『私は人間だ。羽も翼も尻尾も角も牙も魔力さえない。
ただの無力なか弱い人間だ。』
そのことを知るのは限られているメンバーのみ
オリアスだけでなくバラムや入間が顔を青ざめた
『まずは此処から説明しないと話が進まらない。
受け止めろ私はお前達が食べるべき餌であり食料だ。
悪魔ではない…ただ、もう人間の範囲も少し離れたがな。』
「どういうことだ」
『入間』
「は、はい!!」
『空想生物学。人間には言い伝えがあったな、
魔法を使う者は人間はなんと呼んでいた。』
「えと、たしか、場所にもよるけど…魔法使いや、魔女って」
『そう、私は魔女だ。それも後天性の魔女。
あの魔王デルキラの妻ミレイユ様の力を受け継いだ一人だ。』
その言葉に全員が目を開けてメルを見た
そう思うよな、と目を閉じて笑う
「人間界の魔女はどんな力があるんだ?」
「基本的に言い伝えで、その話は様々です。
空を飛べたり炎を出せたりする程度で。」
『一時期魔女狩りというものが人間界で流行ってな。
殆どが魔法を持つ魔女ではなかったが、極々一部だけ
血筋のある魔女と、後天性の魔女が居た。
なぁ入間よ、では魔女はどうして人間界に居る?』
「え?えと、どうしてって…っ!!まさか!!」
『そうだ、魔女は人間。
人間でなければいけないのだ。
人間の魂感情心全てを用いて
力を魔力に変換する事が可能だ。』
そう言ったメルがにこりと笑う
『ではここで問題。デルキラの妻ミレイユは
異名として最大の魔女と呼ばしていた。
それは何故でしょうか?』
それに気付いた周りが固まり汗を垂れ流した
開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろう
「…人間」
「っ!口を慎め!!」
『その通り。人間だったから魔女とした。
だがその魔女も長くはいかない。
本当はさっさと死んで転生したかっただろうに、
欲を催促されて調子に乗った魔女は思いついた。』
ああそうだ、どうせなら同じ人が
私の代わりに働かないだろうか。
『そう思った魔女は急いで
人間界に行くだがどこを探しても居なかった。
そこで魔女はまた思いついたのだ
…この世界の別世界で自分と出会えればいいと』
そう言ったメルがにやりと笑う
銀色の輝きはほのかに光っている
『魔女は出会い、丁度死んだ己に願いを聞いた。
お前がもし一つ願いが叶うなら
なんというと…女性はこう答えた』
“嗚呼どうか自分をもう一度殺して欲しい”
『その意味を魔女は理解した。
昔は反抗的で素直に言えなかった時があったと。
女性が言ったのはこうだ。
“どうか叶うなら、
自分が幸せな時間が過ごせれたら良かった”
幸せな時とは一体何処を指すのだろうか?
