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鉄の匂いがする
優しい気持ちに、赤い匂いが入る
緑色の世界に、ジワリと赤が混じっていく
これがマグマなら、熱くて痛いと思って逃げた
これは違う
これは、これは
「ポップ!!っ貴様ーー!!!」
力を込めてヒュンケルとラーハルトが加勢するが
力が大きいのか、ダメージがまだ回復されていないのか
腰に蛇の尻尾が入り壁にたたきつけられる
ぞわぞわする
これは、みたことがある
ゆめだ
これは、ゆめで、みたことがある
この先を私は、見た事が無いけど。
「っは、大丈夫、か?」
『…ポップ!』
「ごめんな、ちょっと、前にですぎっぐ」
『喋んないで!!今回復魔法を!!』
そう言って膝に頭を置いて頭の出血を急いで止めようとする
それを良いと手を取られて都佑は叫ぶ
『どうして!!』
まずい、これは、まずい
警告音が頭の中で響き渡る
「都佑、おめぇ、手、あったけぇな」
『いいよそんなことは!!駄目、喋ったらもう縁切る!!』
はは、そんなこと、できねぇくせに。
そう笑うポップの唇の色が青くなっていくことに
都佑は目を見開いた
ダメだ出血が多すぎる、変な所に入ってしまったためだ
なんで?なんでこうなった?
私がミーネを止めなかったから?
私がもっと早く呪文を詠唱出来なかったから?
行動が?感情が?すべてが遅かった?
嗚呼、違う。
ワタシがマガイモノだから
黒くて、とても、心地が良い。
嗚呼、なんで、ずっとこのままで居られないんだろう?
都佑の手が軽く折れる
すると蛇の身体に数本の槍が刺さりそこから青い炎が巻き起こった
「っ、一体何が起こった!!」
「なあ、ヒュンケルよ、お前あんな闘気見たことあるか?」
「いや、無い。それどころか」
あいつ、死ぬつもりか?
そう言ったヒュンケルの言葉の先には
背中から白い羽根を生やした都佑が宙に浮いていた
怒る竜に、都佑が不思議そうに眉を上げて腕を上から下に下ろした
すると更に槍が落ちていき、悲鳴が上がるも喉元を掻っ切った
血しぶきが都佑の身体につくも、全く動じない。
怒っているのだ
自分のミスで、人が傷ついたことに。
「いかん、あのままだと戻って来なくなる!!」
「何!?」
「都佑、ダメ…約束、でしょ、」
目の色は赤く光を放っていた
ミーネの記憶から薄っすら声があがる
ーいいかい?この力は強大だから、2人になった時は選ばれた者でなくても
力を使う事が出来てしまう。だからミーネはお姉さんだから、都佑君を頼んだよ?
はい!そう言って温かい父の手が頭に触れているのを
ー怒ったりすると、攻撃が出来て目が赤くなる。
ー私怒った事ないから大丈夫だね!!
そうなの!?そう驚くミーネの声に都佑がうんと笑って答えた
怒りを知らない、少女が、今、本来の怒りを覚えようとしているのか
それとも
「…ゼルありがと、もう大丈夫よ。」
そうミーネはゼルの回復呪文を手で受け止める
やめて良い状態になったことを確認したゼルが前を向いて冷や汗をかいた
「あれは、一体どういうことだ?」
「私達神聖樹の加護を受けた者はね、巨大なる力を封じるために
別世界の人間を使って蓋にして幼少期は生きているのよ。」
「何!?」
「その影響で、都佑が神聖樹の加護に触れていた時間が長かったせいで
力を使ってしまって…ごめ、私のせいで」
「謝るなら生きているうちにしろ!今は都佑を止めるぞ!!」
そう赤い瞳が此方を睨んだ瞬間
ふわりと赤い匂いがした後に、
都佑の目が近距離にある事に気付いた
膝を抱えるように折りたたんだ姿は、
宙に浮いて左右に腕を広げて構えている
攻撃をするかと思って目をぎゅっと閉じた
『…、』
「え?」
目をふと開けた時、何かを言っていた。
ただ、声がでていなくて、何て言っていたのかも分からない。
ああでも何となく分かった気がするのだ。
もしこれが本当なら、怒ってしまいたくなるのはこっちだ。
ポップの胸元に、真っ黒な花冠が飾る様に置かれていた
黒くて、くろくて、禍々しい
それは、約束を破られた時にある、一つの言葉。
「駄目よ、染まっちゃ。」
貴方は日向で笑っていなきゃいけないのに!!
