『(さて、一通り喋ってくれている間に状況を判断しよう)』
まず、私の記憶は引き継がれているまま
過去に飛ばされたと判断して間違いないだろう。
そう思えるのが主に二つの理由がある。
まず一つ。オリアス達の感じからして
時期も始業式始まって午後
メルちゃんと呼ばなかったし、
そっけない態度が多少見えたからだ。
まぁオリアス先生に限って、
勢いあまって本名を告げてしまったが
…まぁ、仕方がない。うん。
魔女は本名をばらしてはいけないとあるが
まぁ仕方がないだろう。
うん。…ないよね?ね?
ね?
もう一つ。こっちが大事なことなのだが
私の記憶の時間軸の過去に飛ばされているのも、
魔女の力がくっついているということだ。
もしそのまま過去の記憶に飛ばされているだけなら
魔女の印は一切ない筈だ…
だというのに印があると言う事は
自分がそのまま過去の世界に
飛ばされているという証拠になる。
だが、このまま生きていくことは正直不可能だ。
というのも、悪魔と魔女の契約は
正直近くに居れば居る程効果が期待できる。
それは肉体的な物理的な距離だけではなく、
心が通うことにより効果が期待できるのだ。
もし、このままオリアス先生と
離れた状態を維持してしまえば
…持っても一年、いや半年の命になるだろう。
それ程、魔女の力は強大な故に
命の灯もあっさりと消えるのだ。
まぁこれがお互いの心が通じ合えば…話は別だが。
長く生きても悪魔と同じ歳位だから、
軽く500歳はいくだろう。
だが、魔女も人間、老いる所は老いる。
その為個体差にも寄りけりだが
…最高でも300歳はいったことがあるだとか。
其処まで長生きする予定も何もないが。
とりあえずこのまま精神的に
離れ続けて居るとかなりきついものがある。
数日前に戦った様に、
魔女の印が悪化して首元から翼が生える様に…
血が滲み出血が止まらなくなるように
…なってしまうからだ。
『(まぁいずれにせよ帰ることも
考慮しておかないと
…身体がいつ壊れるか分からない)』
明日にでも身体が動かなくなる可能性だってある。
それはオリアスともうお近づきになる以外
命の保証がないということでもあるが。
…確か契約を破棄するにも
地味に面倒な手続きがあった筈だ。
と言っても、あの場所に戻るのにはまだ早い。
ある程度休みが取れれば一日
程研究で時間を空けても構わないだろう。
「メル先生はどの選択だったっけ?
得意科目ってどんなの?」
『へ?ああ、えと…空想生物学ですかね。』
「ああ、あのニンゲンだっけ?
空想生物上の生き物の?詳しいんだ!」
まぁ人間だからな。
そりゃあ詳しいよ。
『ええ、昔から満点は取れてるので』
「へぇ!凄いね!!俺苦手でさぁー」
そりゃあな。
お前確か怖い話苦手だったよな。
人間色んな意味で怖いからな。
今度ホラー話話してやろう。
そう思いつつ、メルは足を止めない。
「じゃあバラム先生に会いに行くか」
『ばら…え?』
「空想生物学に詳しい先生だよ。
教育係は本来バラム先生
なんだろうけど…俺がいいのかな。」
今すぐでも変わっていいよ!!!!
そう思ったが、口に出せるわけもなく
丁度近い場所だったから連れて行くと言って
彼に連れてこられた場所は空想生物学準備室。
ドアをノックした後オリアスが
失礼しますと声をかけて入る
それに合わせて失礼しますと
声を出して恐る恐る部屋に入る。
いやぁバラム先生と話すと嘘つけないから、
本音をどう言うか迷って緊張するわ。
「やぁ、オリアス先生と…そっちの子は?」
「ああこの子は今日から新人で来た子です。」
『安名メルと申します!