魔女はまた考えて辿り着いた』
そうだ、この時間を巻き戻せばいいと
『思い立った魔女は時間を巻き戻したが、
特に得られるものはなく
渋々帰ろうとした時、暗がりに声が一瞬聞こえて
青い月夜から見えた子にくぎ付けになる。
そこには魔女の生まれ変わりが息をしていたのだ。』
死んだ筈の自分の異世界の自分が、
何故この場所で居るのか。
魂も全く同じ、何もかも同じな事に、
魔女は気付いてしまった。
嗚呼、自分は同じ時間を繰り返されているのだと。
『急にそのことに気付いた魔女は、少女を拉致する。
もう歯車を変えてしまおうと。
その意味が恐ろしい罪だということも。』
魔女は帰って少女を愛する。
でろっでろにそりゃあもう。
周りが砂糖を口から吐いてしまう位には。
だが笑顔を取り戻しかけていた
その時の夜。
魔女狩りの世界で生きていた少女は
街村人に魔女の子だと言われ殺されかける。
庇っても少女が自分になる事は明白だった。
だがそれよりも自分の笑顔が
余りにも綺麗なことに
気付いていた魔女は手を伸ばした。
少女を庇って、魔女は命を失った。
永久の命だった歯車から逃げたかったのに、
いつの間にか少女の笑顔を守りたかった。
少女は泣き叫ぶ。どうしてあなたが
死ななければいけないのか
どうして私が生きなければいけないのか。
そして気付いたのだ
『嗚呼、死んでしまっては
許されない程の罪を受けたと』
そう思ったが、にしても女性をそのままにはしておけない。
攻撃してきた人々を青い炎で焼き尽くし、そっと優しく
青い彼岸花を咲かせて火葬する。
そして少女は決意する。
魔女になり、女性が生きた世界を全うするのだと。
それがループの始まりだと気づきもせずに。
だが、ループされていく中で綻びは勿論出てくる。
その綻びはオズワルドの関係だった。
『オズワルドは当時少女に呪いをかける予定だった。
だが少女と出会った時、足をくじいて身体も動けなかった為
看病されていく中で思考が変わって行った。』
嗚呼この子は駄目だと。
こんな子がずっと笑って居られるようにと。
そう思ったオズワルドは
強い魔力で少女に魔法をかけた。
どうか幸せな時間を
少しでも生きれますようにと。
呪いではなく幸福を、彼女に与えたのだ。
『そこから少女は時間を飛び、
人間界で少し過ごしたのち魔界に辿り着いた。
自分の命がまた人間界で朽ち果てる
可能性を少女は知っていても尚
魔界で魔女になると決意した。
人間を復習する為?良いや違う。』
少女は嘆いていた。こんな結末は嫌だ。
ならば変えてしまおう。魔女が願った様に。
魔王にもならずに、ただぶった切ってしまおうと。
『何度も継承された魔法力は
膨大な量になっており流石に一人で使えない。
ということで、記憶と同時に力を二つに分断させた。
どうせなら分かりやすい名前に。』
「それがレイとメルの名前か」
『そう。名前の通り力はレイがメルは器を手にしている。
記述を遡る限り恐らく二つに命が分かれたのは初めてだ。
もうミレイユが嫌がっていた
ループはほどけている筈…だったが』
どうやらそうもいかない。
そう言ったメルがふわりと椅子に腰かけた
『魔女の力は死んだ年齢の時まで効果は発揮される。
その後は魔女の力をその相手が手に取れるということだ。
ただ一つの人の魂につき一人までだ。』
「成る程だから器としての
メルか力としてのレイ
二人どちらかが死なないと
ミレイユ様のお力を受け継げないと。」
『ミレイユが亡くなった年齢は恐らく28歳。
魔女の争奪戦が始まるのは
一年かけて受け継ぐ27歳からだから』
「四年も早くなっているということか」
そういうことだ。
『実は入間が二年生になった春に私は姿を消す予定だった』
「え!?」
『だが私が別の悪魔と魔女の契約を
交わしちゃったからなぁ〜〜!
一年間何にもしないでひっっそりと
生活する予定があらまあ不思議!』
そう言ってメルが席を立つ
やれやれと首を横に振りながら
両手を空に向けたまま
『一年間なにも使い魔を使わず居たら
そのまま一つに戻れたというのに。
どこぞの教師に見つけられちゃって〜
使い魔また取れと言われて。』
「ふふっ、勘が良くてごめんね!」
そう笑ったダリにメルはため息を吐いた
引き継がれる筈の魔力がそのまま維持出来ず
別の悪魔と契約を交わして
やっと魔法を使えるということに
気付いたのは結構早かったが、
しなくても良かったのだ。
だって膨大な力を維持するのは器の仕事なのだから。
後にも先にも、どちらにせよ
記憶を消して姿を消す予定だったのだ。
なのにこんなことがあるというのか。
『どこぞの金髪チャラチャラ悪魔に
惑わされてからに私の計画はパーだよ!!全く!
