Novel - Paola | Kerry

it's just you


天井からのぞかれるような

20/09/15
4


『ちょ!?』

「ルールは簡単。三日間だけ君の手に
教職員は自分たちの印を1枚持って、
誰が一番早く君の使い魔になるか競う。

ちなみに三日間生き延びたら君の勝ち。
君は一年間特に使い魔を持たなくても良いし、好きにしてOK!
僕達教師は君の使い魔になったら、使い魔として
行動する時の授業は免除!とか給料ちょっとUPとか?」



それ君らが凄い楽になるってことだよね!!!
そう強く思いつつ、でもと言った
メルにダリが更に追い打ちをかける



「使い魔を持たない教師なんて
通常居たら大事おおごとだからね?
生徒に示しがつかない。」


『うぐっ』


「どうです?理事長」

「いいよ!外の悪魔より
君達の方が僕も安心するし!」


ああー理事長ーーー!!

まってー!!!!

やめてー!!!!

そんなこと言わないでーーー!!!

特別にOKしちゃうとか言っている!!

嗚呼カルエゴ先生が倒れるぞ。それ…


「ただし授業中や昼休みはNO!
放課後1時間だけね!!」


『そ、それなら…ん?』



待てよ?それだと不味くない?
教師って何人居ると思っているんだ?
全員が敵という時点で、私はまずい気がする。


『ちょ、理事長どうしてくれるんですか!』


「いいのいいの、面白そうだし。
何かあればその子に全部
責任任せればいいでしょ?」




あーまたそうやってーー!!
悪魔を犠牲にしていくーーー!!!

そう頭の中心の中で叫びつつ、
私は今日何故か急に始まった
使い魔争奪戦に巻き込まれることになったのだ。



本当に厄年じゃないかな…
お祓いしたい…嗚呼ここ悪魔の世界だった。
お祓いしたくても出来ないじゃん?


使い魔授業で入間君がカルエゴ先生を召喚した次の日


入間君がランクフクロウから私も持っている指輪を
身に付けた放課後のことだった。






私は現在、教師から逃げ隠れている。


主に入間君を盾にして。


「みつあみせんせーなにしてんの?」


『入間君の圧倒的危機回避能力を使って
私も三日間危機回避できねぇかなって。』


「いや流石にそれは無理があるかと…」


そう入間軍の中に入りつつ
そうだよねと言いながら
入間君の横に入る。


それにそうだよーと言って
隣に入ってきたダリに私は驚き距離を取った。

いきなりのことで軽く3m位離れたのに
ダリがおっとと驚き声をあげつつ数歩後ろに下がる。

…まるで演技みたいな。


「おっと…バレちゃったか?」

『っ!生徒との関わりでもだめですかね!!
そいじゃ君達早く帰りなよ!!さようならー!!』

そう言ってメルが走り出したのに、
さようならと言ってボケっとする入間

「おやおや、全く入間君と同じように
危機回避能力持ってんじゃないの?」


そう言ってダリがまたねぇと言って
メルを追いかけた
一体何をしているのだろうと
ぼやいた時に、背後からロビンが声を掛けた


「メル先輩の使い魔になったら
今年度の授業一部免除になったらしくてね!!
教師総出でメル先輩の
使い魔候補で戦ってるって感じだよ!!
面白そうだから僕も参加するんだけどね!!」


「メル様が、ですか?入間様の様に
悪魔を召喚する事が可能なんですね!!」


「ただ彼女、もう悪魔を召喚するのは嫌だって言ってさ!
教師とあろう者が、使い魔を持っていないとは
生徒に示しがつかないってことで
面白さ半分でイベントが始まったわけさ!!」