空想生物学教師で入る事になりました!!』
「へぇーーーー!!!!ほんとに!?!?!?」
そう言っていっきに詰め寄ってきたバラムに
メルは驚いてオリアスの後ろに入った
それに驚くからとオリアスがバラムを落ち着かせる
慣れていくとは思うが…というか慣れてはいたんだが
こうもぐっと来られると、流石にビビってしまう。
「よろしくね、僕はバラム・シチロウ。
空想生物学教師だ。」
「そいじゃ俺は次授業あるんで、
バラム先生に後何か色々教えて貰いな。」
『はい!お世話になりました…!!』
そう言ってぺこりとおじぎをして彼が出て行く
ほっとして息を吐いたのに、バラムが声を掛けた。
「さて、空想生物学って言っても
種類があるけど何処が得意?」
『得意と言われましても…』
「あ、じゃあこのテキスト読んで答えてみて。」
流石に間違いがあるかもしれない
そう言って受け取ったテキストを読み続ける。
ペラペラとめくりつつ、
バラムから受け取った
A4の白紙一枚にペンで書き殴る。
終わった後、答え合わせをすると
…まぁだろうなと思う。
バラムはおおと驚きの声をあげた
「満点だね…ちなみにないとは
思うけど答えは見てないよね?」
『当り前じゃないですか。
それにこの速度で
答え見れる訳ないですよね?』
だって人間だから分かるもん!!!
赤子の手をひねる位の簡単さだったわ。
そう思いつつ、そっかーと答えてくれたので、
じゃあ説明してみてと言われて
うっと唸ってしまった。
実は説明が苦手だったりするのだ。
教育者として説明力がとわれるとは思っていたが
率直に彼に説明する事にした。
『実は、理事長から急に教師になれって言われただけで
私説明するのとっても苦手で、誰も理解してくれなくて…』
「ああ…そうだったの。でも、
僕位には練習して伝わるようにして欲しいな。」
サポートとは言えども途中から
担当クラス持ってもらいたいし。
そう人差し指を立てたバラムに
メルは半泣きで答えた。
『えーとこれが教科書で…こっちが…』
「(空想生物学を満点だなんて、中々ないな。)」
そうバラムがふぅむと考えている間に
メルはある程度必要な教材を
そろえて席を外すことにした
『バラム先生今日はありがとうございました!!』
「いやいやお役に立てて良かったよ」
『とんでもないです!それではまた!!』
そう言って帰って行った
彼女の足音を聞きつつ
バラムは優しい子だなぁと
思いながらお茶を下げたのだった。
+++++++++++++++++++++++++++
教師の試練その1
テストにもあったのだが、
一応力がどれ位なのかを見極める為
森の中に3日程入れての行動を見ることがある。
メルの場合理事長からの
特別教師だったので本来はしない方向に
あったのだが、流石に悪いとメルが言ったのだ。
『(あのまま放置でも良かったのだが…如何せん
此方も自分の実力がどれ程か見てみたい。)』
アレから二か月が経った。
教師生活もやっと慣れて来たのも
やっとバラム先生に30回位見て
貰ってなんとか説明が上手く
言えてるかなぁー?と首を傾げる程度だ。
正直初っ端から初めまして!
と言えて大丈夫かと不安でしかなかった。
だが、この場所から始めて、
きっと何かが変わって行くことだろうと
私は少し期待をしていた。
嗚呼、思う存分、魔法を使ってみようじゃないか。
ここ最近オリアス先生とちょっとお話をしている為か
魔女の印も効果が期待できそうなのだ。
ぱきりと音を立てつつ森の中を歩く
さて、この森に入って一時間が経過している。
…とりあえず、
『三日三晩過ごすならまず水
次に食料次に寝床は決めないとな。』
風を頼りに歩いていくと、
川のせせらぎが聞こえてきたので
その方向に100m行くと小川があった。
魚が居る気配はないが
これを煮沸すれば大丈夫だろう。
『えーっと、なーべおいて〜お水汲んで〜』
一日目。二日目の昼までを
過ごせる分のご飯を作った。
一応スープに近いごった煮だ。
まぁトン汁みたいなものと
思ってくれて構わない。
…いやどちらかと言えば
中華の酢豚かな?
