Novel - Paola | Kerry

it's just you


ループの止め方をわすれてしまったようです2

20/09/15
39

「っと…ねぇソレ大丈夫?」

「まぁ大丈夫ですよ…恐ろしいですよ
ミレイユ様が見込んだっていうのマジですよ。」

倒れて息を吸って吐く事しか出来ない女性に向けて
オリアスは指を指して言う

「だってまだ全く折れていない」

光る銀色の片目の背後にメルが飛び掛かった
両腕を広げてグーを作った後手に一点集中
身体を丸めている姿にオリアスがにやりと笑う

「絶望してるのに、どれ程痛めつけても折れないとは…」

ダーツを後ろに刺そうとする
オリアスにメルが避け切れず作り出す

逃げ切れたメルが
距離を取りすーっと大きく息を吐いた



『…っふふ、ははっ、ああはははっ』

そう笑いだしたメルに、
バラムが壊れた?とオリアスに聞く


『あーあっおかしい、おかし過ぎるわ…
あの人がもしコレを望んだのなら
私天才かもしれない。』

そう嬉しそうに微笑みながら左手で頭に人差し指を立てた
メルの目は銀色に光り輝き首元が微かに光り出した
そうかこの感情が、そうかと言いながら

オリアスの目が見開いた

「っ!!お前…嘘だ、ろ?」

にこりと微笑むメルの目は片目が青くなった
こういうことなら早く言えよとぼやきながら
オリアスの目の前に入って叩いた

『…こういうことか』

ほら、そう言って手を出したメルにオリアスは
腰を抜かして後ろに肘をついたままきょとんとしていた

「…お前、意識ってか感情」

『消したよ?感じたでしょ?
私これしたくないからさぁ?
ずーっと隠したり使ったりしてたのに。
ルアラったら酷いよね!!』





…ねぇ、オリアスせんせ?

