輪廻転生。それは神々の冒涜。悪魔の契り。
それは人ならざる紛い物の姿。
「転生…?え?どういう」
「ミレイユが一時期作っていた呪文は
完璧な契約を可能とする魔女を誕生させることだ。
それが出来れば悪魔がもし人間界に渡っても阻止する事が出来る。」
『だが膨大な情報量を得て、かつ
一から育てて恐怖心を消し去るのは困難。』
「そこで知識を得た者の魂だけを肉体に宿した。
まぁ正確には恐怖心を感じさせない魂を作り出すという
恐ろしい実験だった為、途中で中止したのだが。」
「運悪くメルちゃんが引き当てたってこと…?」
『そういうこと。だけど禁忌呪文は中止厳禁じゃなかった?』
「正確に言うと禁忌呪文じみたモノだ。
これはあくまでもミレイユが
作り過ぎた実験に過ぎないからな。」
後から禁忌呪文として効果を発揮する為、
これは一度だけしかしていないし
メリットがお互いほぼないに等しい為
これが出来るのはミレイユだけだ。
そう言ったルアラがため息を吐いた
『…成る程、だから中途半端に記憶が混じっている。』
途中で中止したから、だから転生前の記憶が
時間軸が今の身体に変に入っているのだ。
それなら年齢が記憶と一致しないのも頷ける。
変に綺麗な着飾った世界は全て
転生前の記憶という事なのだ。
という事は、入間と同じような
人間界とはまた違うのかもしれない。
私の前世がどこら辺の人間界かも分からない。
「477ページ右側を見て見ろ」
『…あ』
そう口から声が出たメルが見ていた
赤本をバラムが覗き込んだ
ペラりとめくった所に絵が描かれていた。
『タイムトラベラー』
「そ。お前を保護したのは1594年前後の10月だ。
人間界の世界の暦では16世紀だ。」
『…魔女狩り!!魔女狩りが行われていた、時』
「転生前の暦は?」
『…21世紀、2009年え、待って待って待ってまって!?』
そう驚き赤本を抱きかかえ後ろに下がろうとするメルだが
後ろにはオリアスがおり、
メルの肩に置いていた手がはなれた
ずりずりとオリアスの胸に
背中を頭を押し付けるだけで
距離は取れていなかった
「え?どういうこと?」
『つまり私は別世界の異世界転生者ってことです』
首を傾げるバラムに
えーっとですねぇと頭を抱えてメルが悶々する。
『この世界は悪魔の魔界と人間界があります。
ミレイユも私も人間界に居ました。ひょんなことから
ミレイユは悪魔と契約を交わし、魔女に。そして私を拉致
この時私は転生した2度目の人生を送っている事になります。』
こんがらがる状態なので、簡単に説明しよう。
『例えばバラム先生。貴方は今お腹が空いています。
目の前には魔ーメンと、肉料理。貴方はどちらを食べますか?』
「え?…魔ーメン?」
『ここで魔ーメンを食べた時間軸が生まれます。』
そう言ってメルはバラムの顔を描き、
魔ーメンとバラムの間に線を引いた後
魔ーメンの下に更に線を引いた。
『ここでナベリウス先生がご飯誘ってきます。』
「ないよ普通」
『いいから。でバラム先生
貴方はご飯の誘いを断る?受ける?』
「…断る。」
『そうしたら断った時間軸に入ります。
これが続いて行くのが人生です。
此処までは良いですか?』
うんそう縦に頷いたのを見つつ、
オリアスもまた頷いたのをメルは確認して縦に頷いた。
『世界において、ある時点から分岐し、
分岐前の世界と並行に連なる別の世界のことを
パラレルワールドと呼びます。』
「じゃあ僕が最初に肉料理を食べた世界の僕も居ると言う事?」
『そうそうそう!そう言う事です。で、ですね。
この時間が戻る事って出来ないじゃないですか。
でも肉料理も食べたい魔ーメンも食べたい
一度に味わえるなんて美味しい話良いと思いません?』
「う、うん」
『それが元の時間に戻ったら叶うんですよ!凄くないです?』
でも、一度に全部食べたらいい話じゃない?
そう言うバラムにメルはため息をついた
「つまり自分が思った選択肢とは違う選択を
ミレイユ様は行ったのがこのページってこと?」
『まぁかなりざっくりですが…そう言う事です。』
「だけどそうならおかしくない?
