う前から…かな?
涙は地面に落とすなって母上に言われてたから
それでなるべくこの瓶に入れる様にしてたの』
それはまだ、私が「この世界を認めなかった話」
今はもう、要らない物になりそうだったので
未来に繋げられるのであれば活用したかったのもあった。
『あの時は…縋ってたから
大好きで止まないパパとママの存在に』
なのに二人は此処に居ない。
そう言い聞かせた時に沢山泣いた。
現実を受け入れなくて、泣いた。
愛おしい感情と悲しい感情が混じった涙。
それでも良ければ、使って欲しい。
そう手渡した都佑は何処か寂しそうだった
縋っていたのではない
「今も」縋っているのだ
その現実に都佑の顔が歪む
『もう、手を振らなきゃいけないのよ。
私は大人になるんだから、もう、大丈夫なの。』
そう言い聞かせて、涙が出ない。
それは殆ど受け入れている証拠で
自身の感情に、何とも言えない気持ちが纏った
柏木は優しい声で諭す
大丈夫じゃなければ、何なのだと。
柏木「お前さんの気持ちが力になるんじゃ。
良く、今まで頑張ったな。こんな量を取るのに
3倍はかかる筈じゃろうて…」
新八「さっ、3倍…?」
『ううん。頑張らないと二人とも笑わないから。
此れ位で誰かが救われる命があるのなら
私は差し出すつもりで居るんだから、さ?』
こてんと左に傾けて笑う都佑
それに少々仕方がないと言う様な
呆れたため息を吐いた柏木は自身の
白衣の中に瓶を大切に仕舞った
『それでは皆さん、また』
お辞儀をして土方さんと近藤さんの隣で
桂や銀さん達に別れを告げる
今回位は多めに見てほしいと私の言葉で
渋った真選組だが、「今回だけ」との言葉で許してくれた
まぁ次会ったら捕まえるけどな。
なんて言葉を吐いた土方に桂は鼻で笑い
そのまま何処かに帰って行った
勿論この後病院に入り
大丈夫かと焦っていた近藤さんに加えて
煙草の量が少し増えながらも脂汗をかきながら
動揺していた土方さんを見ていたら脂汗がこっちも移ってしまった
それに沖田が「3日後はさらっとしてるでさぁ」
なんて言うから、その「さらっと」はもしや
土方さんの汗処か存在すらない意味じゃね?
と口から洩れていた言葉にご本人が
軽く沖田さんの名前を叫んだ
その後に医者からお叱りを受けた事は
私からは何も言わないでおこう
+++
土方「よぉ、元気か?」
『土方さん!鉄君!山崎さんも!』
鉄「元気そうで何よりです!」
それから3日間かなり難儀をしたのだが
何とか血も採り一時期瀕死になりかけた
勿論その情報は真選組内に伝わり
急いで飛んできた話をたった今聞いた
『マジか…まぁ体重少ないしなぁ!』
と明るく答えた私に安心したのか
大きなため息を3人同時に吐いた後
医者が部屋に入って来た
柏木「やっと作れたぞ…ほれ
此れがお前さんのチョーカーじゃ」
縦幅はリボン程で1.5pの黒い布
真ん中には逆三角で線の部分が変化する仕組みになっていた
力は三段階上げることが出来る。
そのやり方は最初興奮をしやすい事から
やればいいと言われたので、
とりあえず屯所に帰り服を着替える事にした
山崎「車つけてますんで、どうぞ」
『えー?良いってばー歩けるのにー。』
そう渋る私に少々ふらついているのを見逃さなかった
土方が「ちょっと失礼」と言ってそのまま空中に
浮かんだのを感じ取った
『ん?んーん?』
私宙に浮かんでる…いや、正確には掴まれてる?