一度白い世界に飛ばした

自分を何も出来ない何もいない世界。




ただ何も感じない世界。


ポツンといるその場所は
絶望を掻き立てるに充分だった。



一人だけ、
自分だけが世界に取り残された
その絶望を


そこには少女が此方を見ていた
奥底を見ているように
じっとこちらを見つめている



ずっと、ずっと


「…なんで」

声が出た途端、場所が切り替わる
少女も白い世界も何もない
ただオリアスの隣にバラムが態勢を変えていた


メルは浮遊して空に浮かび
オリアスを睨み目を細めて笑う


『つまりこういうこと』


そう言ってメルはパンと手を叩いた
そこから開くように手を動かすと
植物や花々が溢れて零れ落ちる
世界が一辺して花畑を繰り出す
匂いも感覚も全て変わる


ツルに巻き付けられて気絶していた
アスモデウス達が落とされて意識を取り戻した



「…っ、ここは」

「夢か?」

「いや、夢じゃない。
意識を持ってこれは現実だ」

メルの目は銀色に光り輝きだす
オリアスがルアラと声を荒げて呼ぶ

「…そのままだ」

「っ!!だが!!!!」

「子が華咲こうとしている。
見て置け、幼き悪魔よ」

両親の中で子供が笑っている
嬉しそうにただ、嬉しそうに
手を伸ばした後、切り落とされる

ニヤリと笑いメルは少女に言った

『“おまえはざいにんだ”』

何処からか槍が少女に突き刺さる
一つだけではない二つ三つ数が増える
ポタリ、赤い血の音が鳴り響く
落ちた先から白い世界が広がっていく

「っ、なんだこれは!」

「…オリアス・オズワール」

何かを察知したオリアスが急に自分の名前を言う
それに気づいたバラムが生徒に名前を呼ばせる

「ふたりとも自分の名前は!!」

「え」

「言え!!」

そう強く言ったオリアスに驚き
三郎がびくりとはねて言う
それに引き続きアスモデウスも渋々答えた


「さ、サブノック・三郎」


「アスモデウス…アリス」


「おい白むくちゃ!」


「ねぇ待って?僕はバラム・シチロウだよ
…良いかい君達、此処はメルちゃんの世界だ。」



そう岩から降りたバラムの岩自体が消えてなくなる
まっさらの世界白しかない場所に世界が消えたかの様


メルの頭にオリアスが落とした帽子がふわりとかぶさる
箒は浮遊してメルのポケットに仕舞われている中
メルはオリアス達の方を一切向かずに自分の服をはたいていた

「ルアラ、これは」

「メルがずっと見ていた世界だ。
お前達良かったな。
これでまた一つ強くなれるな。」

そう言ったルアラにアスモデウスが首を傾げる
メルの能力は幻影だと知らされ、驚き目を丸くした

メルが一度も言葉を発していないまま此方に身体を背を向けた
そのまま横に揺れて何処にもいない場所に槍を作りだし横へ切った

横から見えたメルの目は黒く、
ただ前を向いて口を堅く閉ざしている

白い場所から赤い血しぶきが飛び散り
顔についたのにも関わらず
叫びも驚きもしないメルの目は、
ただ前を向いて身体を動かす

右、左、後ろに下がりまわって足で蹴り上げる
槍を投げた後攻撃はやめずに走り続けていると
都佑の地面が赤く染まった時

アスモデウスの背後から声が聞こえた


雑音だ何を発したのか聞こえなかった
だから後ろを振り向こうとしたその瞬間
黒い服がアスモデウスの視界に入った

首を傾ける少女に対して、メルが首を横に振る
雑音を言い放った。何を言っているのか分からない。




ただわかるのはメルの背中から槍の光が見えるだけ。


「っ!!!メル様!!!!」

槍を引いた途端メルが膝から崩れ落ちるのを受け止めた
アスモデウスは少女を見た

その少女はみすぼらしく身体をわなわなと震わせ
首を横に振って否定をしているようだった
何をすると言いたかったが、喉元で止まった

いやだ、そう言いたそうな顔に目元に涙が溜まる
リンと鈴の音が鳴り響く

するとアスモデウス身体の場所には
メルのぬくもりも何もなく
ただ一人だけになってしまっていた。
一体何処だ此処は…私は一体。

振り返ると少女が立っていた
みすぼらしく髪の毛も整え切れていない少女
白いワンピースでじっとこちらを見ているだけだ
じっと、ずっと…その目が声が手を伸ばそうとしたその時

パンと手を叩く音がしてハッと目が覚めた
黒髪の少女は何処にもおらず、先程迄戦っていた
バラムとの位置に幻を見ていたのかと思った

『…ねぇ、アスモデウス・アリスよ』

ソレは本当に夢?そうメルが指を指して怪しく微笑んだ
何?そう思って指の先、自身の手を見る
そこにはメルを庇った際についた
メルの血がべっとりとついていた

「…わぁお」

「こらこらうちの生徒を何驚かせてるの」

『いやぁ〜つい!』

そうケラケラと笑うメルにアスモデウスが声を掛けた

「え、あ、あの!メル様!!」

『それは夢だよ…そう、本当に?』

そうにやりと笑って微笑むメルにしびれを切らしたバラムが答えた

「…メルちゃんの魔術は幻影。
それも精神的に孤独にさせることが得意とするものだよ。
“自分で感じたモノ全てを
相手にうつし見せ体感させる”
…それが彼女の得意分野だ。」

「あ、え、ま、待って下さいバラム師匠!!それでは」

それではアスモデウスが感じたあの感覚は
一度はメルが感じたという事になってしまう
青ざめたアスモデウスにメルはごめんねと首を傾げて答えた

『ちょっと操作上手く効かなくて最初オリアス先生だけに
ちょーーーーっと見せようと思ったんだぁ』

「そのちょっとが3回位
立て続けに起きたんだけどねぇ…」

そう冷や汗を流すオリアスに
アスモデウスがアレを三回と答えた

「メル様、貴方は…」

『ねぇアスモデウス君』

はいそう答える

『一人だけの世界で真っ赤な血を見た時、君は恐ろしいと思った?』

「…はい。感じました、自分が何も出来ずなにも、助けられず
メル様がズレ落ちた時に…もっと早く気付いていればと…!!」

『そう。それがあるだけ充分よ
私ね?その感覚すっっごく鈍いの。』


なんでか分かる?
そう首を傾げて聞くメルに
アリスは首を横に振った


『私はあの時間を毎日繰り返して生きて来たから!』


そう嬉しそうに笑って、彼女は言った


あの、自分がむなしく
何も出来ないで全てが終わった時間を?

毎日とは一日何回だ?


