Novel - Paola | Kerry

it's just you


夢の中だと思わせて2

20/09/15
19





「じゃあ僕から行くよ?」

『おねがいします!!』

三回目の試合はマルバス先生だった。


メルの目を閉じた瞬間から
時間の流れが異様に早くなっていることに
マルバス先生達は恐らく気付いている。


「またそうやって目を閉じて逃げるの?」



そう言ったマルバスに
メルは驚き目を開けた

どうやら口で精神攻撃を仕掛けるようだ



「僕、肉体的な動きは苦手でね。」


『なら突っ込みますけど!!』




ーだめ!


その声に走り出したメルの動きが止まる
何だ?今は目を開けた状態だったのに、声が聞こえた。



一瞬目を閉じただけだ、よな?あれ閉じたっけ?




ーマルバス・マーチ。危険度MAX近づいたら死ぬ。




『(あーすっごい殺気無いのが
また怖いんだろうなぁ)』



確かに拷問学専攻の彼だから、
精神的に拒否反応が出てもおかしくない。
怖いものには近づかないがモットーなのだ。


だからと言ってタッチしない訳にはいかない訳で、
とりあえず近づいたら
上から何か降ってきたので思わず避けた



「おっっっと、流石に避けちゃうかぁ」

『ひいぃっ!!』

地面に突き刺さっているのはナイフだった。
それもバターナイフ。


いやこれ多分勢いつけたら軽く血出るタイプです。




痛い奴。おい。




待ってってそりゃ言うわ
私聞かなかったごめんね。



って言うか聞いてたらどうなってたんだ?


目を閉じて逃げるのって言われて
ちょっとショックが大きくて
安易に目を閉じれなくなってしまった。



逃げてばかりではいけないから、
自分で考えて動くこともしなきゃいけない。



だから距離を取りつつ攻撃をしかけるが、
まぁ教師、避けるのも上手い。



拷問するんだから避けるより
摑まえるのが得意だろうに。


ああ攻撃を交わして捕らえるのが
上手い可能性を考えたら、
そりゃ避けるのも上手いか。



さぁどうする?



さっきから交わされてばかりで
全く動けないまま15分経過した。



そろそろ良いかな?
と言ってマルバスが身体を動かし始めた



「ジミー先生動き出した!!」



『(ちょ拷問の血は流石に!!)』



何かタッチしたら一瞬で拷問されそうで思わず逃げる。


待ってーというマルバスに
メルは焦って逃げる避ける。


入間の姉であることが
周知されているのが分かる程
綺麗に間一髪で避けるのだ。



突如視界が暗くなり、
怖くなって目を閉じた事を後から思い出す。



ー痛いよ、やだ



その声に声が漏れそうになったのを口で押えた。


薄暗い中、少女が痣を抱えて涙をこらえている。
声が出ないのか、それとも出せないのか。



暗がりに振えた声。

赤い色が見えるのに目を見開いた。


笑っていた世界とは真逆の天井がある世界。


上には真っ黒なクレヨンで塗られた者が立っていた




お前がいるから、なんて声が聞こえる。



その声に私は酷く怯えた。


なんだこれは誰だお前は。




怖い苦しい痛みが身体に入ってくる。



なんだこの感情というか
身体痛いなおい!!!


腹部に強い痛みが入るが、

少女が殴られていた?




笑顔の少女とは真逆の世界…



これが、少女の生きていた世界だろうか?




いや生きている可能性もあるが



…だがこれはもう





ーこわい、やだ、…かないで




良い子でいるから。

そう言った声に、
悲痛な叫びと受け取った。



嗚呼いい子じゃないか。

数回しか君を見て居ないというのに
嬉しそうに笑う無邪気な姿の君が、
大人びた笑顔で笑うのに理解出来た。


『(…顔が分かればお前を八つ裂きにするというのに)』


ああでも私もきっと少女の様に縮こまるかもしれない。



記憶が取り戻せたら、貴方の様に、
伸ばしていた手をそっと降ろすのかもしれない。



それでも、今は貴方をただ抱きしめたいと思った。



こんな痛みを感じて
息をする時間なんて必要ないというのに!!



何も出来ない、

自分がただただ悔しくてたまらない!!!



