十七日目。
朝メルは荷物を整理し
まさか一日でキッチンを作れた自分が怖いと顔を手でふさいだ。
後はトイレ…もう形ゴムで作ろう。そう諦めたメルは
2日でまさか本当にトイレが完成するとは思いもよらなかった。
二十日目にしてようやく
『できたああああああああああ』
家だけだがな。そうため息を吐いた。
ちゃんと屋根も付けて、
暖炉も電気も発電出来ている事を確認済みだ。
太陽光発電と一応マッチ使えるようにコンロも整備している。
電気も水流を使用して発電出来ているし、
電池は貯めて置いてもいいだろうと
今度は蓄電器を作るかと思いつつ、もう此処までがいい。
そう家どころか全てを作れる勢いが恐ろし過ぎて
逆に夏休み何してた?と聞かれても
家作ってたとは口が裂けても言えない話である。
まさかキッチンやトイレまで作れるとは思わなかった。
半導体系は流石に無理なのでそこと布団は買った位だ。
それ以外ほぼお手製。しかも魔法を駆使して移動させている。
一人でよく一か月たたずに作れたなと思う。
…まぁここからが始まりだ。
これから死ぬ気で教科書を同じように作らなければいけない。
インクを職員室で使う訳にもいかない。
それに文字は全て日本語である、一応辞書もあるが
それは人間界から直接取ってきたらしい。
ミレイユ曰くだから。事実だ。
『…そういや、ミレイユ自体日本人だったんかな?』
そう言ってソファーに座る。
嗚呼ソファーや机椅子は二日で作成した。
棚が出来たんだ机とか簡単だろうと思っていた。簡単でした。
ガラスと鉄製の机を作ったのが正解で、黒く気に入っている。
そんなガラス机は無視して、
緑の一人で寝れるソファーに腰掛けてぼやく
そう、実はミレイユの出身地が全く分からなかったのだ。
ミレイユや本の通り曰く、
魔女は魔力を消費し続けると
髪の毛の色や目の色素が消える。
生命の活力事態を吸収して使用する為だと言っていた。
メルの場合は転生してはいるものの、
前も人間であり日本人だった。
転生後は日本で生まれたがまさかの島流しである。
場所が中国であれよあれよと逃げていたら
ヨーロッパの一部の家に引き取られて奴隷扱いである。
まさかそこでミレイユと出会うとは思っていなかったが。
色素が薄くなれば、緑髪の状態も分からない。
『…もし日本人なら、こんな日本語書くかな?』
一つの仮説が頭の中に浮かび上がる
赤本を含めて、ほとんどが日本語の意味合いを
理解していない様に見えたのだ。
例えば、鉛筆は顔料を細長く固めた芯を軸で
はさんで持ち易くしたものである。
鉛筆の片側の末端部分を削って
露出させた芯を紙に滑らせると
紙との摩擦で芯が細かい粒子になり、
紙に顔料の軌跡を残すことで筆記されるものだ。
その鉛筆の説明で露出させた芯を紙に滑らせた時の
ようは伝え方が意味合いが違って書かれているのだ。
ミレイユだと芯を紙に書いた時とかくだろう。
だがここで違うのは芯を紙に滑らせて摩擦が起こり、
芯が削られて残っていくことを伝えなければいけない。
書いているという所を纏め過ぎてると言った所だ。
これが何故駄目で、
何故日本人じゃないかと疑問に浮かぶとしたら
例えの書き方が曖昧だったりいやそれだけではない。
まるで言葉が無いみたいに書かれているのだ。
表現の仕方がないなら、言葉にすることも不可能である為
別の言葉に表現してしまうのは分かる。
そうしたら正しい表現の仕方でしか伝わらない内容だったら
尚更伝わらないまま継承される。
『…ミレイユの祖先、
探ったらひょっとして何か分かる?』
あの男が言っていた、ふさわしい命とは何なのか。
だがそれだとちょっとおかしくなる。
もし仮にミレイユがふさわしいとされていたのなら
ミレイユが居ない今、僕がふさわしいというのは違う。
命ではなく、魔力に関してなら分かるが。
仮に僕の身体自体がふさわしいとしてだ。
一体何のために使用することがふさわしいのだろうか?