頭の思考が固まった状態は身体も同じらしく
「うおっ、軽ぃな。飯食ってたのか?」
との声がかなり近くで聞こえる
…ん?近い?ってか黒いのがちか
『ぁぁああああ////ひひひひひっ!』
姫抱きのままパトカーに乗せられた
(と言うか入られた)私は
漸く状況を理解し、動こうと思ったのだが
頭の前(土方さんの隣)には沖田が既に乗っていた
固まっていた思考が急にフル回転し始め
力を使おうとした私に思いっきり土方さんが
抱きしめてきた事で私の頭の中が真っ白になり
そのまま術が消える
沖田「おお…本当に効果あるんですねぃ」
口をパクパクしている事しかしていない私に
声を押し殺しながら「だなっ」と笑う土方さん
いやいやいや、速く私を下ろせ私の心臓死ぬ。
ん?あれ?コレって・・私を逃がすつもり無くね?
よくよく考えたら私の精神力が試されているのでは?
土方さんの事大ファンですけど。好きだけど?
いや確かにこの至近距離では好きじゃなくても
大体の男性なら動揺して固まるけど?
「本当に効果ある」
その言葉に私はつい考えている言葉が漏れていたのか
沖田が説明をしてくれた
沖田「都佑は姫抱きされりゃ固まって
何も出来ねぇって爺さんが言ってたんでぃ」
あ、あ、あ、
あのじじぃいいい何教えてんだぁああ!!////
ふざけてる顔が思い浮かぶから殺したくなる…
そう百面相している私に髪の毛をいじったり
頬をつんつんしてくる沖田
むむむ、むず痒いです…
姫抱きと言うかイマイチ女性として接される事に
適応力が無いだけなのですが
それがまさかこんな弱みになるとは…
固まっていた身体は諦めて力を抜いた
ぎゅっとしてくれた土方さんの顔を覗き見し
目が合うと何も言わずに私は隊服に顔をうずめた
土方「くくっ、お前本当に弱いんだな?」
『(言うな馬鹿ぁ///今必死に顔の熱を飛ばす事で
手一杯なんだよこんちくしょう。良い身体しやがって)』
引き締まっているのが服の上からでも分かる
嗚呼待って下さい私の理性と言うかプライドよ。
かっこいいとか言ったら相手の思うつぼだよ…
余りの恥ずかしさに、私は沖田の服の裾を掴んだ
少々胸が土方さんの胸に当たるが、んなこたぁ関係ねぇ
気付いた土方さんの顔が少々赤くなり動揺する
それに私は何処か勝った気分になり
そのまま沖田さんが驚いた顔に微笑んだ
にかっと、と言った表現が正しいのだろう
歯を見せて笑う私に沖田さんは小さなため息をついた後
私の頭をぐりぐりと撫でてくれた
嬉しい
その一言だった。
+++
『よーし!お前ら集合したな?』
屯所に付いた後直ぐに姫抱きから離れた都佑
もう少々抱いていても良かったな
なんて思っていた土方は彼女の顔の変化に
くすりと笑っていた
それに都佑は顔を赤らめながらも
「後で道場に全員集合!刀持って来いよ!!」
なんて言葉を吐き捨てダッシュで部屋に帰っていく
従う事にしますか。と出て来た近藤さんに
隊士を集め、それから5分後に道場に入った頃
仁王立ちしたまま腕組んだ都佑が笑って言い放った
沖田「…なんでぃその恰好は」
全員が見て思った事を沖田が代弁する
肩から二の腕が見えるショルダーカットトップス
色は黒に近い紺色だろうか?
手の甲から手首付近にも同じ様な色の布が付けられ
胸元は軽く開き、上から着ているパーカーを
袖を通した状態のまま下に卸しているので
服がだらりと腰の元で降りていた
短パンに素足で上のふわりとした形と
その肌の露出が多すぎたのか、土方が前に出て
そのまま隊服を着せた後、殴った
『いてぇええええ!何すんだよ!馬鹿!!』
土方「馬鹿はてめぇの方だろうが!
なんつー恰好してんだよ!!」
『え?正式な服装ですけど何か?
何方かと言えばこれが恥ずかしいって思った方が
エロいんですけどー!!このエロ方!!