怒りで背中が熱くなる。


先程言っていたマルバス先生の炎だろうか?



嗚呼、やめろ少女に何もするな。


何かを言う動作、口元が余り見えない。




そうだ、考えられるのなら世界を作ればいい!!






青い世界色とりどりに花畑、
綺麗なワンピース姿に少女の方に顔を向けた





『(…嗚呼、なんで?)』





そんな泣いた笑顔

私は見たくも無かったのに。



痛い胸を手で振り払うように、
マルバス先生の胸にタッチしたのは
30分すぎた頃だった



痛い、胸の奥。ずきずきと鳴りやまない。


少女の言いたい事が、

何処か早く知り過ぎてちょっと頭が一杯だ。





「…今日はもうお昼休憩しようか!」

『え!?』

時間ほらと言われて見たのは時刻は11時45分だった。
体育館からゆっくり歩いて
職員室に行ったらまぁつくかもしれない。


そう考えたら丁度いい時間だったので、

皆で休憩に向かう様にしていた





『(泣いてた…笑顔が見たい)』




そっとオリアス先生達が
笑って話す姿を見つつ
ぼけっと窓から空を見た


青い世界、色とりどりの花畑の世界に、
メルはそっと目を細めた



痛々しい腹の痛みよりも、
胸が酷くツンと痛くなった。

ナイフよりも何よりもきっと痛い。


この痛みを少女は感じていたのだろうか?



ずっと?


それは毎日のように?


夢だけではなくて?


現実さえも?




その考えは…やめておこう。




もし本当だとしたら、
きっと私は耐えられない。






それでは余りにも可哀想ではないか。



少女が手をゆっくり下ろした意味が
分かってしまうじゃないか。


受け取るなんて、出来る訳がないと。



言い聞かせた声が聞こえた気がした。




職員室に入って来た。

ガラリと言う何時も聞く音に少し安心する。

中に既に居たメンバーに、
ちゃんと職員室人居るんだなと思った。



「お!お疲れーもう動いてきたの?
どう?メルちゃん強い?」


「ええ…まぁ」


「ん?」


そう片目を開けて言うダリが
「ここじゃなんだから」と言って席を外した
ゴハン持って来てねーと言った彼が開けた場所は、
職員会議にも使う部屋だった


此処なら誰も聞こえないから。
そう言って魔術をかけたのに
気付いた周りが背筋を伸ばした



「…で?何があった?」




+++++++++++++++++++++++++++


「ふむ…目を閉じたら見える少女ねぇ。
メルちゃんはそれで辛くない?」


『っええ?あ、いや…
うーんどうでしょう?両方かも?』


ぶっちゃけ安心する感じはある。


だが不安も勿論ある為

両方というのが正解なのだ。




「両方?」



『ええ、こう会って安心するし、
でも少女の事が気がかりなので不安は出ます。』


「生きているのかどうかも判別付かないもんね…」


『一度目は聞こえるだけでした。
二度目は世界の中で声が聞こえて
三度目は…』



言葉が止まる。

この事を言っていいのか、
マルバス先生が傷つかないのかの不安が
勝って止まってしまった。



なに?と聞かれて、少し時間を置いて答えた



『いえ…こう少女が助けを求める声が聞こえたので、
ちょっと不安にはなりました。』



そう丸く収めて、何とか言えてホッとした。
ゴハンの味がしない気がするが、知らないです。



「ふむ…僕も分からないけど、
ただ一つ言えるのは、
メルちゃんの目付きが変わったのは事実かな?」



『目付き?』



「うん。昨日までのメルちゃん、凛々しいよりもこう
あほらしいというか…ああけなしてるわけじゃないよ?」



ただ、そう目を細めて開ける
その瞳に少し肩が固まる



「獣みたいな目、
に近い感じがした。」

だけ!

そうおちゃらけた顔で笑うダリに、メルはほっと安心する。



あれ、何時から私
こんなにも真面目な顔に怯える様になったんだろう?



嗚呼でも何となく分かる気がする。



きっとこれは






『…そりゃそんな生活してたら手も降ろすわ』


「ん?何か言った?」


『いえ、そんなことよりもダリ先生〜
授業終わりそうです?』


「え?手伝ってくれるの?」




いいですよ。
そう言った言葉にマジで!?
と叫ぶダリ


ぶっちゃけ魔界歴史学は
そこそこ面白い所あるので好きだ。


そういや人間界の社会と同じ位置だったな。



あれでも確か社会科目って
地歴と公民に分かれてたよな?