そうミーネが光を紡いで蛇の頭にめがけて射貫く
そのまま蛇が落ちていき、身体が灰になり消えていく
それを見届けるのは、浮遊したままの赤い目に染まった都佑だった
何も言わずに、ただ消えた者を見ていた
「っ、おれ、は」
「ポップ!!しっかりしろ!」
その声に酷く反応した都佑の目が揺れた
「そうか、都佑まだ完全に反応したわけじゃないのね…!」
そう言ったミーネが立ち、ゼルとヒュンケルを呼ぶ
「ゼルは左からヒュンケルは右から攻撃して!!威力は任せる!!」
「奴を殺す気か!?」
そう言ったゼルに良いからと答えたミーネが槍を放つ
小さな槍に都佑の目が光る
「ええい、やるしかないのか!!
「ブラッディースクライド!!」
そう左右から魔の剣を後ろに交わし、ヒュンケルの攻撃を更に交わし
攻撃をもろにゼルに食らわせた
「っぐあああ」
「おいおい、マジか」
ラーハルト!そう呼ばれたラーハルトが槍を捨てこのままで良いと腕を構えた
魔術を使えば吸収されるか自分に返ってくるのを考えたのだろう
都佑が向かってきたタイミングで腕で受け止める
足が中々入らずに腕だけで来るのも敵に一打撃の隙も見せない為か
キレた方が強いんじゃないのかと何処かで笑ってしまう
加勢にヒュンケルが後ろから攻撃を入れるも
すぐに避けるが、ゴムが千切れて髪の毛が広がる
その瞬間黄色いバンダナが都佑の目の中に入る
『…?ぽっ、ぷ?』
「っ、すまん都佑!!」
そう言ったヒュンケルが首に手刀を入れ、
気を失う都佑を後ろから抱きかかえるように受け止めたことで、
幕は閉じた
++++++++++++++++
「ゼルガディスさん!!」
「無事だったか!アメリア!!」
都佑が暴走をした後、ヒュンケルが姫抱きにして
ラーハルトが背中にポップを背負って帰って来た姿を見て
一同が驚き立ち上がって固まっていた中、ゼルとアメリアが
数週間ぶりの再会により、緊張が少し解けた
「ポップ、それに都佑、なんて酷い傷!!今手当を!!」
「いや都佑はまだダメ。体力が底をついている
状態じゃないと逆にこっちが危険よ。」
え?そう言ったマァムの顔に目が光った都佑が身体を動かした
それを横で見たアバンが眠りの呪文を唱えて、再び意識を失った都佑を
ヒュンケルが受け止めた
「成る程、暴走中でしたか。暫くはこれで目覚めないと思いますよ。」
「助かったわ」
「ちょ、一体どういうこと!?説明してよ!!」
「成る程、では都佑さんはその神聖樹の力でポップさんが
死にそうになったのを見て怒り狂ってしまったと。」
「ええ、幸いなのはポップが死んでいないのと
バンダナを見た時に一瞬怯んでしまう所をみると
まだ不完全な状態って感じね。
もう少し私と都佑が長く触れていたら
大変な事になっていたのかもね。」
あの時に都佑が無理矢理ミーネと会いたいと言わなければ
今頃怒り狂ってしまった都佑に会いたくないとミーネが言う
「邪悪な気配がしたのは、都佑さんだったんですね…可哀想に。
邪気に惑わされつつ愛する方の傷を見て怒り狂って…
力がなく、自分に何かないかと力を振り絞ったのが…」
「アメリア、落ち着け。」
そうアメリアの暴走を肩で収めたゼルにヒュンケル達は少し戸惑う
その中で唸りだしたのは、ポップだった
「ポップ!しっかりして!!」
「、お、れ…ここは」
「都佑を庇ってから帰って来たのよ。一応財宝も取ってきたけどね。」
いいのは数個あるかないかね。そう言いながらミーネが渡した中に
一つ黒い円にポップが驚いた
「な、なんだよこれ!!」
「…都佑の心よ。」
「は!?なんで」
「貴方が庇った後、神聖樹の力を使って暴走したの。
ヒュンケルやゼル達が頑張ってくれた中で貴方があげた
バンダナを見て隙が出来たからこそこうやって今皆で帰って来れたの。」
「そんな、都佑は!!」
「残念だが、奴なら俺の魔法で外に出られないようにしている。
現に一度目を開けてマァムとやらを襲ったからな。」
ありえない、そう驚くポップに無理もないとヒュンケルがゼルに応えた
「マァムは都佑が初めて出会った人で、恩人なんだ。
加えてずっと仲良く話して旅をしていたらしい。」
そんな子が、牙をむいて攻撃なんてしてきてみろ
傷つくのも無理はないのだ。
それにゼルは目を細め、アメリアは「そんな」と言い項垂れた
「で、ですが、希望はまだ!!」
「無駄ね、この花冠が白くなる位にならないと
都佑は元に戻らないわ。それにこの状態になったら
手が付けれないって聞いてるから…今はなんとも。」
「くそっ!俺が、もっとしっかりしてれば!!」
「それを言ったら私のせいよ、
あの都佑が引き止めたのに振り切ったの私なんだから。」
「お二人とも其処までにしておきなさい。
今はまだしも都佑さんが
正気に戻ってこの事を知ったらどうします?」
自分のせいだと力を暴走させた者に
仲間の亀裂を作ったと思わせるきっかけになる。
それを知ったら都佑はどうするだろう?
