部屋に戻り、そのまま寝ようかとも思ったが
すぐにログハウスに戻りたい気分になったまま
ベットに入っていた。
気付けば次の日になっており、時間を見ると10時を過ぎていた。
がっつり寝ていたようだ。まぁこれからログハウスに戻って
提出していたノートが戻ってくる前に、記憶上あるものを
整理するかと身体を起こした。
目を閉じて何時もの様に世界を広げる
開いた先には何時も通りの大きなログハウスに花畑
この場所にもう来れない可能性だってあるのに。
私がどうしてこの場所にずっと来れるのか…分からない。
力ならレイが持っているし、魔力の消費ではないのは分かる。
だが、何故私にこの場所をミレイユは譲ったのだろうか?
考えても見て欲しい。
魔女とは本来、存在してはいけないものだ。
悪魔や天使、人間みたいに分かれているわけでもない。
悪魔と契約した人間は魔女として力を持つ
その力があればこんな世界を作り出している暇があれば
世界征服なんて軽く出来てしまう筈だ。
だと言うのに何もせずに、ミレイユは人間界で死んでいった。
巡る運命を断ち切って欲しいと言う願いを私に告げて。
手を地面に落として。私から離れてしまった。
レイに渡したって良い筈なのだ。力は私持っていないし。
正確にはレイの方が上だから、対等ではない。
レイの周りに居た人達が彼を崇めるのも無理はない。
所詮力である。力こそが正義になり得るのだ。
なのにミレイユは私にこの世界を渡した。
まるで私が本当の正式な引き継げる継承者と言う様に。
彼女は私に全てを渡してくれたのだ。
力以外の全てを、優しさや憂いその他全て。
だから私は、貴方に言ったのだ。
相応しいなんてありえないと
貴方が居なくてどうするのかと
そう言った途端笑ってくれた貴方の笑顔が離れない。
私は、まだ強くなれる。
沢山引き上げた力も、まだ威力は中途半端
それは感情がとても不安定だから。
得た者が不安定ならそりゃあ威力も中途半端になろう。
だから駄目だと言っていたのに…貴方は強くはっきりと言った。
貴方こそが、ふさわしいのだと。
なら、それなら私は貴方が生まれ変われる力を持っているのか?
持っていたとしても、ふさわしいと思えるのか?
『…ずっと』
箱庭でうずくまって閉じこもっているのか?
…いや、そんなことはさせない。
私は歩いてログハウスの地下室に入った
何時もの香り、少し薬草臭くて、
本の匂いが沁みついている
この場所が私は好きなのだ。
オリアス達が入ってきて、
笑ってくれた時間が思い出される。
嗚呼、この時間も…受け入れてしまえばいいのだ。
触れた感情も、手を降ろした絶望も。
全て私が作り上げた世界なのだ。
貴方の手を取って、決意したあの時間さえも。
『…守るよ、ずっと。』
だからどうか待っていて欲しい。
貴方が二度とこの世界に戻れなくても。
魂ごと、この世界に禁忌として閉じ込められていたとしても。
私は貴方を救いに世界を変えてみせよう。
それが一体どれ程の大罪になるかは、見当もつかないが。
だが、今はそれだけ考えればいい。
もう、レイに手を伸ばす訳にはいかない。
終着点で、彼ときっと戦うだろう
その時、私は全てを知る。
貴方に出会えて良かったと心から思えるように
私は、今この瞬間も無駄には出来ないと
本を手に取り、文字を頭の中に叩き込む。
三日間の体験で分かったことがある。
まず、魔獣に関して。魔女が居る限り
魔女の印を持つ魔獣は基本的に物理攻撃しか効果はない。
だが、その効果も魔女の印の威力が伴えばによる。
例えば、魔女の力が10だとして、4程の力を注いだ魔獣に
6の攻撃を入れたらそりゃ勝つだろう。
攻撃が物理攻撃特化で手に力を込めたらの話だ。
それには威力、スピード共に正常でなければならない。
でないと身体が死ぬ。軽く骨折で済めばいいが、
下手したら身体が吹っ飛び破裂するかもしれない。
魔法だけに特化するのは辞めよう。
そう決意したメルは、休日の時間を縫って
剣をとりあえず手に持ち、素振りを始めた
前から枝を持って攻撃の動きは真似してはいたが
基本的に魔法を使っての攻撃が主で、動きが柔軟に出来た
魔法なのでそりゃあ使わなくなったら手元から消える
消えたのを利用して避ける動作を叩き込んでいるのだ
そのおかげで剣を受け流すという行為に慣れていない。
ひとまずは剣の素振りをする。体力をとにかく増やすことだ。
あと食事も沢山とれる様にひとまず噛む努力はしよう。
香水の効果も分析してみたいと思う。
悪魔がどんな匂いが好きなのかも調べると面白いかもしれない。
と言うかそんな本何処かにあったな。
そう思いつつ、メルは剣を持ち、
素振り50回した所で手を止めた
息が切れて汗がぼたぼたと落ちていく。
流石に風呂に入って綺麗にしてからこの世界を立とう。
部屋に誰も居なくて急に戻ってきたら流石に驚くだろうし。
一応夜まで籠っている予定でこの世界に入ったわけだ。
汗が涼しく思う様に風を作り出す
まぁ冷やし過ぎても風邪をひいては元も子もない。
加減しつつ、勉強に専念することにした都佑は
ログハウスの中、二階に上がり自室に入った
ドアを閉める。右側に大きなベットがあり、
目の前にはL字の机が置いてあった
壁には写真や魔法の資料を貼っており、
悪魔語を見てふふっと笑ってしまった。
机にはオリアス達と一緒に遊んだ記念撮影の写真を飾っていた。
皆笑ってまるで無邪気な少年少女みたいな顔をしている。
それを見て此方迄笑いが移ってしまった。
『…大丈夫。』
そう言って写真を手に取り胸に寄せた
この人達とまた巡り巡ってこの世界で
この場所で生きていけるのが奇跡だと思わなければいけない。
私はこの場所が、バビルスが好きだ。
笑ってからかってくれるダリ先生や、それを横目にしてたら
巻き込まれて怒っているカルエゴ先生。
植物を綺麗に咲かせるスージー先生や煙草をくわえて
攻撃して生き生きしていたイフリート先生。
料理が上手くて一緒に作って驚かせようとしていたロビン先生
猫だましをひっかけようとツムル先生と共闘した時もあった。
イチョウ先生には戦闘の話で盛り上がったり
モモノキ先生と一緒に買い物でお互いのことを知ったりしたなぁ。
バラム先生と生徒を教えて初めて満点取ってもらって喜んで
ついつい胴上げしてもらって、女性なのに気軽に触ってごめんね!
