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最終決戦前日の夜
遠くから泣きながらマァムが走る姿を見た都佑は思わず声をかけた
どうしたの?そう言った都佑にマァムは
私、酷い事しちゃったと胸に抱き着いてきた
何時も笑ってばかりのマァムに都佑は困惑したが
ある程度その気持ちに察してしまった
「どうしよう、私、私なんて酷いこと!!」
『落ち着いて聞いて?マァム』
「都佑?」
そう涙を零すマァムの目を手で拭い去る
びちょびちょになった手を服でゴシゴシしながら答える
『きっとポップは、貴方に元気を与えようとしただけよ』
「え?そんな」
『ほら男の子って言いたい事土壇場で
上手く言わずにエッチな事言いたくなるじゃない?』
アレと同じよーと言う都佑に、とてもじゃないけどそんな事じゃないと
言うマァムに都佑はため息を深く着いた
『いい?マァム。貴方がポップに悪い事をしたというなら
暫くはポップに下手な事を言わないようにある程度距離を取るべきよ。』
きっとポップには困る話だろうが、今はマァムの精神的ダメージが大きすぎる為
こうするしか方法がない。というか見つからない以上耐えてもらうしかない。
充分ポップは今の今まで耐え続けているのだが、仕方がない。
「都佑…でも私!こんな大事な時に恋愛相談しちゃって」
『女の子だからそりゃするよ!!男の子はそんな相談しちゃだめよ!!』
ダメとまで言うと語弊を生んでしまうが、まぁしゃーない。
特に好きな女の子に別の男の相談をするのはよろしくない。
逆でもきついんだから相当堪えたんだろう。
好きな人にうるせぇなんて暴言を言うなんて。
最低だと落ち込んでいる筈だ。私が救えるなら、救ってあげたい。
『今はとにかく混乱しているから、休んでしまいましょう?
ほら、早く中に入って』
「あ、そうだ私都佑にこれを渡そうと」
『コレ?』
そう見たことないものを渡される
いやいやいやいやいや
『まっちょまって!』
受け取れねぇそう直感が言った。多分これが境目だ。
これを受け取ればもう元の世界には戻れない処か、
この世界で生き続けなければいけない気がした。
いや確かに生きようとは決意したけどね!?
もっと違う何かに押し寄せられている。
そうとも知らないマァムは、聞いてくれたお礼にと私に押し込んできた。
「ね?ロン・ベルクさんが作ってくれたっていうから」
だからそのロン・ベルクが私の為に作るなんて話は見た事ねぇんだって!!!
話が変わるから出来ればそうならない為にも〜って戦力外として思ってたのに!!!!
『…腹を切る思いで受け取らせて頂きます』
「え!?都佑!?」
おっと仮面を一度外したからもう抑えられねぇのかこの心の声はよぉ。
そう心の中で舌打ちをして、声に出さないように出来るじゃねぇか。と
思いつつ、武器に纏う布を拭い去った
『っ!?これ、って』
「これはセレニティワンドって言って、青い球体に
魔力を注ぐことで都佑の威力を増幅させることが出来るの!」
ああーー!!!知ってますぅー!お客様わたくしご存じですー!!
でもおやめくださいませー!おやめくださいーー!!
その武器知ってますー!ドラゴンクエストはドラゴンクエストなんですけどー!
10なんですよ!!10!テンです!この世界ね!?3なんですよ!?
いや予想だからわからないけど、武器的に遊んだことあるからてっきり
りりょくの杖あたりがくるかなー?どうかなー?って思ってたんですー!!
でもそんな訳ないですよねー!!ある訳なかったですねーー!?!?
「都佑?聞いてる?」
『聞いてる聞いてる!』
正確には精神的ダメージとして効いてるけどね!?
いやそんな慌てふためかなくていいや、落ち着こうそうだよ落ち着こう。
とりあえずセレニティワンドを見る。
私が知っているワンドとは違っていて、金色だった色の場所が白に変わっていた。
杖の長さも少しどころかかなり短くなっている気がする。
羽のように左右に広がっている円の線が
本来2つ程中央の球を閉じ込めるように囲っていたのだが
その縁が若干奥行きを考えて前と後ろにずれている。
まるで今までは囲う(二次元)だったので、改良して三次元にしましたよ!
