Novel - Paola | Kerry

it's just you


よかった、うそはとどいていない3

20/09/15
7

前回のあらすじ

メルちゃんが淡い緑髪の僕っ子美少女に変わっていた。


いや本当に驚いたが、さっきからどうしようしか言っていない。
ラッキーなことに言葉のイントネーションがかなり違うが
これは彼女の独特な方言だろうか?



『“オリアス先生どうして入って来れたんです?”』


「いやだからラッキーなことに読めたら入れて」


『“えっ!えっ!すごーい!
流石だなぁ〜やっぱ凄い悪魔なんですね!”』


「ってか、メルちゃんさっきから
そのテンションどしたの?」


『“えっ!?あっ!…えと”…あの、その』


そう訛りが外れて元の言葉に聞こえる。
顔を赤くしたり青くしたり百面相が上手いことだ
髪の毛の色はまだ緑色だが、
もごもごしている彼女は職場で見たことのない表情だ。

恐らくというかほぼ確実なんだが…
こっちが素の表情なのだろう。
オロオロする彼女になんだかすとんと心が落ち着いた。


『あの、このことは誰にも言わないで下さい。』

「ん?どして?何時もチェルーシルで姿変えてるってこと?」

『あっ!いや、まぁそうって言えばそう、ですけど。
あっでも違うのかな?えっ、どうなんだろ?』

おっと?あわあわと慌てふためく
彼女が浮遊し続けて居る。

『うーんそう言う事で構いませんよ。』

「にしてもオズ君って、言ってたけど?」

『んにゃ!?いいい、いって、ない、です…よ?』

んぐっ、そうハートに矢が刺さった気分になる
上目遣いで困った顔で言われると
少々悪い気分になるものだ。


「ん、んんっ。そ、れだとしても!
僕って言ってたけど、
さっきの言葉は?女性は!?」

『んえ、え、っと、あの〜
ふぇ〜〜〜!!ルアちゃぁーん!!』



+++++++++++++++++++++++++++


「つまり、メルちゃんは
元々この性格を直そうとするために
あの姿になっているってこと?」

『そゆことです…大変不埒な姿を
お見せしたこと謝罪します。』


そう土下座をする勢いなメルに、
いやいやかまわないと言って
何とか土下座しない様に肩を抑えつけたオリアス。

にしてもこれから見回りなのに
大丈夫なのかこのテンション。


『いや申し訳ないです私の姿を見られるとは
本当に私が駄目な人間なのでもうダメです。
ふぇぇー』


「え?人?あえ?」


待って、今人間って言った?
この子、言ったよな!?
そう今度は鷲掴み聞く


「メルちゃん、人間?
あの、空想生物の!?」

『ふぇっ…えと、あの…
…うん。そ、う?』


首を傾げて涙目の彼女が
きょとんとした顔で此方を見る。

なんてこった…この悪魔しかいない悪魔学校に
え?ちょっと待って、今までじゃあどうして!?



「待って!?今までどうやって暮らして!?」


『ええ、えと、香水振りかけてて』


「ちゃんと毎日使って!?」


『ひぃっ!はい!使ってます!!』


「ご飯は!?人間ってお腹壊さないの!?」


『一応食べれる物と
食べられないものを分けてる位で…』


「良かったね!!!」


いやそんなことよりも!!


「…君、本当に人間なのか。」


『うっ、嘘じゃ、ないです…よ?
あれでも悪魔に
知られ、たら、不味いような
…はぁぁぁぁああっ!!!!』



あ、今頃気付いた感じしてる。

馬鹿だなこれ。

馬鹿だ。


人間の中でも多分ダントツで
馬鹿なんだろうな。

そう察した。


人間は悪魔が食べ物と
歌う程のものだ。

校歌にあるように。



深くため息を吐いた後、
あのさぁと言った俺に対して
そこら辺にかけていた
お気に入りなのだろうバスタオルを
ぎゅっと抱きかかえた。


…可愛いなおい。



深く帽子を被りなおして咳き込んだ。
何だ可愛いって仮にも後輩で俺は上司だ。



「君何時から此処に?」


『えと、軽く三年以上は…前から』


「人間界には帰る機会腐るほどあったろ?
何で逃げねぇんだよ」


『それは…その、捨てられたので』



は?そう目を丸くした俺に、
メルちゃんが違うんですと言った。
慌てふためいて否定を述べる彼女が
必死で青ざめつつ訂正を述べる。


『ただ、うちの親、
私が悪いから面倒見なかっただけで!

