Novel - Paola | Kerry

it's just you


ループの止め方をわすれてしまったようです3

20/09/15
40

ごぽごぽと音を立てて完成したと言って取り出したのは赤い薬
凝縮して薬の球にしたのを小瓶に詰めて蓋をした

『ふぅ、これで一応薬の手間は省けたなぁ』

「あ、まーたここに閉じこもってるー」

『ふふ、やほ〜オズ!』

そう手を振るメルにオリアスはホッと息を吐いた
また実験?そう言ったオリアスに
メルがそうだよと答えた


『…これはヤバくなった時に開放するお薬。
どうしようもなくなって、
一時的に感情の制御を外すやつ。』


「っ!!!」


『ただ約束するよ。
これは本当に命の危険が起きた時に使う。
敵として判断した者のみ倒すだけのもの。』


私だってこんなものは作りたくないが
制御ができる様になってしまった以上、
綺麗に100%の力は出せそうにない。
それなら外せるように薬を作ってしまおうと思ったのだ。



『効果はたった10分だけ。連続では使わない。』


どんな姿になるのか私想像つかないけどね
そう言ったメルだったが
オリアスは前に見せたメルの姿を思い出した。


白い翼に淡い緑色髪の毛銀色に光り輝く目にニヤリと笑う笑み
メルではない紛い物とも思えるその動きは、教職員だけでなく
オペラが居たとしても本気で相手して叶う相手ではなかった。

そんな奴が出てきたら、真っ先に潰してやると。

「…そんなの作らなくたって、俺がいるだろ?」

『…守りたいから、作るの。』

ぎゅっと手を握ったメルが寂しそうに眉をハの字にする
嗚呼その小さな身体で弱弱しい者が一体何を守るというのだろう?
そっとメルの身体を抱きしめる
頭に添えた手が少しだけ強くなる

突如雑音が脳に響く
思わず目をつぶってしまって、
目を開けた先には
いつの間にか腰を降ろして、
片手で地面に自分の身体を支えていた


胸元には先程まで笑ってくれていた水色の髪の毛の少女が
髪の毛を真っ白にさせて目を閉じていた

服装はバラム先生が作ってくれたんだぁと
嬉しそうに笑って見せてくれた
あの人間界で魔女が着る衣装。
黒装束がボロボロだったのに皮膚は見えなかった


切られただけで、でも身体は全く動く気配がしなかった


頭を何かで殴られた気分だ
くらりと頭が揺れた


「ーメル、ちゃ?」

おい、そう言ってメルの肩を手で掴んだ
揺らしても起きない
その瞳はシルバーにも青にも…
色さえも見せてくれず
ただ硬く閉じられたままで、
何処か嬉しそうに微笑んでいるようにも見えた

「おい、おい!メルちゃん!!
しっかりしろ!メルっ!!!」

腰で身体を起こし、地面につけていた手を
メルのもう片方の肩を持って少し強めに揺らす


いつもならこのまま笑って息を吐いて「こらっ!」と叱る筈だ
ロビン先生がやってきて、ダリ先生がからかって来て困る


頬を少し赤らめて『騙されたか〜?』
って笑う少女は何も反応を示さない。


まるで先程までの時間が夢だったかのように。


閉ざされた瞳が動くどころか
身体一つ動かず、
首が座らない頭に手の力を更に強め
落とさないように優しく抱きかかえ直した




胸元でただ眠るように
意識を手放している少女の腰部分から
背中を触る。焦げた匂いと同時に
ネトリ、何か液体の物が手に触った


嗚呼嘘だ、どうせドッキリなんだろう?

