魔女は悪魔と契約を交わすことで
悪魔の家系魔術を使用する事が可能。
その威力は悪魔のランクによって左右される。
尚魔女からの引継ぎは禁忌とされており
引き継がれた者は即刻命を落とさねばならないーー
『(だというのにその約束も破って私はこうして生きている)』
ノートというか本を閉じ空を見た
明日はオリアス先生とイチャイチャデートみたいなものだ。
まぁ息が切れても走らされるだろうな。
覚悟は、出来ているつもりだった。
どうせこの身体が死んでしまうのだから
誰も何も感じなくていいのだと思っていた。
なのに触れた瞬間熱を帯びて呼吸が止まる
息ができるのはその悪魔の傍に居る時だけ。
その言葉を私は知っている。
でも言わない言わせない気付かせない。
気付いてはいけない。なのに私は知った。
触れて、そのまま落ちた。
嗚呼、時間は巻き戻らないというのに。
『(そう言えば最近見ていなかったな)』
禁忌とは言えど、
何故引き継がせようとしているのだろう?
あれ、そもそもミレイユは何故
僕に手を差し伸べた?
何か見落としている気がする。
何だ?僕が力を使えたのは、
かなり狭い範囲で悪魔というか人を二人程。
幻影だとは言えど限度はある。
惑わせれるかどうかも相手によるのだ。
だが誰も言わなかった気付かなかった等あり得ない。
知っていて尚僕に言っていない?
それを聞いてどうする。
普通にばらす可能性もあり得る。
そもそも記憶が本当に抜けたのかが分からない以上
必要以上模索しても意味がないだろう。
下手すれば此方がばらして嫌な思いをさせてしまう。
『(大事な人…か)』
皆を大事だと思っていたのだろう。
だから周りの悪魔の記憶が消えた。
大事であればある程威力は効果あるのだろうか?
もしミレイユがそれを知っていて、
僕に微笑みかけたのは。
『(あの人も、何度も記憶を消されて寂しかったんだろうな)』
仲良くしたのに、その時間も無かった事にされる。
それはとてつもない寂しさ無力感が
身体を包み込んだことだろう。
夢で一応見たり対策は出来ているとは言えど、
堪えるものがある。
触れて、愛を述べてくれたあの時間さえも。
この手には身体には触れないというのか。
孤独な存在とは書かれていたが
まさか魔女が此処まで孤独な存在だとは
思っていなかった。
『(ダメだ、会いたいなんて思ってはいけない。感情をセーブしろ。)』
下手に強く念じればオリアスが気付いてしまうだろう。
この感情は誰のだろうと自分のではないと。
やめろ、好きだなんて。
もう思ってはいけないのだ。
これで分かっただろう。
彼が頭を撫でることはもうないのだ。
触れる記憶に手を降ろす。
代わりに首に手をあて横に振った
大丈夫だ、これは夢なのだ。
醒めない夢を見続けているだけだ。
だから抑え込んでしまえば良い。
何時も通り、あの悪夢のような時間だ。
そうだ、落ち着いて来た心臓にホッとする。
もう寝てしまおう。これ以上考えても仕方がない。
…どうか、明日はドキドキしませんように。
契約した印を見られない様に、
髪の毛でそっとなぞって
目を閉じた。
瞼の裏に金髪の彼が思い浮かぶ
嗚呼ダメだというのに、
私は願ってしまう。
愚かな者になったのか。
どうせならこの感情さえも無くしてしまえば良いのに。
そうすれば、楽なのに…消したくないと悲鳴が上がる。
胸元の服をぎゅっと掴んで身体を丸める
どうか、気付かないで。
そのまま、私は貴方ではなく
この子を愛さなければいけない。
そう言い聞かせて、私は眠る事にした。
落ちていく微睡の中、
微笑んだ悪魔の顔が思い浮かばない。
嗚呼それでいい、それで、良いのに。
どうしてこんなにも胸が痛いのだろうか?
嗚呼、零れ落ちる涙を拭う悪魔は
ずっと前から居なかったではないか。
+++++++++++++++++++++++++++
夜が来る。
リタイア者は朝方の悪魔と
交代して捜索を怠らない。
宜しくお願いしますー
そう言ってメルはオリアスに近づいた。
「じゃ」
『何ですかその棒』
一応聞いてみる。
まぁ大体想像はついた。
「棒が落ちた先にリタイア者がいる。」
そう言って走り出した
オリアスにメルはついて行く
数キロ経った所だろうか、
へぇと声を上げた
「メルちゃん、
君何時からそんな多くの罠を
潜り抜ける様になったの?」
『え!?どどどどこに!?』
「え、まってもしかして
気付いてなかった?