全く被害者はメルで間違いないだろう。
そう入間は早く過ぎて欲しいと思ったのだった。



+++++++++++++++++++++++++++



別に悪魔は適当でも良いとは思うのだ。

そとの悪魔だって、物として扱えるのであれば、誰だっていい。


ただそれが物として扱えるのであればという所だ。



人間も悪魔も同じように時間を使っている。
その時間を自分の為に割いてくれるようになるのだ。

ダリ先生はもう六年やってもらって
更に世話になるのは申し訳ない。

バラム先生には申し訳ないし、
ロビン先生は得意科目の先生だから論外だ。

だからと言ってカルエゴ先生は大問題だし、
オペラ先輩はもう不可能。

サリバン理事長を召喚したら
私の力がまず無理だし、
残ると言ったら数名の教師。



いや絶対嫌だ。


逃げるしかねぇな。



そう心に誓い、私は
空き教室に逃げることにした。


誰もいない教室に、少しほっとする。


「おや誰もいないって落ち着いた?」

そう言われて、驚いて身体を振り返らせた
そこには居る筈も無かった悪魔が
此方を見て微笑んでいた。


目が笑っていない気がするが。


『おっ、と』


「こんな所でたまたま君に会えるとは
ラッキー!…だね?」


『私は全くですがね!』


おっと、そう言って
私が逃げようとしたのに、
オリアスが腕を伸ばした

私の腕より長いので、
瞬発的に逃げてもすぐに捕まってしまう。

腕を掴まれて放してと言っても離さない。

体勢が崩れてそのまま
彼の胸板に持たれかかってしまった。



「おっと、大丈夫?」

『あ、はい…じゃなくて!!ちょ!』

「こらこら、暴れないの!」


私が使い魔を召喚出来ない状態が
一年を続けられてメリットがあるとしたら
人間界に行っても、人間に紛れ込める可能性が
ぐっと高くなるということだ。


今年何処かで人間界に渡航しようと
思っていたのだが、それが叶わなくなる。


また一年、この世界の片隅で
びくびくと生活しなければいけない。
そんなのごめんなのだ。


「どうして、君はそんなにも使い魔を避けるんだい?」


そう両腕で私を抱きしめていた
腕を緩めた彼が聞いてきた

そんなこと伝えても、
貴方が理解できる言葉を私は知らない。


だから秘密とだけ答えた。

そうしたらふぅんと返って来た。



『なんですか』

「いや?でも面白そうだから、折角なら俺にしない?」

『嫌です。面白そうなら尚更結構です。』

それに彼のラッキーは怖いのだ。

一番避けたいNO.1である。


だって貴方のその目は
私を見ているようで。


私のこんなちっぽけな夢すら正体を見て、
あざ笑ってしまうのではないか。


…私は怖いのだ。

ただ、おちゃらけた貴方がではない。

悪魔一人に私の存在を明け渡してしまいそうな現実が。

私の存在意義すら全て奪われてしまいそうな現実が。


だから逃げる。

何処までも逃げると誓った。

そうしたら、貴方に会えるのだろうか?
そうしたら、もう二度と貴方に。

「なら、試しに一年してみればいいのに。
俺だと授業君と中々被ってないし、いいんじゃない?」

いやまぁ確かに今年のカリキュラム的には
オリアス先生も候補の一人になっている。

だからと言っても私が許可を出して
貴方を召喚できるとは思えない。

そもそも主が拒否をしているのに
どうやって召喚しようと思っているんだろうか!!


「いやいや、俺も欲しいですよー」

そうドアが開いた音に気付かず
メルがびくりと身体を揺らした。

オリアス先生が「ごめん」と小さな声で謝られた。
何の謝りだろうと考える暇も与えず
メルの身体は浮遊してごめんの意味を理解する。

メルの意思を無視して抱き上げたまま距離を取ったのだ。
オリアス先生の肩に炎がかすったのか、焦げた匂いがする


「休暇付きなんて嬉しいですよー。
メル先生ーー俺じゃだめです?
俺炎使えますよー?」

そう部屋に入ってきたのはイフリート先生だ。
火炎を使って攻めてきたのだ。
いや一歩間違えたらその商品諸共消えそうだったんですけど!?