これも何かの騙しであって



「…なぁ、おい、嘘だろ?
ほら、騙されたって…」


俺が降参なんてしない。

だってどんなことだって
幸運を巻き起こす自分だ
自分に良い様に幸運が巻き込んで


ーお前を警戒していたのだ、
幸運は時に不幸を呼び寄せる




いつぞやに言われたルアラの言葉が脳内で鳴り響いた




「俺、が」





俺のせいだ

俺が生きたいと願っていなければ
俺がお前と一緒に居なければ
お前がこんな姿になっていなかったというのに


「あら、良くやったわ。
流石私の見込んだ能力ね」


そう横から声が聞こえる
嗚呼そんな高い声で喋るな耳障りだ


そっと濡れた手で優しく抱きしめて
オリアスは少女の耳に口を寄せた



「…すぐ、戻ってくる」



お前の元に、手土産を用意して。

そう言ったオリアスは
地面にそっと少女を降ろした
呼吸する音さえも聞こえないその状態に
オリアスは項垂れ背を曲げていた
ゆっくりと立ち上がり、
脳が警告音を鳴り響かせる



ふと後ろから何か引っ張る感覚があった



ーだいじょうぶだよ!おず!!わたしね〜!



その声にバッと振り返った
これはただのドッキリだったのだと
何か作られたメルの世界だったのだと


なのにそこにはほのかな光が舞うだけで
想像した少女の姿は何処にもなかった


眩暈がする、耳鳴りが強くなって
もう周りの声が聞き取りにくくて仕方がない。




「ー嗚呼」



嬉しそうに笑ってくれた少女はもう
此方を見てくれないのだという現実に。
酷い吐き気がする。


お前は、こんな悪夢を優しいと呼んでいたのか?


聞いていた、前に見た
メルの世界に近しい感覚はあったが
その比にならない程、
心が頭が真っ白になっていく。



手を伸ばして、降ろしたのは
二度と叶わないから諦めただけ?

いや違う、降ろしたのは
自分が痛い気持ちを
周りに知って欲しくなかったからだ。



何でもかんでも抑えつけて
閉じ込めて抱え込んで
巻き込むことに
酷く恐れて自分で何とかしようとする

いつも叱っている事で
最近は和らいで来たと思っていた。

あの皆が恐れるカルエゴでさえ
聞いて笑いかけるというのだ。



花が咲くように笑った
あの時間は確かにあった

確実に、心の中で夢ではないと確かに言える。


だから失うという現実が、
守れなかったという現実が
ただただ自分が憎たらしくて仕方がない。



この身を八つ裂きにしても足りない位に…



「思っていたが、幸運で引き寄せられたことで
処罰できるとは…こうなるならもっと早くに
決行すべきだった。まぁ今罰を下せて何よりだ。」



罰?


この音を出す物は
一体何を言っているのだろうか?

この少女が何の罪を犯したというのだろう?


学校のルールでさえ厳しく守り過ぎて困って
休日に電話で相談してくる位のこの少女が、
一体何を隠して自分達と生徒を守っていたというのだろうか?




「…罰?」



「嗚呼、と言ってもこれでレイ様が
ミレイユ様の力を引き継ぎになられる!!」



そう喜んでいる女性に
オリアスは空から攻撃を仕掛けた
避けられたものの、
オリアスの目はギラギラと光っている


一体何を言っているのだろうか。
レイとは誰だ、メルは?メルはー



「おや、その様子では何も聞かされていないようだなぁ?
冥土の土産に教えてやろう。
その女とレイ様はミレイユ様の力を引き継いだ者。
ミレイユ様がお亡くなりになられた歳までに一人になれば
力をそのまま受け継ぐ形なのだ!!!」



目が点になる
酷く混乱し眩暈が強くなったくらりとして
すぐに意識を保つように体に指示を送る


何時から気付いていた?

何時だ。


オリアスから電話されて男子寮に助けに行ったとき?

魔女として契りを交わした時?

生徒と関わって試験に合格して喜んだ時?



