『(ポマードポマードポマードポマード!!
ああ違うこれ口裂け女の回避呪文!!!)』
あとポマードは三回で構いません。
そう冷静に忠告する自分に嫌気がさす
此処は悪魔の世界、魔界。
この物語は魔王の嫁である魔法使いミレイユの力を引き継いだ
メルがミレイユに保護され魔界に辿り着いた
彼女が魔法使いとして力を駆使しようと
翻弄されている間の僅かな休息の物語である。
つまり久しぶりにきた恋愛ぴゅあっぴゅあ物語だ。
『ちゃう!ぴゅあちゃう!!』
「ぴゅ?何言ってんの?ほらこっち」
そう言って手を取られて顔を真っ赤にしている女性の名はメル
髪の毛は水色よりかは青めな彼女が目をグルグルと回している。
そんなメルの手を引いているのは一か月近く彼女と付き合っている
元彼女の教育係であり彼女の彼氏であるオリアスだった。
『あうあうあうあう〜』
心臓が破裂しそうなほどに音を鳴らしている
全世界の女子がこんな気持ちで恋をしているのか
お前達本当に凄いと思う心の底から尊敬する。
私は今すぐ死にそうだ!!!
そうメルはなけなしのおめかしをしてオリアスの腕から
離れられずに足を前に出して進んでいた
何時もはワンピースとしてとりあえず来たら可愛いし楽だし何とかなる
と思っていたメルだったが、急な事に戸惑い
つい最近モモと買いに行って次の買い物で着ようとしていた服を取ってきてしまった。
紺色のスカートの先にはフリルが付いており、控えめな色で
腰元には二つ黒いボタンがとめてあり、金色の縁を描いている。
背中をあまり見せられないように、
上着に薄い白のカーディガンを羽織った。レースが幾つか縦に施されており
背中部分は少し濃く見せれない様になっている。
中は白のV字Tシャツを着て、香水を入れられるように
留め金は銀色で四角形が二つ程ずれているおしゃれなバックが揺れる。
蓋の部分は黒で周り赤のショルダーバッグを肩にかけて小走りで走る
メルのはいていた靴からしたら少し高く、ヒールにしては低めで、
何時も履いている靴はシューズ一択だったので少々慣れない。
前にミレイユとオシャレを楽しんでいた時に履いた以来なので…えとえと何年前?
髪の毛はもう三つ編みするの分からなくなってそのまま放置した!!
もう知らない!え?化粧?えっっとですね…なんですかね?
とりあえずファンデーションってやつを塗りたくって、ちょっとだけ
ぷるぷるするの唇に塗りたくって、頬に爪の色と同じ位の色ぶちまいた!!
間違いなく誰かに怒られる気がする。
特にうちのクラスのアブノーマルクラス
私は言わなければ勝ち!そう思いつつ、
私は少し腕を握る手が痛いなぁと
思った気持ちが周りを見渡して消えていく。
『ここですか?』
「えーっと、Gの25と24だからここだね。ほら座って」
そう言ったオリアスの姿は
中に白のTシャツ上に濃いグレーの薄いパーカーを羽織っていた
といっても身体の形が見えるもので、ズボンは黒く、
何時も見ているスーツ姿とまた違う。
髪の毛を降ろしているからだろうか?
サングラスをかけているのがまたかっこいい。
ああちなみに私は女子寮から出た時にオリアス先生が
口を大きく開けてこっちをみた後わなわなと震えて
「コンタクトか眼鏡かどっちか選んで!!」と言って
私はコンタクトを選び、周りから判別しにくいようにした。
一体何故そこまでするのだろう?
ってか多少顔が赤くなかったか?キノセイか。
『はぇー(人間界と空はほぼ変わらないのか。
そりゃそうだ地球の一部だからな)』
そう自問自答しつつ、辺りを見渡していると
こんな所来たことないの?と言ったオリアスが
先程買っていたポップコーンとオレンジジュースをメルに手渡す
その返答にうんと大きく頷きながら
手渡された持ち物に対して礼を言った
『あっ!ありがとうございます!!すいませんお会計』
「いえいえ、そういうのは男に持たせるもんだよ」
『あう…でも』
「ほらこのポップコーン美味しいよ」
そう言って差し出されたポップコーンを
オリアスとポップコーンに目をきょろきょろ向けつつ
口の中に入れてかみ砕く
サクサクと音が鳴るその音だけでなく、味もちゃんと
トウモロコシの味で、最早人間界にある
ポップコーンのソレと変わりなかった。
美味しいと眉を上げて喜ぶメルに
オリアスはそりゃよかったと微笑んだ
ジュースを飲み、一息ついたのか
メルは背中を背もたれに委ねた
『そう言えばオリアスせんせ』
「こーら、外ではその名前だーめ。」
『えっじゃあ…オリアスさん?』
「待ってそっち?嘘でしょ?」
『はっ!…まさかオズワルド』
「いやそれもうネタでしょ…もういいよほら食べな。」
俺後でいいからそう言って渡したポップコーンに
メルがキラキラした目でありがとうと言って受け取った
「(オズって呼んでくれてもいいのに…
照れて言わねぇところがまた可愛らしいんだよな)」
隠そうとするのが上手いのは何もメルだけではない
オリアスもまた照れ隠しをするのでメルのボケに気付いていた
女子寮から出て来た時はプラネタリウムよりも
自分の部屋に閉じ込めたくなった。なんて言ったら
彼女は怖がるだろうか?それとも怒るだろうか?