あれどっちだ?


これ全部か?


あれ待ってダリ先生強ない?






「でも今日は良いかな〜
あ、来週予定空けといてもらえると助かる!
俺そん時忙しくてさ、そん時でいい?」



『構いませんよ。
でも印刷とかある程度の
監督しか出来ませんが…』



全然それで構わないよ!
そう言ってくれるダリにメルはならと答えた。


喜んでくれるなら、
此方としても働き甲斐があるものだ。


「にしても仕事熱心だし
勉強熱心で可愛らしいねぇ〜」



『っ、そうですか?
んん〜どちらも当てはまらないような』


「僕は当てはまりますよ!!」


「ロビン先生、メルちゃん見習ってよ…」


隠れて仕事するの上手いから
そう言って頭を抱えるオリアスに
ダリはケラケラ笑って大丈夫だろうと言う。


「それ凄く多くない?」


そう指さしたのは五段重ねになっている料理だ。

オペラ先輩が入間君用で作ったのに
つい作り過ぎたと言って
此方にも作ったと言っていたが…


多分お世話になるから
わけろと言う意味合いだろう。

少なくとも育ち盛りの
弟くらい、私は食えない。


『ええ…というか皆さんで
わけあって下さいって言われたので』


「にしても量多いね。
あ、これ貰っていい?」


『どうぞどうぞ。
あ、好きにお箸で取って
食べて貰って構いませんよ〜』


何時もうちのメル様がお世話になっています。
どうぞお召し上がりください。

そう書かれたカードを手に取って
ダリ達にメルは見せた。



あーと皆は言って、
俺はこれーと言って取る
マルバスにメルはどうぞどうぞと言った。



「メルちゃんは食べないの?」


『いや一応食べてます…』


食べているが、速度は何時もより遅い。

そりゃ血の気が失せるのを
食事前に見たんだから食い気も下がるわ。

腹部も多少痛いし、生理な訳はない。


少なくとも今ダリ先生たちが
嫌がる顔をしていないから
血が出ているとはいいがたい。



助けてだなんて声、
私は聞きたくなかったのかもしれない。


笑ってずっと一緒にと
言ってくれた時の喜びが尾を引く。


悪魔ならこんなの
すっと忘れてしまうんだろうけど、




自分は人間だ。






魔術が使える人間。






なんて悪魔でも人間でもない私は
一体何処に行けばいいんだろうか?