『あのそういう問題じゃないですし!
って言うか確かに家系魔術使えるかもしれませんけど
皆さん授業滞る可能性あるんですけど!?』

いいんですか!?
と言った私に、良いですけどと言った。

だって面白そうだし。


『(ああああ駄目だああああこれ駄目だあああああ)』

その一言にもう悪魔駄目だと思った。
悪魔の好奇心ってどうなってんの?馬鹿じゃないの?
こいつらのいう事、全部面白そうの好奇心で動いている。

私も昔はこうだったのだろうか。
振り回してしまってごめん。

そう何時しか振り回した
周りの人に心の中で謝罪をした。


って言うかいつの間にか
お姫様抱っこしたままオリアス先生が
イフリート先生の攻撃を避けているのが凄い。

私重くない?


「っ!流石にきっついなぁ!!」

「ならこれで」


そう言って空中からバラム先生が
降りて来たのに思わずぎょっとした

メルは流石にバラム先生には悪いと手を下げる。


とんでもなく申し訳ないが、
この中ならダントツでオリアス先生で良い。

炎を繰り出されるのも怖いし、
ケト同じランクのバラム先生よりも
適当に喧嘩売ってる教育係だった
オリアス先生の方がまだ知っているものだ。



だからと言って此処で決めるのも悪いので、
何とかしてこの状況を私は逃げたい。

でもがっつり掴まれている状態で離れることも出来ず
焦ってついつい感情が身体に伝わってしまう。

『(…やだ)』


そう思ってついオリアスの胸元にそっと顔を埋める
目を閉じてスーツがしゃわくちゃになるのは
後で謝った方が良いだろうか?

いやそんなことよりも恐怖が勝ってしまう。
放課後使い魔の時間開始10分でこれだ。

本当にあと50分なんですかね。時間酷ですよ?
思わず胸板に身体を寄せてしまったので、
怖さが伝わっているだろうか?

急にオリアス先生の身体がピクリとかたまり、
私の身体を支えていた手が少し力が入った。

『(怖い)』

ただ、私は貴方に会いたいだけなのに。
夢幻が永遠に続けばいいと思っていただけなのに。
だからそれが叶うかもしれない今年に誰も居させたくない。


記憶にの中靄に居る貴方に会いたいだけなのだ。
ただ、会って、触れて…それで


「じゃ俺はこれで」

ハッと気づいた時は、ラッキーなのか、
オリアス先生が私を抱えて外に出てきてくれた。

誰もいないのを知ったのか、
左右をきょろきょろ見た後、
私をゆっくり岩に降ろして此方を見た
腰を軽く降ろして、声を掛けてくれる。



「メルちゃん聞いて嫌だったらごめん。
ひょっとしてさ、さっきこわいって思った?」

『えっ?』

「さっき、俺にそっと顔埋めてきただろ?
何時もだったら跳ねのけたり、嫌がって蹴りを入れるのに
まるで怖がって目を瞑る幼子みたいな固まりだして驚いた。」

嗚呼、バレてた。やはり彼は私の事を見てくれる。
だから、ルアちゃんも言ってくれるのだ。
彼なら大丈夫だと。言ってくれる。

でもそれは同時に決意とも結びついてしまう。
この一年間で、私は。

あの場所に戻れないという事実に直面してしまう。

「ダリ先生が急に言い出したことだし、
俺も流石に怖がってる子に進める程馬鹿じゃねぇ。
言いにくいなら俺からも言うけど?」

違う、そうじゃない。
確かに私もそりゃ使い魔召喚嫌がってるけど
まぁダリ先生の言っている事が
違っているわけでもない。


生徒に示しがつかないまま終わるという位なら
いっそのこと誰かを犠牲にするというてもある。
だがその考え方自体がおかしいのかもしれない。

誰かの時間を犠牲にする位なら、作らないという。
それこそが逃げている証拠にならないのだろうか?

『あの、私、まだ魔術未熟者で
上手く使えてないんですよ。』

「えっ?あ、うん。」

『生徒に上手く説明出来てるか不安ですし、
教師向いてないかなって思って、
でも使い魔使わないと舐められて
見られるのもダメなのかなって』


「まぁ、」


『けど、一番怖いのは…
私の使い魔で誰かにバカにされないかなって。』


そう言ったメルに、オリアスは目を見開いた。


「…誰かにそう言われた?」


『えっ?』


「教師?
それとも生徒に?
脅されてない?」

そう真剣な眼差しでメルの両肩に
手を置いて言うオリアスに
メルは全力で首を横に振った


『えっ?えっ?
いやされて、ないですけど』

「じゃあなんで」



ーなんでそんなことをいうの?




