Novel - Paola | Kerry

it's just you


月並みの愛情

20/09/15
25

そう言ってサリバンに連れてこられたのは先程
メルが見せた場所と似たような世界だった
湖があり、花畑があり、ログハウスがある。

その中に入った途端メルの髪の毛が淡い緑色に染まり
身体が少し細くなった気がした。
恐らくメル自身が付けていた魔術の効果が消えたのだろう。

『おお!!すげぇ!!!』

「此処が今は僕以外立ち入り禁止区域だよ。
ミレイユ様が許した者のみが入れる場所さ。
まぁ君も許した者なら入れるってことだから
もう君の家と変わりはしないよ。」

『…人間界に居た所と同じ、なの馬鹿じゃん』

「そう…人間界にもこんな場所があったんだね」

『壊れても大丈夫って、ほんとだ…ここにも貴方の家があったんだ。』

「中に入ってごらん、案内するよ。」

そう言ってログハウスの中に入る。それにメルは懐かしいと声を上げた。
ログハウスの中は玄関から入りすぐに扉があり、そこを開けると広さ約20畳はある。
天井は突き抜けており、階段から少し二階の廊下が見えた。

リビングには緑色のソファーがあり、昔眠れない時は其処で丸まって寝ていた。

ミレイユに保護された時は流石に申し訳ない気持ちと
ただ環境の変化に身体も心も追いついておらず、
ベットではなく床で寝ないと寝れなかったものだ。

メルは扉から入った場所にあった家具の上にあったランプを付けた
カチッと鳴るその音域に安堵する。
嗚呼家に帰ってきたのだと。


「おお、すげぇな主の時と同じだな。
こっちに鏡こっちに写真だ。」

『あ!僕とミレイユが移ってる〜!!』

まだみすぼらしい姿から綺麗な服に着飾っているが
メルの目は今とは考えられない程目が死んでいた
それにサリバンが目を見開いた

入間を保護した時よりも虚ろで、まるで
「何も知らなくたっていい」そんな顔に、
此処まで無邪気な姿によく心を取り戻させたことだ。

懐かしいなぁと言いながら周りを見渡すメルに、サリバンは
声をかけようとしたが、先にメルが声をかけたのに反応した。

『え、なら秘密の扉行けるってこと?』

「秘密?」

『この地下に扉があって、魔術で強くないと入れないって言われてたんだ。』

そう言って付いて来てと言われて付いて来たのは一階にある
二階に続く階段の横にあった扉だ。
押し入れ件秘密の地下室に続く部屋と彼女は言っていた。

僕が昔意地でも開けようとしたその扉だったが
結局開けることは出来ず、
なんなら開けても押し入れだけだった。

今ならあけれそうそう言ってメルが手を伸ばすが
かちゃりとドアノブをひねる音だけして
鍵がまだ閉まっているらしい。

なぁんだとメルはため息を吐いた。
どうやらまだこの場所に入れる状態じゃないらしい。
ひょっとしたら少女と一つにならなければいけないのか?


「どうやらまだの様だね。」

『ちぇーまた今度来ようか!!』

避難できる場所は確保できたということで。
そう言ってメルはログハウスから外に出る。
きっと昔の荷物も恐らくこの中に入っていることだろう。

彼女が捨ててもまた戻ってくるよ、と
言っていた意味をやっと理解出来た気がする。
…嗚呼、貴方との記憶はこんなにも鮮明なのに。
どうして貴方だけ、私の傍に居てくれないの?

「じゃあ僕は一度家に帰るね…またねメルちゃんーーー」

『はいはい分かったから早く帰る!!!』

そう言ってサリバンに職員室に帰らされたメルは
サリバンを追い出してふうとため息を吐いた

「おかえりなさいメル様」

そう帰ってきたメルに丁寧にダリがおじぎをした。
そりゃあ元魔王の奥方様のご令嬢だと知れば対応が変わるのも分かる。
だが、それに嫌がるメルな事位、ダリも分かった筈だ。