と言わんばかりに中央の青い球体を囲う様に施されている。
しかも杖の長さは確か1メートル程だったのだが、そこそっくりなんですよ!!
いや確かに欲しかった…リアルで一度は手にして使ってみてぇなーって
『いやここじゃねぇだろ!使い場所よぉ!!』
おっと声が出てしまった。失礼。そうマァムに言って
引かれていることを充分に受け止めながら、話を進めた。
「で、何か聞きたい事あればロン・ベルクさんが聞いてくれって言ってたから」
『ちょっと一度殴りたい気分なので落ち着いてから聞きに行くね?』
「え、ええ…わかったわ。それじゃ!また明日ね!」
嗚呼、と手を振って笑った後、都佑は木に背中を押し付け
重力に任せながらゆっくり地面に腰を付いた
これは酷いものを頂いたと思った
『確かターン無効確率2%だったよな…
はは、そりゃねぇーぜロン・ベルクさんよぉ』
これで勝てなければ運なかったとしか言いようがねぇわ
それに先程増幅系魔法が可能だと言っていた。
肉弾戦に持ち越すなら魔力を注いで球体を自分側に持ってくれば
槍が飛んで行くとかなんとかで、何処かで如意棒みてぇだなって
思ってしまった所だ。
兎にも角にも、良い武器が取れたと思えばいいよ。
これは夢だよそうそう夢。
私を夢と思わせる力を皆持っているな。
そううなだれる都佑だったが、話を切り替えるように現在の状況を考えた
『…そう言えばマァム、アバンのしるしが赤く光ったって言ってたな。』
時間は多少遡るが、武器が揃う前にマァム、レオナ、
フローラ、メルルの四人が洞窟に行っていたことを聞いた。
当時私はまだ皆と仲良く出来るか不安だった為、距離を取っていたということと、
単純に私の勘よりもメルルの勘が確実に当たることをわかっていたからだ。
だから私はメルルに『私の代わりに言ってくれない?』と頼んだのだ。
まぁ私の勘よりも私の魔術をこれ以上ネタバレしないようにしたかった
というのが正しいのは、今知る事が出来るのはポップ位だろうな。
『にしても、アバンのしるしをどうして私が?』
「魂の力で「輝聖石(アバンのしるし)」を輝かせた5人が五芒星を描くことで、
より広い範囲に強力な効果を及ぼすことが可能だって、フローラ王女様が」
『(にしてもおかしい。六芒星を描くわけではない筈だし)』
最後の一つは替えか、あるいは六芒星にならないと効果がない可能性を考えて
アバンは印を私にも与えたというのか。
異端だから確実に出来ないと思うのだが…
「だから都佑が何か知ってるかなー?って」
『一応予想はつくけど、ちょっときついかも』
「え!?あの都佑でも!?」
あのってなんだあのって。私は何を周りに言われているのか知らねぇんだが。
『五芒星は守護の形としても使えるんだけど、
形を反対にすれば悪魔の召喚にもなるのね。』
「え、そんな…」
『ただ記述では五芒星だった。なのにアバンはマトリフ師匠に
最後の者に渡して下さいと言って消えたんだよ?
おかしいと思わない?』
「確かに…」
『それに私が持ってもこの世界の血はかなり薄いと思う。
メラもろくに使えなかったからね。』
六芒星は確かに魔除けになるが、ぶっちゃけ色がわかんねぇ。
既に青、紫、赤、黄色、緑があるんだ。後何色あるんだよ。
橙色か白か黒か…はたまた光らないって感じもある。
『まぁ最悪ポップを光らせて五人でって話でもいけるさ。
私はそこら辺様子を見て入るよ』
恐らくポップは私に代わりを任せようとするだろう
奴の事だから自信が無くて逃げに走る可能性が高い。
私を見くびるのはポップ、君の方だと思うよ。
私も光らない一人なんだからさ。
「わかったわ、これでひと段落付くわね」
『そう、ね』
「都佑、ポップに本当に言わなくていいの?
