メルがどうして?と言った途端
とんでもない魔力を感じたオペラははじめと合図を出した。
それにアレはとプルシェンコが問う。
メルの先程の涙よりも、少女の殺害だ
その説明はとルアラが言った
「メルは自分で自分に呪いをかけたというか元々そういう奴だった」
「え?」
「自分のせいで全てが悪い方向に向かう。
それなら自分の心を破壊すればいい。
周りを傷つけず、自分だけが
傷ついてなくなってしまえばいい。」
そうすることで、タガを外すことが出来る。
「それならいっそのこと、
自分の現実が夢であれば良いと錯覚させてしまう。
そうすれば何も不自由ない
…でも現実を見る度に絶望する。
その起伏は、本来あってはならない。」
「赤髪ボンボンが気付いたのには、驚いたが…
まぁ様子を見てくれていた限りで何よりだ」
「俺だって…気付いて止めようと思いましたが
制御しているよりも、無理矢理蓋を押し付けてなんとか
押し込んでいる状態で、聞くのが怖かっただけなんです。」
メルが笑いながら
カルエゴたちに容赦なく炎を向けた
怒りの感情が煮えたぎっているのか、
イフリートが前に出て
使い魔召喚で威力を最大にする
だがそれを押し込み
かき消したのにイフリートが焦り驚いた
メルがにやりと笑い、
そのまま地面に降りたち前に突っ込んできた
「メルさん…凄い、苦しそうだったから。
俺でも聞けるかなって思ってたんですけど
ずっと拒否られてたの知ってるんですよ。
手振ったり髪の毛触ったりする仕草
アレ拒絶なんです」
「え!?」
「彼女が無意識にもう見せては
いけないモノだと思い込んでいる。
それを急に外せと、話を聞くから
言えと言って解消される訳でもない。
でも、彼女の大事な人と会ってから
凄いすっきりした顔になって嬉しかったですよ。」
「だから何も言わなかったと」
「ええ、正直まだ経過観察した方がいいでしょうね。
ですが今は現実を見てあげるのが一番効果的です。」
そう言ってツムルはメルの動きをみていた
真顔になったメルが
カルエゴの背後を取ろうとするのに対して
モモノキが魔術を使い防御と攻撃を同時に行う
びくりと反応したメルが
距離を取った後思いっきり
自分の顔をひっぱたいたのに
オペラがびくりとした
『…煩い煩い煩い煩い!!!いくら殺しても、
お前は手を振り下ろすなら!!私は!!!!』
どうか最悪を願え。
そう言ってふっと笑ったメルが
モモノキの下に入り足でひとけりした
その重さにモモノキの口から
軽く胃液がこみあげて飛び散ると同時に
背後にいたカルエゴが
モモノキの背中を抱きしめ
壁の方まで飛んで行った
ギリギリの所で壁にはいかなかったが、
容赦なく蹴った
『…なぁ、こんなもんじゃないだろう?
何時まで隠れてる?』
そう言いだしたメルの声が高くなった
幼い声とでもいうべきか、
今まで聴いたことの内容な
『大丈夫、ずっと一緒にいる。だからもういい。』
首を横に振ったあとメルは
教師がいない場所を向いて笑う
宙に舞いつつ、手で足をなぞりながら
片手で髪の毛の先を掴んで離す
『足の先から髪の毛の先まで、
終わりから始まりまで』
両手を広げてメルは宙に目を向けた隙だと思い
イフリートが黒炎を作り出しロビンが弓を構えた
『全てすべて、貴方のために。
捧げましょう呪いましょう。』
そう笑って炎と弓矢が
此方に来ることなど知る由もなく
全く避けずにメルが
嬉しそうに笑って言った
『君の名は“都佑”。
魔女の子、都佑だ。』
突如その名前で黒炎と弓矢がかき消される
なんならカルエゴがケルベロスを
作り出して攻撃していたのも消された
光も何もなしに、ただメルの元に
女性がふわりと抱きしめられていた
「…ほんと、貴方という人は」
『へへ…ねぇ、都佑。もういいの。
貴方ばかりが傷ついてたら嫌だよ?』
「だからと言って、もう
…お仕置きが怖いだけでしょ」
そそそそそそsそんなことないよ!?
