オリアスが目を覚ますと、そこには誰も居ない場所で
メルはそのままサリバンの元に帰ったという
そして収穫祭が終わった夜
メルを知る者達が職員室に残ったままになっていた
そこにオペラの手を引いて現れたのは
魔女の姿ではなく、真っ黒なワンピースを
着ていたメルが下を向いたまま来た
帽子は被っていたがオペラの手を離し
帽子を手に取って胸に置いた
「皆さんお集まりいただきありがとうございます。」
「ちょ、オペラ、先輩!これは」
「メル様が全てをお話する覚悟が出来ましたので
私も同伴しに来た迄です。」
そう言ったオペラにカルエゴは何も言わず
いつもよりもずっと暗い顔のメルに目を向けた
「…こんだけの人数を待たせてるんださっさと話せ」
そう言ったカルエゴにメルは背を向ける
背中にチャックがあり、腰まであるのに周りも目がいく
すっとメルはチャックを目の前で開け始めるのに
おいおいおい!とカルエゴが手を上げたが
開いた場所にある筈のものが無い事に、
全員の顔が青ざめた
真っ白な何もない肌だけの背中
尻尾もない、耳は丸く
浮遊したままメルは回って前を向いて
困ったように笑って答えた
『僕は人間です』
その言葉にバラムから人間と声が漏れる
カルエゴはサリバンに答えを請求したが、
サリバンもオペラも実は初めて知ったことだった
そもそもメルを保護するのは
ミレイユから聞いていた話であって
その話もカルエゴ達は聞いておらずざわめいた
『オペラ服を』
「かしこまりました」
そう外に出るメルとオペラに
どういうことだと問い詰める
「僕だってミレイユ様から
引き継いだだけなんだって」
「だからと言ってこんな所に人間が!!」
そう前に押すカルエゴの首元に
止まる光に一同が目を向けた
『ほら話の続きしますよ。
子犬がキャンキャンキャンキャン
吠えても仕方がないでしょう。』
「こっ!!!」
ぶっと笑ったオペラにカルエゴは笑うなと叫ぶ
メルが放っていた光は手を広げると消えて無くなる
『僕は人間です。ですが人間は本来このような力を一切持ちません。』
「…そうなの?」
『そうです。と言うかそうじゃなければ
魔女狩りなんておきないしなぁ。』
「魔女?あ!!そうだ魔女って
メルちゃん言ってたよね!!!」
『ええ、僕は魔女です。
人間が悪魔と契約を結んだ時に
魔法を使える。人間です。』
そう言い切ったメルに、
一同はぽかんとしたまま口を開け塞げないまま居た
『魔法を使えるのは感情のコントロール等からです。
体力を消費する魔術もあります。』
『契約の内容はお伝え出来ませんが、
それ以外でしたら全て話すつもりで此方に来ました。』
「悪魔との契約の内容ということだな。
ちなみに伝えるとどうなる。」
『最悪死にます。
いや死んだだけならまだマシかもしれませんね、
転生した後で支障が来る可能性もありますし
何が起こるかは正直記載されていなくて
此方も言うなしか書いてないのを
真面目に守っているだけですから。』
「そうか」
『では説明しますね。
席を立ったままも苦しいでしょうから』
オペラと言った後オペラが一言声を出して
何処から出して来たのか移動黒板をメルの前に置いた
『まず皆様から何か聞きたい事はありますか?
恐らく此方が伝える物と重なると思いますが。』
「…じゃあ、あの、その魔女って
一体どういうものですか?