私がもっと頑張れば殴らなかったし、
私がもっといい子だったら…
だから私はこの悪魔の世界が丁度良いんです。』


地獄の中でないと、
きっと人間の世界には居続ける資格等ないと。


彼女はそう言った。

嗚呼、そんな訳がない。

なのに彼女の目は
本当のことを言ってそうだった。


彼女はずっと親から暴力を耐え凌いでいたのだろう。

だから生徒に対して
優しく距離を適切に取ろうとするし
相手の気を悪くしたかと思えばすぐに謝る。



それは全て親に殴られない様に
セーブしていたということだ。


元々僕と言っていたのは
どうやら自分のことを
女と判断出来なかったらしい。


それどころか精神的にもきつい状態で
中々おしゃれや余裕も無かっただろう。


話を聞く事にオリアスは
自分の手が強く握る事を感じた


『でも!僕今とっても幸せ、
なんです!お願いします!
魔関署には言わないで下さい…
あ、でも…どうしてもなら…
良いです…もう、ダメなら…』

寂しそうに泣きそうな声で笑う。
そんなこと言われたら、余計に困る。
然し礼儀はしておかないといけない。

「メルちゃん。
君は本当に人間の世界に生きなくていいの?」


『?だって僕は悪い子だから
この世界に居るんでしょう?』



おっと。

とんでもない答えが返って来た。

聞き方を変えた方が良いな。



「ごめん俺の聞き方が悪かった。
君が望んで、この場所に居たいかどうかだ。
周りがどうこうじゃない。君がどうしたいかだ。」


『僕の意見は含まれる権利
無いのではないんですか?』


そうサラッとさも当然の様に言うメルに、
オリアスは嗚呼これはダメだと思った。


幼少期にどれ程の虐待をされたのかは
不明だが、生徒を何百人と見て来た俺でも、
この価値観を植え付けられた悪魔は
そう良い子にはならない。

ずっと怯えて暮らしていたのだろうか、
不安そうな顔をしないのは
恐らく周りが怒って殴っていたからだろう。

無意識に恐怖を見せないように。
でも、目の奥が怖がっているのが分かる。

価値観を全否定され続けてしまえば、
こんな子にはなるが…中々此処までは無い。
生徒と関わっているのは普通に見えたが、
自分のことになるとかなり卑下する。


これは酷い、流石にこのまま
黙って無視するほどではない。



「いや、いいや。
メルちゃん。
好きなものは?」


『えっと本読むとか…』


「嘘。本当は?」


『いや、特に』


「じゃあこの世界で作ってみて。
好きなもの嫌いなもの、
自分の思った事を自分で決めてみて。
今まで誰かの記憶から抜き取ってきただけでしょ?
それをずっとしていくの?」