いや毎日どれ程の感情を捨てて貴方は



『だから私は自分に対しての感情の痛みが分からない。
アスモデウス君私は君が羨ましいよ。
そうやって絶望出来ていたのは何時だったか、
もう忘れちゃったから』


そう寂しそうに笑うメルに
何故そこまでして痛めつけるのかと問う
あんな世界あんな場所で一人だけポツンと寂しく居れるのかと


『居ないといけない場所に生きていたから。
本当はコレは敵に見せるとっておきだったの。
ねぇ、こうやってさ』


白い世界がまた広がる


『現実と幻がどっちか分からなくなるの…コワクナイ?』


「…こわい、ですね」



普通に怖い。

素直に、これはやられて脳がバグる。


オリアス先生がそう言っていたのをアリスは頷いた。

今なら分かる。これは不味い。

名前を呼んで自分が現実に居る者だと
言い聞かせないと呑まれる。



この悪魔に、目に、呑まれてしまいそうだ。



『大丈夫!敵じゃないから、
君は取って食わない。』


「…もし、敵なら?」


『君が味わった以上の世界が待っているよ』


「抑えたにしてはやり過ぎだ馬鹿」


そうオリアスにチョップされて
笑顔のまま固まっていたが

数秒後痛い痛いと泣きながら
両手で頭を抱えてうずくまった


『なんでぇ!!私抑えたよ!?
どちゃくそ抑えたじゃんかぁ!!!』


「まぁ抑えたけどな!?
ソレはそもそも普通きついの!!!」



馬鹿みたいな言い合いに、
アリスは何やっているのだろうと思うように
ジト目で彼らの喧嘩を見ていた

入間の周りを巻き込んでいく姿も凄いが
都佑のたった一人の世界に
巻き込まれるのもまた凄いと思った



『オリアス先生?これで1つはクリアでしょ?』


「〜まいったな、ああそうだ。」


やたー!そう言って笑うメルにサブノックが声を掛けた
先程のが本来のメルなのか、今がそうなのかと


それにメルはオリアスの顔をじっと見た後で答えた


『二つとも同じだよ。
まぁこっちよりも白い世界で見た方が私かなぁ』



寂しそうだった?

悲しそうだった?

何も感じてなさそうで怖かった?

そう聞くメルにサブノックがこくこくと頷いた。
嬉しそうに笑ってそっかーと言っている。


『ふふん!やっぱ良いね!悪魔ひとに見せるのは!!
でも怖がるから見せないようにしてるんだよね。』

これそう言って一瞬メルが手で顔を隠し手放した
白い世界で見た時の目に変わったが、すぐに元に戻る
気のせい、だったらよかっただろう。
只の夢だったらどれ程良かっただろう。