ドロドロしている料理に
酸味を入れて凄く食欲をそそる
…あー白米食べたくなるなぁ恋しくなるわ。
『…で?これは使えると、』
そう言って手の平に雷を作り出す。
小さな光が出て、
まぁ護身用のスタンガンと同じものだ。
威力もそれ位だし、
対して怖いものではない。
『ふぅむ…風よ 赤き炎
空をさまよう雷よ
我が手によりて雷となり
我が手に集いて裁きの力を解き放て
“
そう手を前に出して来ていた魔物に雷を当てる
すると真っ黒になり焦げてしまった為
あちゃー食えねぇなこりゃと驚いてしまった。
『いやー…流石に抑えめに抑えめにぃー』
もう一度同じ様に撃ってみると、
今度は良い感じに焦げたので
これは中身も良いのではと感じるが
…解体用のナイフないし
こりゃ流石にラグナブレードを
ナイフ替わりにはしたくないので
まるかじりするしかないのを
考えて放置で良い気がする。
『はぇーにしても魔法が使えるのは
ちょっといやかなり楽だな
…これ家系能力だよな?な?』
どうにも自分の能力が魔女であることから
もう魔法使えたら魔女という家系能力で
済ませて良いかもしれない。
なんなら
魔女ってことにしない?
あっ駄目?というか
家系能力だから本来はそう言いたいんだけど、
バレると効果失うと言うか
普通に死ぬので駄目なんだよね。
とにかく
別の悪魔に知られることは避けたい。
本当に自分以外は知って言われると
心臓に負荷がかかって死に至るって
魔女は完璧な分、死に際一本駆け足だからな…
『ひとまずこれで良いか』
寝床も一応完備は出来たし、
罠も一応仕掛けたから
とりあえず仮眠するには持ってこいだ。
3日もあるんだから、
それ位しておかないと不味い。
『(さて、魔女としても異質な存在)』
本来魔女は在ってはならないモノだ。
それがミレイユのおかげなのか
はたまた前からのものか
ルールがかなり厳重に
組み敷かれているように見える…
然し意外とそういうお堅いものはあっさりとしている。
綺麗に封をしているもの程手持ちで運びやすいものだ。
例えるなら水を入れている瓶だ。
何処に行ってもその水は移動出来るが、
その場に馴染めない。
油は同じ液体であっても水と分離したままとかね。
魔女は何処に行っても溶け込めない存在。
そんな存在は必ず死ぬ場所も
生まれる場所も決まりに決まっている。
…一部を除いては。
『(…貴方から受け継いだ
この魔法を使わなくなっていく)』
それは私が成長していく、
独り立ちしていくという現実。
ああ出来ればそうであってほしい。
『(そういや魔女はこの場所から消えるのに
周りの記憶が消えていく現象を起こすが
…何でだろう?)』
普通なら自分の記憶が消えるなり
世界から居なくなるなりするが
何故自分以外の記憶を消して
そこから逃げないのだろう?
まぁ私も今現在逃げずに
格闘している最中なので…
とてもじゃないが、
人のことは言えないんだよなぁ…
苦笑いしつつ、焚火用の薪を
手で持ち仮拠点に持っていく
地面にばらまいた薪用の枝が
コロコロと音を鳴らして気持ちがいい
…失った記憶もそのまま
転がってそこに居続けるのだろうか?
『(今は現状を維持する事を考えよう)』
きっと人間界にいつか戻らなければいけない。
ミレイユが嬉しそうに笑って死んでいったのは
僕という継承者の存在ではなくて、決まった場所を
前から察知していたその通りになったのだろうか?
嗚呼、もしそうなら…きっと僕も魔界で生きて
死ぬのは人間界なのだろうか?
生まれたのは人間界だから、
まぁ骨を魔界に置いておくと
色々と魔界が大騒ぎになるのは
考慮されているのだろうか。
駄目だな一人だと
どうも魔法の勉強ばかり思いついてしまう。
素数数えた方が良い?
いっそのこと誰かの事を考え
『…やめよう』
ふと金髪キラキラ悪魔を思い出してしまった。
あの背中を見るのは
…暫くこりごりだと言うのに。
僕は焚き木をくべつつ、横になる事にしたのだ。