『だってそう、しないと
…怒られちゃうから。』



そう頭をかく動作をするだけなのに、
メルちゃんはひっと言って頭を抱えた。


嗚呼、両親が憎たらしい。

こんな風に怯える様に育てて。

オリアスはそっとメルの身体を
抱きしめて背中を叩いてあげる
大丈夫だという様に、
とんとんと優しくたたく。



「大丈夫。君が人間界に帰りたくないなら、
俺は何も言わない。

ただ、ちゃんとこの場所は
誰にも入らせないようにするのと
もっと自分のこと大事にする事!!わかった?」


『あっ、えっと…はい。』


よろしい。

にしても本性は
とても素直で良い子じゃないか。


そう思ったが、この本性も生活をする上で
作らされたものだと思うと
苛立ちが浮かび上がる。



嗚呼、それならいっそのこと、
この世界でこの悪魔しかいない世界で
ただ一人生きていくなら、俺も助けてあげたい。


だって、それが面白いから。



彼女が自分から足を歩もうと出来るなら。
この一年だけ見守って居ようと思う。


もし一年何も変わらなかったら、人間界に返す。

もし一年何か変わるようだったら…その時はその時だ。



「よし、ひとまずその外見変えて?
見回りいくよ。」


あと後輩にちゃんと謝っといて。
そう伝えて。

俺は緑髪の彼女のことを
心の中でメルと呼ぶ事にした。

だってきっと彼女の方が本心だろうから。

嗚呼でもそのことは
俺だけの秘密にしておこう。



僕って言うのもなるべく
外で出さない様にしているらしい。

そこは同意した。
急に僕と言い出すと周りも困惑するだろうし。



…それに

「(俺だけ知ってるって言うのも
なんか、そわそわする)」



+++++++++++++++++++++++++++

ちゃんとバトラの子にご迷惑をおかけしましたと謝った所

メルちゃんは水色の何時もの髪の毛に戻り
何時もの様に笑って

此方に喧嘩を軽くふっかけつつ
見回りの階段を登って行っていた時だ


ふと此方と目が合い
少し驚いたのか
彼女の方がそっぽを向いた。



「なに?」


『…いや?何でもないですよ』


二人きりなのか、所々素が出る。


彼女の素を先程見かけてしまったのか知らないが
周りに気配が無いとおどおどする。


全く、本当に人に感情を奪われてしまっている
彼女が最早可哀想を超えて哀れに見えて来た。


「そう怖がらなくて良いよ。
俺はさっきも言ったけど何もしないから。」


『…でも』


「言う事が聞けない?
それとも信じれない?」


恐らく後者が正確なんだろう。
彼女の目が一瞬揺れた。ビンゴだ。


そりゃ理不尽なことに
惑わされ続けていれば、
信じれなくもなるだろう。


此処は教師としても、
一人の悪魔としても、

幸せな時間を覚える様に軽くヒント位は
出し続けてあげた方がいいだろう。

だが、それならあの時、
何故あんなにも嬉しそうに笑ったのだろう?

何よりも嬉しそうに、
今まであんな嬉しそうに
笑う彼女は見た事が無かった。



なのにどうして彼女は隠すのだろうか?


あんなにも難しい言葉にしてまでして扉を閉じて。


悪魔は集中が苦手だが、
興味のある物の集中はぴか一だ。



こりゃ楽しくなってきた。


『うっ…』

上目遣いで此方を見て足が止まる。

…うっ、そんな目で見つめないでくれ。

何だか俺が意地悪しているみたいじゃないか。



いやそうか。



「まぁ、信じなくても良いよ。
今はまだ、ゆっくり慣れて行けば良い。
あ、あと俺と居る時は
基本的に記憶からの情報はNGね。」


『えっ!?』


嘘、と言った驚いた声と顔をした。


「何なら無理に私って言わなくても
僕って言って良いからね?」


『ええ!?』


「君の感性で俺の質問に答えてよ?
これ上司命令ね。」


『えぇ〜!そんなぁ…』



そうあからさまにこたえられると
こちらも無しにしたくなるものだが…

そんなことをしたら彼女の
本当に好きな事も分からなくなる。

このままでは彼女の本当の感情を
彼女自ら分からないまま
最期を迎えるかもしれないのに。



欲を前に出す位で抑えるのが
丁度良い悪魔と反対の彼女。

欲を知らない知っていても
殺して無くしたもの。


いや反対ではなく、
正確には悪化した末路と言った方が良いべきか。
どちらにせよ殺してまで生き続けるのは酷だろう。



「それに欲は案外ラッキーな方向に向かうんだよ」


『え?何か言いました?』


「いんや?こらそっち逆こっちだよ。」


そうでしたーそう言って数メートルから
トタトタと小走りで帰ってくる
彼女を子犬みたいに見えて少し笑った。


そう言えばとたわいもない話を切り出した。


「好きなものとか無いの?」


『あっ…その、
悪く思わないで下さいよ?』


そう先に刺されて、うんと答えた後
良かったと言いたそうな顔で話を切り出した。


『私好きも嫌いも分からないんです。
判断が分からなくて。』


は?そう言いたかった言葉は
声にもならず、喉でつっかえた。



『皆が言っている言葉を頼りにして、
無難な言葉を口に出していたんです。
そもそも考えていないから、無であり、
答えは記憶からなので本当でもある。』


「あ、バラム先生が
嘘言わないって言ってたの」


『心を綺麗に騙せたら
それは本物になるんですよ』


そう、少し寂しそうに笑って言った
彼女の目が、一瞬
虚ろに見えたのは気のせいだろうか。



『ほら、生徒達ゆっくり眠ってますね。』


コソコソと喋りながら歩くメルに、
オリアスはソウダネと答えた。


いやこれ聞かれている
可能性あるんじゃないの!?