って謝ってくれたりした時もあった。
嗚呼、彼らの記憶があったから、
私はこの場所で前を向いて立ち向かおうと出来る。
何度だって、挫けたって…
私は貴方に貴方の傍で隣で胸を張れる様に。
『きっと沢山考えてるだろうな。私も頑張らないとね!!』
そう笑って、写真を置いて机に座った
ひとまずは占星術を思い出すか。
えーと教科書教科書…そうぼやきながら
手に取ったノートと教科書を開いて
ペンを取り出し、新しいノートを探す
全教科を思い出して、
何時かの戦闘で使えるようにもしたい。
知識は武器だ。何時しか
バラム先生が言ってくれていたことを思い出す。
『ええと…これがこうだから』
そう言って教科書の問題と答えを見比べる
勉強はしてはいたが、記憶が無い。
ならば作ればいい。記憶を、勉強をし直せばいい。
きっと途方もない努力になるだろうが、それでいいのだ。
私らしくて、非常に楽しい。
魔女の勉強も少しずつまた蓄えなければいけない。
これでも途中で放置されているのだ…嗚呼そういえば本が無いな。
貸したままなくなったものをどうやって勉強するのだろう?
まぁ、次の問題を解けばいいや。
そう言い聞かせて、意識を集中させた。
+++++++++++++++++++++++++++
『げ!もうこんな時間!?やっば!!流石に遅いかな!?』
そう思い、時間を見ると夜の10時
帰ると誰も居なく、寝静まっているようだったのでほっと安堵する。
部屋の中で寝転がり、今日の記憶を頼りに目を閉じた。
夢を見る
触れる大きな手には手袋をされていて
頭を撫でた後そっと頬に触れてくれる
優しい温かみのある男性の手
頭を上げると、
顔は見えるのに目がクレヨンで塗りつぶされていた。
嗚呼、もう、貴方もこの世界に入ってしまったのかと。
でも私が望んでしまったことだからそう言い聞かせて。
私は手を伸ばした
彼の頬に触れた手を、もう片方の彼の手が私の手を覆う様に
彼の頬に触れている。そのぬくもりが、心が痛くなる。
痛みが、心地よい快感を生み始める。
じわりとゆらり水が落ちた水面の様に。
広がっていくこの感情を、
言葉に表すならなんというのが正解なのだろう?
たった四文字、言葉を口で表現する。
声に出さずに口を動かしただけで、
泣きそうな顔をしている気がした。
嗚呼、きっと私がそう思っているのだ。
だからそう泣きそうな顔をする。
だから笑ってみせたらいい。嬉しそうに、ただ笑って。
そうしたら、貴方は笑ってくれる?
笑顔にはならなくて、只微笑んで此方を見てくれている気がした。
こんな自分が作り上げた世界ではなくて
自分が予想も出来ない世界で貴方と共に生きたい。
手を取って、背中を合わせて、隣で、貴方と生きたい。
…例えそれが、悪魔だと。人間ではない者だとしても。
何時かは帰らなければならない
その場所に居続けてはいけない
だと言うのに、私は手に取ってその場にとどまる事を決めた。
それがどういう罪かも、私は知っている。
言葉をもう知っている。馬鹿ではなくなっている。
でも、どうか馬鹿なままふりを続けさせて欲しい。
きっと私は、これからも貴方に恋をする。
『ー好きだよ。オズワール、』
貴方と永久に、時間を見続けていきたい。
どんな世界に行っても、私は貴方の手を取る。
掴みたいのは、永遠の感情でもなく、最大の権力でもない。
貴方と一瞬だけの小さな何でもない日常の時間だ。
告げた瞬間、オズワールの笑顔が見えた気がする。
それを、私は見ない振りして目を覚ます。
きっとまた明日貴方に出会えるから。
その時まで、私は楽しみを取って置くのだ。
例え記憶が無くなったとしても
貴方に私はずっと恋心を抱き続けるだろう。
…貴方が何度も私に記憶を消されても
私を好きでいてくれた様に。
私だって、貴方をきっと好きで居るだろう。
どうか許して欲しい。どうか、許して欲しいのだ。
貴方と笑って手を繋ぐことが、許されないと言うのなら
私は何度だって貴方に触れるさ。
例えそれが、受け入れたくない現実だとしても。
私は目を覚ます。
そうして笑ってやるのだ。
嗚呼、また夜に会おう。
そう言って、私はベットから起き上がり
衣装を着替え身を黒装束に着替える。
私は、この服の方が割と合っているだろう。
今度こそは、間違えないように。
そっと手に首を置いて。