メルちゃんの住んでいた時間軸は僕達と同じで…あれ?」
『恐らくですが、ミレイユは何かを悟った。
そこでこのままでは不味いと思ったミレイユは一度
人間を魔女にする呪文を作ります。』
だが操作できない。諦めたが、
実は中途半端ながら成功はされていた。
『ミレイユ自身が一度時間軸を移動して、
そこで出会ったのが私。
ただその時ミレイユは魔女になる魔法を
かけれていないと勘違いし
どうせ迷惑かけてないし大丈夫だと思い元の世界に戻った。』
だがその場所がそもそも
違う人間界の場所で、
時間軸を戻そうとしたが
もう戻る気配は更々ない。
同じ魔界の世界に帰れるわけが無かった。
かと思いきや、
人間界で見つけていたメルの魂が
何故か町外れの小さな家の地下からの反応に気付いた。
まさかと思い、ミレイユは地下の中に居る少女を見つける。
虚ろう目の奥底に、
帰りたい帰れないと惑う感情が渦巻く子。
実験は成功しており、
見つけていた少女が居ること
そして劣悪な環境の場所から保護すると同時に
自分の軽薄な行動にけじめをつける。
それが契約の契りだ。
「つまりメルちゃんは、ミレイユ様の目に止まって
魔法がかけられた状態で転生しちゃったってこと?」
『それなら私の記憶が曖昧なのも、
魔女狩りの対象も時系列が全て一致します。』
「え、でも今の人間界メルちゃん知らない世界じゃない?」
『いやそれが私の転生前の生まれた場所とほぼ同じなんですよ。』
ここが異世界ではなく、パラレルワールドど言いたい所だ。
異世界であれば全く違う世界のことになる。
異なる世界という文字の通りだからだ。
魔法で時間を飛ばしたミレイユがメルを見つけた。
その時には時間を飛ばした以外の
別の魔法がメルにかけられており
元の場所に戻れなくなったミレイユが、
飛ばされた場所でメルを見つけ保護
その後メルに魔女として生きれるようにも
人間界でも生きれるように、
当時人間界に視察に来ていた
オリアスの祖父オズワルドに出会い、
交流を持っていた彼にメルを任せた。
そこでオズワルドの幸運を最大限に発揮できれば
本来の時間軸に戻って来れるという寸法だった。
「なんという、突破的な方法…」
「メル、分かっていると思うが」
『人間界に行っても
私の居場所は何処にもない事くらい分かってるよ。』
過ごした家族、友人、学校、
その他全てが知識記憶だけで保持され
最初会いたいと思っていた人達が
私のことを知る者はいないだろう。
下手したら自分と同じ人間が
人間界で今も過ごしているかもしれない。
尚更私は居られる理由が無くなってしまったではないか。
ああでも良いのだ。
それでいいと私が望んだから。
『私は魔界で魔女として生きていくって決めてるんだから。
かなり驚いたけど、これで記憶の整理もついたから大丈夫。』
「…ならいい」
『にしてもびっくりだわ、
こんな恐ろしい禁忌呪文丁寧に描けてる。』
まさか使用しようだなんて思ってないよね?
そうバラムに指さされて、そんなことーと言ったメルに
嘘とブザーで一発バレた。そりゃあもう怒る怒る。
駄目だからね!他何書いてるのかきっちり説明して!!
どうせ全部駄目って言うけど!!
そう言ったバラムにメルは苦笑いする
『あ、そうだルアラ。この赤い本の内容は本当に魔女が出来るの?』
「ん?どういうことだ」
『悪魔にも使用できるんじゃない?
一応悪魔の書庫全部消し去った記述まであるし。』
「え゛」
「あーあり得る可能性はある。
何なら禁忌呪文とか言い放って
悪魔の悪周期での危険度も入っている筈だ。」
だろうな。そう思いながら多少ペラペラとめくる。
時間軸の操作、自分の世界よりも未来に行く方法、過去に行く方法
記憶保持での転生の仕方、異世界から魔獣を呼び出す方法等…
見れば見る程顔がしかめる程の恐ろしいことを書いている。
禁忌呪文というよりかは、もういっそのこと
焼き尽くして消し去った方が良いのではと思う位重い本だ。
そっと本を閉じて、メルは現状を理解する。
まあ綺麗に飲み込めたわけではないが。
『…へぇ、ならミレイユ私のこと買って正解だったねぇ。』
ニヤリと笑うメルにルアラが首を傾げた。
一体私を誰だと思って見つけたのか、
本当に彼女のみが知るものだ。
『私がどうして魔法使いになりたいか
って言ったか、あの人は驚いただろうな。』
転生前に確か薄っすら言われた覚えがある
記憶が薄れる午後7時暗闇にパトカーのランプが音と共に煩くて
目の前に足が見えて黒い装束に
今日はどこのハロウィンだったかと思い返すも
ハロウィンはまだ先の話だった。
ーお前は何を願う
その言葉に、私は願ったのだ。
ーもう一度自分を殺したい。
なんて恐ろしい願いに、どうして彼女は手を取っただろう?