職場では確かに化粧はしていそうなのは見かけていたが
こんなに薄い化粧はほぼ初めてだ。
あれでも顔の肌が前から綺麗だから
…まさかひょっとしてノーメイクだった?
いやだとしても、
髪の毛を降ろして薄い肌を上着が隠しきれていない
そんな彼女を他の悪魔に見せたくないと思ったなんて知られたら
こっちだって…
ーだって私ばっかり好きみたいで、なんかやだもん。
そう言った彼女の気持ちに酷く同意した。
こっちだって君に沢山振り回されているのだ。
ただでさえ元が可愛らしいのに、ちょっかいをかけると
驚いて面白い反応をみせる。
だから同僚や上司だって君をつつきまくる。
その姿を見て、モヤモヤしない訳がない。
せめてこんな日位は彼女を独占させてくれたって構わないだろう?
そう思ったオリアスがメルの持っているポップコーンに手を伸ばした
口の中に放り込んだそのポップコーンは確かに美味しかった。
んまいと言った一言に対して、メルはそうだよね!と笑って言った。
嗚呼、その嬉しそうに笑う笑顔が、お似合いだ。
嬉しそうに笑いながら喋るメルは今日一段とお喋りだ。
元々お喋りだったのか、それとも緊張しているせいなのか
静かにしている彼女を見てきたので意外な一面だと思った。
「それで?」
『あう…オリアスせっぐ…さんは、
話したい事、ないんですか?』
ああどうやら自分ばかり喋っていて
大丈夫かと思ったらしい。
言いたい事があれば全部聞いてから
喋ってやるというのに
彼女は本当に
「いや、メルちゃんが
嬉しそうに喋るから
もっと聞きたいなって」
『〜〜〜〜っ!!!』
あ、顔また赤くなった。
そう思いつつ、ブザーが鳴る。
どうやらプラネタリウムが始まるらしい。
薄暗くなるのに可愛らしい顔が
見えないのは少し残念だが
また後で沢山からかってやれば見れることだ。
楽しみの一つとして取っておこう。
放送にいつも自分が教えていることに気付き
自分の授業こんな風なのかなぁ
と思いつつ休日は楽しまなきゃと
意識を変えようと首を横に振った
今は隣の彼女との時間に費やすのだ。
そう思っていたら服が何か引っかかるいや
引っ張られるのに気付いたオリアスが
引っ張られた方向を見た
『…ね、あれは?』
メルが気になって声を掛けるよりも先に
身体が動いたのだろう。
そうかなり小さな声で喋り出した
メルが指をさした先は
嗚呼と声をもらし、
放送の合図10分程星を探して下さいとの
アナウンスで声を出した
「アレは魔そり座だね」
『んーーーっ魔。』
「…ちなみに別名は?」
『さそり座です。』
一文字違いかい。そう言った
ツッコミにメルが笑う
夏しか見ることができず、縦に長く、
常に地平線付近にあるため
全体像を見る機会はなかなかない星座
そう説明するオリアスにメルがへぇーと声を上げる
『あれ、確かギリシャ神話で、狩人であるオリオンが
「自分より強い生き物はいない!」って言ってたのを
ちゃっかり聞いた絶対神の奥さんが怒った話だったような…』
「へぇー」
『確か…オリオンの元に1匹のサソリを放ち
何も知らないオリオンはサソリにさされて死んじゃって
オリオンを倒したことをたたえられて
サソリはさそり座になったって』
そう空想生物学で聞いたと言ったメルに
詳しいねぇーと声を上げたオリアス
それ苗字間違えてないよね?と睨んだオリアスに
まさかーな訳ないよね?あれ?と急にメルが不安がった
「ふふっ、まぁいいさ。
ほら一人で星座見つけれるかな?」
『えっ!!オリっ、アスさん
一緒に見つけてくれないんですか!?』
「馬鹿、俺を誰だと思ってるの。
俺言ったら答えだよ。」
そりゃそうだ。
何せ星に導かれし家系だ。
教科になっているオリアスの得意分野で
一緒になんて答え合わせどころか
答えを教えているようなものだ。
それにメルがえぇーとジト目でオリアスを見る
まあオリアスさんが居なくても
私出来るもんと言い
自信満々に言うメルを少し様子見する
自分の手に持っている星座表と空を交互に見比べつつ、
空にかざして閃いたのかアレだと指を指した。
だが間違いなく違うのは明白で、
オリアスの方を向いたメルに
首を横に振ったらメルが
びくりとはねてショックそうにしていた
まだまだ!と言って指を指して
三回目だろうか流石に泣きそうな声を
出したのにもう真顔で耐えられるわけが無かった
「っくく、そんな、むきになることないって」
『んーーー!!!』
オロオロとする彼女を見ていて
楽しい物は他にない。
だが泣かれても困る為、
ヒントを出すとえっと真顔になる…
おっとヒントを出し過ぎてしまったか?