その言葉が、誰かの声と似ていて。
私は頭が痛くなった。
急にきた頭痛に、オリアスがおどおどする。
違うこの人はこの悪魔は私を見てくれている。


だからもう良いのに。



ー君はずっと最底辺の人間ですらない。




違う。もう違う。そう言いたいのに
では何故私は今も人間のいない
悪魔の中に居続けるのだろうか?




ならどうして私はあの時




『いや、そんなことないですよ!!
馬鹿ですねぇ』


笑わないと。

バレてしまってはいけない。

また忘れさせてあげないと。

私のこの感情を知って
貴方が傷ついて良いわけがない。

オリアスがあのなぁと言って
両腕で私の肩を掴んだ


「そんなに俺は頼りねぇか?」


『いやそんなこと!!』


「じゃあなんで
そんな泣きそうな顔で
大丈夫って言うんだよ」



だってそう言わないと
だってそうしないと

貴方は笑ってくれないから。

貴方は撫でてくれないから。

貴方が傍で笑ってくれてさえいられれば、

私はそれだけでいい。


それだけで、それだけでいいのに。


「嫌なら嫌ってはっきり言え。
まぁ言いにくいのは分かるけど、」

『(悪魔を召喚するのに、代償が必要だ。
それを私は持っているのか?)』




嗚呼、でもある。

一つだけ、この感情を私は。



私は色んな悪魔を見て来た。
きっとそれでも貴方なら
私はオリアス先生のポケットをまさぐった


急にまさぐられて驚き固まるが、
紙を手に張り付けたのに更に驚く



「っえ!?」


『ん』


「え?」


そう言うオリアスに、メルは口を開いた。


『…私とっても臆病です。』


「え?」


『…私の事をこれ以上誰かに知られて何か起こる位だったら
貴方みたいに私の事をちゃんと見てくれる悪魔なら良いかなって。
それに貴方も一応私の使い魔でも良いって言ってますし。成立ですよね。』