いやどれも違う違う違う
彼女は最初から気付いていなかった。

気付いていたとしても、
きっと自分から命を捧げていた。

優しい彼女のことだ、
皆を庇って自分から命を投げ捨てる行為等
いとも簡単にやってのけてしまうだろう。


喉がカラカラで声が上手くでない
嗚呼君の名前を呼んで目が覚めたら良いのに。


こんな悪夢、現実だなんて言わせたくない。



「そいつは器だったが力はレイ様の方が上。
点で敵わないというのに、
わざわざ魔女になろうとは愚かな者よ」




ーやった!やったよ!!!オリアス先生!!!



これで私も、沢山の悪魔を救えることが出来るかなぁ!

そう言って笑ってくれた彼女の姿が一瞬見えた気がした



ああ、何なら瞼の裏で鮮明に思い出せる。




現実を叩きつけられて絶望したことだろう
間違いなく来るという現実を知った時
彼女はきっと沢山不安になって泣いただろう。


その不安に気付かずに放置した結果がコレだ。



何が守るだ

何がラッキーだ

一人の人さえも守れないで、

何が強いと言うのだろうか。




絶対に乗り越えられない壁を、
彼女は何とか自分の力で前に出て走り続けて居た。

だからこのままいけば本当に魔王として
君臨しても良いかもしれないと思ったりした。



そんな彼女はもう瞳を二度と開いてくれないというのに。


「…殺してやる」



どうせなら地獄の奥底に叩き落してやる

きっとそこにはメルが
待っているのかもしれない。

嗚呼ならその奥深くに落としてやる。


胸を一突きなんて許さない
いたぶり続けてから殺さないと怒りが収まらない
ああでもそんなのをメルに見せる訳にはいかない


オリアスはそっと踵を返しメルの元に寄り
肘をついて自分の帽子を取った


安らかに眠っている彼女が目を醒ました時
血まみれの姿なんて目覚めが悪すぎるだろう。


帽子をメルの顔にふせてやる
魔女の帽子はボロボロに破れていたが
手をお腹の方にそっと置いてやる
右手を取ってひやりと冷たくなった手に力が入った


両手で額に寄せて思わず手に力が入る

嗚呼お前はこうやってミレイユ様を看取ったのか?

どれ程辛かったのだろう?

どれ程懺悔したのだろう?


泣いても悔やんでもその場所には戻れない。





二度と巻き戻らない物語に、
どれだけの痛みを抱えたのだろう?





「…すぐ戻ってくる。大丈夫さ」




だからゆっくり眠っていて欲しい。


どうかそのまま、
目が覚めた時には全てが終わっているだろう。
その後でゆっくり沢山喋りたい事がある。



まだ死ぬには早すぎる、
人間は100年近く生きれると言っていただろう?
悪魔でも早すぎる年齢で死ぬというのに。




何故、この娘が先に居なくならなければいけないというのだろう?




そっと手を左手に、魔女の帽子に右手を添えて
今度はもう振り返らないこれ以上
後ろに傷一つ入れさせない。


静かに眠っているなら、
睡眠はちゃんととるべきだ。


ああ、そうだろう?なぁ…
これが悪夢だったらどれ程良いのだろう?




目を覚ました時には君が
笑ってくれたらどれ程安堵するのだろう?



オリアスは右手に力を籠めた。
なにも魔女だけが魔法を使える訳ではない。
契りを契約を交わした使い魔としてではなく
魔女としての契約で魔法を沢山彼女に教えてあげたのだ。



ー教師を舐めるなよ



ギラリと光ったオリアスが女性の下に走り出す
足元に入って無駄だと言わんばかりに手が振り下ろされる
左右から黒い鎖がオリアスの両手両足を掴んで離さない


ー手足出せなくたって口があるじゃない!


