さぁうっはうは。
やってまいりました。
収穫祭。
ガクブルのドゥルジに
メルは苦笑いするしかない。
ルアが居るのだ。
間違いなく優勝は見えている。
何せ数日ヴルが特訓させたと言っていたからな。
ほんとに親子共々暴れすぎないといいのだが…
今回もまた、メルはオリアスとタッグを組まされた。
曰く次の音楽祭するんだから
ちょっと仲良くしてて。
だとか。
私が暫く距離を縮めなかったのが運のツキだ。
今回も魔法だけで乗り越えようと思い
うーんと唸っている頃
オリアスはメルの隣に立ったまま
唸りながらしゃがんでいるメルを見ていた
「気引き締め過ぎて倒れんなよ?」
『まさかぁ?オリアス先生も
付いてこれなくならないで下さいよ?』
そうオリアスが帽子を深く被ったと同時に
メルは魔女の帽子を上に上げて
オリアスを見て不敵な笑みを浮かべ笑った
「へぇ?一年で随分強気になったもんだねぇ?」
『う゛っ…行きますよ!』
そう飛び降りたメルは
帽子が飛ばないように抑えつつ
箒を取り出し掴んで
くるりと一周回りつつ前に移動する
オリアスは翼を広げて空を飛びだす
「右斜め」
『了解。多分200m先ですね』
そう方向を切り替えてメルはスピードを上げる
光が見えたのに箒に足を置いてすぐに飛び降りる
手に力を込め稲妻が強く光った瞬間声を上げた
『“
対象に触れて電気をぶっこむ
此方からは電気が流れないように
特殊な手袋を使って防いでいるため
感電する心配はしなくて良い。
伸びている生徒をオリアスが見つけて魔通信で報告。
メルはメルで
暴れようとする魔獣に蹴りを入れた
すると勘づいたのか、
メルが先程来た方向とは
違う方を向いてじっと見る。
報告したのにすぐ職員が駆け付けたと
同時にメルは叫ぶ
『オリアス先生800m先!こっち多分!!』
「おーほんとだあってる。行くか」
『スクーパ!おいで!!』
そうギリシャ語で箒の意味合いを持つ。
メルの箒は驚いたように少し縦に揺れた後
メルの腰元に入り込む
片手で帽子を掴みオリアスに競争を申し込んだメルに
ばてんなよと言って空を飛びだしたのに
駆け付けていた教師は唖然と空を見るだけだった
『おうおうおう?』
そう800m先に飛んで行くメルが言う
眉を寄せたメルの見る方向をオリアスも見る
何か黒い靄が揺れていたのだ。
『悪周期か?』
「いや、霧をだす家系能力を持つ子もいる」
『へぇ!んな子いるんだ。』
これキラキラさせたら夜空みたいで綺麗だろうな。
そうぼやいたメルに、冗談言う暇あるかよと
オリアスが答え下に降りる。
『“
そう叫び手に力が入るのを前に出す
風が巻き起こり、視界がすっと晴れる
それに何だったんだろうと
思いつつオリアスの方を向いた
黒い霧から突如刃が彼の前に入る
それにメルは驚いて手を力いっぱい伸ばすも
気付いたオリアスがメルの方に避け
そのままメルに倒れ込んだ
メルは尻餅をついて
目を閉じていたが開いて身体を起こす
すると胸元にオリアスの顔があって
飛ばそうとしたのを
ツンと匂う香りで身体が止まった
なんだ?この匂い
知っている。
知っているのに、見たくない。
そう震えだす手に、オリアスが
顔をしかめつつこちらを見て笑う
雑音と共にいつかの笑顔が前に現れる
同じような状況にメルの笑顔が崩れた
歯を食いしばって、前を向いた
ケタケタと笑う声に
身体の奥底が疼いていく
この黒い霧のように
「へぇ?アレ避けるとかラッキーだねぇ?」
『……叫びながら死ぬのと
首掻っ切られて死ぬのとどっちがいい?』
「おお怖い!
悪魔に魅了されたらこうなるの!?」
そう出て来たのはほぼ全身ピンクの女性だった。
いや誰だよきしょいぞ、
ゴスロリ好きな女性でも
そんなキツイピンク付けない。
「折角殺して救ってあげようと
してたのに、どうして?」
『っ!!!貴様ぁ!!!!』
手に力を込めて炎を作り出し飛ばす
片手でオリアスの背中を抱えて
中腰できつい体制を変える
止血用の薬を探す暇を与えない
彼女の炎の攻撃に、メルは
すると炎の壁が作られ、炎の消える瞬間
女性が氷と雷の混じったつららを飛ばして来たのに
驚きオリアスを胸に強く抱きしめ、
無詠唱で風の壁を作り防ぐ
「へぇ!コレを全て防ぐって…やっぱ、
そんな奴に居ないでこっち来るべきだよ。
貴方は相応しい場所で命を捧げるべきなんだ。」
『嫌だ!!誰がよくわかんない奴らの元に行くか!!!』
「…記憶が無いからそうやって言えるんだよ」
そうぼそりと言った言葉にメルは固まる
今なんて言った?記憶が無い?