そう驚いて顔を青ざめるメルに
都佑と呼ばれた女性がくすくすと笑う。
淡い緑色髪の腰まであるのだろうか
ぼさぼさだと思っていた髪の毛は
綺麗なストレートに見える
「“足の先から髪の毛の先まで
全て全て貴方に捧げましょう祈りましょう”」
そう言った女性がメルと
同じような行動をとる
「“最初から最後まで、
何度も何度も永久に続く終焉のカルタット”」
『“手を取って紡ぎましょう”』
くるくると回り出す都佑と呼ばれた女性と
メル嬉しそうに笑って回る
「『“どうか良い時を過ごせますように”』」
そう言った途端女性が消え去り
メルの髪の毛は淡い緑色に染まりだす
三つ編みをして止めていたゴムがはじけ飛び
ふわりと伸びた髪の毛が背中を覆うように髪で隠す。
髪の毛の長さは胸が隠れる程だろうか
少しウェーブを描くようにおろされた
髪の毛は淡い緑色で目が引き寄せられる
『おそい』
そう言った途端、
何が起きたか周りは分からなかった
ロビンの横に浮遊したメルがデコピンをした
それだけでロビンの身体が吹っ飛んだ
「っ!!ロビン先生!!!」
「馬鹿構うな!!!」
そう叫んだカルエゴが攻撃を仕掛け続けるも
全く見向きもせず攻撃を消し続けるメルに
とんでもない化け物だと知り冷や汗が額を伝う
『よわい』
そう言って今度はイフリートの背後に入った
それに気づいたのが少し早かったのが幸いか
イフリートが紫の炎を火力最大で放つ
流石に消し去れる程の威力だったが、
桁が違うのを知って
女性相手でも思わず使ったのに
後で怒られる余地はないだろう。
「…な、!!!」
『ふん…あの人を弔った色よりも弱い、
お前まだ弱いな』
「っち!!んだと!!!」
そう言ったイフリートがメルに突っ込んで
足で身体をけり出そうとしたが
片手で止められたことにイフリートだけでなく
様子を見ていたオペラたちも目を丸くした
『へぇ〜ほんとだ、どうってことないじゃん。
ちゃんと目開けてみたら、痛くもかゆくも無い。』
「っ!(まずい
至近距離から炎を出しても
物理も全て上位互換)」
相手をしてはいけない。
そう本能が警告音を響かせる
幸いなことにメルが
足から手を放した為距離を取れた
まだ動けるかと言った
カルエゴに、ロビンがはいと声を上げた
「っ!!」
カルエゴがモモノキと連携して
攻撃魔法を繰り出しつつ
ロビンからの弓矢が迫るも、
メルはカルエゴと
モモノキの魔法を片手で消し去り
ロビンの弓矢を片手で取ったのだ
それにロビンが目を丸くした
『弓はこう射るんだよ』
そう言ってメルが弓を構えた
ギラギラした目で白い弓を金色の弓矢で撃ち返した
確実に当たると思ったオリアスが
なんとかロビンの頬に傷が行くだけで事が済んだのに
オリアスがホッとする
急いで彼女の意識を失わせなければいけない
間違いなくこれはまずいと思った
突如メルの周りを緑色の薄い膜が包み込んだ
その光にカルエゴがシチロウと声を上げた
「全く、一体どういうこと?
