Novel - Paola | Kerry

it's just you


羽化したのは一体誰の何だったのか3

20/09/15
57

ドゥルジが目を覚ますと、目の前には誰もおらず
ただ自分の頭が冴えているのだけ不思議に思っていた。


+++++++++++++++++++++++++++

『…あーあ使っちゃったぁ』

そう言ったメルに、オリアスがムッと目を細めた
時はドゥルジが完全回復する前
オリアスがメルを抱きかかえて意識が戻った後だ。

見られちゃったなぁそう言ってメルがシルバー色の目をしたときの
ギロリ目の奥を細めてオリアスを見た。
それにオリアスが低い声であいつに何をしたと聞く。

『しりたい?教えてほしいの?』

「いえ」

『…聞いていたように、悪魔の蘇生魔術よ。
禁忌魔術知ってる?』

嗚呼知らないだろうな。
そう言ったメルの目はまだオリアスを見ていた
何故なら魔女の得意分野であるのだから。
メルは薄々勘づいていた。
ルアラが何故赤本を手にするなと言うのか。
何故ルアラがメルの力を制御していたのか。



答えは逆だったのだ。
赤本の内容殆どが魔女の使える範囲だった。
魔女として、生き続ける為の極意を全て書かれていたのだ。
植物がどういうもので何が毒で何が良いのか。


事細かく全て書かれていたのだ。
…勿論、バレやすくなるし、
魔女の余命がゴリゴリ削られるのもあるが

そんなこと考える暇等何もなかった。
だからスッキリはしている。
後悔は何一つしていない。

だが、オリアスに見られていた現状
そのまま放置するのは無理だった。


『さて。オリアス先生、貴方はこれからどうします?
私のことを誰かに言いますか?嗚呼魔通信は
止めといた方が良い…殺されたくなければ。』

「…お前は一体何者だ、」

『…敵ではないことは確かです』

現に貴方の教え子を救ったでしょう?
そう言ったメルは笑って居たが、
目はまだ細まったままなのを
オリアスは知っていた

『もし敵なら救わないでしょ?
嗚呼救って後で殺すっていうのもあり得ますが、
私が彼女に注いだ努力を水の泡にするほど
私は馬鹿な真似はしないです。』

「…」

『…これは警告です。オリアス・オズワール
貴方は私のことを警戒するだけでいい。
此方に踏み歩いてくるな。』



ただ話せればいい。
君は自分の周りに危害が加えられないように私を見張る。
私は貴方と周りと関係をキープ出来れば良い。
利害が一致するだろう?


