「メル先生〜仲良くなるきっかけ作りと言っては
何ですが一緒にお風呂入りませんか?」
『ふぇ!?』
そう人間としてバレる危機が私に起きた。
所は職員室から出て寮に帰宅した後だった。
私は風呂入ってるからと言って断ったメルに
それじゃあもう一度入りましょうと催促されていたのだ。
『(いや人間だって香水抜いたらバレるし!!!)』
何より翼の付け根が無いのだ。そりゃあバレるだろう。
ルアラが居ない以上、下手に魔法を使って翼を作ったら
とんでもない大きさになりそうで怖いのだ。
逃げようかとも思ったが予想以上に疲れている今
ログハウスに帰るのはまず無理だと判断する所
何とか理由を作って抜け出さないといけなかった。
『いやいやいやいやいや私にはそんな…』
「そうですか…でしたらまた今度ですねふぃっ」
諦めてくれたかと安心していたが
今度という二文字にメルがゾッとした。
脂汗が止まんねぇよそんなの言われたらよぉ…
ダラダラと流すメルに、からかいがいがありますねぇと
スージーが笑って答えた。笑顔が怖いですスージー先生。
「そう言えばメル先生は何故お名前だけ公開しているんですか?」
『…苗字を呼ばれたくないからとでも言えば大丈夫ですかね?』
と言うか苗字を呼ばれたらもう此方が言う事聞くしかない。
呪いの状態にかかってしまうのだ…ただでさえオリアス先生に
サラッと本名言ってしまったという失態があるというのに。
彼はメルの本名を言っていなさそうなので
ひとまずは大丈夫そうだが…
『私サリバン様の養子ですから…
ちょっと本名に良い記憶がなくて』
「あっ…ごめんなさい、そういうつもりでは」
いいんです。そう困った表情で笑ってみせた。
それに何も聞かなくなったことに私は少し安堵した。
そうだ。そうやって聞かないで欲しい。
私の命に関わるんだよ。なんなら記憶消すぞ。今すぐ。
「でしたら一緒にお食事はどうかしら?」
『…ストラス先生?風呂よりも食事の方が
仲良くなるきっかけには持ってこいでは?』
そう突っ込んだメルの話をガン無視して
ストラス・スージーは食堂に向かったのを
メルはため息交じりに吐いてついて行くのだった。
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「基本的に女子寮は一人で物を作っていますから
…メル先生はいつもどんなお食事を?」
『んー忙しい時はカップ麺ですね。』
それって毎日では?そう目を開けた
スージーにメルがぎょっとして固まる
おお、これは不味いか?
「ふいっ、駄目ですよー
ちゃんと休日も栄養を取らないと!」
えぇ…そう言ったメルにスージーが怒る。
正直栄養はログハウスに帰れば食料幾らでもあるのだ。
作り込んでタッパーに入れて保管しているから
あれからとってきて食べるという手もあるのだが…
流石にそんなことは言えず。
仕方がないと思いつつ、食材を頂いてご飯を作る事になった。
いやー久しぶりに他の悪魔と食事するなぁ。
始業式、オリアスと最初に食べた以来だ。
その前を想像して…少し表情が消えた。
…忘れよう、彼女らとは違うのだ。
この人達は…私のことを全て知らない。
知ってしまったから、私は飛ばされたに等しい。
この感情の終わりはまるでないと言われているような気がして。
…もし終わりが来れば、その時はあの時の様に笑えるのだろうか?
「メルさん?手止まってますよ?」
『へ?あ、ごごごめんなさいストラス先生』
「スージーとお呼び下さい」
『え゛いやいやいやいや上の方にそのような馴れ馴れしくはちょっと』
「ではスージーさんでも構いませんよ?」
私もメルさんとお呼びします。お相子でしょう?
そう包丁を持って首を傾げるストラスに、メルは
顔を上げて唸った後、顔を下げて参ったと思いつつ
分かりましたと答えた。
『では、スージーさん』
「ふいっ、はいなんですかメルさん」
『この切った食材はどうします?入れますか?』
「ええ、入れた後此方を切って下さるかしら?ふいっ」
『分かりました』
そう言ってメルはスージーから受け取った食材
というか隣で包丁を構えて切っていたスージーの
食材をずらして自分の手元に置いた
トントンと食材を切っていく
その音に妙に何処か思い出してしまう。
視界がぼやけて困ってしまう。
「今日はメルさん、良く頑張りましたね」
そう言われて、ぽたりと食材に涙が落ちてしまった
ごめんなさいと言って包丁を置いて指で涙をぬぐう
「きっと三日間怖かったでしょう。
誰もいない状態で良く生き残りましたね。」
いや、前からそうだった。
孤独で息をしていくのにはなれていた。
なのに、このバビルスの教師になってからというもの
周りにいる教員との関りが多くて、孤独に生きていた慣れが
薄れていたことを、今回改めて知ってしまった。
隣にはもう笑って抱きしめてくれるオリアスの姿はいない。
ルアラだって、もう二度と姿を現してくれないかもしれない。
嫌だったなぁと思っていた毎日が、こんなにも愛おしく感じるとは
私も不味い場所に居ついてしまったらしい。
背中をさすられて、更に涙が押し寄せてしゃっくりがでる
嗚呼、料理途中なのに申し訳ない。
「大丈夫よ、ふいっ…今ここには誰もいない」
だから吐いてもいいのよ。そう言ってくれたスージーに
いえ、と断った。
『今はご飯、作らなきゃですから』
そう言って、私は出てくる涙を無視して、食材を切り終えた。
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カチャカチャと食べる音がする。
私ね、そうメルは呟いたのを、スージーは聞き逃さなかった
『ずっと独りで生きて行かなきゃいけないと思ってた。
独り立ちして、全て終わらせて…友達も何も要らない。
大事な者が出来れば、足枷になるからって。』
「…ええ」
『でも、大事だからこそ守りたい強くなりたいって思える。
そう…改めて気付いた三日間でした。とても、有意義で』
とても、寂しい世界にぽつんと投げ出された。
恋しくて恋しくて堪らなくなってしまった。
帰る?そう言ったスージーにメルは
また涙を流しながら首を横に振った
帰りたくても帰れないのだ。
仮に帰ったとしても、
きっと沢山起こられるから。
だから帰りたくない気もする。
嗚呼でも、あの時間がとても居心地が良くて堪らなくて。
大事にしてはいけない。
どうせ記憶を消して消えるのだから。
そう距離を置いていたのに、
何時しか彼らとの思い出が溢れて止まらない程にまで
距離を縮めていたなんて。
私は気付きたくなかった。…なかったのだ。
「良い時間になりましたね」
『っ、はい、』
本当に、あの時間を教えてくれて。ありがとう。
嗚呼そうだ、私はーーいややめておこう。
今は、まだ…まだ、良い。
そう思い、涙を止めて、料理を完食した私は部屋に戻る事にした。
『今日は聞いてくださってありがとうございます』
「いえいえ、溜め込み過ぎないでねっふぃっ」
はい!そう笑ってメルは部屋に帰った。
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