アレは全て現実であるのだ。

『へっへ!精々怖がってたたき上げたらいいよ。』

その感情を私はもう二度と味わう事は出来ないのだから。
そう頭の中で思った事はオリアスに伝わる
ぽんぽんと頭を撫でられメルはそっぽを向いた


「にしても僕も君の世界では
流石に触れられたね驚いたよ」


『へへ!びっくりするでしょ!』


「うん。これでも分かってたらバレるくない?」


『んーそこも調整しようかと思ってます。
まぁ今は感情の操作を目標にしてるんで!
おらオリアスせんせもっかい!!』


えっまだ!?そう青ざめたオリアスだったが
基礎の授業しに行くよとオリアスに
メルは首根っこを掴まされて
ずりずりと引きずり出されることとなった



+++++++++++++++++++++++++++


「ふん、良いよ」


『はわーーー!!!』


はいそう言ってオリアスが
片手でメルに花丸が付いた用紙を渡す

花丸だ花丸だと空に上げて
キラキラした目で眺めていたのは
ルアラからの宿題になっていた
魔法の基礎だった。


嬉しそうに笑うメルを
横目に良いんですか?とダリが答えた

オリアスは良いんですよと
書類を手で机に三回程叩いてまとめたものを
ダリにそっと両手で手渡した


メルがロビンに声を掛けられて
ワイワイと話している
そんな声を聞きつつ、
オリアスはダリにこたえた


「まだまだですが、とりあえず
ギメルにはなってますよ彼女」


「ええ!?」


ほらおいでそう言って
オリアスがメルを呼んだ


「魔法試験合格おめでとう。ほらこれ」


そう言ってオリアスがメルの黒帽子から
抜き取っていたバッヂを
片手でメルの手元に差し出した


100点ピッタリじゃないと
渡さない予定だったからね。




『はわーーーー!!!!!!!』


そう驚くメルに周りも
おおーと声が上がった


「魔法って魔術ですよね?
どんなものが使えるんですか?」


「メルちゃん」


そう言ったオリアスにメルが
とてとてと近寄って説明する


『魔術と変わりませんが、
基本的には呪文と言っても
言葉を一つ発するだけなんですがね。
私がしているのは無口頭呪文ですよ。』


ほらそう言ってメルが指に火をつける
人差し指に付けていたが、中指から水が出てくる
薬指に木の葉が舞いだし小指に雷かチカチカ光り出す


「こんな風にまでは出来る様にさせました」


「まって三週間だよね!?
えメルちゃん授業は!?」


『やってますよー今日は授業ないですけど』


今日休みなんですよねそう言って
メルがオリアスの膝の上に腰掛けた
オリアスの左手を両手で掴み、
魔法をかけてきゃっきゃと笑いながら遊んでいる


オリアスは頭を軽く撫でつつ
メルの感情を探る為にそっと力を使った
目が少し銀色に変わるのにメルは気付いていない。


ただ、オリアスの心に入ってきたのは温かい感情



ー嬉しい、やった、できた、すごい


最初は怖い苦しい痛いしかなくて

一番つらかったのは寂しいと
ぼそり呟くメルの感情だった。



誰にも聞こえない教室のざわめきで
かき消される程の小さな声


そんな声も職員室では恐らく感じていただろうに
最近チョーカーをお互い付けてからというもの
殆どなくなってきた。


オリアスは少し嬉しくて、
彼女が笑って居られたら
ぶっちゃけそれでもいいと思っていた。


こんな一人寂しい世界に居ないで、
日向に居るべきだと。


なのに敵として当たる時は

ずっと世界が白い何もない場所に
何度も何度も飛ばされる
自分もオリアスも、誰も知れない世界に。


彼女に何度だって「この場所は辛いのでは?」と聞くのに
身体は逃げる動くのに心は同じ言葉を吐き捨てるのだ


“此処が良いの此処が僕の居場所なの”だと言って。


まるで中々会えない子に
会えている喜びをかみしめるようにいう。
それは戦闘の世界でしか見れないもので
彼女が痛みを恐怖を知る者で良かったと思う。



その感情のまま溺れて落ちたら
二度と帰って来れない気がするから。



「オリアス先生?」

「ーあ、すみません、なんですか?」

「今度メルちゃんと戦わせてって思って」


そう言ったダリにロビンが
止めといた方が良いですよと答えたのに
ダリが意外と目を開けて驚いた



「メル先輩すっっごく強いんで!!」

『私もおすすめしません。
私を弄ったらどうなるか分かりませんし。』


第一オリアスだからとはいいがたいが
家系魔術ラッキーハッピーを使用されているから
楽になっていると言っても過言ではないとメルは言った
生徒にちょっと見せたら
トラウマもんになりかけたと言ってメルは苦笑いした

それ程に威力は強まっているということに彼女は知らない


+++++++++++++++++++++++++++


「良いか、メルをヨドにするな。
なんならダレスまで下げろ」

「…一体どういうこと?」

そう言いだしたのは三週間前メルが
ぐっすり寝て起きてこない頃

サリバンやカルエゴが居る中で
オリアスにルアラが言っていたのを
サリバンが聞きつけて聞いたのだ


「メルがヨドになれば恐らく契約が成立して実行される」

「…待って、話はこっちで」

そう言ってオリアスがそっとルアラを
抱きかかえてサリバン達の方に足を運んだ
部屋を移動してルアラに続きを催促した

「メルの状態が極めて異常な上で成り立っているのは事実だ。
強いレベルをそのまま一番上げて見ろ。周りの悪魔が気付く。」

「それの一体何が不味いと言うのだ」

「メルの魔術が効果が桁違いになるんだよ。
良いか魔法だってイメージで起きる。
ただランクを上げ過ぎると力の操作が難しくなるし」

奴らが起きる。
そう言ったルアラにサリバンがぼやく


「っ、まさか、ミレイユ様が封印した魔獣が?」

「そうだ。一応ヨドになってとミレイユ様が言ったが
ヨドになるにつれて魔獣を封印している鎖は緩くなる。
今非常に怪しい状態だ。
まだ見習いという段階になったというのに」


「ふむ…なら一番下まで下げて、様子見しようか。」


一応力としてはヨドクラスに近いレベルにはあるが
都佑は力が大きすぎるのを非常に嫌っている。
悪魔にも危険が及ぶことを考慮して、無理矢理ではあるが
念には念を入れてランクを下げておけと言ったのだ


実際メルのランクが下がった以降、魔獣は静かになり
ヨドのランクは当分上げないようにすることになった。

頃合いを見て、大丈夫そうなら一つずつ開放でも良いが
行事と一緒にしていけばもんだいないと言ったのだ。


そんなルアラだったが、
一つ誤算だったことがあった


それはメルが予想以上に
自分を痛めつけていたということだ

オリアスにチョーカーを付けた
その日一日監視をしていた。




夢にも出て来そうな予感は当たり
やはり悪魔には厳しいと判断
悪魔は連続するものに苦手だ。


何度も繰り返されるその世界。


メルの心の中とは言えども、
貫いてくる感情に慣れている訳がない。


寧ろメルが慣れ過ぎていて恐ろしいまであったのだ。
このままではメル自身が壊れてしまう。

というか今まで良くこんな
悲惨な状態で生きれていたなと思う程だ。


感情の起伏を正しくするためにも、
オリアスは負けじとメルに対して
適切なアドバイスを毎日コツコツ教えていった

おかげ様で三週間程経った辺りで効果が見えて来た

メルが精神的に落ち着くことに
オリアスだけでなくルアラもホッとした

きついものがあるとは言えど、
楽しい時が無いと困る。



そんな訳で、
一つサプライズを用意する事にした。

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