「っ!!!」
突如女性の身体にダーツが刺さる
オリアスが飛ばしたのがあたったらしい
痛みに女性が怒り此方に攻撃を仕掛けて来たのに
オリアスがメルの身体を突き飛ばす
「“
その言葉に、オリアスの胸に斜めに入る
背中しか見せてくれない
その姿にメルは目の前が真っ暗になる
女性の言い放った言葉をメルは禁止していた。
それは悪魔にとってダメージが
非常にでかいと感じたからだ。
悪魔にとって聖なるものは良くない。
だからここぞという時だけ、その言葉を使おうと思っていた。
直撃で当たればひとたまりもないことくらい分かった
『…貴様あああああああああ!!!!!!』
感情が高ぶりプチンと緒が切れた
首元が光り輝き背中から白い翼を
広げ手に剣を作り出す
目が銀色に光り輝き前に突撃する
すると光を放ち攻撃を受け止められるが
もうどうにでもなれと思った。
貴方が居ない世界なんて、
私は生きていける訳がない。
『尽きることなき青き炎よ 我が魂の内に眠りしその力
無限より来たりて 裁きの力を今解き放て』
そう言って、一歩前に出た
数メートル遠かった女性に
前に出た一歩で胸に手を振れる
すると胸から波紋が浮かび、
叫びと共に消えて無くなった
光がまだ落ち着かない。
血を流し地面に背中を合わせて
寝ているオリアスの前にメルは崩れ落ちる
『“聖なる癒しのその御手よ
母なる大地のその息吹 我等が前に横たわる
傷付き倒れしかのものに
我等総ての力もて 再び力を与えん事を ”』
『“
翼を広げて胸の位置に手を当てる
幸いなことに周りの魔物の気を使用できるのが良い
とにかく急いで止血して回復しないと命の危険になる
深い傷に首を横に振る
駄目だ、集中しろ。
もっともっと力を入れろ!!!
槍の先のように、一点に集中させる
髪の色がゆっくりだが白色に色素が消えていく
『う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
もっと広く!!
広範囲から気を一瞬集め打ち込む
オリアスの胸にあった傷が
綺麗にふさがり傷跡も残らない程になった
目を開けたオリアスがメルの名前を呼ぶ
それに安心したメルは
オリアスの横に倒れ意識を失う
翼は溶けてなくなり、髪の毛の色も元に戻る
「…メル?おい、メル!!
しっかりしろ!!!なんで、何で!!」
そう身体を揺するがびくともしない
メルにオリアスは目を開ける
先程いた女性は何処にもいなくて、
黒い霧も晴れた血を流す姿は見えないものの、
胸の鼓動が小さいのに顔を青ざめる
自分の身体に何もない事に気付いて
身体に触れてみて見ると
確かに痛みを生じた傷口が
綺麗に何事もなかったかのように
なくなっていた
ただ切られたその服と血が付いているだけで
オリアスは歯を食いしばって
メルを抱きかかえて空を飛んだ
急いで彼女を安静な場所に移動させた方が良い
そう思って飛んでいると
真上から攻撃を察知して横に避けた
「あぁ…可哀想に、魅了されたまま眠って可哀想
あいつも使える奴だったのに、殺されて可哀想だ」
「…っ!お前は」
男性が空を飛んでいたただ、翼も出さずに
まるで浮遊しているのが当然かのように
「その子を渡してくれるなら、
君の命や周りの命は奪わない。」
「っ、嫌だってたら?」
「お前らの命をその子の前で潰してやる」
「(嗚呼本気だこいつ)」
目が血走る男性にオリアスは眉をひそめた
眠っている彼女がそんなにも大事なのか?
なのにオリアス達の命を目の前で奪わせて何が良い。
もうその場所しか居場所がないと言い聞かせる為?