と思っていたが
どうせ忘れるからと彼女は言った。



とても寂しそうに、
泣きそうな声な気がしたのを
オリアスは聞き逃していた。




+++++++++++++++++++++++++++





オリアス先生に僕の本性がバレた。
僕はとんでもなく混乱した。

だって今まで誰にも見せたことが無かったから。
あの使い魔たちにすら見せたことがない。
強いて言うなら、ルアちゃんが見ている。

彼女は初めて見た時泣いていた。
だからなるべく見せない様にしていたのに
どうしても授業を受けてから出すようになった。

頭の中で想像して、作り出す魔術がある。
それはかなり高度な魔術で、
基本的には難しいとのこと。


勿論危険性もあるが、
問題なのはその想像物。


触れることは不可能に近いが、
練度を高めることで効果は高くなる。

つまり触れる可能性が高まるということだ。

まぁこの魔術はほぼ家系魔術に近いらしく
その魔術を持つ家系は
既に絶滅をしたと昔ダリ先生が教えてくれたものだ。





なのに、ある日突然女性が私の前に現れた
最初は驚いて慌てふためいたが、
何故か見た事があって気になった。

バビルスを卒業して、一度人間界に戻った。


その世界は全く時間が過ぎていない気がして
それもその筈なのだ、
人間界と魔界の時間は全く違う。



本来は人間界に居れば、
長生きするという事が分かったし

人間界にあった荷物を
少ない限りで持ち帰る事にした。

こっちは無断でなので
バレたら処罰されるが、
それでも良かった。



エメラルド色の小石と、
幼い頃に写真を撮ってくれた両親の姿

嬉しそうに笑って
此方にピースをしている僕。




あと辞書も持って帰ってきた。
これは元から持ち帰る予定だったものだ。



日本語の勉強と英語の辞書を持って
人間界の文学を伝えたいという事で
許可が正式に降りたものだ。



勿論これは魔関署と僕だけの秘密だ。





バビルスに教師として採用されて、
私は部屋を作らせてもらった。


理事長からは何時でも使って
構わないと言われて、
私はどんな部屋でも
構わないかと言われたため、
昔から夢に出てきた部屋を作った。



薄い水色の壁にフローリングの部屋。




どうせなら自分が気になった物を
置いとける部屋にしようと思って作り替えた。



勿論人間の書物は隠している。
念入りに、誰も見れない様に魔術もかけた。



だから誰も干渉しない場所という
環境に甘えて、
私は魔術に専念できるようにした。








それがいけなかった。





ある日突然女性の目以外が
綺麗に作れる様になった。


綺麗な淡い緑髪に綺麗な肌色
人間特有の耳に爪に背中に何もないその形が綺麗だった。



母の様に見えたのに何処か違う人に見えて。


僕は魔術で変えていた
見た目を元に戻して確認した。

淡い緑髪の自分の姿を
母の様な存在と照らし合わせて
これは僕の理想なのだろうと思い込んだ。


そうでもしないと、この感情を抑えきれない
空いた気持ちを
どこに置けばいいのか分からなかった。




女性の目は何時まで経っても
見えないのに、日本語で言葉を交わすうちに
ある言葉に対してなら一瞬見える様になった。



きっと今日も大丈夫。




その言葉だけ、女性の目は黒目の綺麗な姿を見せてくれる。


嗚呼、やっと見れた


やっと会えた。




だから手を触れたのに

通り抜けて触れられないと知り

感情が爆発しそうになる。



それを抑えて小さく叫ぶ。

嗚呼、貴方に触れることは許されないのだと。






それもそうなのだ、
私は愛される権利をはく奪された悪い子だ。



だからこんな小さな部屋で
小さく叫ぶしかないのだ。



なのに綺麗な金髪色の髪の毛が私の目を横切った

毎日頑張って、でも気だるい感情が少し漏れている。

彼。

オリアス・オズワール。


オズワールは名前なのだろう。




聞いたことはないのに、
オリアスは実際この目で見た事がある。



だって私は一度
悪魔を呼び出したことがあるのだから。





その悪魔は僕を見てくれた。

何も僕に代償をくれずに、
消えて居なくなった。

僕はただ、傍に居て欲しいと

言った筈なのだ。

なのに何も言わずに消えた。



それは僕に悪魔が
代償の物が無かったからなのだろう。



ならいっそのこと