「…何故、こんな魔術を使えるかはおいておいて…何故使った?
バレてはいけないなら、尚更使ってはいけなかったんじゃない?」

『…同じだと思ったから』

「え?」

何時か見た夢の中の夢の世界に似ていたから。
嬉しそうに笑って、一人ぼっちになって。
それでも負けじと努力をするその姿が。

残酷な程まで、似ているように見えたから。
だから救いたかった。救う以外なかった。
例え魔女として知られても。

僕は、この子に生きて欲しいと思ったから。
だから使ってしまったのだ。

『この事は内緒にして。』

「…俺に全部話せるなら、約束する。」

『…本気で言ってる?』

そう目を細めるメルに、頷く。


『お前は望むのか?歩いた道が消えることを。
伸ばした手の先には幻しか待ち受けていないことを』

何を、そう言いかけた言葉を飲み込み話を聞いていた


メルの目が光りだす。
これは怒りだ。
メルは怒っているのだ。


『お前は知って尚手を取れるのか?
何度も何度も…いや、いい。』

「君は、最初っから何か隠している子だと思った」

「だから何かあれば速攻で自分の手で消そうと思っていた。
けど、君と彼女が笑って居るのをみて、普通に笑える子なんだと思った。」

「今は聞かないでやる…そうしないと、どうせ俺の記憶消すんだろ?」

『っな!!なんで!』

「ほら…記憶を消すのは、知られると不味いから?
それとも、君の命に関わる、から?」

『…』

「無言は肯定ととるよ。…はぁ。ったく。」

『…怒らないんだ』

そう言ったメルに怒れるわけないだろと返したオリアス
教え子を救ってくれたのだ。そりゃあお礼を言う以外に他ならない。


「さっきのは目をつぶってあげる。
その代わり、今度バトラに遊びに来ること。わかった?」

『へっ?あ、え?』

そう急に何か予定を入れられた気がして声が裏返った
今なんて?そう思っていたメルの額にデコピンが入る

『いっ!』

「約束、ね?」

そうしーと人差し指を指して姿を消したオリアスに
メルは床に腰を降ろして額を抑えていた
両手を顔を見せないように塞いだ

今とても顔が真っ赤で熱が止まらないだろうから。



+++++++++++++++++++++++++++

ドゥルジが怪我をしたときから一週間後
メルは遊戯師団へと遊びに出向いていた。

「え!?誰?」

「メル先生!?どうして此方に!!」

「俺が呼んだのさ」

そう言って部屋の奥から歩いて来たオリアスに
メルは大きくため息を吐いた

『来ましたよーはいはい何するんですかー』

「ちょ!いつもと態度違うくない!?」

『職員室で嗚呼ニコニコ笑うのは疲れるんですよ
…まぁこっちもそう変わらないけど。』

そう苦笑いするメルだったが、何のゲーム?と生徒に絡み始めた
生徒がドギマギしつつ、ゲームの種類を答えるのに
メルは少し頷いてへぇーと言って聞いていた。

「メル先生、オリアス先生に冷たくないです?何時もですか?」

「んーー最近はちょっとだけ冷たいかなぁー?」

「何か怒らせることしたんですか!?」

いいや?と言ったは良いものの、答えはイエスだ。
まぁメルがばらしてしまったというのが正しいので
被害者ではあるのだが…内緒話を知ってしまったので
メルも多少本性がバレてもいいだろうと思っているのだろう。

ふっとオリアスの方を向いて笑ってみせるのに
少しドキッとして目を丸めてしまった


んー?ドキ?どき?そう冷や汗をたらすオリアスを無視して
メルはドゥルジの方に歩いて行った

「メル先生はどんなゲームが好きですか?」

『んーゲームねぇ〜まぁRPGとか恋愛ゲーとか?色々するよ?引きこもって。』

「ええ!?意外!ショッピングとか本読んだりとかだと思った!!!」

うっせぇな。女子でもそんなお洒落じゃなくてすいませんねぇ!
そう言ったメルが不貞腐れる。
まぁ生徒が言ったのにも頷けることはある。
確かに図書師団に居るのに本を読まないというのも不思議だ。

趣味が師団に直結するわけでもないが、だいたい好きだったりするのだ。

「じゃあうちんとこの副顧問になればいいのに」

『良いです。ゲームは一人で楽しみぬいた方が良い。
それにネタバレ満載が楽しいんだから一緒に楽しめないだろうし。』

「うわぁ…」

メルがにやりと怪しい笑みを出したのにそうドン引きする生徒
クスリとドゥルジが笑ってじゃあと答えた

「オリアス先生とメル先生対決したらどうですか?
勝った方が一日何でも言う事を聞くって!」

そう言ったドゥルジに、へぇーとニヤリ顔になるオリアスに
メルは目を丸めて驚き慌てた

『いやいやいや、流石にそれは無理で…』

「オリアス先生家系魔術ラッキーハッピー無しね!!」

「ええ!?嘘でしょ」

「ハンデー!!!」

そう言ったブーイングに分かった分かったと
落ち着かせるように言った

「メル先生はどうする?君の得意なゲームで良いよ。」

『んー…一日、一日何でも……オリアス先生一日近づかないでもらう?』

ハッと気づいたようにぼやいた言葉に

いつもくっついているのかと勘違いした
ドゥルジがメルを抱きしめて
オリアスから距離を取った。


いやいや勘違いしてるからとオリアスが訂正を入れる。


『えぇ…でもなぁ…えぇ…これは駄目でしょー私弱いしこれも駄目』


そうオセロや将棋系の心理戦は抜きにする。
間違いなく弱い。私は顔に出る処か
決めたものはとことん真っすぐ戦法しか使わない。
一択しかない選択肢で、心理戦勝てる訳がないのだ。