「えっ、ちょ、ちょっと!?」

『嫌ですか?なら』

待って!そう手を掴んだオリアスが、本当に良いのかと聞いてきた。
全く、数十分前の彼の言葉とは言えないものだ。
まぁ私もそうなのだが、気が変わった。

これがオリアス先生のラッキーなら、良いだろう。
だが、私も決意したことだ。


あの場所に、戻れなくても良い…。きっと。良いのだ。
きっと後悔するし、きっと嘆くと思う。
でも、今はこれで良い選択なんだと…思いたい。


『私とっても足引っ張りますし、
きっと貴方に呆れられる。
それでも一年位、見てくれますか?』

「呆れるなんてそんな…
星が俺を見放す位、在り得ないな
……俺で良ければ。」

ふぅとため息を出して、
行きましょうとメルは歩き出した。
使い魔召喚の場所に。


+++++++++++++++++++++++++++

相変わらず広いなここ

と言いながら来たのは使い魔召喚場所


その円を描くように置いてある

ろうそくに火をつけて右手に付けていた
召喚用シールを綺麗に剥がす。


炎に揺られて出てきたのは、
近くに居たオリアス先生(半身)で
思わず笑ってしまったが、
早く出せと言われたので仕方がなく引っ張った


どうか普通の人型として出てきてほしいと思いつつ
どうせなら面白い形でも良いと思った私が馬鹿だった。



白色の小さなフクロウがそこには座っていた
どうみてもフクロウ。


なんじゃこりゃーーーと言うオリアスに
やっとかーと言った声に驚いた
メルはオリアスを抱きかかえて
誰!?と言って距離を取ろうとする


「いやー最初はどうなるかと思ったら
案外ラッキーだったね!」

そう言って出てきたのはさっき出くわしていた
ダリ先生とイフリート先生だった

どうやら二人ともオリアス先生が
私の使い魔になることを予想していたらしい。


勿論私としてもこれ以上人間……いや
悪魔関係を増やすのは嫌だったので良いのだが…


どうせなら女の悪魔でもよかったと
後悔するのは別のお話である。


+++++++++++++++++++++++++++

「で、今日来られたのはそのお披露目と」

『いや単純にオペラ先輩に紹介しないまま
終わらせるって申し訳ないと思いまして。』

所変わって開始40分程で私が負けた。
オリアス先生は一か月ボーナスをもらい
その分私の使い魔として一年間所処
授業がカットされるため忙しくなるだろう。

予定変更にカルエゴ先生も多分
寝込んでる申し訳ないと思いつつ、
私は終末ということもありオリアス先生に訳を話し、
こうして仕事帰りに自宅にオリアス先生を招いたということだ。



「お世話になります。
メルさんの元教育係でした
オリアス・オズワールと申します。」


「これはこれはご丁寧に。オペラと申します。
所でメル様、オリアス先生にはお話をされたんですか?」


『え?何を?』


「何って、貴方様の事をですよ。
まさか言わないつもりで契約を」


『してませんしてません
ちがいますちがいます!!』


全力でオペラから否定をして、事の説明をした。
教育係だったこともあり、
私の事をある程度知っているかつ
よく会話をしているって所での私が採用したのだ。


…これで記憶をいつでも変えられるとも思ったが
それはまた別の話だ。



「ではまだ使い魔としての
スキンシップはまだ済まされてはないのですね」


『ええ、内容が如何せん濃すぎますし。』


「え?内容?」


『でもオペラさん私言っちゃって大丈夫ですかね?』


「構わないと思いますよ?
それに使い魔ですから
約束を破れば躾が下りますし。」


それもそっかー!
そう嬉しそうに笑うメルに、
一体何のコトだろうと疑問に思う。


そんなことよりも先にお食事をどうぞ
と言われて、食事に誘われたが
話をしにきただけで、食事まで頂く
予定はなかったオリアスが拒否をする。

「いやそんな申し訳ない!」

「いえいえこれから一年メル様のお守りをされるのです。
これ位でおもてなしするとは寧ろ申し訳ありません。」

「いやですが…」

『嗚呼言い出したらオペラ先輩
止まりませんから、ほら行きましょう…』

そう半ばあきらめ顔のメルが前に進めて歩くので
オリアスも自分の鞄を持ちつつ、歩き始めた。


+++++++++++++++++++++++++++

「へーじゃあメルちゃんもゲームするんだ」


『ええ、一応ある程度のゲームは。
最近はボケっとするのが好きで
暫くやってないですけどね。』


「えっ何?普通に鬱?」

そうぞっとするオリアスに
違うわとメルが答えた。


『にしても本当に家系魔術使ってなかったんですか?
私には使った感じ然しなかったんですが』


「イフリート先生が仕掛けてきたりとか
したときは流石に使ったけど
基本使ってなかったってば」


『ふむ…なら、いいか。』


何がだよと思いつつ、
オリアスは食事の手を止めた。

もうこれ以上は食べれないし、
後で食事当番になったロビン先生に
連絡をしておいたのを
確認しておかなければいけない。



『…オリアス先生は
人間が本当に居ると思いますか?』


「え?あの空想生物の?
いやまさかー!居る訳ないじゃん!!」

そうケラケラ何事かと言う様に言う
オリアスにメルはほっとする


『なら、もし人間が居るとしたら、何をしますか?』


食べる?それとも話す?