この魂を食らいつくしてほしかった。



なんて、言ったら
きっと彼は怒るんだろうな。


そんなオリアス先生。


キラキラした彼の周りには
生徒が先生が必ず傍に居る。


僕はなるべく彼を避ける様にした。
オリアス家に僕の噂が伝わっていれば
それこそ…申し訳ないのだから。



親には見放され、悪魔には
代償すら貰われずに悪魔の世界に降りた。


そんな出来損ないの僕は
独りでいる位がお似合いなのだ。




だからこれは生き地獄で
与えられなければいけない。




…何もしていないのに。


なんて言った

自分の心を殺して

今日も息をする。




金髪の彼が僕の部屋に入って
目を見開いて此方に向かって叫んだ
僕が慌てて人間だと言った事に

彼は嘘と言ったが
本当なのかと問い詰めて来たので
思わず僕はそうだと言ってしまった。



嗚呼馬鹿だ。


間違いなく彼にもバレた。



恥ずかしくて穴があれば入りたい位だ。

彼はそれから「食事は?」とか

「どうやって今まで暮らしてた?」
とか聞いてきた。


食事は場所によるが食べるものを選んでいるし、
生活は香水を振りかけたら大丈夫だった。



教育係だったとは言え、
怒られることは殆ど無かった私だったが、

彼と話を関りを持った中で一番
彼の目が怒りの目をしていたのに
対して怯みまくっていた。


いや彼本当に怖い。

もっと危機感を持つべきだ。


しかも女の子だよ!?

失礼だけど孕まされる
可能性だってあるんだよ!?



と僕に対して説教してくれた。



だから、僕はこの悪魔なら、

僕を見てくれると思ったのだ。


わたしではなくぼくを。



今までそうやって叱ってくれる悪魔は
バラム先生やカルエゴ先生。
オペラ先輩や理事長位だったのだ。



嗚呼スージー先生やマルバス先生辺りもあったな。




なのに彼が言う言葉は全て、
私の先を見据えて丁寧に教えてくれる。


この悪魔は、この悪魔なら、私の全てを見てくれる?



いやそんなことはあり得ない。



在り得てはいけない。



忘れてしまったのか?


安名メルよ。

お前は出来損ないの無能なのだ。

この世界ですら

息をすることは許されないというのに。




なのに、私は彼に少しだけ心を見せてしまった。


だからか知らないが、
彼がとんでもない事を言い出した。


「俺と居る時は記憶から発言することはNGね」



ちょ、とんでもないことを言いやがるこいつ。



私にとって死活問題なのだ。



基本的に考えた物を否定されてきた人生。

私の考えは全て相手にとって
NG発言であることを考えた。


そうなれば、相手が言った言葉が
逆に正しい正解発言である。


私は何時しか自分で考えずに
相手が言っていた言葉を記憶を頼りに
会話をするようにしてしまった。


おかげ様で今まで間違えたことはほとんどない。

だからそのままで生きれたら良かったのに、
彼と言えばその正解をダメだというのだ。

彼は怒るのが好きなのだろうか?



そう困っていると、
彼が近寄って私を抱きしめてくれた。


近くに来たら怒られると思って頭を抱えていたら、

彼の手は私の背中を優しく叩いてくれた。




「大丈夫。
君が人間界に帰りたくないなら、
俺は何も言わない。

ただ、ちゃんとこの場所は
誰にも入らせないようにするのと
もっと自分のこと大事にする事!!

わかった?」


はい。とだけ無意識に
反射的に答えてしまったのを
気付いたのは10秒後のことだった。



彼は私が自分が大事にすることを
優先してくれて叱ってくれたのだ。

そんな彼が私は羨ましいと思った。
そうやって言える人は悪魔は優しいから。



嗚呼、そうだそれなら
彼の言う様に大事にしてみよう。


そうすれば、きっと花が咲いた時、
彼が私のことを食らってくれるだろう。



代償はまだあげれていないのだから、
彼の家系に私の全てを捧げて死んでしまえるのなら。






きっと私の悪い子はそれで幕を閉じてくれるだろう。







生きた時間と一緒に。






どうかそれまで、それまで
この気持ちは大事にさせて欲しい。






女性の名前すらまだ思い出せない私の悪い子を。







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