「嗚呼そうだな」


そう何時しか口うるさくて、
メルの口をチャックさせたことを
思い出してつい笑ってしまった


何を物を言うのだというか、
こんな呪文アホらしいと思う。



輝き燃える 赤き炎よ 
我が手に集いて力となれ



「っ!火炎球ファイアー・ボール!!!」


手に火の球を作り飛ばす
伊達に5年程彼女と関わっていない。

メルの使い魔でもあり、
教育係でもあり、彼氏なのだから。

魔法を作り出すこと位造作もないというのだ。


驚いた女性がひぃっと声を上げた
どうやらこの火力に驚いたようだ。

そうだろう、何せ黒い鎖に
雷を含ませた火の球をぶち当てたのだ
そりゃあ驚くだろう。



「こんなことで驚いて貰っちゃぁ溜まったもんじゃねぇな。
あの子なら二種類三種類魔法を練り込んで使っていたよ。」


「っ!!ならこれなら!!!」


そう言って氷呪文を唱えるが遅い。
呪文詠唱なんて教育の範囲にほぼ入れていない。
此方がやっていたのは無詠唱での魔法だ。


オリアスは雷で槍を作り女性の太ももに刺した
雷の槍は次第に大きくなり女性の声が響きあがる
耳障りで声を叫ばせないように首元も
しっかり雷で円を作り固定する


全く、ラッキーな事に魔法が自由自在に使えるとは
恐ろしい位に自分の能力が誇らしい。


「ぐああああっ、ああ、あああああ」


「オリアス先生!!!」


そう言ってきたのは
横から血まみれのマルバス先生だった
目が笑っていないのは此方も言えない。


「メルちゃんは!!」


そう後から駆け付けたイフリート先生と
三郎、アリスがオリアスの方に声を掛けた



遠くの方でオリアスの帽子を顔にかけている子が
あおむけになっているのを見つけて
足がもつれそうになりつつも駆け寄った


イフリートがメルの手首にそっと指で触れ固まる
首を横に振って歯を食いしばる姿に
アスモデウスが首を横に振り嘘だ嘘だと唱える




「…メル様を殺した罪に死など軽すぎる」

「まぁ同意だけど落ち着こうか」

そうタバコに火をつけていた
イフリートが地面に落として
思いっきり足で踏みつぶしながら言う


嗚呼お前は本当に愛されていないと
こんな姿を見せても言うのだろうか?


嘘でしょ?
そう言ったマルバスに
オリアスは前を向いて首を横に振った。



「…足じゃ足りないね、
足先の神経から全て傷めつけるよ。」


「死なない程度でも構いませんが、
もし眠っていたらどうするんですか?

あんな声聞いて目覚めた日には
目覚め悪くて怒られますよ。」



そう言ったのはツムルだった
どうやら教師も徐々に集合しているらしい


「あの子も言ってたじゃないですかぁ〜
まず精神的に苦しめてから
そのあと痛みを教えさせるって」


笑って言うのに目が一切笑って居ない
ツムルの姿を見てゾッとする
まぁ他人事ではないだろうが。

後悔させてやろう。

少女を傷つけたことを。

例えそれが逆らえない運命だとしても。
そんなもの、此処の教師全員が束になれば
跳ねのけてやれるというのに。




「にしても大事な事ほんっっっとに言いませんよね!
一体全体どういう教育してるんですか?」


「胸が痛いんですが、
あの一応皆さんも同罪ですからね?」


「もっと声かけて遊びたかったのにぃ〜!」



そう叫ぶロビンに一同が頷いた
そうだ、もっと彼女が笑って
驚いて泣き笑う姿を見たかった。


毎回驚き方が違うもんで、
何人かで組んで彼女を驚かせていた。


やり過ぎてダリ先生の後ろに隠れて
背中のローブをぎゅっと掴んだ時は
流石にやり過ぎと
ダリ先生が皆に怒っていたが。




「我らが宝の学び子を助けたのは感謝しますが
教育者を得たいもしれぬ輩に
罰せられる話は聞いてないんですよね」







ギラリと光る眼は、
何時も叱っている色ではなく
ただ殺したい欲にまみれていた

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