泣き叫ぶ音がした
だから首を絞めた
痛い音がした
だから耳を塞いだ
落ちる音がした
私は目を閉じて夢だと唱えた
落ちた世界に、一凛の花が咲く
青く輝くその花はくるくると風車がいまにも舞いそうな程
花弁を咲き誇らせて揺らしている
『…ここは』
「ずっと永久に在る場所」
そう言った声に振り返ったメルの前には
少女が立っていた
辺り一面真っ暗闇だ。
誰もいない
居るのはメルと目の前の少女と、
後ろにある一凛の花だけ
「ずっと一緒に…居なくてよかった。」
『え?』
「居たらきっと寂しくなるから悲しくなるから」
『…私は』
「私は貴方であり貴方は私。
だけどもう大丈夫。誰も傷付けない。」
だれも貴方を傷つけない。
だからと言って大丈夫だからと言って
開放するわけにもいかない。
『環の中で永久に続いている
この時間が私は好きになった』
地獄でも天国でも好きな場所に居られるのなら
私はそれだけで良いと思った。
夢の中だけで、会えるのなら、それだけで。
でももう、満足できなくなった。
手を伸ばしても伸ばしても
掴んで離さなくなっても欲は満たされない。
その時間に恐怖していることは、
もう過去になってしまった。
『大丈夫、ごめんね。』
今まで、貴方を沢山傷つけた。
だからこれはお詫びなの。
優しい君が、いつまでも笑顔で居られる様に。
これは呪い。優しい呪い。
貴方が付けてくれた、呪いと同じ呪い。
手に温かい光があふれ出た
光の中に今まで過ごして来た時間が映り出される
『…これはロビン先生とカルエゴ先生に怒られた話
これはオリアス先生と一緒に
ダリ先生怖くて走り出した話
あと、あとこれはね?』
そうぽろぽろと泣きだす自分に笑ってしまう
嗚呼、これが幸せという感情なのだろうか?
貴方にこの時間が共有できるという時間が。
『これは、オペラとお魚釣った話、ご飯作ったのもあるよ。
ほらこっちは、サリバンに、あた、撫でて、もらって…』
メル、メル!
そう呼んでくれる声がする
嗚呼私は呪ってやいない。
自分の名前が嫌だったなんて一度もないのだ。
『こっちはモモちゃんとお出かけした時で、これはね?
イフリート先生とタバコの話した時…ねぇ私。』
こんなにも楽しい時間が溢れていて、
まだ嫌だって閉じ込めるの?
そう言ってメルは両手を広げて笑い、
真っすぐな目で少女を瞳の中に映した
『花が咲いて枯れ朽ち果てるその一瞬まで』
私は貴方に誓おう
何処にもいかないし、誰にも奪わせやしない。
だから私の心は、砕く必要なんてないのだ。
『おいで、目を醒まして!』
ミレイユ。貴方に出会えてよかった。
貴方に出会えて、ルアラやオペラさんや
オリアス先生や皆に出会えたから
『さぁ!沢山お話しなきゃどうするの!!』
そう言って私は少女の背中を勢いよく突き飛ばした
落っことした穴を見ながら
私は一人膝を抱える様にしゃがんで
膝に額をくっつけた
『…さびしいよ』
貴方が愛されるべき存在だったのに。
貴方は私に人間に全てを渡した。
相応しいのは貴方の方だった。
だから、落っことした
あの光を追いかけ落ちた
本当はこんなことする予定無かったのだが
どうやら入間に出会ってから変わったらしい。
彼の言う話は皆面白く感じる。
手を伸ばして
今度は、ちゃんと
『掴んだ!!!』
目を開けた
真っ白な天井に、髪の毛が黒く
横に点滴が見えたのに顔が青ざめる
夢だった
これは全て夢だった
長い長い夢の中で
私はまた現実に帰って
「…メル?」
その声に、私は涙をこぼした
ぽろぽろと夢ではなかったと言い聞かせて
+++++++++++++++++++++++++++
「もう歩いて大丈夫なの?」
『うん、ちょっとふらつくだけだから〜!』
そう笑って居たメルの髪の毛は淡い緑色
あれから丸一日眠り続けた後、
大きな声を出して手を前に伸ばしたことで
目を醒ましたのだ。
隣に一晩中付き添っていたオリアスが声をかけて
抱きしめたのを見たのはオリアスが心配で
声を掛けに言った
オペラとモモノキが知っている
「ですがメル様…
お体はお大事になさってください」
そう耳をぺたりと下げて震えるオペラ
それもその筈。
本来メルは寝ても覚めても
緑髪の状態を維持する等したことがなかった。
ましてや悪魔達に見せることなど
今までなく急に立ち上がって
ふらつきながら職員室に顔を出したのに
オペラがオロオロとするのも無理はない。
「ちょ!大丈夫なのメル先輩!!寝ててよ!!」
『あ、ロビーだ。どう?