一体どーこの悪魔が誘惑したんだか!!』
「そいつ、凄い優秀な悪魔なんだろうなぁ?」
そうにやりと笑うオリアスに
メルが不貞腐れる
『二つの力が一つになる時、
大いなる災いがもたらされる。
魔女も馬鹿ではない。
魔術を消す効果は愚か
亡き者をよみがえらせる事だって可能だ。』
「亡き者…」
『恐らくあの突撃隣のフルボッコさんは私を殺して
器をレイに宿らせる予定だったんだろうな。
悪魔に近い力を持っている
レイが持てば魔王候補も可能だ。』
「ちょ、隣のフルボッコって…」
まぁそんなものを私はさせたくなくて
魂ごとお断りをしたのだが
話を戻そう。
『魔女の力は強大かつ厄介極まりない。
魔術は抑えられるし術式系は愚か
肉体も封じられてしまう。
まあミレイユのことだから
どうせ面倒って思って面白半分で私に
器どころか力を渡したんでしょうがね。』
「え!?あれ今の話だとレイが力を」
『確かに。器は私力はレイだ。
ただそれは魂一つ分であり。
私は既に悪魔と契約して魔女になっている。』
「…あ!!!」
そう、私は受け継いだ器をそのまま
契約した魔女として使えているのだ。
そうなれば危険な事は一つだ。
『私はレイが怖くなった。
あの膨大な力を維持するのは持ってもあと3年…
それまでに何とか自分で探し出してと思っていた。』
だが傍に居たとは思わなかった。
心の中でいつもいた少女
彼女がレイだったとは。
私は男性辺りかと思っていたが
良く考えれば私も昔男みたいな
身なりをしていたのを忘れていた。
「魔法が器から外れ続けるとどうなる」
『爆発するね。最悪魔界消し飛ぶんじゃない?
まぁ歩く爆弾物って思っていいよ。』
それが感情によって左右されると言ったらそれこそだ。
未だに怖くてびくびくする位でも良いと言うのに
都佑はすっきりした顔で説明を続ける。
『言っておくが、肉体として維持されているのは私。
レイは魔術により作られたに等しい存在だ。なので結論
私の方にレイの力が戻ってくるのはもう分かる事…なんだが』
これが面倒なことに、ミレイユが死んだ歳迄なら
どちらが死んでも引き継ぐことが可能ときたものだ。
「成る程、悪魔と契約して
魔力を持ち魔女となったメルが
レイの生贄として脅威になりかねないから
先に手を打ってきたと。」
『そう言う事です。あと言っておきますが
先天性の魔女は桁外れで面倒です。
後天性は引継ぎのことなので、
完璧な魔女にはほぼなれません。』
まぁ人から人に受け継げば薄れていくが
悪魔から人に直結されたら濃いのは当然だ。
だって悪魔と人間が契約して
初めて人は魔女になるのだから。
『本当に良いの?魔女を奴らを
敵に回すと言う事は
戦争はまず免れない。』
此処まで話したらもう
変える事は出来ないだろうが
まぁしゃーない。
「ん?」
『ってかそもそも私の家系の事情だし。』
「でもあの後メルちゃん
どうするつもりだったの?」
『え?』
「まさかとは思うけど、皆の記憶消して、
退職届も出さずにそっと消えるって
…ことじゃないよねぇ?」
そう言ったダリの目が全く笑って居ないのに
メルはひっと顔を青ざめると同時に声が漏れた
彼を怒らせてはいけないのは充分知っている。
『家系の事情に手を突っ込まれるのは嫌でしょう?』
「こんな大事になるなら協力するのにー」
『いやあのですねぇ…』
まぁ良いか。
そう嘆いたメルは浮遊したまま
オリアスの元に寄る。
無意識的なことに気付かずに。
『ここからは私の愚痴です。
最初来た時は嗚呼もう
帰らなきゃいけないんだなぁって思った。』
「メルさん?」
『嗚呼楽しかったなぁって
オリアス先生弄り倒して倒されて
