前回のあらすじ。
てめぇ許さんからな?
※衣装変えられて現在魔法使用不可
メルは準備室についてノックをしてドアを開けた
「はーい」
そう言ったバラムの前に、
後ろを振り返ったオリアスが居たのを
真顔で見た後地面を見て、
またバラムの方を向いてオリアスを見た。
大きく息を吸って
『失礼しました』
よし、今何も見なかった。いいな?
そうスタスタと歩いて逃げようとするメルに気付いてか
オリアスが急いで扉を開けて待って待って待ってと腕を手で掴む
「いやいや、色々聞きたい事あるけどとりあえず中入ったら?」
『むぅーーー』
仕方がない。オリアス先生に見られたけど。
メルはため息を吐いて、失礼しますと
先程すっと扉を閉めた場所に入る。
どうぞと言われて魔茶を取ってくるねと席を外すバラムに
メルはお構いなくと手の平を見せつつ目を閉じて言う。
「にしてもその服どうしたの?」
『ライム先生に目付けられて、何か衣装変えられて
今魔術一切使えない状態なんです〜〜!!』
なのでチェルコも使えない。
もう泣きたい…精神安定しない。
「え?え?服だけでまさか」
『…』
「嘘だよね?」
『…気持ちの問題だけじゃない事は確かだと伝えておくです。』
「えぇ、そんなだいじな事なんで先に伝えなかったの」
『伝える前に行方をくらませたですよ…』
嗚呼、ご愁傷様。そう苦笑いするオリアスに
メルは軽く涙目だ。
頬を赤らめつつ、オリアスが「あー」と言って
そっぽを向きながら会話を進める。
「その、」
「あれ?メルちゃんその服どうしたの?
何時もと違って可愛く見えるね。」
『何ですかその何時もの服ダサいみたいな』
いやいや違うよ!?そう慌てて否定するバラムに
メルは分かっていますと言ってお茶を
バラムから手で受け取る。
『はぁーーー、かと言ってこれから家に帰る訳にもいかないし
サリバン理事長に会ったら間違いなく写真撮られてしまうし。』
「それは…確かにありそう」
『あんまり見ないで下さい…めちゃ恥ずかしいんです。』
もう顔がゆでだこ状態だ。
こんなオシャレをしたのは何時ぶりだろうか?
…プラネタリウムに行ったとき位かもしれない。
嗚呼、触れたあの手が瞼の裏に居る。
目の前にも居るのに、思い出してはチリっと心にヒバナが散る
期待なんてしないって思っているのに
何処か可愛いねって言って欲しいと思ってしまう。
自分が、嫌だ。
『ひとまず隠れて居たいんですが、構いませんか?』
「僕は別に良いよ。でももうちょっとしたら
カルエゴ君に用があって出るけどその間も居る?」
『う゛っ…出来れば』
「分かった。鍵は?」
『チェルコで紛失しましだ…大変申し訳ございません。』
「あはは、今回は予想外のことだったろうし
次から気を付けてね?」
はぁいそう頭を抱えるメルに、バラムは説教するつもりはない。
もう彼女は理解をして反省をしているのだ
これ以上言うと逆に責めて彼女の心を締め上げてしまうだろう。
「じゃあオリアス先生、次の授業はよろしくね」
「え?ああ!はい、分かりました此方こそ」
あとオリアス先生も心配だったらここに居て良いからね。
そう言ってバラムが準備室から出て
そのまま鍵を閉めて出て行った。
それにあれ鍵持ってるけど
何で外からしたんだろうと不思議に首を傾げるメルに
オリアスが問う
「…ねぇ、その」
『ん?』
「いや、いい。それにしても災難だね。」
『そうなんですよぉ〜はっ!オリアス先生授業は!?』
「ああ午後は半分休みなんだよ。
明日からちょっと数日居ないから
バラム先生に引継ぎでちょっと授業見て欲しくてさ、
授業の内容を教えていた所。」
『はわーそんな貴重な時間を…で、出て行って貰っても構いませんよ!
鍵締めていたら基本的に居なくなるでしょうし。』
そう言ったメルに、オリアスは「…出来る訳ねぇだろ」と低くぼそりと呟いた。
それにメルは聞けずにもう一度聞く。
「はぁ…あのね?今どういう状況か分かってる?」
『…魔法使えない!』
「そ、魔法使えない状態で勝手に入って来られたらどうするの?
それが相手男だったら?」
『う゛っだ、大丈夫です…多分』
そう言ってメルは魔法を使用していたように身構える
それにまだ分かんねぇかなぁと頭をかいたオリアスが
次の瞬間メルの腕を掴み、片手でメルの腹を押して
そのまま地面にメルを叩きつけた
「こうやって手取られて?上に乗っかられても?」
『っ、ん!!ん゛ーーーー!!!』
足や腕をジタバタさせるが、片腕掴んでいた手を離して
メルの両手を片手で上に抑えつける。
足も上手く動かせない場所に
腰を降ろされてしまっている以上何も出来ない。
何も?何もできない。
その恐怖に顔が青ざめる
魔法を沢山使用して、
武術だってそれなりに勉強した。
それでも、筋力は男の人に劣るという現実に
人間がいかに無力な存在なことに、
目を逸らせずにいた。
「…ね?分かったでしょ?」
そうパッと両手をあげてオリアスが目を閉じて言う
腰を上げて立ち上がり、メルの手を取って起こす
急に組み敷いてごめんね、痛かったでしょ。と頭を撫でる
それにメルは、いいえと答えた。
『ちょと、危機感覚えた…と思います。』
「ん。それは何より。」
『…ちょっとだけ、居てもらっても構いませんか?』
「…いいよ。」
そう優しく微笑んでくれて、
メルはドキッとしてそっぽを向いた。
それが見えていない訳ではないオリアスは内心上機嫌だった。
メルが甘えて何かを
お願いすることは今までなかったのだ。
やっと頼ってくれたという気持ちと
自分を見てくれているという
気持ちが混ざってつい頬が緩みそうだ。
オリアスは頬が緩んでいないか
気になって片手で自分の口元を抑えた
『…男の人、手も力も大きいですね。
…ぶっちゃけオリアス先生私よりも
か弱いと思ってたから勝てると思ってたのに。』
「待って?今聞き捨てならない言葉聞こえたんだけど。」
君よりか弱いってどういうことよ。
そりゃ身体は細いけど、
ただひょろ長いって訳じゃないぞ???