かと言って恋愛ゲーをして私が照れるのは見せたくない。
たまにやって気持ちを高めたりするんだが…
余りそこを思っても意味がない。

ならば、そう思いついたのは一つの人気ゲーム。

『オリアス先生コレ遊んだことあります?』

そう手を出したのは、双子が世界を旅歩くゲームだった。
ロールプレイングゲーム略してRPGゲー。
旅をしていく中で双子の秘密が解き明かされるゲームだ。

「ああ、やったことあるよ。それがどした?」

『これしましょう。制限時間は3時間。
どれだけアイテムが取れたかで勝敗を決めましょう。』

「へぇ…?良いの?俺もやってるのに??」

そうにやりと笑うオリアスにえぇとメルも笑い返した。
パソコンを付けて私はメニュー画面で昔使っていたIDを入力した。
だが流石にないので、仕方がないと思い、昔のIDをそのまま使用する。

オリアス先生は新しいIDを入力して画面に入った。
ストーリーが入り、世界を包み込まれるような気分になる。

双子は世界を旅して、終わりの地で神々と戦い破れる所から始まる。
片方が自分の動けるキャラクターで、名前も変えれる。
男女あり、私は女性オリアス先生は男性キャラで動く事になった。

目を覚ましたら、300年も後の世界で、生きているのかも
分からない肉親を探す所から幕が上がる

オリアス先生は先にストーリーを進める為にどんどん前に向かって行ったが
メルは全く違って、周りの地形を探って宝箱を確実に入手していた。
舐めまわすように、一つ一つ取っていく。

レベル上がってますよー!とドゥルジがメルを応援する。
こっち応援しなくても大丈夫だよーとメルがさり気なく言うのに
どうして?とドゥルジや生徒が首を傾げた。

それにメルはニヤリと笑って答えた


ー私、これちょっと遊んでるから。


そう言ってから開始後2時間半。
オリアスはレベル10のボス戦と戦っていた
アイテムを収集し、
レベルが上がり周りの敵が強くなっていくが
ラッキーなことにアイテムが沢山手に入った。



終盤で良い調子だなと思っていた。
開始から3時間。結果発表として
ゴングが何回か鳴り響き終わりを告げた。


「オリアス先生レベルは?」

「12かな。アイテムコレ」

「メルせん…え?」

そう生徒が驚き目を丸めたのに、オリアスもメルの画面を見た
するとレベルは15になっており、ボス戦もまだ沢山倒せるものはあったのだ。
それにメルは言ったでしょ?と答えた

『私、ちょっと遊んでるって。このゲームは
ただ単純に長く続けるならボスを倒しまくった方が効率が良い。
だが、短時間でかつ移動も限られているならば
そこら辺の木や宝箱を取りまくった方がレベルの上限が一気に上げれる。』

他のゲームとちょっと違う抜け道があるんだよねーそう言うメルに
周りも唖然としていた。何せボス戦は1回きりで15レベルだ。
端から端までどうやって?すぐに見つける様なものはない筈だと。

というか


「まって、待って待ってメル先生!宝箱の最高取得いくつですか!?」

『…1500』

そう言ったのに生徒一人が顔を青ざめた
それに何々とオリアスが聞く

「た、宝箱は基本的に1000個しかないんですが、
500個程隠し場所にあって、え!?
もしかして全部仕組み覚えてるんですか!?
場所も!?順番も何もかも!?」

『そ』

そう言ってピースを立てたメルに完敗ですよと生徒が言った
まさか此処までやっているとは思わなかった。
と言うか宝箱だけでそんなにレベルを上げてしまっては
後がしんどいのではないのだろうか?

『勉強と同じだって。大体考えていること想像したら行けるから。
高い所にあるなら大体登れば分かるし。』

「いや鬼ぃ…!!!」

悪魔ですが、何か?そう嬉しそうに笑って答えたメルに
完敗ですとオリアスは両手を上げた。
まさか宝箱でそんなに取れるとは思っていなかったのだ。
適当にストーリーをクリアしてそこら辺を漁ったらいけると思っていたが
如何せん家系能力を使っていなかったのもあるだろう。

いや、ひょっとしたら合っても負けてたのかもしれない。


『私この世界好きなんだぁ…終わらない終わらせない物語って感じがして。
何時か双子が出会った時、その時双子はこの子はどう思うんだろうって。』

そう手を伸ばしてキャラクターに触れる様に手を曲げる仕草をするメル
これで勝てたからとても嬉しいと嬉しそうに笑っていたのを
ぼけっと見ていた事に気付いたのはドゥルジがオリアスの名前を呼んだからだった。