『…怒るよ?』

いつもぱっちりしていたその目は細くなる
シルバー色の目になることはない。

「はは冗談だって〜もー」

『…うちのお母さん、綺麗だった?』

そりゃあもう。そう言ったダリにメルは嬉しそうに笑った。

「にしても肝冷えたわ…まさか魔王様の奥方様が来るとは」

「しかもそのご令嬢だったって…お前すげぇな」

『あはは…(それ程迄私の力が強くなっているって分かった)』

恐らく禁忌呪文だろう。何度も使うとかなりきつい。
それに明日起きれない可能性もある。
これ使ったの初めてだし。
少女と接触だって一度もしていない。

『(本当に強くならないと、きっと夢でみた世界になる)』

この場所が壊れて、皆が傷ついて倒れている夢
あんな場所になんかさせてたまるか。

「でもその髪の毛、
ほんとは魔術で作ってるんでしょ」

『あ…バレました?』

へへ、やっぱり?そう笑うメルにダリがそりゃ分かるよーと言った。
別にみせたくないわけではない。
ただ、彼女と一緒に居た時間を貴方達に見せたら
またあの時間が起きる気がして怖かったから。

血に濡れたあの霧雨の夜の様な。

『いつか見せますよ。本当の姿なんて。』

長生きしていればきっとね。そう言って笑った
メルにダリはそっかと言った。


そうだ今はそれだけでいいのだ。


だってきっと少女と一つに戻れば元の身体に戻る。
元の私に戻ったその時、
貴方達は私を受け入れてくれるのだろうか?
嗚呼きっと恐ろしくて私自身が拒絶しているのかもしれない。



一人が二人になってから、
不幸という不幸は未だに起きていないのだから。



+++++++++++++++++++++++++++

「オリアス先生どうしたの?」

「嗚呼メルちゃんの使い魔?
ルアラちゃんに一言言われて嘆いてる。」

そうミレイユとの会話が終わったその日の夜
ルアラがメルの状態が落ち着いている事を確認し
一度男子寮の広場というか集まれる場
ロビーでオリアスと会話をしていた。

うわあああと叫んでいたのはoffのオリアスだった。
気付いたイフリート先生がツムル先生に聞いていた

「だから仕方がないって諦めろ」

「何の話?」

「メルの師匠であり母親のミレイユ様に気に入られてるってこと。」

「えっ…マジで?」

「…俺死ぬのかな?」

逆逆、生き続ける呪いかかるんじゃない?
そう言って冗談に聞こえない
冗談に、イフリート先生がそこまでにして置いたら?
とルアラの暴走を止めた。

「ま。ミレイユ様が見込んだ子だからね…彼女はとんでもない
素質持ってるって皆気付いてるでしょ?」

「まぁ…勿論?」

「まさかオズワルドの孫とまた関わるとは思わなかったけどな。」

「だーから何でうちの爺言ってねぇんだよこんな大事なこと!!」

「そりゃおじ上に聞け。あとお前も特訓だかんな。」

そりゃそうだそう思った一同に、うだうだ言うオリアス。
まぁ嘆いてもしゃーない。吹っ切れたオリアスもまた
メルと共に特訓するらしい。彼女にメールを送った。

すると突如部屋の中にメルがやってきた


『お、瞬間移動だ〜へーー!!こりゃ使えるな!』

「ちょ!メルちゃん!?」

『ちょっと良そうな場所作って来てみた!!』

「ちょっとでする事じゃないよね!!
ねぇ君今絶対安静だよね!?」

「ちょっと誰か!女子寮の誰か連れてきて!!」

「いやモモノキ先生!!モモノキ先生連絡できる人いる!?」

いやー面白そうだったからついーそう言って笑うメルに
女子寮帰れとオリアスがメルの背中を押した。
力を極大に使っている筈なのだ。

周りの対応が一気にざわつくのも無理はない。
何せミレイユというとんでもなく
上の女王様を30分は呼び出しているのだ。
魔力の消費量が半端じゃないこと位オリアス達にも分かっていた。

『ほら私も帰るから、じゃまた今度な』

「「待て待て待て待て待て」」

そう言ってメルの左腕と右腕をイフリートとマルバスが掴んだ
流石にこのまま魔力を使って
下手な場所に飛ばれたらたまったものじゃない。

瞬間移動系であれば自分だけよりも
掴まれていたらついでに飛ばされることを考慮して

二人でメルの身体というか腕をがっつり手で掴んだ。
そうでもしないと彼女はすぐに逃げそうだったのだ。

うるせぇそう言って笑いながらメルが瞬間移動を使おうとするが
どうやら本当に魔力切れのようで、少々焦るメルにルアラが深いため息で
お前なぁ…と言っていた。恐らく前科があるのだろう。