『いつも沢山お世話になってるから、
私動いて走った方がきっと楽になるかなって
体力つけると同時に腕とか筋力鍛えてたのに。』
「っ(嗚呼充分君は俺を助けてくれているのに)」
ドゥルジの件が良い例だ。
彼女の件は正直自分では手が負えず
かと言って女性教師に
助けを求めることに抵抗があった。
そんな時に、メルが気付いたら動いていて
彼女の相談役や勉強をバラム先生から
推薦されたとは言えど、今までずっと
見てくれているのを知らない訳がない。
正直かなり助かっていたのだ。
だから、其処まで頑張らなくていい。
未来が来るかどうかも分からないというのに
まるで確実に来るからと
未来を予知しているかのように。
…まぁ未来から来たなら、
そりゃそうだろうが。
幾ら何でも気を張りつめ過ぎだ。
このままいけば近い将来ぶっ倒れると思った。
「充分役に立ってるさ、そう気を詰めるな。」
『でも…』
「寧ろ俺が仕事しろって今まで言ったことあるか?」
下を向いたまま首を横に振るメルに
オリアスはため息交じりに息を吐いた
「充分仕事をしてくれている奴
にこれ以上は求めないし
何ならちょっとやり過ぎだ。
根詰めすぎて倒れちゃ元も子もないだろ?」
『…ん。ごめんなさい。』
「怒ってないさ、ただ心配なんだよ。」
君が、そのまま消えて居なくならないか。
遠い世界を追いかけている君が、
このまま居続けて絶望していかないか。
それが怖い。
笑顔が失われることが、
一番恐ろしいのかもしれない。
「あのタリスマンみたいなことっていつもしてるのか?」
『…ちょっとだけ』
「ちょっとってどれ位?」
『えと、その、うんと…その』
そう言葉に言えずに左右上下と
首を振って目線がちらりと合う
下に向けた顔が少しだけ上がり、
上目遣い状態だ。
『ひゃ、100単位…』
「それはちょっとじゃない」
そう真顔で言ったオリアス。
その単位をちょっとと言う所
通常はどれ位の感覚で使用するのだろうか
…ちょっと考えるのは止めておこう。
「…もう手伝うから。」
『いっ!いえいえ!!そんな訳には。』
「俺が心配なの…ね?」
『あう…わかりました』
そうしょげる彼女に、
少し言い過ぎたかと反省しつつ
これ位しないときっと彼女は
すぐにでも無理をしそうな気がして。
彼女を其処までさせる、
自分が憎らしかった。
きっと彼女からしたら
未来の俺はとても優秀にみえたんだろう。
そんな訳ないだろうに。
「成功率低いやつなら休日開けれるし、
どうせなら申請だすよ?」
『ひぇっ!そそ其処までさせる訳には。』
「どうせ今週末も沢山作る予定だったんでしょ?」
『う゛…此間使った材料を取りに行くか、
低い確率の奴使ってからまとめて取りに行く予定で』
「低い確率ってどれ位?」
『えと…か、完成の状態で…ご、5%?』
ひっっっく!!!そう大きな声が
出そうになったのを一瞬で抑えた
此間の苦労を考えての感性状態だと
途中で失敗する可能性が高いだろう。
まぁどうしようもない幸運もあるが、
こればかりは幸運に頼るしかないだろう。
「ちなみに何作るの?」
『今使用している壺の強化です。
ワンランク上ですので結構しんどくて。』
「…まさかと思うけど此間の倍?」
『正解です』
苦笑いするメルに、オリアスはため息を大きく息を吸った後吐いた
期間的にも一か月程かかるらしく、その間は壺を使用できないので
丁度在庫が切れる寸前で壺を新しくしたいらしい。
「壺自体買うとかしないの?」
『家系専用の物なので、売ってないので』
「え?ああそうか成る程。」
そりゃあないわ。
『前に使っていた物が壊れたと言いますか
元々使用されていたのは前の人の物なので
自分専用の壺で作る方が完成率は高いんですよ。』
半分位けずれますので。そう言ったメルに
今までそれで良く作っていたなとオリアスは感心してしまった
『でも壺自体を持ってくるわけにもいけませんし
あの場所で一緒に作成した方が効率的なんですが…』
「あのログハウスの中ってこと?」
『…途中目閉じてくれるのであれば、大丈夫です。』
え?いいの?そう言ったオリアスに仕方がないとメルはため息を吐く
『どうせ嫌でも手伝おうとするんでしょう?
それなら頼むしかないじゃないですか。』
「〜〜っ!」
頬を赤らめる彼女に、此方も熱が移ったかのように頬が赤くなる
彼女がログハウスのあの場所に行けるのは簡単だが
他人を入れるのはかなり難易度が高いらしい。
心を許さないと、その中に維持されないからだ。
それ程まで貴重な場所に招待されるとは思っていなかったが
だが、それでもいい。
「じゃ、楽しみにしてるね?」
『〜っ、はい。』
そう困ったように照れ臭く笑ったメルの笑顔で
丁度チャイムが鳴った。それと同時にバラムが帰って来た。