ぶつぶつ言った後分かった様に
こっちがこうだからアレだ!と言って指を指す
どう?そう言ってダメかな?
と眉をハの字にして
此方の様子を伺い首を傾げる
「ーっ、正解!」
『っ!やっ…た!』
そう大きな声が出そうになったのを
必死で止めたメルに心の中で偉いと言いつつ
オリアスはそんなことよりメルの困り顔に弱い事は
彼女にバレない方が良い方が大事だと思った。
余りにも可愛らしい為、
本当に何処かに閉じ込めておきたくなる。
ため息を吐きつつ、
自分の彼女が可愛らし過ぎることの
ため息とは言えない。
そんなオリアスは自分のコーラを
気持ちと一緒に胃に流し込んだ。
+++++++++++++++++++++++++++
『っはー!にしても楽しかった!!』
「流石にラスト解説者として
出されるとは思わなかったけどな」
どうやら開始10分の会話が裏側の人に回っていたらしい。
二回目でお呼び出しが入り、
オリアスは一人で行くのは無理と言って
メルを巻き込んで舞台に上がって解説をした。
勿論メルも授業を忘れていたわけではなく、
サポートとしても余り悪魔には伝えていない
空想生物学の観点からしても
少し小難しい話を簡単にして解説していた。
「流石に人間の話された時には肝冷えたけどな」
『へへ、文献で載ってた言ったら大体騙される!!』
まぁ事実は言っているので、
騙してはいないのだが。
悪魔の世界に文献は載っていないのであって
文献自体は人間界にある。
何なら自分の資料庫にあるだろう。
『にしてもこれ、貰っちゃってよかったんですかね?』
「ああ、良いんじゃない?」
お詫びとしては何ですが…と言って
オリアスとメルは
今回のプラネタリウムは期間限定の為
星座の栞を二つ分と、星座をモチーフにしたのか
色のついたネックレスを二つ頂いたのだ。
一つは緑色、一つは赤色の綺麗なネックレス
星の形は丸く、中に星が散りばめられていて
ずっと見て居たくなる。
『かわいい〜!本読むとき挟むの楽しみです!』
「俺も丁度本読むとき挟むもの欲しかったからラッキーだったな」
『へへ今日はありがとうございます
…とっても楽しかったです。』
そう言ってプラネタリウム館から出て来たメルは笑う
それにどういたしましてとオリアスが微笑み返した
「全く、行きたいところあったら
いつでも言ってくれて構わないんだからね?」
『うっ!そそそれはおおおおオリアスさんも!!』
「オズって…呼んでくれないんだ」
そう言ったオリアスにメルがまた顔を赤らめた
初心だねぇと言ったオリアスに
そんなことないもんとそっぽを向いた
それにしてもちゃっかりと
オリアスの手を握っているメルは
全く気付いていないのだろうか?
まぁオリアスの心はメルが
自分の為に誘うかどうか迷っていた
あの桜の中で思いの丈を言ってくれたことで
既に満たされているのだ。
だが、それでも呼ばないなんて、
ずるいじゃないか。
そう思ったが、やはり
いじめ過ぎたかと思ったオリアスが
苦笑いして冗談と言おうとした時だった。
夕日に照らされつつ、メルが
一瞬だけオリアスの方を向いて言った
『…オズの馬鹿』
オズ迄は此方を見て、
後はそっぽを向いた恥ずかしかったのだろう
それでも自分の名前を呼んでくれたのに
嬉しくない訳が無いだろう。
頭をガシガシとかいた
オリアスがああもう!と言う
「やっぱ最初の約束前言撤回。
イチャイチャする」
『っぇええ!?ちょ、きゃっ!
こっら!離せ!!馬鹿』
「男の心を弄ぶ君が悪い」
全く此方はかなり抑えているというのに
本心を露わにした君は小悪魔ではなく最早悪魔だ。
空を飛んで姿を消した二人を見かける者はいない。