それをダリ先生に言われて恥ずかしくなったりさ。
入間君追いかけるクララちゃんみて
可愛いって思って声かけたり
教室で真面目に聞いてくれる生徒
可愛いなってつい熱心に答えちゃったり』
だから私は本当に向いていないのだ。
悪魔にも人間にも魔女にも。
『手を降ろしてしまわなければならない。
もう駄目なのだと言い聞かせたのに、
気付いたら手が出てた。
守りたいと思った。
どうせ怒られるなって思った。』
でもこうやってミレイユも
誰かを守ったのだと思えば、
私はミレイユの気持ちが少しだけ分かった気がした。
嗚呼、自分の世界を守りたかったんじゃない。
ただ怖かったのだと。
私が異質だから、
受け入れてもらえないと思っていたのだ。
『でも少しでも守れるのなら、
もうこの際命なんて惜しいと思った。
ミレイユが私を守ってくれた様に、
私も庇ってしまった時は笑ったよ。
嗚呼同じ様に命を落とすんだなぁって
…困ってしまった。』
「…」
『でも夢を見た。
まだ駄目だと、これでは終われないと。
誰も何も救えることも出来ずに
ただ野垂れ死ぬなと。』
だからこれは、守るべきなのだ。
『だから私はループの中に戻ります。』
「「「「「っ!!!!」」」」
「お前何を!!!」
それは絶対それは許されない行為
外されることは罪よりも愚かな行為である。
あの人三歳位歳を増して言っていたから
恐らく私が消えて居なくなるのは
入間が二年生の秋ごろだ。
もうそこに私はいないのかと泣き叫びたくなる。
『一度死んだも同然の身だし、
それにレイがこのまま破裂して
放置なんて私にはできない、』
「…契約は」
『切るよ』
魔女は、悪魔と一度契約したら二度と離せない。
それを知っていての罪だ。
嗚呼重ね塗りは濃くなって困るというのに。
馬鹿な事を思いつくものだ。
ミレイユもメルも。
『これ以上貴方達に迷惑をかけたくないし
どちらにせよ此処まで
執念に追い詰めて私を狙ったという事は
もう時間が残されていない筈。
恐らく早くても冬いや秋終わりには』
誕生日まで、きっと入れないだろう。
そこに私はいれないのだろう。
笑っていままで居られたのは
ただの軌跡である。
「いやだ」
『え?』
「俺も嫌だ」
『ちょ、我儘言わないの!!』
そう言ったメルに
お前も我儘だろと言ったのは
イフリートだった
「こんなことになるまで寝かせて置いて
急にはいさよならなんて許すと思うか?」
「あ、言っとくけど今魔法使えるの
何もメルちゃんだけじゃないからね?」
そう笑うオリアスの目は全く笑って居ない。
「ループを壊すねぇ、
面白そうじゃない?
壊しちゃおうよ思う存分。」
「ふふっ、メルさんを痛めつけた罰を
与え忘れていますからねぇふぃっ」
『おぅおぅおぅ…』
「逃げたらどうなるか分かってるよね?
ってか逃がさないよ。」
「そうだよ…メルち、
居なくなるの…私、わたしやだもん…」
そうぽろぽろと泣きだすクララに
メルはそっと抱きしめる
そうだね、確かに嫌だね。
『…私が人間だって、食べないんだ』
そうぼそりと呟いたことに、反応する。
「そりゃあ人間って言われて
ちょっとよだれは出たけど…」
「食べちゃったら遊べないじゃん!!」
そう言ったロビンにメルは声を出して笑った
そりゃそうだ!そう言って
メルが指を鳴らした
淡い緑色の髪の毛に青い瞳の姿。
白いワンピース姿に
オリアスの目が揺らいだ。
『…たすけて』
そう言って手を伸ばした少女の手を
オリアスが急いで手に取り抱きしめた
「…助けてあげる一生離さない。」
手を伸ばして取ってくれたその喜びが
オリアスの脳内に心に伝わってくる。
チョーカーがなくても。
嬉しそうにメルは笑って。