頬っぺた痛くなかった?』
そう頬に手を置いたメルに、
ロビンが固まる
ん?と全員が思っただろう。
メルがロビー?
と言った事に顔を少し赤らめて
ロビンがいいいいたくなかった!?
と動揺しつつ声を上げた
『っふふ、なら良かったです。全く。
ミレイユの魔力に馴染まなかったから、
僕も上手く調節できなかったの。』
そうふわりと浮かんだメルに、
何が起きていると
こっそりカルエゴが
オペラの方に寄って話を聞く
「私も理解出来ていませんが…恐らく
彼女の本心が浮かび出ている状態でしょう。
今まで閉じ込めていた感情が露わになった。」
「というか元々こういう子よ。ほら」
ふわふわと浮かんでいると
くるりと一回転しかけたので
オリアスが見える見えるから!!
と無理矢理彼女を抱きしめて
取り押さえた
ケラケラと笑うメルに
こっちの気も知って欲しい物だと言う
帽子を被りなおすオリアスにメルは首を傾げた
スカートの中が見えて
何が悪いのかが分からなさそうだ。
「メル、調子はどうだ」
『めちゃいいよ!
…お久しぶり、真っ黒な子猫さん!』
そう言ったメルに、
ルアラが子猫の状態から
身体を人型に変えて飛び掛かった
勿論オリアスを抱きしめる形にもなり、
メルは間に挟まれていた
「〜〜っ!馬鹿!!
こっの大馬鹿メル!!!
心配したんだぞーー!!!」
『…へへ、私ってば愛されてるぅ〜!』
泣きだすルアラによーしよしと言うメル
とりあえずこの状態を剥がそうかと動き出すが
がっちりとオリアスが離さないのにあれ?と言い焦る。
「どーこ行こうとしてんの?」
『え?お外…?』
だーめそう言ったオリアスが
メルを離さずふらふらしている子が
外に出せる許可は出さなかった。
勿論ルアラも同意見で黒猫の状態に戻った後
メルの監視をオリアスと
交代交代で2日程行ったのだった。
+++++++++++++++++++++++++++
それから二日後、ようやく本調子かと思い
メルも休みを満喫しようかと思い足を伸ばした。
ロビンやモモノキは実家に帰っているらしく
空いている教師も居なかった為、
どうしようか迷っていた。
『かと言ってコレ使いたくないしなぁ〜』
そうダリから受け取っていたチケットを手に取った
2人で行けるプラネタリウムチケットを
今まで大変だったので
行く話も全く出来なかったのだ
それに色々お世話になり過ぎていて
自分から誘うのが気が引けた
これじゃあまるでオリアスに
ぞっこんな気がして…きが
『っ〜!考えるのやめたやめた!!』
流石にないないと首を横に振った流石に
身体に抱きしめられた時は
顔が赤くなっていないか戸惑ったが
病人に近い者を抱き寄せただけだ。
…それに、付き合ったとしても、
なんら進展ないと言うのも。
あれ待って私達付き合ってる?
え?無い訳ないよな?
まさか上の立ち位置にいる私に
怖くなって逃げて?
それは流石にオリアス先生のキャラじゃない。
だからと言って自分から言うのも〜
言われたいという気持ちが出てくる!!!