そう聞いてきたメルの周りには誰もいない
デザートにと出て行ったオペラがドアを閉めて
この場所にはメルとオリアスの二人っきりになった



「食ってみたいとは思うけどね。
そりゃ校歌にある位だし。」


『そう、ですか、』


「メルちゃんは?
食べてみたいと思わない?」


『私は食べませんよ。
悪魔みたいな形してる人間なんて
きっと不味いでしょう。』


「えー?本当は美味しいかもよ?」


『それに私は聞いてみたいです。』


人間は幸福を祈りを捧げたりするらしい。
その話にふぅんと答えた。

『貴方は今、幸せか。
幸せとは、どういう物かと。』


悪魔は好奇心が旺盛だ。
欲に満たされることに忠実。
だからと言って全てが幸福であるとは限らない。


「幸せ?なんでまた」


『人間には翼は生えていません。
目も遠くまで見えない。
牙だってついてなければ、
爪で引っかいたりすることも出来ない。
そんな奴らが、何処で満たされて
何処で幸せになるのか想像できないです。』


だから幸せかどうか聞いてみたい。
そして幸せなら、何故なのかを問いたい。


まぁ私が人間だから。



悪魔が悪魔を召喚できるなんて無理だ。

入間と私の兄弟だからこそと周りは言っているが
私も入間も血が繋がっているわけではない。

私も入間も人間だから悪魔を召喚できるのだ。


その現実に、彼は気付いていない。
まぁ気付かなくていい。
今はまだ、人間だという事を知らなくていい。

どうせ知らないまま死んでしまう。
それでいいのだ。



私は誰も知らない世界で
一人死ぬ位が丁度いい。


「ねぇ、それってつまらなくない?」

『えっ?』

「人の幸福聞くって
どういうメリットあるの?」


『いやとくにメリットないですけど
でもか弱い人間が長く生き続けるなんて
そんな気持ちの問題だけかと思って。』


「他に聞く事あるでしょー」


『いやそうですけども』


いやだからさ、人間だから
私もある程度は知ってるんだよ。


分かりやすい事だって、全部知っている。
だから聞く事なんて何もないのだ。

知りたいというよりも、知って欲しい方だから。


「へぇーじゃあ聞きたかったから質問」

『嫌です』

「ねぇ早くない?
否定するのせめて聞いてからでも。」

『私の過去の話ですよね?
なら今は話せません。』


「へぇー今は、ねぇ。」


嗚呼、今は。だ。

そうやって誰もを騙してきた。

今は話せないと言って、
一年ずっと契約して終わらせた。


私がどういう人物かも
分からないまま、悪魔は消えていく。


それでいい。


それだけでいいのに。


何時も手元に見えるのは、
大きな空いた穴ばかりで。

真っ白なワンピース姿なのに、
胸にだけ空いた不思議な感覚。

私はそのまま瞬きして足元を見る。


胸に空いていた穴は幻で、
バビルスの教師服がみえているだけだった。



そうこれは幻。




『今日から大変ご迷惑をおかけすると
思いますが、よろしくお願いします。』

「いえいえ、此方こそ。一年間よろしくね。」

そう帰り間際に私は
オリアス先生に改めて告げる。


あの、と言って呼び止めてしまったことに失敗したと思った。


「どうした?何かある?」


『あ、いや、また明日って言うの
忘れてただけで呼び止めてしまいました』


「ふふっ、なんだーまだ居たりない?」



ちがっ!そう慌てるメルに、またねと
ウインクして彼は羽ばたいていった
それを見てオペラがよろしいのですか?
と声を掛けてきた。


「まだ人間ということを
お伝えしていないんですか?」


『本当は三回位バレてるけど
全部記憶消してる』


「けっ…貴方という人は…」


『でも怖かっただけなんだ。
人間って知られて、食べられてしまって終わり。
でも彼は言ってくれたから、前に。一度だけ。』



ーもし人間に会ったら、
俺ならそいつをハッピーにさせるなぁ、
そうしたら驚いた顔して面白そうじゃん?


そう言ってくれたのだ。

「そうですか」

『今年は、ちょっと
入間君という弟も出来たし、
前に出てみようかなって。』


「!!」


『きっと笑ってくれる…
笑ってくれなかったとしても、
私きっと、きっと大丈夫。』


「…応援していますよ。」


『ありがとうオペラ先輩!』




そう笑ったメルの笑顔は、
久しぶりに嬉しそうに
花が咲いたような笑顔だった。




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