「…そんなことはさせない」
「嗚呼、もう少し頭のいい奴だと思っていたが、仕方がない」
そう攻撃を仕掛けて来た次の瞬間
オリアスの前に四つの翼に目を丸くした
火炎が強く舞った後にツルが伸びてきたが
少し怯んだ男性だったがツルを避ける
「ーっ、うちの子達をよくもこんなにさせたな?」
「っ!バラム先生にイフリート先生!!」
「オリアス先生メルちゃん連れて早く逃げて!!」
「すいません!」
そう言ってオリアスが羽を羽ばたかせて
速度を上げたのに男性が手を出そうとするが、
ツタが今度こそ絡まり身動きが取れなくなる
「さぁ、洗いざらいはいてもらおうか?」
+++++++++++++++++++++++++++
ドクドクと音が鳴る
白い世界に目を覚ました。
隣に緑髪の少女が此方を見てきょとんとするのに
メルは大きく息を吸って叫ぶ
『わあああああああああああーーーーーーあああ…あ?』
何も言わない少女はにこりと笑うだけだ
驚きはしたものの何もしないのに拍子抜ける
あ!ってか此処何処ですか!?
え待ってひょっとしてまた飛ばされる!?
身体を強く早く抱きしめてバッと少女を見る
首を横に振るところ、
多分意思疎通が出来ているんだろう。
此処が何処かは分からないものの、
先程あったことを思い出す。
そうだ、オリアス先生がメルを
二回も庇ったから回復魔法の最大効果を
引き上げに引き上げて倒れたんだった!!!
え、待って?これ精神世界?悪魔なった?
悪魔なった??それとも夢?待ってどっち?
慌てるメルに少女は微笑み指を指す
その場所にメルは目を向ける
ー嗚呼我らが神よ、何故亡くなるのですか!!
そう嘆く男性と女性の前には
真っ白な髪の長い女性が横たわっていた
ーそうだ、生まれ変わる時、そ
の時貴方をお迎えに参りましょう!!
ー例え記憶が無くても、きっとあの殺した悪魔に罰を!!
ー二度と同じ過ちを犯さないように!!!
え?何?どういうこと?神様?え?天使?
そう男女の背中から白い翼が生えている。
しかも一人四つだ
横たわる女性の背中からは六つあったであろう翼が
もぎ取られたのか、横から見える
ー悪魔と会った時、貴方をお迎えしに行きましょう。
ー輪廻にふさわしき優しき貴方は、天の子なのですから
そう言った言葉で目を覚ます
嫌な目覚めだと思う
天井は白く、ただ自分の顔も白い気がしてならなかった
まるで先程見た夢の続きのように左右から男女の姿が見えた
「〜っ!!メルちゃん目覚ましましたああああ」
そう言ったのは女性だと思っていたら
髪の長さで判断した私が悪い。
ツムル先生だった
「大丈夫?声聞こえる?」
そう言ったのに反対の方を向いてみる
バラムが優しく声を掛けてくれたのだ
声は聞こえるので頷いて身体を起こすと
無理に起こさなくていいと
両手で起こすのを遮られる
バタバタと音を立てて布を慌てて開けたのは
汗を流して顔を真っ白にして来たオリアスだった
「ーっ、メル」
『…良かった、生きてて』
馬鹿!!そう言ってオリアスが強くメルを抱きしめる
それに此処に居るよと背中をとんとんと叩いた
「メルちゃん、
収穫祭が終わってからでいいから
ちょっと聞きたい事があるんだ。」
『…わかりました。覚悟を決めさせて下さい。』
そう言ったメルに、バラムはうなづいた。
今日はこのままで、
後の収穫祭は気にしなくて良いからと言って席を外す。
ツムル達も居なくなり、あと少ししたら家に帰る予定だ
『ごめんね、傷痛かったよね』
「っ、いやってかそんなことより
何で傷治ってるんだよ、これ、一体」
『私ね、魔女なの』
そう言ったメルにオリアスが目を開いた
何を?と言いたそうな顔にメルは微笑む
前にオリアスに人間界に
言い伝えがある話で話題になった際に
話したことがあったのを覚えている
ー魔女っていうのがあって、
悪魔と契約をした人間って言われてるんですよ!
人間からは忌み嫌われる厄災の人間らしいです。
「え?」
『ごめんね…もう、大丈夫だから。』
そう言って頬にメルが触れてそっと唇にキスをする
たった一瞬のことで、
驚いたオリアスだったが意識が遠くなり、
そのまま目を閉じて倒れるのを
メルが抱きしめ受け止めた
『(これで私の記憶はほぼ無くなった。)』
魔女と言ったのにあんな驚かれてもな。
どちらにせよ記憶を消したから意味ないんだよな。
そうあざ笑いつつ、メルはオリアスをベットに寝かせる
このまま居なくなるわけでもない。
だが、このままうじうじしているつもりもない。
時間が無い。予想以上に時間が無いようだ。
どうせならあの場所から荷物を一式取るかと思う。
覚悟を決めろ私
この場所に残って死ぬか
この場所から離れて天に帰るか
答えは最初から決められているのに、
気付きたくなんて無かった。