『だーー!!落ち着け私ーーーー!!!!』
「うるせーー!!なんだ
さっきからうじうじうじうじ!!
お前昔っからうじうじしやがって!!!」
『うるせぇ!こちとら純粋無垢な
乙女ぴゅあっぴゅあの悩みなの!!』
「そのお悩みっ子が何で
桜の木の下まで逃げてんだ?」
ぴゅあだから!そう言った私も私で馬鹿だと思う。
全くチケットを片手に悩みに悩んで外に出るとは…
私ってこんなに悩む子だっただろうか…
いやはや閉じ込め続けてうん十年。
流石に一度大量に出した感情の制御が難しい。
メルは唸りつつでもなぁと肩をすくめた
「なんだ?あの金髪悪魔なら
鼻の下伸ばしてすっ飛んでくるぞ」
『…っくく、いや、それは、
やめて欲しいかもしれないっ』
噴き出したことに許して欲しいと思いつつ
想像してちょっと笑ってしまった
あり得ない気がするのだが、
やめて欲しい。想像したわ。
「あいつなら喜んで受けてくれるって」
『えぇ…でも、』
「どうして誘わないの?」
『え、だって、忙しいだろうに
私のこと見てくれてさ?
ただでさえ自分の時間作りたいだろうに
振り回しちゃってる気がして』
「うんうん」
『かと言って自分から行きたいです!!って言うの、
何か自分だけオリアス先生のこと好きすぎって感じ出て
モヤモヤするというか、うわあああ!ってなると言うか…』
「俺も言ってくれたら嬉しいんだけどねぇ〜」
『いや好きすぎて隣でじっとしてたら
手繋がれたりされたら
暗がりでも見えるじゃん。
近くで顔照れるのバレるのやだし…』
「それ位好きってことで、
嬉しいと思うけどなぁ〜」
『って言うかキスしたのよりも手触れたりしただけでも
顔赤くなってないかなって心臓ドキドキしてこっち困るのに
そんなプラネタリウムなんて所にデートとか無理無理無理無理!』
「へぇ〜そのオリアス先生って悪魔、どんだけ好きなの?」
『え!?どんだけって…こう
ちょっとした時に思い出したり
手触れるだけでもラッキーって言うか、
最近お世話になり過ぎてて
癒してあげたいなぁって思ってたりして…へ?』
「…充分です。」
そう帽子を深く被って隣で
幹に両足で軽く腰を下ろしていた
金髪の彼が私服姿でそっぽを向いていた。
耳まで顔を赤くして
何時から聞かれていたのか
もうこの際どうでもいい。
いや良くない。
最初から最後まで
何処聞かれたって恥ずかしいのだから。
メルは顔を赤らめて
大きく息を吸ったまま声が出ずにいた
『〜〜〜〜っ!!いいいいいいついつかっ』
「…どうして誘わないの?の下りから」
『そっ、えっ!それもう!!最初からじゃん!!!』
そう顔を真っ赤にして困る
メルをオリアスは少しだけ見て
俺もまだ青いなぁとぼやいた
『ふぇ〜』
「…ね、それ行かないの?」
『え?いいいいつですか?』
「今から…予定、空けてるけど?」
そう言ったオリアスにメルが勢いよくこくりと頷いた。
その合図に了解と一言
言ってオリアスは立ち上がり
メルがあわあわとふためいたのを無視しつつ
背中と膝に腕を回して桜の木の下に身体を降ろした
「で?今から行く?…
それとも、何処かでいちゃいちゃする?」
俺はどっちでもいいけど?
そう言ったオリアスに
メルは行きます行きますと強く言った。
間違いなくイチャイチャするのはヤバい。
絶対顔赤くなってそのまま熱中症で倒れてしまう。
チケットを片手に押えて、
もう片方でオリアスの胸元を掴んでいた
その為真っ赤になった
困り果てた顔を見てついいじめたくなった
「(っあーやっべ、何この可愛い生き物)」
そう自分の顔が赤くなっていない事を願いつつ
オリアスは綺麗な服装に着替えると言っていたメルを
女子寮まで送っていくことにした。