『あのー大丈夫だよ?私一人で』

「そんなことした日には僕達ミレイユ様に殺されるんだけど…」

「流石にあんなこと知ったら対応だって多少変わるから…」

ふてくされるメルに、
仕方がないよと冷や汗交じりにこたえるマルバス
にしてもと続けて言ったマルバスにメルがきょとんとした

「メルちゃんミレイユ様の継承者って言ってたけど
ご令嬢だったとは…魔王の座につかないの?」

『…私には荷が重いというのが一つ。』

「荷が重いって…まぁねぇ」

全ての悪魔を束ねるものだ。
こき使えるというものでもあるのだが
如何せん影響力が半端ではない。

『それに私は相応しくない。
魔王という頂点にふさわしいと言った
訳じゃない事位、私にも分かったから。』

「ん?」

『なんでもない』

「メル!!貴方また調子になって魔力使ったでしょ!!!」

『げっ本当に呼びやがった』

そう顔を青ざめるメルに、両腕を掴まれていたのを
そっとモモノキが来たことで開放され、
その後無事女子寮の部屋に入ったことを
モモノキからメールで確認した男子寮の悪魔達はほっとしたのだった。


+++++++++++++++++++++++++++

メルにメールを送ったオリアスだったが
すぐに電話が来るので出てみた

「ん、どした」

「私だルアラだ」

「ああ黒猫ちゃんかどうした?メルは」

「メルならずっと眠っている。多分今日一日起きない。」

「今日?じゃなくて?」

そう騒動を起こしてからもう3日。ずっと眠っているのだ。
魔力の回復はされていそうだが、一向に目覚める気配がない。
1日2日位なら様子見しようと思ったが、流石に3日は聞いていない。

「ちょ俺そっち行くわ。」

「了解。モモノキ先生には連絡済みだ」

「あんがと、それじゃまた」

そう言って携帯の電話を切り、
支度して出掛けることにした
全く眠り姫とは恐れ入った。


「ちーっす、あモモノキ先生」

「あ!オリアス先生〜お待ちしておりました!こっちです!!」

そう言ってモモノキ先生にロビーで出会い、
そのまま女子寮の奥へと進む

「メルさん全く目覚めなくて、色々試したんですが
今日も眠ったままで流石に心配で…」

「まぁ3日もぐっすりだと流石に心配しますよね…」

「一応ルアラさんが起こそうとしているってお聞きして…こちらです」

「ご協力感謝します。おーい黒猫ちゃん俺だオリアスだ」

そう言ってドアをノックしたら、数秒してドアが開いた
どうやら入れってことらしい。

「しつれいしまーす…ってうわっ、もうぐっすりじゃん」

「寝ている時一度も身体動かないから定期的に私が動かしている。」

流石に三日間飲まず食わずだと不味いと言ったルアラに
命の危険を感じたオリアスがメルを呼び身体を揺らした。

「メルちゃん、おきて…ほら」

『…ん、あれ…あさぁ?』

おはよーそう言って起き上がったメルに
起きるじゃんとオリアスが声を上げた
そんなバカなと驚いたモモノキとルアラに
メルが今何時?と声を出す。

声が何か死んでると言いつつ、
ルアラの言葉に素っ頓狂な声を上げた。





「流石にもっと落ち着いて食べよ…?ってかまだくうの?」

『いやお腹空いてて』

「それでご飯5人前食う量じゃねぇよ…ほらそれでストップ!!」

流石にすきっ腹に胃が過労死してしまう。
そう感じたオリアスに言われてメルは
いやいやながらも手を止めることにした。

「全く…ほら食べ残し」

そう口元にあった食べ物をひょいっと
オリアスは手に取り自分の口の中に放り込んだ
それにメルがわなわなと顔を赤く染めている

…あれと言ったオリアスは自分が先程行った事を思い出して
メルとは時間差で顔を赤らめた

勿論この後メルは食堂を後にして職場に直行したのだった。




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