とてつもない魔力放出に驚いて
仕事ほっぽって出て来ちゃった。」
「メルの魔力を
最大限に引き出していたらコレだ」
「嗚呼〜なるほど」
そう言いながらバラムが
自分の口元にある金属を触る
その間メルが繭の中で暴れており、
低い声でバラムが無駄だよと言った
「
外も中も影響がない。落ち着きなさい」
『…っ!!嫌だ、ねっ!!!』
そう言ったメルの背中から白い翼が生える
突如練り上げていたバラムの
それにバラムが目を開けて驚き声が出ない
「っ!カルエゴ君!!!」
「分かっている!おいオペラ先輩!!!」
「全く、君達だけで出来る予定ですよね?」
敵わなかったのだ、そりゃあ助けを呼ぶだろう。
そう言ったカルエゴの下にメルが入り込んだ
目の色は銀色よりかは白く見える
ぎょろりとしたその目を睨みつけて抑えつける
翼が白く光り輝いているのに、家系か?と言うが
無駄な事は考えないとオペラが言う
「っ放して下さい!!」
そう言ったオペラにカルエゴがメルを
上から押さえつけていたのを開放する
すると翼を広げて動き出した
メルの腹に一撃グーで殴ったが
軽く空に飛び翼を四回程
羽ばたかせた所で動きが止まった
「なんなんですかあの馬鹿力!!!」
「まさか此処までお強いとは…
さすがあのお方のご令嬢ですね」
「褒めている場合か!!」
そう言っているカルエゴ達の前にメルが浮遊したまま
見下ろしつつ右手の人差し指を立たせ
右左に指を軽く振った
するとメルの周りに
カルエゴ達そっくりの姿が現れる
メルの相手すると同時に
教職員の御一行等太刀打ちが出来ない
「時間は!」
「まだ半分も行ってませんよ!!」
「加勢します!!」
「すまん!」
そうオリアスとツムルが加勢に入る
きっとメルの心の中に届く筈だ
「“メル!目を醒まして!!!”」
その言葉に振り下ろされた腕がぴたりと止まった
目の色が一瞬青色になった
その瞬間をイフリートは捕えた
「っ!ごめん!!」
そう言ってメルの首に一撃を入れ、
意識を失ったメルが前に落ちていく
それをイフリートが
背中から抱きしめる様に空中で受け取った
輝く白き翼は消えていき、
緑髪の長さも肩より少し伸びた程に戻った。
ぐったりしているメルを
よっこらせと言いながらイフリートが
背中と膝裏に手を入れて
抱き直したまま地面に着地した
「意識は!!」
「ばっ、ちり失ってます…」
「た、助かったぁ…」
そう言ったツムルの一声で
皆も安堵したのか大きく息を吸って吐いた
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「容態は?」
「問題ありません。
ただ意識を失っているだけです
…というか皆さんの方が重症でしょうに」
あばらが折れた者4名、出血者1名、火傷損傷2名
保健室でぐったりと床に座っている者達に対して
プルシェンコは大きなため息を吐いた
まずは重症者からですよ
と言っている間に構わないと言った
ルアラが声を掛けた
「この程度のことなら造作もない。
私に治させてくれ。」
「え!?いやですが」
そう言った黒猫がバラムたちの前に座り目を閉じた
すると呪文を唱えたのか床に何かの魔術円が展開された
床からキラキラと光がゆっくりと巻き起こった
緑色の光と風に心地いいーと言った者の頬から傷が消えた
「これ位で構わない筈だ」
「おお…治ってる」
「回復呪文の効果を
一定の場所で回復させただけだ」
いや確かに出来はするが
一度に複数の悪魔を一瞬で回復させるなどできない。
そう思いつつ、プルシェンコは
自分の出番なしと思い引き下がる
「にしても黒猫ちゃん、
アレ一体どういうこと?」
白い翼、シルバーの色に淡い緑色の髪の毛
笑う姿はメルの面影すらない様に見えた
ただ、泣きそうに笑う姿だけ、
メルとそっくりで何も助けられなかったと
自分の手をぎゅっと握るオリアスにルアラが答える
「メルが一番恐れている状態だ。
己を傷つけて自己の輪に入る。」
「輪?」
「人間界、メルがいた所では
ハチという数字を8と描く。
それを横にすると無限という
意味合いを持つ文字に変わる。」
メルと女性が描いていたのは
空から見ると無限を表すことで
その意味は地獄と呟いた
「自分の心を最大限に愛した後、
一突きすることで痛みを知る。
その痛みが和らいでは痛みを繰り返す。
何度でもいくら目を醒ましても
自分の知った感情から
離れることなど許される訳がない。」
ーずっとこの時間が続けばいいのに
そう言って笑っていたメルを思い出した
職場でも明るく接することが増えたメルが
時折寂しそうにしていたのは感情を知って
この現実を見せたくなかったから。
どうせ手折るのだから。
そう思った時もあっただろう。
知りたくないそう言ったのは本心だった。
「…なら、その魔力を使った後は?