これで最後かもしれないのに」
『くどいねぇ〜マァムさんや。私は言わない方が良いのよ。』
え?そう驚くマァムに都佑は笑った。
『それにポップに呪いをかけてきたの』
「え!?何でそんな!!」
『マァム、貴方にも呪いをかけているの気付かない?』
そう言った都佑に言わなければよかったかなーなんて声を出しながらも
そっぽを向く。マァムはどうしてと肩を掴んできた。
嗚呼、彼といい貴方といい、本当に仲が良いんだから。
本当に死ぬのが怖くなってしまうじゃないか。
「何かけたの!教えて!!私だけならまだしもポップは解いてあげてよ!!」
『嫌よ。きっとばらしたらポップも貴方からも一度は殴られるからさ。』
でもばらした。なんで?そう言ったマァムに都佑は何でだろうねと言った。
口が滑っただけなのだが、いやはやこんなにも友情思いだったろうか?
『ヒントはポップとマァムが一番大事にしているものだよ。』
「まさかヒュンケルが」
『ばーか、な訳ねぇだろ。ヒュンケルの命と引き換えとかだったら怖いわ。』
流石の大魔導士でも無理があるだろうね。
っていうか鈍感で良かったと思うのはこういう所だろうな。
『ま、呪いっていっても私にとっては救いに変わりないからさ。いいんだよ。』
「え?どういう」
『私が死にそうになった時に答え合わせしてあげるからさ』
だからお願い。今は聞かないで。そう言ってマァムから離れた
森の中に入っていく、自分の足が軽くてしょうがない。
あんな言葉を置いて、逃げたみたいな感じなのになぁ。
『正義、勇気、慈愛、闘志そして最後のアレ…あと一つか』
恐らく予想はつくが、強く望んでも出ない以上、土壇場になるしかない
恐らくあの契約を交わさないと難しいだろう。
嗚呼、なんて置き土産をしていくんだろう、千代の人たちって
『ポップとマァムだけじゃなくて皆怒るだろうなぁ…はは、恐ろしいや』
その現実に、私は圧倒されるだろう。
きっと、出来なくて泣いてしまうかもしれない。
きっと逃げ出して消えてしまうかもしれない。
そうなれば色んな方面から怒られてしまう。
特に美少女魔導士からはどんなことになるか分からない。
嗚呼、でもいいんだ。
私は、今凄く幸せなんだから。
『人間に、生まれてよかった。』
願わくば、次の命に変わった時は、どうか優しい子で居られますように。
素直で、優しくて、前向きなそんな誰にでも勇気を与えられるような子に。
++++++++++++++++++
「よかった、お父さんと仲良く出来て」
『そうね〜』
「遅いじゃねえか都佑、!?なっ!おめ!!」
「ん?ああー!!都佑!?何その恰好」
『えへへ、正装ですー!マトリフ師匠から聞いてて一応貰っておいたんだ。』
その昔父が過ごしていた家系に伝わる服を
ローブの中には紺色の長袖のフード付きを羽織っているのに対し、
その中は胸を隠すだけで、胸元から下は肌を露出していた。
下は魔導士の証か紺色の魔道服を着て黄色の布で腰巻に。
両腕首に赤いタリスマンを付け、胸元と腰に一つずつの系4つに
キラキラと青いアバンの印を掛けていた
『一応昔貰った増幅呪文用のタリスマンを付けて、
新しい武器も持ったし、あとほい!
ポップ、あと一応マァムにもあげるね』
そうポップには10センチ程の小包みを投げた
マァムには三つ程手渡しで渡される瓶に、ポップが怒鳴る
「ちょ!俺だけじゃねぇーのかよ!都佑!!