隊服着た方がドエロいぞコノヤロー!!』
土方「だっれがエロ方だよ!名前変えんじゃねぇよ!!」
そう言いながらも終始笑って居る都佑に
何処か抜けないその笑顔が少々怖く感じとったのが
速かった人間が顔を固めた
『今から10分、私を全力で殺しにかかれよお前ら。』
いきなり真顔で距離を取った都佑に
土方は彼女同様真顔で質問をする
『刀を使い全ての知力で全力尽くして殺せっつてんの。
私の馬鹿な頭じゃ説明出来ねぇから実践してやんのよ。
有り難い事だと思えよー?普通じゃ経験しねぇから。』
山崎「いやいやいや、説明の意味すら分からないんですけど
今から何をしようとしてるんですか?」
そう聞いた山崎に「ごもっともだ」と言わんばかりに
頷いた隊士達、それに都佑は足を一度地面に打ち鳴らす
すると隊士の手前から綺麗な木の板が50p程の鋭利な状態で
文字通り生えて来た
その非現実的な状況に道場内の温度が冷える
『もう一度言うよ?”私を全力で殺しにかかれ”
私はその間術使って攻撃します。全員の身体何処かに
小さな傷を3つ付けれたら私の勝ち』
逆に土方さん達が私の身体の何処かに傷を3か所付けたら勝ちだ
遠慮なんてしていると私の実力に圧倒されるだろう。
世界は広い、広すぎて、私は押し潰されそうだ。
だから殺して。
君らの手で、私の心を
奮い立たせてほしい
土方と沖田、近藤が連携を組み全員がかかれば
そりゃ幾ら女の私でも、やる前に分かり切った事だ
それでも軽く倒さねばならない。
それを一番知っており焦るのは都佑だった。
『(もし此処で勝てなければ、あの子を殺そう)』
死にたくない。死なせたくない。
そんな感情が溢れ帰って来るのだから
勝ちたくなる気持ちで勝てるだろう。
彼らに勝たれては困る事を目標にすればいい。
そうすれば何が何でも勝ちたいと願うだろう?
そうして都佑VS新選組の戦いが幕を開けた
+++
結果から言えば「圧勝」の一言であった。
都佑の術は巧みに操られ
あの土方でさえも舌打ちし頭をフル回転させた
術が効きそうにない者には隊士を飛ばせ
なるべく救出させる様に身体を動かしたり
そのまま物理的な方法で刀を創り交わせた
あの何十人も居た男は、ものの5分で倒れた
圧倒的な強さ、それを沖田は強く感じた
最初地面を揺らがせ死界を作り回り込み
攻撃を打ち出す都佑に何もしなかった人は居なかった
土方や一番隊が戦闘を斬り、彼女に刃を突き立てる
勿論やりたくなんて無い一心だったが
彼女はそんな心の隙を綺麗に這ってよじ登り
彼らの脇に入り斬り込みを入れた
一瞬で、10数人を相手にしたのだ
何故か沖田や土方の身体には傷一つついておらず
そのまま一番隊が崩れ落ちた
あの瞬間、全員が驚き動揺した
その瞬間、都佑は声をあげた
「己を奮い立たせろ」
その言葉に全員が目つきを変え都佑に攻撃を繰り出す
傷一つ処か近くにすら行けない
来た時は最後、意識を失う
その術の強さ、翻弄されていた沖田達だったが
数分後、少なくなってきた人数になった頃
彼女の様子がおかしくなった
ぴくりと動いた都佑の視線、刀を抜いた先には
誰も居ない、場所に、殺気を全力で出した。
其処で漸く土方は理解した
彼女が何故こんな事を話し出したのか
自分らを使って迄、やろうとしている事を
時刻は夕方になった頃、黄昏る時間
その時間と前に聞いた言葉に土方は
沖田の名前を呼び、連携を取ろうとする
それに気付いた都佑が地面を揺らがせ
彼らの足を取ろうとしたのだが
『んなっ!?』
二人とも天井や壁に飛びつき難を逃れた様だった