やりかねない行動を察し、ミーネとポップがお互いに謝る
「よろしい。私の魔法でもこの子には効果が薄いでしょう…現に」
円の中に居ても尚殺気を放ち、
此方に向かって目を光らせて浮遊していた
都佑の目は赤く、ただ黒く見えた
「もう起きちゃってますし。
おかしいですねぇー確かにちょっと強めに使ったんですが」
「あっ、ちょ、ポップ!?」
そうベットから起き上がったポップが都佑の元に行く
ふらふらと歩いている姿で、手を取って歩きたくなる。
そのポップが低い声で都佑と名前を呼び、都佑の目が揺れる
「都佑、帰って来い。誰も怒らねぇよ。」
そう唸る都佑に、ポップが優しく声を出す
手を出して、其処に火をつけた
ゆらゆらと揺れる中、小さな形が鳥にみえなくもない
「ほら、俺でもフェニックス、作れるんだぜ?
お前に見せられて悔しくて練習したんだ、ほら」
目の色が一気に薄くなり、声が出る
『…っ、プ?』
「嗚呼、そうだ。ポップだよ。夢なんかじゃねぇ。」
そう言ったポップに都佑の目の色が光を取り戻していく
『ほ、と?』
「嗚呼、だからおいで?」
そう膝を片方ついて両手を出すポップに浮遊していた都佑が
両膝をついて羽根を閉じる
もう大丈夫、そう思ったゼルが魔法陣を解くと
都佑がポップの身体に抱き着いた
++++++++++++++++
「にしても、ヒュンケルやゼル、
あのラーハルトが相手でも勝てんとは…恐ろしい女子だな。」
「これで不完全って聞いて恐ろしいんだけど俺…」
「都佑さんと完全に分離のご予定は?」
「今は無理ね、彼女はそうしたがってるけど、
最悪私達が元に戻って戦う事を考えたら完全分離しちゃえば
元に戻す事は不可能よ。」
蓋は一人一つまで。そう言ったミーネ達は
都佑を寝かしつけた深夜の0時を切った所だった。
「僕達が何とかして都佑さんを守らねば!!」
「その都佑さんが戦力である男三人以上の力
ぶっ放したって話なんだけどよ」
「うっ」
チュウが何も言えなくなり、困っている中ミーネがフォローする
「まぁ今回はキーであったポップのバンダナがあったからよかったわ。
最悪私達で彼女の髪の毛切ってバンダナ顔にたたきつける位したらいいけど」
「完全版だとそれは難しいんじゃないのか?無意識と意識的は無理だろ。」
そう言ったヒュンケルにミーネが「そうなのよー」と声を上げて天を見た
「攻撃魔法に加えて体術まで出来るとは、我家系ながら
恐ろしい蓋を見つけたものね。父上ったら凄いわ。」
「元の世界に戻しても、魔法が使えなかっただけでも
武術がアレほどならそうそう軽く戻すのは止めといた方がいいでしょうし。」
どちらにせよ、味方が強くならないと敵が強い以上
都佑の足止めも難しいという事だ。
「特訓は続けるとして、都佑の精神的な強化も入れるわ。
ひとまず塔一つ制覇してるんだから、明日に持ち越しましょう。
ゼロス!」
「なんでしょう?」
「一応一か月ったけど、多分二か月位先になりそうよ。
そろそろ新月で力の威力が減ってきててね。」
「構いませんよ、ゼルガディスさんと
アメリアさんしかまだ戻ってきていませんし
それにこうやって見ているのも悪くありませんので。」
「っ!お前こんな所にもいたのか!!ゼロス!!」
そう声を荒げるゼルにアメリアが落ち着けという
ゼロスは最初からいた身なのだ。
「都佑さんがあんなにもお強いとは、
ますます手に入れたくなりましたねぇ。
おまけに嘘が付けないと来た、興味深いです。」
「っ!!てっめぇ!!」
「やめとけ!ポップ!奴は不幸な感情を食らって生きる種族だ。
こっちが怒っても向こうは喜ぶだけだ。」
「だけどよ!!」
「ま、明日は第二部隊を向かわせるわ。
私達は暫く休むことにしましょう。
此方の世界でもう4日も帰ってきてなかったらしいし。」
そう言ったミーネに対して、ポップ達は唸りつつも
寝る準備にとりかかるのだった