「ああ、ごめんごめん。約束通り、一日何でも言う事聞くさ。何が良い?」

『いやーーーーえぇ…』

「一日こき使おうよ!!」

『いやそれは私の気持ち的に無理ぃ…』

そう悪だくみを考える一部の生徒にツッコミを入れつつ
メルは唸ったあと、あ、と思いついたように答えた。

『じゃあ、これに花丸と、お絵描き一緒に描いて貰えます?』

そう言ったメルに、周りの生徒がブーイングを出す
それにはオリアスも同感で、他に何かないのかと聞いた


「え?本当にそれでいいの?いや俺の丸だなんて…え?」

『良いんです。欲張らない方がこういうのは運が向くんですよ。』

ね?そうウインクしたメルに、分かったとオリアスは折れて
彼女の提示された紙にお絵描きすることにした。
ドゥルジも混ざりたいと言って、三人で。可愛く描けた所に
大きな花丸が咲いていた。

メル先生花丸好きとか子供かよーと言った生徒に
オリアスが指摘しようとする前にメルが良いのと答えた。

『大人になったら花丸なんて一つも貰えないからね。
こういう時に思いっ切り甘える位が良いんですー』

先生それ甘えてるって言わないからね?
そう言われた女子生徒にメルがえ゛っ!?と叫ぶ





生徒が傷付けば、自分の正体をばらしてでも救い出し
自分はただ多くを望まずに傍でじっと立っているだけ。

その心が感情が渦巻いて力を出すのであれば、
どうして抑えていたのを放った?


もっと甘えてもいいだろうに
もっと悪い事、してもいいだろう。
でもきっと彼女は、望まない。




まるで望んでは死んでしまうからと
言い聞かせるように。



「(…今度スージー先生に何喜ぶか聞いておこ)」


まだ生徒を助けて貰ったお返しもさせて貰えていないのだ。
きっとこれ位は受け取ってくれると思う。

そう深く帽子を被ったオリアスを気にすることなく
メルはオリアスが描いた花丸を大事そうに抱えて
嬉しそうに笑っていた。











いいの。そう言ったメルの目は何処を見ていたのか。
メル以外知る由は無かった。

『(嗚呼この花丸はあの時と同じみたいだなぁ)』

そう手に取って持ち帰ったのはログハウスの中。
メルの部屋に飾っていたのだった。
人や場所は違えど、オリアス先生の花丸の位置は同じ。
ロビンたちとゲームをして勝って似たような絵を描いて貰った。

あの時もロビン先生達は生徒と同じように
もっと悪い事お願いしようと言っていたが無視した。
…これで良い。これが大事なのだから。

なんとでもないものが、嬉しくてたまらない。
彼が触れて自分の為にかいてくれたという現実が唯一残る。
紙は現実に残ってくれるから。



だから嬉しいのだ。
燃えない限り消えない限り
其処に残ってくれる。


もう望んだりしてはいけない。
誰かが傷付いて行く世界を私は見たくない。
願う位なら自分で叶えに行くべきだ。


『…嬉しい、だなんて気持ち…良いのに』



心がふわりと温かい気持ちに包まれる。
最初は焦っていたが、最後のほうになると
オリアスの顔は少し照れ臭そうに笑って居た。

ちゃんとドゥルジからの手紙も保管している。
この世界がこの場所にも、積まれていくのだ。
私は…私はこの世界からも、消えるのか?

ふと思った。そう言えばあの時、
手を離したあの場所に戻らずに
このまま居なくなることはないだろうか?


というか、三か月軽くいや半年以上過ぎているのに
誰も記憶が消えないし、
なんならワイワイしている。



私が、感情を強く抱いていないのが理由なのだろうか?

それとも、もうすぐでこの世界から
居なくなってしまうから?

嗚呼願ってはいけない気付いてはいけない。

また別世界の悪魔にまた出会ってしまうなんてしたくない。
気が狂いそうな世界に、私は取り残されて。
ミレイユも、きっと泣いたんだろうなと思う。

『…勉強もっとしないとな』

また、彼女に沢山教えてあげたい。
せめて、この世界では…皆を守れる様に。

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