嘘でしょ勘?」
そうオリアスが驚くのに
メルもまた驚いていた
いやだって気付かなかったのは事実なのだ。
直感で動いていた為、
流石に
間違いなく勘で罠を抜けていることに
私は苦笑いするしかなかった。
それに
使えたとしても運が良いと言うだけ。
此方も運は多少良い為、
下手に不幸になることはない…と言いたいが
自信ちょっとないかもしれない。
三か月間の事を考えたら。
「ほらそっち手伝って」
『はい!ほら大丈夫だよ』
怖くないよーそう言って生徒を
救出して良く頑張ったと褒めてあげる。
歩いて行けそうな子達なので良かった。
手を振ってリタイア者の行く場所を誘導する。
怖い暗闇に一人で居る怖さはどれ程のものだろうか。
私には、きっと分からない。
魔女だから?いいや違う。
慣れ過ぎてしまったから。
今だって空いた穴を埋めようと嘘を付く。
バレない様にそっと、
私の考えそうなことを言うのだ。
「はい次」
『ふぁい』
息を切らしつつ声を上げる。
一応鍛えては居る為、
ぶっちゃけ息が切れるのはない。
一応演技である…
いやそうでもしないと体力馬鹿がバレる。
三週間程鍛えられたからな。
次の生徒でもう30人程だろうか、
大分見つけて一応死者は0だ。
カルエゴ先生がまだ
行方不明の一人に対して言っている。
一応反応はあったようだが
…まぁ入間君も結構やり手だ。
人間の血を利用したのだろう、
巨大なツルを作ってカルエゴに
向かって優勝しますと言った。
それを聞いたオリアスが笑った。
「君の弟はとんでもないねぇ」
『お恥ずかしい…まぁでも
入間ならきっとやってみせますよ。』
私だって、力を使えば良いだけだが…
はて、一体何を恐れているのだろう。
まぁ力を使えば幻影を
10体作って確保したらいいだけだ。
嗚呼、きっと魔女としてバレるのよりも
『(人として、この恋心が
知られることを恐れているのね)』
どうか隠せるなら、ずっとこのままで居たい。
疼く感情を、オリアスが見ていない時に見せる。
嗚呼気付くな、そう思いつつ
何処か気付いて欲しいと願ってしまう。
歯車は変わらない。
「にしても瞬発力全く衰えていないのに…
土壇場でしくった様に見えないんだけど。」
『(うっ…)』
痛い所を突いてくる。
流石に避けるのはバレるか
『えぇ買い被り過ぎですよー
それよりそっちに
生徒居るんじゃないですっけ!ほら』
「あ、ああ…」
そう手を引いて指を指した方向に向かう
生徒に会い、指示をしてまた探しに行くときだ
待ってとオリアスに言われてメルは足を止めた
「次は君が生徒を見つけてよ。」
『え?いやでも』
「いいから」
『…んーでしても、
とりあえず前ですかね』
一体何を考えているのだろうか?
下手にバレたか?
いや探っているように感じる。
とりあえず
だけは使わないようにしないと。
多少熱いが髪の毛をパサリと揺らす
それにオリアスが気付いた
「そういや何で今日
三つ編みしてないの?
暑いんじゃない?」
『ああ、
引っ張って痛いので
今日はちょっと』
お前に魔女の印を見せねぇためだよ!!!!
そうは口が裂けても言えず、
とりあえず考えていた嘘を付く。
いやぁ無理です。
見られたらどう言い訳するかも
考える隙作ってもらえない。
『…悲鳴聞こえたんですけど』
「え?嘘」
『9時の方角行きますよ!!!』
そう言って走って100mだろうか、
更に奥に見つけたのは食われそうな生徒だった
火炎を使っても範囲が限られて使えないのに驚く
「っ!不味い!!!間に合わねぇ!」
『(っ!ここで放って置くなんて
できる訳がない!!でも)』
使えば確実に聞いてくる!!
嗚呼もう目の前で生徒が死ぬのは嫌だ!!!
仕方がない、使うしかない!!!!