それに悪魔と契約したのを酷く嫌がっていた。
何ならあの場所に居ること自体酷く毛嫌っていた。
まるでこの場所は汚いからと言いたそうに。
『いやいやいやいや…まさかぁ』
一つ天使の可能性が脳裏を横切る。
天使は悪魔を嫌い、悪魔は天使を嫌う。
だがあの男は天使ではなく確実に人間だった。
魔女のその感じがしたので、不確定要素は多いにしろ
少なくとも人間か天使なのは間違いなかった。
だとしても、悪魔に触れていけないとしたら天使以外思いつかない。
それにミレイユが死んだ原因も理解出来ていない。
真相に近づけば近づくほど、きっと死ぬ可能性だって高くなる
脳裏にオリアスの笑顔が浮かぶ
『…次は絶対に誤らない。』
落とされたあの場所に戻れないとしても
この場所で彼が死ねば未来のオリアスも
死ぬ可能性が非常に高い。
それこそ絶望で涙が出ない程暴れ狂うだろう。
あの男には言っていたが、あんなのハッタリだ。
大事な人は沢山いるから…もっと強くなっておかねば。
最近ずっと組み立てばかりして鍛錬してなかったからな。
あ、してねぇやん。そう気づいたメルは顔を青ざめた後
明日から特訓しよと決意した。
二十一日目。流石に特訓と言っても
魔力の放出はぶっちゃけもう良い。
何せ二週間以上も魔力を使用していたのだ。
もう充分だろう。
それよりも筋力の方が問題だ。
多分衰えているし、鍛錬を怠っているので
間違いなく瞬発力は落ちている。
此間ダリ先生に無理矢理ではあったものの
送り迎えしてもらって速度を体感して
改めて感覚が鈍っているのに
私は大きなため息を吐くしかなかった。
一応此処には瓶を大量に作って保管するしかない。
向こうの在庫が無い以上、
一応人間も悪魔も入れないように
誰もこの場所が特定できないように
呪文を唱えて四方に結界を張る。
僕以外は立ち入れないし、
無理に立ち入ろうとしたら死ぬようにしている。
大丈夫一度は心臓止める位だから。二回目は死ぬけど。
メルは荷物を置いて、
ほぼ空いた状態で箒にまたがり速度を上げて飛び出した
一応このまま帰ってもいいだろう。
そう感じつつ、体感飛び出して3時間。
魔法陣の所にはちゃんと戻れるように
円も作っているからこのまま
飛ばなくてもすぐに帰れるが、
一応場所の把握はしておく。
出れなくなったら困るからな。
『およっ!?』
ワンワンと鳴く声にメルは急ブレーキをかけた
一体何処からかと浮遊したまま音の鳴る方に寄ると
そこには黄緑色の髪の毛の女の子が泣いていた。
「っぐずっ、うう」
『あらあらどうしたの?迷子?』
「お姉ちゃん、だれぇ?」
そう首を傾げる。身長はほぼ同じくらいに見える。
『私は…魔法使いだよ』
魔女とバレてはいけないと言っても、
魔女の個性が何かを当てられたりしなけりゃいい話だ。
だとしても魔女ですとは口が裂けても言えないので
(人間ですとも言えないしね)
私は間かどうかわからないが、
魔法が使える魔法使いと言った。
『君はどうしてこんな所で泣いてるの?』
「っぐず、ママ、いいつけ、守れなくて…
でも今日誕生日で、花あげたくて」
『…あ、あの高さから落ちたのか』
そう空高くある多分高さからして
30mはある所から落ちたのだろう
生きていたのは木があったからだろう。
なんという不幸中の幸い。
だが彼女の手には千切れた葉っぱしかなく
掴めなかった上に落っこちてこのまま帰ったら
怒られるのは目に見えていたのだろう。
気持ちが抑えきれずに泣いていたということだ。
それにメルはうーんと唸った後手を叩いた
彼女に代わって花を取るのはまぁ簡単だ。
だが、この場合彼女に取らせた方が都合がいいだろう。
メルは魔法を唱える。
悪魔に使えるかどうかは一か八か。
『“
唱えるとすぐに傷は治っていき、
多少体力が奪われたが
すぐに手元にあった予備の回復薬を口に放り込む。
「うそ!傷治っちゃった!!」
『ほら、そのまま上に上がってごらん?』
そう言って彼女の背中を手で押した後
僕はじっと見ていた。
ほんの少し
重力が少し軽くなる程度になっただろう。
遠くから見ていると、花を無事に摘んで下に降りる
それを見て、指を鳴らし母親らしき場所に
居場所を知らせるように鈴を鳴らした
音が此方に近寄って来た為、
メルは箒にまたがり浮遊してそっと傍を離れる
すると女の子の喚き声が聞こえた。
どうやら会えたらしい。
後からありがとうと大きな声が聞こえたので、
ついつい笑ってしまった。
メルは空を飛んでスピードを上げた。
速く帰って、沢山返信をしないといけないなあと思って。
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約三週間、山に引き籠って
特訓してたと半分本当半分嘘をついて
メルは無事に寮に帰宅後
大量のメールを返す前に電話を一つ入れる。
男性寮に赴き、ごめんねぇと頭を下げた。
ちなみにこれを女性寮とサリバン達にもした。
『(一旦はこれで良い…にしても)』
問題は資料の写しだ。
膨大な量があると同時に
恐らくミスが沢山あるだろう。
メルもミスはする方だ。
とりあえず一冊、悪魔に近い本を
見ながら説明を正しいかどうかを調べる。
寮の机に座り、引っ張ってきた
日本語の本とノートを見比べる。
腕が何本あっても足りなさそうなので、
魔法作ってペンが勝手にかくように
してみようかと思った。
まぁ効果が無くなるので無しだが。
一列軽く30冊は見えていたので、
まぁ100は超えるだろう。
一冊のページ数は考えたくない。
どうせ遠回しな言い回しだったり
グダグダ長かったら絵描いたりして
説明を省いた方がマシだろう。
作業を続けること3時間で
ドアのノック音が聞こえた。
ページ的には大体50枚目に突入した所だ。
扉を開けるとそこにはスージー先生が居た。
『あら、スージー先生いつお帰りに?』
「ふいっ昨日帰って来たばかりですよぉ。
メルさんは?」
『私は今日ですね。何か用ですか?』
「ええ。授業の打ち合わせに先生方が
丁度集まっているのでお暇でしたらと思いまして。」
『あ、それなら準備しますねー』
いえ、テレビ通話で構いませんよー
私も出席するので
ご一緒にどうですか?