どうなるんですか?」
「分からない。ただメル曰くミレイユ様に保護される前は
毎日のように行っていたらしいがな…もっとも魔術の基礎を
知らなかった為魔術が発動する事は無かったのが幸いだ。」
あとは人に知られたくなかったが大きいだろう。
誰も知らない世界に、ただ一人で居ることを望んだ。
彼女だからこそ、ミレイユは手を差し伸べたのだ。
「記憶が無くなることも?」
「無きにしも非ず。心臓が止まっても
おかしくない位の負荷はかかっている筈だ。」
「っ!何故それを知っていて使用させた!!」
「…主が望むことは絶対。
使い魔のお前なら分かるだろう?」
そう言ったルアラが声を荒げたオリアスに静かに言った
ただ寂しそうに言ったルアラに
何も言い返せずに自分の足元にある床を叩いた
「主がそう望んだ。
痛みを苦しみを嘆きを
…ほんの少し見える喜びを。
お前達に見せても構わないと
決意しただけだ。
大丈夫さ、彼女は主は強い。」
誰よりも、何よりも、
大事な者の為なら
どんな事だって使って戻ってくる。
少し眠るのが多いだけで、
きっと彼女の力はもう
完成間近になっている事だろう。
「ま、沢山声をかけてやるといいさ。
メルの力が強まれば
お前達だって心強いだろう?」
お前達はメルが選んだ、
優しくて強くてかっこいい悪魔達なのだから。
そう言ったルアラがくすりと笑い
メルの傍で丸まり眠りだした
「…僕特訓してくる。
メル先輩驚かせる。」
そう言ったロビンに続いて
モモノキも腰を上げた
「そういやメルさんに
教えてない事がありましたわ。
今から復習を兼ねて予習してきます。」
「僕は準備室に戻るよ。
彼女の力が一時間だけだなんてもったいない。
もう少し効果を下げて
長時間続けられないか薬を作ってみよう。」
そう言ってバラムが出て行くのに、
カルエゴもまた部屋を出る
嗚呼お前達は傍に居ろよ。
そう言って保健室のドアを閉めた。
「…置いてかれましたね」
「ええ」
そう言ったオリアスにオペラが答えた
プルシェンコはルアラから
回復魔法の話を聞くために声を掛けた
仕方がないと言いつつルアラが嬉しそうに笑っているのは
尻尾で分かった
「…俺、途中怖くなったんです。
一瞬だけ、メルちゃんがいなくなってしまいそうで。」
白い翼銀色の目の奥底で、
君は一体誰を見ている?
そう問いかけたかったのをぐっとこらえるしかなかった。
声を掛けたら此方の首が斬り落とされかねないと思った。
そうしたらきっと彼女は目を醒ました途端泣き叫ぶだろう。
嫌だ嫌だとまた蓋を綺麗に塞いでしまうだろう。
なら自分が声を上げると不味い。
だから最近仲良くしてくれているツムルに声を掛けたのだ
きっと彼と自分の力なら、その声が届くと。
目を醒まして
その言葉でメルの目が本来の姿に戻った感じがした
本当は淡い緑色の髪の毛に真っ青な瞳を持っているのだろう。
目が髪が変わるのは、
君があのお方の子供だと言い聞かせたかっただけ。
「…オリアス先生、私は正直今回不味いと思いました。」
「え?」
「バラム君の魔術を壊した途端これは不味いと判断して
多少加減はしましたが攻撃を入れました。
それでも最大を10とするなら6です。
その威力でメル様はたった数回
翼を羽ばたかせて何事もないかのようにふるまった。」
これは恐ろしい悪魔だと。
「ですから私も、恐らく皆がそう思った筈です。
ですが…それでも貴方はメル様をずっと見てくれていた。
どうすれば、この方が後で泣かずに前を向けれるか。」
終わり方を、貴方はずっと考えてましたよね?
そう問うオペラがメルの横髪をそっと撫でる
「…バレてましたか」
「ええ、勿論。それにメル様は
ほんの少しだけ気付いた。
イフリート先生が攻撃を入れる前に
一度だけ此方を見ていたのを知っていますか?」
「え?」
そうきょとんとしたオリアスに
いいえ何でもありませんとオペラは言った
メルは意識を手放して
ただ暴れ狂っている訳ではなかった
ただ、相手の嫌な所を付こうと
必死だったのに、上手く動けなかった。
身体が軽いのを言い訳に、
必死で自分が壊してはいけないと
それでもメルはセーブをかけていたのだ。
ダメだと。
この人達は。
壊してはいけない者だと。
嗚呼願わくば、貴方とずっと居れればどれ程良いか。
そう恋をする少女の様な瞳を、
オリアスに向けていたのを
オペラはそっと心の中に閉じ込めることにした。
「…オペラさん」
「なんでしょう」
「この子が目覚めた時、どんな会話します?」
「そうですね…ではメル様が
どんな反応するか当てますか?」
いいですね!そう言って笑ったオリアスに
オペラは少し微笑んだ