居場所なんて最初から無いに等しい筈なのに
この人達は何も言わずに受け入れてくれた。





人の血なんて匂った事あるだろうに…



いや今はやめよう。


ただ少女が笑って居る姿が
余りにも綺麗な



そう


まるで額縁に飾った絵の様な世界だったから。


見惚れていただけだった。





「そういやメルちゃんって
好きな食べ物あるの?」


『あ、これとか好きですよ。
魔玉葱の炒め物。』


「へぇーヘルシーで良いよね!
あこれ美味しい!!
僕も作ってみようかな?」


「これがうちの寮で出るなら
嬉しい限りだね〜」


『ロビン先生は何を作られるんですか?』


「僕?色々作るよ〜
野菜系の料理が得意だよ!!」


そう腕に手をかけて鼻息を飛ばすロビンに
メルはへぇーと眉を上げて驚いた。

野菜系は確かに美味しい。
お腹に余り溜まらないが割と好きだ。

此処に出ている料理は
まだ教えて貰っていないが、
今度教えて貰おう。


「オペラさんだっけ?
いいなぁ〜僕も教えて貰いたい」


『なら今度うちに来ます?
丁度此処の出てる料理
私知らないものばっかなので
今度私教えて貰おうと思ってた所なんですよ。』


「いいの!?じゃあ今度行く〜!!
お邪魔する!!!」


『あはは、分かりました。
オペラ先輩に伝えておきますね。』


「そういやメルちゃん
オペラさんのこと先輩呼びだよね?
どして?」


そう言ったのはマルバスだった。

家族なのでオペラと言ってもいいし
何なら家事をしているので
お母さんと言ってもおかしくない。


それにメルが
マルバスの方を向いて答える。



『ん、オペラ先輩はバビルスの生徒だったので、
私も元生徒でしたし。』


「ならカルエゴ先生とかは?」


『あの辺はもう役職的に無理です。
ちょっと仲良しって感じで
良いじゃないですか先輩呼び。』


「メルちゃんも昔
呼んでくれてたのになぁ〜
あの頃は可愛かったな」


そう目を閉じて笑うオリアスに
メルがぎょっとする

一時期教育係だった
オリアスに対して『オリアス先輩!』と
イキイキした嬉しそうに
笑顔で後ろをついて行っていた。



遠くからみれば親鳥の雛だ。

待って下さい〜と泣きそうな顔で
急ぎ足で彼女を無視して歩くオリアスに、
少し注意したダリも今では良い昔の記憶に思える。



「あーあの頃可愛かったよね。
今も可愛いけど。」


『ちょ!ダリ先生まで!!!』


「何々!?メル先輩の過去!?」


『きかんでよろしい!!』


「かなり頼もしくなったよね。
一時期生徒を任せるには怖かったから
教科だけ担当してもらってたんだ。」


へぇそうなんだ。

まぁそりゃそうか。


当時人間界からやってきたばかりで
不安でしかなかった。


それにオズワルドの件もある。

大事にしていた彼の死は
本当にきつかった。


あの時間がとても居心地よかったのを覚えている。





「へぇそうなんですね」


『まぁまさか初副担任が
あの子達とは思わなかったですが』


「いいんじゃない?
楽しそうで何よりだよ。」



え?私楽しそう?

うん毎日。


そう返すダリにメルは
そっかとほほ笑んだ。


あの少女の様に、
笑えてたら…少し嬉しい。


笑ったあと、きょとんとした顔で
ダリが目を開けて
此方を見ていたので声をかけた




『あれ、ダリ先生?』


「…ほんと
華が一人居るだけで
場が和むよ〜」



何があった。何が。


そう思ったメルに、
きっと生徒絡みで何かあったんだろうな。

と過去にあった記憶を頼りに
そっと聞かない事にしたのだった。



「あ〜仲良くご飯食べてる
って聞いてきたら。
此処に居たんですね!」



そう入って来たのは
午後から戦う相手のイフリート先生だった

疲れたぁーと言って
入ってきたは良いものの、
もうご飯は食べきってしまった。

ご飯まだですか!?
と言ったメルに
イフリートは食べて来たと言って
ダリに声をかける



「ダリ先生、これいきます?」


「ああ、了解。
それじゃまた今度ね〜」


そう言って帰って行ったダリに続いて
マルバスは俺もと言って席を立つ


「ご飯ありがとう
ご馳走になりました。」


『ああいえ!此方こそ
お世話になりました!!』


「はは、今度また戦おうね〜」


次は目、ちゃんと見てね?
そう言われて、
善処しますとだけ答えた。

マルバスは笑ってその場を後にした。


「…にしても
ロビン先生の弓は驚いたよ?」


『え?何の話です?』


「えっ!!見てなかったんすか!?
ロビン先生に一度四方向から
弓作って引いていたの!!」


『え!?』


ちょっと待って!!!
初耳!!そう席を立ったメルが
落ち着いてとオリアスに言われ
そっと席に座る


「と思ったら急に弓消えて動き出すし、
炎は燃え盛るしで
…驚いたけど無意識だったの?」


『ええ…そりゃあもう。』



手を伸ばして降ろした瞬間だろう。


降ろしてはいけないと思ったから、
怒りが出たのか分からない。



ただ、どうしようもない怒りが湧いて来たのは事実だ。


待って?
それ弓引いてたら死んでたのでは?



今思えば怒りに任せて
勢いよく手を降ろさなくてよかった。


少女の方に抱き着こうとしても
できないもどかしさに駆られたとは言えど
場所をわきまえなければいけないことに反省した。



『…少女の名前は、分かりませんが。』


「ん?」


『優しそうな顔で、こっちも
笑ってしまいたくなるのは
分かりました。』

とてもいい子だ。



そう言ったメルにオリアスは
守ってやらねぇとなとだけ声をかけ、
昼休憩を後にした。


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