それに動揺してしまった都佑は地面の揺れを弱めてしまい
そのまま沖田と土方が勢いよく向かってくる
ふと、二人の鼻に甘い匂いが付いた
一瞬何かと考えた沖田の腹に風を作り天井に飛ばし
それを観た土方が名前を呼ぶ前に都佑が手で
服を掴み沖田の方向に投げた
『嗚呼…やっと、やっとか』
そう泣きそうな顔で笑った都佑の先には
小さな少女が立っていた
ぱちくりと言う様な大きな瞳を瞬きする
白い服に黒く少々あちこちに飛び跳ねている
肩下に降ろされた髪の毛が映える
腕や身体はやけに細く、軽く骨が見え隠れする程度だ
ワンピース姿ではあるが、肩から先は全く隠れて居ない上に
少女は移動する度に白いパンツが見え隠れする程の
丈の短く裸足素足で都佑の元にかけて行く
「えへへ、あえたねー!」
キラキラした目で両腕をブンブン振っている少女に
都佑は感無量とも言う事程か、胸を鷲掴み悶えていた
『っ、可愛いなぁ!おい!てめぇコノヤロぉおお!!』
そういった都佑が一気に少女を身体で受け止める為に
走って抱きしめると、少女は嬉しそうな声で飛び跳ねていた
直ぐに離れた後戯れだした都佑と少女に
唖然とする沖田や土方
小さな少女は都佑に捕まらまいと右へ左へ
ちょこまかと寸前の処でよけていく
それに捕まえようとする都佑が嬉しそうに笑い
大きな動きで少女の高い嬉しそうな声に近い音を出して笑っていた
花が
山崎「なん、ですかね…あの子」
花が飛んでいる
そう隊士全員は感じ取った
土方「俺に聞かれても、知らん。だが」
都佑が一番愛した少女、と言う事は分かった。
そう土方は想い耽る様に二人の様子を見た
土方達には見せない様な、キラキラした顔
優しく無邪気で純粋だろうその姿
彼女が護り通したいと言った意味が土方も分かった気がした
余りにも無邪気でほほえましいその時間に
沖田達は最初の開始から10分経過した事に気付いた
「ねぇ、あのひとだれー?」
『んー?そうだなぁ…私達を見てくれる人、かな?』
「なーに?それー!おもしろーい!」
『ふふっ、君の方が面白いよ!
おれ、この白い肌はどうしたー!
お外出てるのかー?ああーん?』
近藤「あー…こほん、じゃれあっている処悪いが
俺達の事忘れないで欲しいな」
「あ!でっかい人!!」
『あのひとね、ゴリラって呼ばれてるのよ?』
近藤「何幼い子にとんでもない事
教えてんのあんたぁああ!!」
そう軽く怒っている近藤に少女は
大きく身体を横に曲げて「ん?」と言った
「ごりら?でも真っ黒じゃないよ?
おにーちゃんだよ!」
そうキラキラした目で都佑に訂正を入れた少女
それに都佑は顔を手で隠しながら、首を縦に振りながら
少女の頭を優しく撫でる
『うん知ってた君がとっても純粋で
可愛い子だって知ってた
しんどい辛い無理心臓しんどい。』
山崎「キャラ崩壊が酷いですけど!?」
唯々嬉しそうな顔で普段言わない様な本音がぶちまかれている
都佑に軽く山崎が引いてツッコミを入れていた
その間少女が都佑の傍から離れ
山崎達の元に駆け寄り上を見上げながら
右へ左へと身体を動かして「へぇー」と声をあげた
「此処が良いの?」
『…うん、此処が、いいな』
「ほんと?いいの?君は?君はいいの?」
『私が、良いと思ったんだよ…
君は?君はやっぱりあそこが良いの?』
顔が歪む
都佑の泣きそうな顔に少女も泣きそうな顔になる
其処に土方が少女の髪の毛に触れようとした
瞬間、少女はその手を避けた
死界になって見えない筈の場所を
振り向いて、避けた
「…此処は駄目だよ、此処も、駄目。」
『そっ、かぁ…なら、君は何処が良いの?