悪魔とどう違うんですかね?」
そう言ったのはツムルだった
それにメルは少し微笑み答えた
『魔女は本来悪魔と契約を交わして魔法を使える者です。
契約後一週間は魔法使いとして生活し、
魔法に慣れると魔女見習いになります。
私は正確には魔女見習いですが、
面倒なんで魔女ですって最初に告げました。』
「一週間?何もしないと何か困る事があるのかい?」
『魔女になれないだけですね。
悪魔の契約もそこで効果が切れます。
通常の何も飛べない使えない人間に戻るだけです。』
使えないって…
『ただ、一つだけ例外があります。
それが継承者です。』
「けいしょう?」
『魔女から人間に受け継いだ者のことを指します。
何がいけないと言いますと本来本人同士の契約。
そもそも引継ぎが不可能な筈なのです。』
それが、使えるというのが厄介なことで
『基本的に魔女が瀕死の時に
全てを投げて人間に継承させます。
その際人間側に何らかの理由がある時、
魔女の引継ぎが成功します。』
「理由?」
『そうですね、例えば悪魔と
契約をした祖先だったり。
あとは…身体がそもそも悪魔や
天使の生まれ変わりだったりですね。』
そう言ったメルに一同が目を丸くする
『私は前魔王デルキラ様の妻、
ミレイユ様から魔女の引継ぎを受けた継承者です。
恐らく私が継承出来たのは、
天使の生まれ変わりだからと言えるでしょう。』
「どういうことだ?」
『此間夢をみたんですよ。
あくまでも推察なんですが、
天使の生まれ変わりだと
彼らが攻めて来たのにも辻褄が合うんです。』
夢では生まれ変われば必ず迎えに行くと言った
それに悪魔に殺されたとも
『悪魔と会って生きていくと決めた時に
彼らが収穫祭の途中に出て来たと言うことが
夢で聞いた通りの話で辻褄が合うんですよ。』
「だとしても、何故来たのかは不明だろう?」
『憶測はいくつでも作れますがね、不明は不明です。』
『魔女は得意魔法があり、悪魔と同じように
契約をすれば悪魔の家系能力を使う事が出来ます。
ちなみに私の得意魔法は炎と水です。しょっちゅう使ってます。』
ほらこの通りそう言って左右に炎と水を作り出す。
何も詠唱しないで使えるのが得意とする所ですと答える
「衣装を着替えないといけない理由って何かあるの?」
『良い所つきますねバラム先生。
魔女の帽子はアンテナの役割になっており
人間が悪魔の角の代わりともされています。
ちなみにコレがないと魔法は基本使えません。』
無理に使うと吐血します。そうサラッと言うメルに
軽く固まった一部を無視して続ける
『黒装束を見に纏うのも全て悪魔の一部としての役割です。
先程浮遊できたのはオペラさんが私を浮かしてくれたからです。』
ぺこりとおじぎをしたオペラを見てメルはカルエゴ達を見る
「力を使った時髪の毛が白くなっていたけど、意味あるの?」
『ええ、魔法を使えば色素を失います。
ちなみにオリアス先生にかけた魔法は
周りの気を使用します。』
「へぇー回復も出来るんだね」
『使い過ぎると死にますけどね』
「え゛!?」
『あとまだ使ってはいませんが、
失敗すると世界が滅びる魔法もあります。
あいつらが使う事はまずないと思いますが、
敵の人数が分からない以上可能性は消さない方がいい。』
「そんなとんでもない魔法あるの…」
『何か他にありますか?』
「はい。メルちゃんはどうして
僕達にソレを伝えようと思ったの?」
『…』
上を向いて下を向いて
そっぽを向いて首を傾げながら腕を組み
うーんと言いたそうに足を
パタパタ貧乏ゆすりの様に身体を揺らす
『あああああ!!今までの全部建前!本音!!
んなの急に知っても分かるかぁ!!
天使がどうとか悪魔がどうとか知るかぁ!!
僕は人間ですけど、悪魔が好きになったから
此処に居るの居たいの!!!』
『ただそれだけです!!』
そう言い切ったメルはそれでいいですか?
とダリに聞くと本音聞けて何よりとニコリ笑うだけだった
「でどうするんだ?戦うのか?」
『あの人たちに何か言いました?
僕気絶していて相手されている記憶無いんですが。』
「あ、それは、何か男が現れて攻撃仕掛けてきて
メルちゃんを渡すなら周りの命は
奪わないって言ってきた奴がいたよ」
ああ、アレか。と言ったバラムにオリアスはうなづいた
「嫌だって言ったら、お前らの命を
メルちゃんの前で潰してやるって言われたけど」
『ふぉっ!?』
「そんなつもり更々ねぇから断った」
『強気か!!!それ男性ですらっとした奴でしょ』
そう言ってメルが幻影を作り出すのにオリアスや
バラムイフリートが身構えるのを見て、メルは成る程と言い
指を鳴らし幻影を消し去った
『夢で見た男性と一致するし、
どうやらそいつが来たので間違いないな。
ったくしつこい奴だなぁ〜
夏休み中戦ったの逃げたから恨んでるのか?』
「え?待って聞いてないんだけど」
あっそう言ったのも遅く、
夏休み中何をしていたのかも
仕方がなくばらす事になった。
「金具以外全部手作りって凄いな…」
『言っておきますが連れて行けませんよ?