『っ!ルアラ!!!』
「ーあいよ」
そうメルが叫び足を止める何をしていると
オリアスに言われたが
先に走ってと強く言うと、
オリアスはそのまま生徒の方に向かった。
呪文を唱えて腰を低く構える。
『
過ぎ行く風よ!!』
炎の弓矢を作り出して狙いを定める。
大丈夫だ、沢山練習したから
一発で仕留められる。
『我が手に集いて力となれ!!!』
“
放った弓矢は魔獣の身体を突いた
それに動き出した魔獣にメルは
走り出し、手に水の剣を作り畳みかける
『はぁあああっ!!!』
生徒に攻撃を仕掛けたのを
一発で受け止めたオリアスが保護し、
距離を取ったのを確認した
メルは前を向いた
『(おいおいおい!!
なんだこの魔獣!
魔力が感じれる…)』
尻尾に何故か光が見える。
恐らく魔女の一部だろう。
操って攻撃を仕掛けてきた
ということだ…なんという執念…。
逆にここまで来たら笑うぞ私。
これは魔術を仕掛けても
家系魔術ですら効かない可能性が高い。
そう判断したメルは姿勢を正して呪文を唱える。
これでも複数の元素は使えるようにしている。
『うおっ!!』
「ーっ!此方オリアス、
魔獣が暴れている所に
生徒が居たので保護しました!!
おい!メルちゃん撒くぞ!!!」
『っ!んなこと言ったって、これ、
絶対他の生徒、たたけねぇって!!!』
間違いない。
魔女以外対処が不可能だ。
それを裏付けるのが
魔女の印が光っている事だ。
恐らく悪魔全て
効果無効じゃないかな。
ったく、本当に厄介なことをしでかす!!!!
『オリアス先生は先に
生徒の保護してください!!!
ここは私が持ちます!』
「馬鹿!一人じゃ無理だろ!!!」
『つべこべ言わずにさっさと行け!!!
死にたいのか!!』
そう強く言う。
仕方がない、
こう言っても行かない可能性もある。
オリアスの方に向けて攻撃を仕掛けた魔獣に
メルが
魔女の光の威力的には強まっている為
下手に手を抜いて攻撃したら
割と死ぬかもしれない。
だから集中させて欲しい。
どうか。
頼む。
そう思っていると、
オリアスが声を上げた
「……分かった。
すぐに戻ってくる。
それまで持ちこたえろ!!!」
応援を呼んだのか、
とりあえず居なくなった
オリアスにメルはほっとした。
「良いのか?本当のことを言わなくて。」
『…言える訳ないでしょう。』
こんな力が使えるなんて。
そう呟きながらメルは力を放った
魔獣は黒い靄を解き放ちつつ、
岩の硬さで攻撃を跳ねのけた
物理的な攻撃しか食らわないのか。
そう思いため息を吐いた。
『ったく!何でお前らこうも
私の計画を邪魔するか、なぁ!!!』
そう言って鋭くとがった
炎の槍を勢いよく魔獣に放つ
避けることなく攻撃を受けるが、
効果はないらしい。
っ、ならこれはどうだ!!
メルが距離を取って手に力を込めながら詠唱を始める
『全ての命を育みし母なりしこの無限の大地よ!
我が意に従い我が手に集いて力となれ!!!!』
そう言い放ち地面に手をつき力ある言葉を叫んだ
『“
大地の精に干渉し、
地面から数多の岩石の槍を
出現させ、敵を貫く
直接魔獣の下に刺さる
それに声を荒げる
嗚呼馬鹿応援を呼ばせるか!!
そう唱えて叫ぶと魔獣の周りを
風の結界を強化した半円が包み込むと
大きな声がぴたりと止まった。
最もよく使われる防御呪文で。
結界の外と内では音が遮断される。
使用中は結界をコントロール
しなければならないため、
あまり強力な呪文は使えなくなるので
このままどうするかを
頭の中で考えなければいけない。
とりあえず息は出来るだろうから
大丈夫だろう。
そんなことよりも即刻で
こいつを仕留めないといけない。
何なら効果がある!?
水だからと言っても割れる訳には
『っ!』
攻撃に怯み服の一部が裂ける
血がわずかに飛び散るが、
すぐに手で拭い舌で舐める
一滴たりとも匂わせない。
とにかく攻撃を繰り出し続けるしかない!!
ルアラが距離を遠くに
移動してくれたおかげで思う存分力が使える。
『悪く思うなよ!!…
黄昏よりも昏きもの、
血の流れより紅きもの!!』
威力はかなり抑えめにして、
とにかく使ってみないと分からない。
黒魔術の呪文を唱えた。
『時の流れに埋もれし
偉大な汝の名において!!』
攻撃を交わし、
手に力が宿りだす。
熱いがこれを零したら
どうなるか分からない。
『我ここに闇に誓わん!!
我等が前に立ち塞がりし
すべての愚かなるものに!!』
一か八か!!
