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「こらっ!待ちなさい〜!!」
「きゃー!」
そう嬉しそうにはしゃぐ少女をマァムが追いかける
お風呂からあがった頃、少女の髪の毛を乾かそうと
タオルを持って追いかけるマァムの先には
ぽたぽたと雫が垂れつつ走る少女がいた
ぶつかる前に察したのか少女が立ち止まる
その先からは立ち話をしていたのか
アバンとヒュンケル、クロコダイルが居た
「おや、もうお風呂から上がったのですか?」
「アバン先生その子捕まえて下さいよー!
すっごく素早くて髪の毛乾かしてくれなくて〜!」
「んんーーーやっ!!」
そうアバンとも距離を取り、クロコダイルの後ろに隠れる少女に
ヒュンケルが声をかける
「髪の毛を触られるのが嫌なのか?」
「んーん、嫌じゃないけど…」
そう寂しそうな声と顔で俯いて喋る
「こうやって走ってたら、パパが捕まえてくれて
それで…」
そう顔を上げた少女の先に、黒髪の男性が立っていた
「ぱ、ぱ?…パパ!!」
そう嬉しそうに笑って目を輝かせる少女
それに男性が気付いて声をあげた
ー都佑!髪の毛をそのままにしたらママに怒られるだろ?
「だって!しぜんかんそー?したらいいじゃん!!」
ー女の子なんだから、髪の毛は大事にしなきゃダメだろ?
そうわしわしと殴るようにタオルで
髪の毛についた雫を拭おうとする父親らしき人物に
少女が嬉しそうに笑っていた
ー都佑は良い子なんだから。
そう言った父親の声に対して少女が抱き着ついた
嬉しそうに、ただ、嬉しそうにしていたのに
ふわりと、抱き着いて数秒で消えてなくなった
「…ぱ、ぱ?」
「え、嘘、さっきまで…」
そうマァムも驚き口に手を当てていると
後ろから髪の毛を綺麗に乾かした都佑が入ってきた
「ねぇ、ぱぱ?どこ?私、良い子だよ?
ねぇ、どこ?ママは?…ねぇ、」
『だめ、それ以上は。』
「いやぁだ、やだ、ごめん、ごめんなさい…」
そう浮遊し始める少女の周りに小さな石の欠片が左右に円を描きだす
ぽろぽろと泣きだす少女に対して都佑が『仕方がないか』と呟いた
「良い子じゃ、ないから、ママ
私を置いていったんだよね?」
『…っ』
「私は悪い子の都佑だから」
そう言った少女の背中から大きな羽根が生える
突如禍々しい魔力が膨張する
それにヒュンケルやアバン達も構えるが
『都佑、大丈夫、大丈夫よ。貴方は悪い子じゃない。だから』
ゆっくり眠ろう、そして夢の中が現実なの。
そう言った都佑の手には小さな槍が作られ、そして
少女の心臓に突き刺した
少女はのけぞり、痛そうな声を出した
それにマァムがやめようと動きだすもアバンに止められた
「先生!!どうして!」
「よく見て下さい、彼女の魔力が膨張したと思えば…もう跡形もありません。」
「それは、」
死んだと、マァムは錯覚した。
いやこの場にいた誰もが、都佑が少女を殺したと思った。
『大丈夫、そっちが現実だから。だから今は眠って…お願い。』
貴方が、悪夢を見なくていいの。
そう抱きしめた泣く都佑に、暫くそれを見ているしかなかった。
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「殺しちゃったの?」
『いいえ、間違いなく生きてる。心臓を一時的に止めて意識を消しただけ。
今はこの子が一番みたい夢を見ているから、そっとしておいてほしい。』
突如大きな魔法力に驚いた皆が集合し、近くにあった食事場の方に移動して会話を始めた
『この子の名前は、都佑。私の過去の存在自体が生まれている状態なの。』
「…は?」
『そして感情が強くなると、感じたものが具現化して触れられるようになる。
でも触れるとすぐに消えてなくなり、消えたことで膨大な感情を制御できなくなる。』
ー私が、悪い子だから?