魔女の居場所として置く場所ですから継承者が居れば
引き継がせる予定の家ですし』
「メルちゃんが住んでいるそのログハウス?は?」
『あれはあくまでもミレイユの力が僕に
引き継がれている状態だから使用できるのです。
成功したらいいですが失敗したら知識なしで
野垂れ死にさせるのを考えたくないからです。』
流石に悪いのでな。
『大体は言ったかなぁー』
「まだ言ってないだろ?未来から来たって」
そう言ったオリアスにメルが目を丸めた
嘘、そう言ったメルの前で「ほんと」とウインクして
前に渡した特製の星のピンバッジが壊れている破片を見せつける
「おかげ様で記憶が戻ったよ。
あと未来の記憶もちょーっとね?」
『っえ!?なんで!?』
「“メル”、お前また殻に閉じこもって
逃げようとしてんだろ?」
そうはさせねぇと言ってオリアスが言う
「未来で見た世界にお前は俺や皆に出来る限り避けた。
そうした方が刺客が俺達に見向きせず
お前だけを狙うって気付いたからだろ。」
『っ…それは、違う!!』
はい嘘。そう言ったバラムにメルが唸る。
「大方切りの良い所で皆の記憶を消して
そのまま刺客の元に行ったんだろ?
此処に居たいのに。皆とずっと一緒に居たいのに。」
それは、そう言いかけたメルが口をぎゅっと紡ぐ
それを横からオペラは見ていた
「違わないだろ?なら何で魔法を沢山覚えて使えるようにした?
何で使わない筈の剣術なんて必死に努力して使えるようにした?
全部戦って散る為じゃないのか?」
『ちっ、が…うぅ…』
「もし、記憶を消して俺達の前から居なくなったら
俺達お前を追わないとでも思ってる?」
え?そう前を向いたメルに
オリアスはやっと目合ったなと答える
「俺の
限度はあるが、俺の有利に全て物事は上手くいく。
前から記憶を消し続けて体制出来たんか知らんが
消されたのとお前からの力で相殺されて
一気に情報量来て最初パ二くったよ。」
待って?何時の記憶あるの?
嘘でしょ?そう慌てるメルに
オリアスはうぅんと唸り言う
「文化祭で小さな小石上げたり?
プラネタリウムのチケットを渡すの悩んでたり?」
『〜〜〜っ!!!』
我慢できずにメルは涙をこらえて
オリアスの身体に突撃した
勢いに椅子が後ろに下がるが
よしよしと頭を撫でる。
「よく今まで頑張ったな。
もう大丈夫だ、沢山抱えて辛かったろ。」
そう言うオリアスの声にメルは
首を横に振って身体から離れ浮遊する
違うの違うのと言いながら
『僕!!貴方を、助けられなくて…』
「だけど今の俺を助けたろ?ほら胸の所」
そう親指を立てて胸に押すオリアスは
メルにウインクして笑う
「此処まで説明してくれたんだ。
メルちゃん、
君が思っている以上に皆は薄情じゃないさ。」
え?そう振り返るメルに周りは微笑み笑って答える
「別にメルちゃんが思ってやってる
わけじゃないでしょ?なら被害者でしょ」
「ええ、それにちゃんと
ここに居たいって言質取りましたし?」
「まだ請け負うクラスの
教科を投げ出されては困るからな」
『あう…みんなぁ…!!』
「ほら、君が皆と接したからこうやって見てくれるんだ。」
居たいと望んで良いんだろうか?
本当に、大丈夫なのだろうか?
君達は嫌がるなんてしないのだろうか?
そう思うメルに、言いたい事丸わかりーと言って
ツムルがデコピンをする
「俺まだ先輩に助けてもらってばっかですよ?
助けられて消えられるなんて嫌ですよ!」
「そうそう。それにメル先輩強いのに
それ以上の敵と戦えるなんて中々ないですからね。」
そうイチョウが言うのに、
面白くなってきたねぇとダリが叫ぶ
「ふいっ、メルさんとても頑張り屋で真面目な方ですが
詰め込み過ぎるのは身体に悪いですよぉ?」
頼ってくれたって良いじゃない。
そう笑うスージーメルは顔を赤くして涙をぽろぽろ零す。
「あースージ先生泣かしたーー」
「ふいっ!嬉し泣きですよ。」
そう言ったスージーに
メルはいやほんとかなぁと思い笑ってしまう
嗚呼、あの時逃げたから、閉じこもったから
きっと出てきて沢山喋っていたら
世界は変わっていたのかもしれない。
貴方に会えて、伝えられてよかった。