使ってできないならありったけの
ラファイアをぶち込む以外はない!!
『我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを!』
喰らえ!!!
『“
手に一瞬光が消えたが突如大きくなる
魔獣の下から空に放った言葉に、
手から炎の塊が出た
それに魔獣が空に飛びあがり、
一つの花火として爆発が鳴り響き
風が大きく巻き上がった
『っはっ、はっ、はっ、はっ』
やはりこの呪文はかなり魔力を消費する。
詠唱が長い分、威力が高いのは分かっていたが
ちょっと初めて使ったにしては上出来だろう。
他の場所にこんな鬼みたいなの
ゴロゴロいたら困るが。
まぁひとまずは良い。
息をとにかく大きく吸って吐く。
あーにしてもとんでもない魔獣居たな
…これで
そう思っていると、
身体が浮遊した
『きゃっ』
「っ!!」
どうやらオリアス先生が抱き着いてきて
そのまま幹にぶつかった
痛そうな声を出して身体が
地面にたたきつけられた
秒でズシンと音がなる…
おいおいおい、
嘘だろあの力威力で駄目なのか。
本当に斬るしかない?
いやでも生半可な剣は無理だ。
だからと言って
拳を強化してもたかが知れている。
どうする、どうする!?
「ったく、あぶねぇ、っ!」
『オリアス先生!!大丈夫ですか!!!おり』
そう肩を揺さぶっていたが
後頭部からぬるりとした物が
オリアスの手についていたのを
メルは見た。
『…ルアラ。オリアス先生の保護及び
周りの悪魔に被害の無い様にして。』
「…承知した」
そう言ったメルはそっと身体を起こした
待てとオリアスが手を伸ばすがルアラが制する
「っ!お前は誰だ!メルちゃん!!
駄目だ応援が来るまで動くな!!!」
「…私も焼きが回ったか。
こんな金髪悪魔を守るなんてな」
「…は?」
そうきょとんとするオリアスに、
ルアラは寂しそうに言った。
いいよ。
その声にメルが手を叩いた
『尽きることなき青き炎よ
我が魂の内に眠りしその力
無限より来たりて
裁きの力を今解き放て』
そう低い声で解き放った物が
単体を青白い光の柱で包み込んだ。
精霊魔術で最強の威力を誇り、
にすら匹敵するほどの威力を持つ。
悲鳴が上がるもまだだと思った
メルは目を細めて呟く
『全ての心の源よ
我が手に集いて閃光となり
深淵なる闇を打ち払え』
強い光が暗闇を昼間と思わせる程照らす
その一つの光が槍となって魔獣に直撃する
効果が何もないこと位
大体予想はついていたが、
まさか上位互換の
駄目だとは聞いていなかった。
まぁ精神魔法もあまり効果がないと来たら
方法はもう一つしかない。
眉間にしわを寄せたメルがルアラを呼ぶ
『…ルアラ!私の身体頼んだよ!!!』
『“天空のいましめ解き放たれし
凍れる黒き虚無の刃よ”!!!!』
「ちょ!!
お前まさか馬鹿だろ!!
やめとけって!!!」
そう言ったルアラに、
メルは無視して詠唱を唱える
鈍っている奴に
一撃喰らえないと多分こっちが死ぬ。
いやぁ甘く見過ぎていた。
『“我が力 我が身となりて
共に滅びの道を歩まん”!!!!』
手に力が入る。
黒煙と雷鳴が響き
紫色の雷が周りでビリビリしている。
小さな雷みたいなのに、
少し怯むが、そう考えている暇はない。
『“神々の魂すらも打ち砕きーー”』
身体を構えて一気に前に走り出した
『“
完全版だからこその安定した
漆黒と紫色の雷を纏う大剣を
勢いよく振り上げて真っすぐ降ろした
2秒位後に魔獣は真っ二つに分かれ、
そのまま動かなくなった
メルは上手く身体を地面に着地出来ず、
身体を地面にたたきつける様に倒れた
ルアラが魔法を解除すると同時に、
オリアスがメルの元に駆け寄る
「っ!メルちゃん!!
メルちゃん
しっかりして!!!」
大きく息を吐いて、吸うしか出来ない。
言葉が口に出来ずに意識が朦朧とする。
嗚呼二つもしかも
片方は使いたくない方の呪文だ。
赤本にばっちり乗っている呪文である。
ああ、ったく。
本当に馬鹿だ。
私。
意識が朦朧とする中、
金色の髪の毛と赤と黄緑の色が見えつつ
退治できて良かったと思い
意識を手放したのだった。