そう言って泣いた少女の声をマァムは思い出して横に目をそらした
『そうなると制御不可能になって、周りを消し去る可能性が高い。
だから槍をぶっ刺したって訳。一応心臓つこうが何しようが
この状態になったら私達は死ぬ事は許されない。』
もし死ぬとしたら、絶望して全てを消し去る時。
そう言った都佑の目は真面目で、少女を殺す者がいれば
即刻殺すと言う殺気を出した目になっていた。
「成る程、だからあの時近づいて槍を刺したんですね」
『ええ、あのまま放置したら間違いなくあの場にいた者は死んでたかな。
特定の人物を消す事だって可能だけど、あの子はまだ幼い時の状態だから
半径五キロくらいを消し去る位なんじゃないかなぁ?』
「それ普通にえぐくないか?」
そう言ったポップに都佑は苦笑いした。
「そう!あの子の名前都佑って言うんでしょう?どうして最初に言わなかったの?」
『…あんな風になるから。父親や母親を見つけて、
触れて消えた事にショックを受けて全てを焼き尽くそうとする。』
まぁこれからもコレが続くと思うけどね。そう言った都佑に
また?と声を上げる者も出た
『何度だって繰り返されるよ。貴方達が嫌になる程に、
彼女は何度だって親に会い、触れて、
消えていく姿を見て感情を揺らす。それを制御できるのは私だけ。』
「呪いが強力になればなるほど範囲も広くなると?」
『恐らく、特定の人物を殺害するのもたやすくなるとは思うよ。
過去の私なら…在り得なくはないから。』
「その呪いを解く方法は何かないのか?」
『…それは、』
「都佑が一番大事にしている状態から離れる、
つまり一番大事にしている物を捨てることよ。」
そう言ったのはミーネだった
リンとした声で説明を入れる
「元々蓋の鍵は別世界の者が永久を願う力を利用して
私達神聖樹の加護を封じる為の物だったから。
永久を願わなくさえなれば、それは解かれるかもしれないけど…」
「なら解いてしまえば」
『…無理、かな。少なくとも私も、あの子も。』
「都佑、ごめん、そもそも私が未熟だったから」
『いや、あの状況なら貴方は蓋をすべきだった。
今だって本当は危険じゃないの?あの子を使って
また蓋だってできる状態だし…』
「そんなのダメよ!!そんなことしたら、
あなたはもう二度と心を失うことになっちゃうじゃない!!」
そう言い切ったミーネの言葉に、周りの者が絶句した
嘘、よね?そう言ったマァムにミーネがそっぽを向いた
『そうだねぇ〜このままいっちゃうと、心消えちゃうかもね〜』
「ちょ、都佑!貴方も何を言ってるの!?」
『消えたって良い。そう思っていたのが私達なのよ、マァム。
永久に望んだから、私は貴方達に出会えた。
そもそも、心は元々あったものではないからね。』
「…え?」
『作り出したから』
心を?
「ちょ、ちょっと、待って下さい、都佑さん、貴方心を作ったって、それは」
『見て来た者の感情や行動を記録して、作り出したもの。
あの子は作り出されていない心その者だから“都佑”という名はふさわしい。
でも、私が作り物だと言ったら、貴方達は否定するでしょ?』
「それは!!」
『あの子を、岡本都佑の心が死にそうだったから私は作り出された。
あの子と私はお互いがお互い作り物だと“悪い子”だと感じることでどちらかが
制御しどちらかが暴走してループを描いて初めて成り立っている。』
『それを別世界の人間に“直せ”と言われる筋合いはない。
元々神聖樹の呪いは解かれないの。
いや…解かれる様な者を呪いを付けようとしない、が正しいか』
「どういう、こと?」
『どうせなら、ルールを守り通す人がいいでしょう?
たとえどんなことがあっても、ひたすら通す子が。
私は、あの子は、ただ一つ望みがあっただけ。
神聖樹の方だって、一つだけ望みを続けられる子が必要だっただけ。』
「でもそれは、なんで」
『動き出した歯車は止まることを知らない。
…それなら、いっそのこと利用しちゃえばいいと思ってる。』
どういうこと?そう言ったのはリナだった
「さっきから聞いてりゃ、絶望したがりのヤバい子だったけど。
アタシたちの敵になりそうな雰囲気かもしだして、それはカモだったって訳?」
『んー?もしあの子を殺そうと思うのなら…私は君達を殺すまでだけど?』
そう目を細めた都佑に、周りで聞いていた者達が唾をのんだ
『でも、私を彼女を利用してしまえばいいのよ。リナ、貴方が一番好きな事。』
「アタシが?」
『神聖樹の呪いの最後は確かに心が消えること。
でも、私はそれを一番望んでいる。あの子は望んでいないだろうけど
実は私とあの子が人間として生きれるチャンスになりかけているのよ。』
「…どういうことか説明してくれる?」
『私はあの子その者であり、あの子は私その者
つまり記憶にあった者がそのまま具現化している状態。』
その具現化しているだけの状態が、呪いがヒートアップ最大になった時
具現化が現実化になるのではないかと言っているのだ。
そしてその現実になれば、その記憶を保持したままの為
元々あった記憶の場所が“なくなり”、“消える”ことになる。
つまり何が言いたいかというと
記憶を物理的に切り離すことが可能ではないかという事だ。
「あ!って言う事は、都佑さんは彼女を助ける為に、
わざわざ呪いの進行を進めているってことですね!?」
『ついでに魔法力は想像力でしょ?
あの子は想像力に関しては一番良い時期だったから。
あの子が良い感じに“暴走”してくれたら、敵を撃つチャンスはある。』
「成る程、諸刃の剣ということですか」
『安心してくださいな…一度で壊れるうちらじゃないので。』
にやりと笑う都佑に軽く引くメルルとマァム
『あーの馬鹿神聖樹め、あの子がどれだけ辛い思いしてると思ってるんだか
こっちだって策はあるんだよ策は。繰り返す事で起こるヤバい事を
そんな大きな呪いにするから破滅を呼ぶんだよ…ふふふふふ』
「あのーリナさんもう一人いませんか?」
「誰があんな悪魔と一緒にしろっつたのよ!!」
いたいですーそう泣くアメリアに対して
リナが牙と角を出すように怒っていた
『ま、槍をぶっ刺せば寝るし、私の方は
調節が可能だから良いに越したことはないよ。
あの子と話して名前の件については相談しようかなとは思ってる。
衣装だって向こうの世界のばかり着てもらっても困るしねぇ〜』
「ワンピースで走るだけでは防御力も心元ないですしねえ」
『うちらのことは大丈夫ってことよ。
繰り返される円に耐えられる者なんて
この世界どこにもいないでしょうよ。』
「あんだだけよほんと…」
こんなにもどうしようもないことを繰り返すことができるのは。
そう呆れた顔で言ったリナに都佑は『どうも』
と言って嬉しそうに笑って返したのだった。