あそこ?それともこっち?それとも』
少女の懐に入り刀を構えた
土方「っ、何、してんだ…」
少女の前に刀を差し何とか守った土方に
都佑は舌打ちをして距離を取った
突き刺そうとした
その行動に隊士はゾクリと背筋が凍った
都佑の目は何時か見た一番隊と一緒に
敵と立ち向かっていた羽黒未夜の色を放っていた
殺気に近いその目は
何処か悲しそうな色をしている
『…どいてよ、私はその子に用がある』
土方「野郎置いて餓鬼に手付けるたぁ腐ったな」
『腐っているのはどっちだか』
そう闇に落ちたような暗い顔をする都佑
それに少女は土方の手に手をかけ前に出る
寂しそうな顔で、手を伸ばして
させまいと土方は少女の腕を取り引き寄せた後
山崎を呼びそちらに引き渡そうと行動する
土方「っ、駄目だ、山崎!!」
山崎「っはい!こっちへおいー」
『させない』
山崎の前に鋭い針をしたから創り出した
その瞬間隊士全員が都佑を抑えようとかかるが
一切歯が立たず、大きな声で『黙れ』と言った途端
全員の身体が一瞬宙に浮き、地面に叩きつけられる
震えながら、都佑は少女の方で話を繰り出す
何度も、何度も、同じ話を
『っじゃあ、何処なら、君は笑える?
一体、何時になりゃ、こんな、
こんな気持ち、無くなるの?』
土方「…お前、」
都佑は嗚咽を漏らしながら叫ぶ
涙が、地面に落ちた
今、都佑は自身と闘っていた
殺さねばと動く身体を必死に押し殺す
羽黒未夜として動いていた闇の時間を
今出す時ではないと、顔色が変化する
殺気の目は何時もの彼女の色に変わっていた
寂しそうに、嬉しそうに、悲しそうに
『どうしてこうなるんだよ!ねぇ!
たった小さな願いじゃないか!…どうして?
君は、君はどうしてそう笑えるの?』
こんなにも、私は辛いのに。
少女だった頃の記憶が鮮明になる
脳内で笑って居る少女は、確かに生きていた
前世の私だった
何故前世の記憶も身体も全てをこの世界で
叶わせようとさせるのかが、理解出来なかった
何故私ばかり周りの人間は私を見てくれないのか
私は私が悪いと思わないと、理解出来なかった
けれど何もかも違った
私は前世でも何でもなかった
生まれ変わって転生した物だと思っていた
少女の姿を観て、心から感じた言葉が
一番ストンと胸に落ちた
”私は記憶を失っていただけだ”
身体の質が違ってくるのは元々「その種族の証」である事だから
私は元々「普通の人間ではなかった」のだ
私は「薄狼の人間」であって「普通の女の子」には成れなかった
嗚呼
カエルが蝶々になろうと願う様な物だったのだ
私は普通の女の子になろうと願っていた
それは確実に叶わない
叶ってしまえば罪にすらなろう者
「皆の笑顔が好きだから」
そう、言って
「笑顔を観ると喜んじゃうの」
言って
「だから叶わなくて良いの」
それで?
貴方の望んだ姿は、そうじゃないでしょう?
私が望んだ姿は、そんなものじゃなかったよ。
私が望んだ姿は、色は、夢は、感情は
なんにも、なかったんだよ。
『…それが、君の望みじゃないだろう
って言っているんだ…!!!』
我儘を言わない。昔から、私は変わらなかった。
薄狼の事は未だに分からないけど、
それでも、転生したなんて、記憶が残っている以上
話がおかしいと思っていた。
私は、「生まれ変わってすらいなかった」のだ
そうすれば記憶喪失の説明も付くし
種族上身体の質が変わると言われたら納得がいく
もしも仮に転生出来ていたとして、だ
前世の記憶が受け継がれても、身体は戻らない筈
『ははっ、嗚呼…こんな、事が、あ、るんだなぁ』
それで?
私は楽になれるの?
(私は転生したのでは無く「薄狼の人間だった」のだ)
(その現実が余りにも納得いくもので、胸が痛い)