そう言われて、メルは頷くしかなかった。
空想生物学の資料と同時に
日本語で書かれた本をノートに挟んで閉じる。
ノート側にして文字をなるべく
見られないように本を立てる。
あのノートも最終的には破いて
本にしてまとめてしまう。
…あー印刷機欲しいな
やっぱり買おうかな。
あとパソコン。
そう考えつつ、
メルはロビーの隣にある
会議室的な個室にスージーと入る。
どうやら向こう側はワイワイ
言っているのでもう集まっているようだ。
遅くなりすいませんと
一言声を掛けて話に混じる。
ーあ!その声メルちゃんでしょ!!
山籠もりから帰って来た?
『その声かんっっぺきに
ダリ先生ですね?あのですね?
見えない所で変な噂流さないでもらえます???』
ーいやー面白かったからさー。
そう言うダリの笑い声に
メルはもう怒りを通りこして
呆れて笑うしかなかった。
ークラスの〜〜についてなんだけど。
ーあ、それ俺します。
そう彼らの声を聞きつつ、
ノートに文字を書く。
それにスージーが声を出す。
「ふいっ?メルさんその文字は何ですか?」
そう言われて眉を上げて何だろうと
スージーを見ていた先の方に目を向けた
そこで悪魔語ではなく
日本語で書いていたのに気付いて声が出た
『うわっ!!やっっべ!!!』
ーん?どうした?
『あ、いえナンデモナイデス!!』
スージー先生にお礼を言って、
自分の文字を悪魔語に移し替えた。
危ない危ない。
人間界のしかも日本語は
私以外読める奴はいない。
古代の文字と嘘を付いても教職員。
知識が豊富なためバレるのに
そう時間はかからない
自分の故郷がこんな文字使うんですよ
と苦し紛れの答えを告げると
成る程とニコニコ笑って答えた。
嘘ではないから困るんだよな。
故郷(前世の21世紀の日本の文字)
だとは口が裂けても言えない。
内容を伝えなくて楽なのは事実で、
ほっと胸を降ろす。
内容は二学期のクラスの対応とあと
イベントの話に進んでいた収穫祭と音楽祭だ。
そこが一番盛り上がっていくのでそこを詰めるという。
ちなみに今回出て話す人を選ぶのに苦労はしなかった。
収穫祭はバラム先生とスージーで任されていて
音楽祭はなんとオリアス先生と
誰かと言われてメルちゃん良いでしょ
と言われた一言で決まったのだ。
いーーーーや拒否権ーーーーー!!!!
ないんですか!!!!!
そう言いたい気持ちをぐっとこらえる。
まぁ音楽祭は楽しみではあるが
…前の音楽祭はドタバタで
目を回して終わったのを覚えているからだ。
そう言えばドゥルジと出会ったのもその頃だ。
もう一年になるのか。
元気かな彼女最近会ってないけど。
ふふっと昔を思い出しつつ、
にしても舞台に上がって
指揮を執り行うと言うことはかなりの大役だ
保護者にも見られるからな。
後でオリアス先生に連絡して
一応持っている資料と一緒に
プラスαで指揮に必要な事とか物を聞いておこう。
『音楽祭かぁー楽しみちゃ楽しみですね』
「今年はどんな一年生になりますかねぇーふいっ」
『昨年とっても綺麗でしたし、
今年もきっと面白いものが見れますよ。』
そう笑って答えるメルにスージーもまた笑う。
その前に収穫祭という地獄が待ち受けている。
…さて、今年は何処まで見せれるかな?
ラッキーハッピーを使う訳にもいけないし
魔法をぶち込みまくって暴れるしかないかなぁ。
そうため息交じりにメルは未来の自分にバトンパスをした。