第一そんな恰好で攻撃防げると思ってんのか?!」
『マァム、それ私の血よ。血』
そう言った都佑に周りの者がゾッとして三歩程引いたのに
都佑は『あらやだーポップより引かない〜』と言ってケラケラと笑う。
「ちょ、なんてもの渡してるのよ!!」
『マァム、それは私の血で、私がかつて使った呪文を使える血よ。
飲めば5分は私の攻撃魔法が使えるわ。』
「え!?そんな大事なものを、私に!?」
『貴方の体格上持って3本。ポップはどえらい量流し込んでるから
慣れてるだろうし、前に渡したのを含めて10本にしてるから〜!』
「都佑さん!?貴方なんて酷い事を!!」
『酷い?メルルこれからの対戦私死ぬ気で行くつもりだから。』
そう殺気を出した都佑によさんかとおじさんが割って入った
『最悪私は魂諸共死ぬと思う。』
「そんな!」
『そんな時に、切り札の私が居なくなったら皆どうやって生きるの?
って時に、敵のだまし討ちって所でポップとマァムに渡したのよ。
流石に一人だけは怖いからね…ほんと無茶しそうな顔してんだから。』
そう頬をつついた都佑に、ポップはんなことしねぇよと言うが
そうねとだけ言って離れた都佑に何処か寂しい感情を抱いた
『マァムは直感で出せると思う。
あんな武術出来るんだから説明しなくても大丈夫。』
「は!?ちょ四肢がもげ」
『言っておくけど、マァムはおとりよ。貴方がこの戦いで生き残るの。』
「な、にいってんだよ…おめぇ!」
そうマァムに出せるようにすれば確実に敵は女を叩きのめそうとする。
そこで本来の力を発揮するポップが出番というわけだ
『言っておくけどこれは覚悟の上よ。本来はマァムだけでなくポップ
貴方にも飲ませる必要はないと思っていたのよ。』
「だからと言ってマァムに渡すこたねぇだろ!!」
『ポップ!!…今すぐ此処で全滅にさせたいの?』
何?そう張り詰める現場に、遠くのダイが少し首を傾げた
「何、言ってんだ?」
『私は基本的に公に出さないようにしているの。
でも死にに行く気持ちでこんな場で渡した。
その意味、馬鹿じゃない貴方ならわかるわよね?』
この場でもし否定をしたら、ポップやマァムを殺して
私が皆の記憶を操作して挑む覚悟だってあるという事を
ポップが分かってたてつくのを辞めた
「都佑、その呪文は何故マァムに教えないのですか?」
『マァムが耐えれる可能性が限りなく低いからです。』
「え!?じゃあ私飲まない方が」
『まぁ確かに私の事信じないなら四肢がもげるだろうね。
だーって私信頼しない方だからさー』
そうすっとぼける都佑に周りがよどめくも、都佑の声で静かになる
『でもマァムならやってくれる。私は信じてる。
そしてマァムもポップと私を信じて?大丈夫。
最悪を起こさせないようにするために、私は貴方に託したんだから。』
できれば飲ませない。二人とも、飲まない様な状況に流れにする。
そこは大前提だ。だからこそ、極力飲まさないように言った。
いわばお守りみたいなものだ。
「都佑…わかったわ!受け取る!!」
『それでこそ私の好きなマァムね!
ポップ!分かった!?多いからってむやみに使わないでよ!?』
きっと10本も飲めば私がもし死んだとしても長くて5時間になりそうだ。
前は3時間程だと思っていたが、この成長速度を考えると長く見積もっても構わないだろう。
全ては本質に、気付かなければいいのだ。
「私達もいきましょう!」
「「おう!!」」
++++++++++++++++++
正午
太陽が昇ったであろう時間
様子を待ちましょうとマァムの指示に
周りがソワソワするも頷いて落ち着こうとしていた都佑
『(大丈夫、彼は絶対に強いから。)』
怖いのは私の体力温存だ。
最初から飛ばす訳にもいかないし
それにまだ5つの光かどうかわからない。
「今よ!!」
「ああ!くらえ!!ーーー」
光があふれる
嗚呼、きっとこの時間を待っていたのだろう。
私は、この時間を何よりも大事にしていた。